少し体調を崩し,入院してました。
復帰したので、体調には気をつけて
ゆっくりと更新していきたいと思います。
海原湊人、享年27歳。
生前の頃は他の鎮守府よりも功績ともに実績を積み重ね、“英雄”と呼ばれていた。
彼が指揮する艦娘たちは日々強さを増し、精密に練り上げられた作戦は深海棲艦の中でもトップの強さを誇る『姫級』や『鬼級』が相手だろうと通用した。
彼が英雄と称えられる理由は誰もが思いつかない程に器用で小回りが効く作戦も然り、それ以上に有名な実績があった。
“着任したその日から、艦娘の轟沈一切無し”
それはもう才能という言葉だけでは抑え切ることのできないものだった。
彼は常に艦娘が出撃を見送り、無事帰還するまで一切の気を抜かず待ち続けたという。
普段は温厚な性格も、司令を出すときだけは緊張を張り詰める。
例えそれが格下相手だろうと、気を抜かずに最悪のケースも考えて。
海原湊人という人物は艦娘たちからの信頼も厚く、彼もまた艦娘たち一人一人に愛情を注ぎ成長を共にした。
だが、ある日のことーー。
『ふざけんな……! こんなの、想定できるわけがないだろうが……!!』
彼はこれまでに無いぐらいに焦っていた。
何故なら、横須賀鎮守府の付近に数百を超える深海棲艦と複数の『姫級』と『鬼級』が出現したのだ。
鎮守府内はパニックに陥った。
出撃する準備すら、していないぐらいに唐突な出来事だったのだ。
歯を噛み締め、どうするかを考えた。
これだけの数をレーダーが捉えないことはあり得ない。
となれば何が原因だと模索する。
ひとまず艦娘たちに指示を出して編成。そのあとモニターに視線を移して作戦をその場で練る。
しかし、彼が作戦を練る数分後。
鎮守府に向けて砲撃が放たれた。凄まじい爆風に加えて破片が飛んでくる。
近くにいた艦娘が瞬時に湊人を庇った。
『くそ……ッ。大丈夫か、大鳳ーーッ』
自分を庇ってくれた大鳳に声を掛ける。
だがそこには血塗れに倒れ込み、意識を保っていない大鳳が居た。
ドクンッ!と心臓が高鳴る。
湊人はすぐさま大鳳を物陰まで移動させ、破壊された壁側へと視線を向けた。
『なっ……!』
視線のその先には目を赤く光らせる無数の深海棲艦たち。
そしてその先頭には、青と黒の服装に身を包んだ異形の存在が立っていた。
『横須賀鎮守府ノ若キ提督ヨ。貴様ハ我々深海提督ト深海棲艦ニオイテ脅威デアルト判断シタ。ソレ故ニ、全勢力ヲ以テシテ、沈メルコトニシタ』
敵勢力が装備する兵器が一斉に向けられる。
レーダーに反応しなかったのも、全て先頭に立つ異形の存在である深海提督によるものだと湊人は瞬時に見抜く。
だがその時には既に、湊人含めた艦娘たちに砲撃が放たれ続けた。
『やめろ……』
ーー自分を庇って崩れていく艦娘たち。
『やめてくれ……』
ーー左右両方から聞こえる艦娘たちの絶叫。
『やめてくれええええええええええええええええええええええッ!!!!』
気配もなく唐突に現れた無数の敵による一斉砲撃はこれまで築き上げて来た湊人の全てを壊し、狂わせた。
辺りには血を流して動かない艦娘たち。
『うっ、あぁ……!! うわああああああああああああああああああッ!!!!』
喉がはち切れんばかりの号哭。
天に向けて湊人は泣き叫び、艦娘たちの亡骸に目を移しながら何度も額を床にぶつけた。
『制圧、完了ーー』
あえて最初から決めていたのだろう。
なんとも意地の悪い、いや……汚い。
鎮守府と艦娘たちを制圧した深海提督は湊人を気に掛ける様子もなく、深海棲艦の群れを引き連れて海へと帰っていく。
賑やかだった鎮守府はもう無い。
崩壊した鎮守府に取り残された湊人は幾度も泣き叫び、悔やみ、責めきれない自分の愚かさに打ちのめされた。
その次の日。湊人の目には光が無く、深海提督が現れた海の先を見つめていた。
そしてゆっくりと足元から浸かり、もはや出し切った涙を更に浮かばせ、身を沈めたーー。
更にその後日、横須賀鎮守府の崩壊と海原湊人の行方不明という記事は全世界を駆け巡り、この事件を知らぬ者は居ないほどに知れ渡った。