なので内容は特に深くは無い。
けど自己満足だから、いいと思う。
好きなのは大鳳です、はい。
“深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている”
その言葉は、この世界にとって間違いないだろう。深海棲艦と呼ばれる脅威に立ち向かう艦娘と提督の存在。
しかし、深海棲艦は誰が指揮しているのかという疑問から、やがては深海にも彼らを統率する提督の存在があるのではないかという憶測が立てられた。
それ故に最初は説として、誰もが噂に過ぎないとされていたが、実際に各地で肌白く黒と青の服装に身を包んだ謎の人物が発見されるようになる。
見間違い、幻覚。それでも存在を認識しようとしない世間ではあったが、深海棲艦を統率し襲撃を起こした時にその存在は露わになった。
もはや夢物語では閉じることのできない存在を、偏に“深海提督”と称するようになった。
そんな脅威側に立っている深海提督の一人が、たった一人の提督に振り回される。
これは、そんな深海提督の苦悩を記す物語である――。
■
横須賀鎮守府より離れた位置にある深海にて。ボサボサの白髪に帽子を乗せ、怠そうにしているこの深海提督。
名を自ら深淵ににちなんで“アビス”と言う。そんなアビスの隣には、空母ヲ級が寄り添っていた。
『アビス、キョウノタタカイハ?』
「……怠いから休みだ。というか、負けるし」
『ヨワネ、ヨクナイ。ワタシタチ、ガンバッテル』
「頑張って勝てるなら苦労はしねぇよ。それに、勝てる見込みが無い状態で挑んだとして、お前らを失うのが何よりの無駄だ。というか前から疑問だが、戦う必要性あるのか?」
『……ワカラナイ』
アビスの記憶にあるのは、深海棲艦を統率する立場と、艦娘と対立しなければならないという二つだけだった。
他の深海に属している同じ深海提督たちはその刻まれた本能のままに艦娘や鎮守府を襲撃していると耳にはするが、アビスにはそれがどうも引っかかっていた。
「はぁ……。けど、暇に変わりないしな」
『ヲ? ドコニ、イクノ?』
「散歩だ散歩、ついてくんじゃねえぞ。ちょっと敵情視察だ」
暇を弄ぶアビスは、ポケットに両手を入れながら深海を泳いでいく。ヲ級はそれを見てついていこうとしたが、アビスの命令により動くことができなかった。
毎日毎日、他の深海提督は戦っているのだろう。よくも考えることもせず、本能のままに動けるもんだとアビスは嘲笑う。
泳ぐこと数時間、アビスは深海から這い上がり海上にその顔を覗かせる。
「さてと、とは言えオレの可愛い深海棲艦たちにも勝利を噛み締めて欲しいからな。敵情視察して、なにか一つでも有力な情報を掴み取れればいいんだが……」
水面から顔を出しながら、間近で横須賀鎮守府の裏口を覗く。正門とは違い、裏口の方が艦娘たちの動向が良く見れる。
それも艦娘たちが交流する広場になっている事や、出撃する場所でもある為に情報を仕入れるならかなり良い場所だった。
バレないように少しずつ身体を動かして四方八方に観察するアビスは、一人の女性を目にする。
「あれが……提督か……」
白い服装に、自分と似た帽子を被っている。目は翡翠に輝き、肩まで伸びている茶髪が綺麗だった。
アビスは初めて見る横須賀鎮守府の提督に興味を惹かれ、離していた距離を縮める。
「くっそ、あんなチンチクリンにオレは敗北していたのか? それともオレの部隊が……いや、これは言ってはダメだな。あいつらも頑張ってくれてるし、今のは俺が悪いな」
「悪いと言えば、敵情視察に来ている貴方もじゃないかしら?」
「あ~、言われてみれば確かにそうだな。けどバレなきゃ問題ないから大丈夫だろ……って。ほあぁ!?」
さりげなく会話に入ってきた誰かに、アビスは驚きの声を上げながら振り向く。
そこには艦娘の加賀が、矢を向けて目を光らせていた。
「肌白く、その赤い目。それに黒と青の服装を見るからに、深海提督の特徴と合ってるわ。――逃がさないわよ?」
「……オレ、艦娘。キャピキャピ、おけ?」
「そんなわけないでしょう!!」
「ぬああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
放たれた矢が爆発を起こし、騒ぎに気付いた艦娘たちが緊急出動する。
完全に包囲されたアビスは逃げ道を必死に探すが、何十人という艦娘に囲まれてあるわけがない。
やがてそこに提督も赴き、姿を完全に認知される。
「みんな、ちょっと落ち着いて」
「なに言ってんだ提督! こいつは敵だ! それも深海提督、こいつさえ潰せば敵の戦力はかなり激減するんだぜ!?」
「それはわかってる、でも待って欲しい。ねぇ、貴方の名前はなんていうの?」
「……アビス。もしかして逃がしてくれるのか?」
「ううん、捕虜にする」
「クソがァ!!!!」
提督の指示に従い、アビスは艦娘たちに捕獲される。成す術もなしに捕まった後、アビスは縄ではなく鎖でガッチガチに縛られ、挙句の果てには南京錠まで付けられた。
まぁ、自業自得ではある。