深海提督は今日も後悔している様子   作:創作図書館

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『シンカイの前世に困惑する様子』

 

 

 

 

 

 

 

 

 第六駆逐隊の総攻撃を受けたアビスは、両手を手錠で拘束されて、挙げ句の果てには首輪を付けられリードされていた。

 

 鎖の持ち手を持っているのはヲ級で、アビスはギリギリと歯軋りをして苛立っていた。

 

「オイ、なんでオレが部下であるお前にリードされてんだァ!?」

 

『アビス、アバレル。ソレハキケン、ダカラオトナシクシテテ』

 

「うがあぁああぁああぁぁああああッ!!!」

 

 提督、そして大鳳の後ろで叫び散らすアビスにヲ級がグイッと鎖を引っ張る。

 すると首輪が皮膚に食い込み、アビスはその場で力無く膝から倒れる。

 

「ふぬぁ……力がァ……!」

 

「はぁ……いい加減に学習してください。その手錠と首輪は貴方を監禁していた時に付けていたのを改良したものです。対深海棲艦用に作られたそれは、深海の提督であれど効力はご覧の通り。おとなしくしたほうが賢明というものですよ」

 

「一体どんな仕組みが施されてんだ……? というかヲ級の艤装を調べるってんなら、テメェらのこれも教えてくれたっていいだろうがァ!」

 

「お断りします。身内であるヲ級さんに手綱を任せているだけでも有難いと思ってください。もしそれでも不満なら、加賀さん辺りに手綱を任せてもいいんですよ?」

 

「ぐぬぬ、貴様ァ……!」

 

 大鳳に言われるがまま、アビスはもしも加賀が自分の手綱を握っていたら……と想像する。

 それはもはや地獄……、深海の底より深い闇を見ることになるだろう。

 

故に立ち上がり、言われた通り大人しくなる。

 

『テイトク、ドコニイクノ?』

 

「んっ、私の部屋。そこで湊人……、アビスと改めて話がしたい」

 

「ハッ! オレはテメェと話すことなんかねぇし協力するつもりもねェからな!!」

 

「ヲ級さん、引っ張ってください」

 

『ヲッ』

 

「ふぬあぁ……!!」

 

 口を開けばすぐに煽る。それが癪に障るのか大鳳は引きずって連れて行くようにヲ級へと指示を出した。

 

 道中そんなアビスの光景を目にする艦娘たちの視線に、アビスは満身創痍で鬱陶しく思う。

 やがて提督の執務室へ辿り着き、ヲ級は引っ張りアビスを中に入れる。

 

「ぐえっ!!」

 

『アビス、ダイジョウブ……?』

 

「この、裏切り者めが……!!」

 

「ご苦労様です、ヲ級さん。これはほんのご褒美ですが、どうぞ」

 

『ヲッ! コレ、オイシイ! タイホウ、スゴクヤサシイ!』

 

「おい、なんだそれは……? まさかヲ級、テメェ……!?」

 

 胡座を掻いて一息吐いているアビスの目の前でやり取りが見える。

 それは大鳳の手にある菓子……、つまりはクッキー。

 

 ヲ級はそんな大鳳の持っているクッキーに対して口を開け、まだかまだかと待つ。

 すると大鳳はクッキーをヲ級の口の中に放り込み、与えた。

 

『オイシイ、オイシイ……! モグモグ……!』

 

「ヲ級、お前ええええええええッ!! 食いもんで寝返りやがったなあああああああ!?」

 

「ふっ、甘いものは正義なんですよ。まぁ頭が固い貴方は理解できないでしょうけど」

 

「ぬうあああああああッ!! 大鳳、ここで今ぶち殺してやらああああああッ!!」

 

「ッ! ヲ級さん!」

 

『ヲッ! ワカッタ!』

 

「あひぃん!!」

 

 これまでよりも力強く引っ張られたことで首輪が食い込み、アビスは身体を硬直させてピクピクと身体を痙攣させた。

 

「大鳳、あまりアビスを虐めないで」

 

「これは失礼、しかしこの凶暴さを前にして何もしないと言うわけにはいきません。例え提督とこの方が親密だった関係であろうと、私たち艦娘からすれば危険人物に変わりはないので」

 

 大鳳の言う通り、幾ら提督と深い関係だったといえど敵に変わりはない。

 ましてやこのように話を聞こうともせずに反対し続けるアビスは、いつ本性を表して暴れるかわからないからだ。

 

 しかし提督はそんな大鳳を他所に、力無く倒れ込むアビスを優しく抱き抱える。

 

「アビスは、覚えてないだけ……。彼の最期がどういうものだったかさえ……」

 

『アビスノ、サイゴ……?』

 

「私はアビスを、救いたい。その為にも、貴方達が理解してくれるようにアビスのことを知ってもらうつもりなの……」

 

「提督……」

 

 大鳳は困惑する。艦娘が轟沈した末に、深海棲艦に成り果てる噂があるように、アビス自身ももしかしたらその成れの果てなのかもしれない。

 

 だとしても、脅威であるのは変わらない。そんなアビスをそこまで庇おうとする提督を、受け入れられない。

 

だからこそ、大鳳は聞いた。

 

「……彼の最期を話せば納得するというなら、一体どんな最期だったんですか……?」

 

 その一言に、提督は眉を顰め何かを過らせたのか悲しい表情をする。

 そんな提督の胸に抱き寄せられているアビスは力が抜けているとはいえ、自分自身についてなにがあるのか気になっていた。

 

 

しばらく沈黙が流れた後、提督は口を開いた。

 

 

「ーー彼、アビスこと海原湊人は深海棲艦の襲撃を受け、艦隊及び艦娘たちは全滅。その末、責任という負い目を感じた彼は罪悪感に囚われ、海へとその身を沈めた……。つまり、自殺だよ……」

 

 

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