書きたいと思っていたポケモン。
我慢できなかった…出来なかったんだ!がまんを覚えられなかった!!
歓声が響き渡る。
それを向けられているのは、俺だった。
いや、俺だけじゃない。
俺のパートナー達もその歓声の対象だった。
厳しい特訓に弱音を上げずに付き合って、寄り添ってくれたポケモン達。
「勝てた、のか。」
ポケモントレーナーならば誰もが夢見るポケモンリーグ。
俺はジムを制覇し、それに挑んだ。
生半可なコンディションでは予選すら勝ち残れない。
だけど、俺は予選を制して、本戦へと進んだ。
そして…
『リョウ選手!ポケモンリーグ本戦の最終戦を制し、チャンピオンとの戦いの切符を手にした!!ホウエン、シンオウでのリーグ戦の悔しさをバネに遂に勝ち取ったーー!!』
─ワァァァァァ!!
実況が耳に入って、ようやく俺は理解できた。
勝てたんだ。
俺はチャンピオンとの対決が出来るようになった。
「やった…やった!!」
柄にもなくはしゃいで、挑めるんだと喜んだ。
強くなれたんだと、俺は実感できた。
─イッシュ地方、春のポケモンリーグの話である。
・
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・
「流石はリョウさんですわ!チャンピオンには後一歩及ばずとも善戦した一流!是非、
「…えぇ~…」
この方の言う通りチャンピオンのアデクさんには寸での所で押し切られて負けたわけだが、優秀なトレーナーとして表彰自体はされた。
チヤホヤされた訳だけど、そうしてる間も強くなってるトレーナーは無数にいる。
だから特訓を再開したんだけど…
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・
・
…一本の電話が掛かったのが始まりだった。
『リベール家の者です。ポケモンリーグの一流トレーナーのリョウさんにお話があります』
ぶっちゃけ怪しいことこの上無い電話だった。
すぐに切ろうと思ったが家名を聞いて思考が吹っ飛んだ末に出た返答が
「すぐ準備します」
馬鹿野郎。
どうして断らなかった過去の俺。
テンパってた俺は支度をしてすぐにホテルを出た。
出てすぐに、そのリベール家の人と思わしき黒服が俺をお待ちしておりましたとばかりにリムジンで連れ去った。
返事がどうあってもこうなってたから問題ないぞ過去の俺。
リベール家。
イッシュ地方での優秀なトレーナーの家系だ。
言ってしまえば金持ちの家なのだが、トレーナーとしての意識は俺でも尊敬するというべきなのだが…努力家過ぎて方向がおかしかったりすると若干変な家系でもある。
そんなエリートなお家が俺なんかに声をかけるとか何があったのだろう。
気づかぬ間にリベール家のトレーナーをボコボコにしたとか?
してないんだよなぁ。
短パン小僧はポケモンバトルで腐るほどボコボコにしたことあるけども。
ドナドナされた結果として俺はものっそい豪邸へと辿り着いた。
自慢大好きなおっさんの豪邸より大きい。
もうなんかこれ金持ちって感じの豪邸。
しかし、俺も鍛えられたトレーナーだ。
表情筋のコントロールは初歩オブ初歩。
故に無表情で門を潜って中に入った。
メイドとか執事がいるし何なら中も豪華で胃が痛くて仕方なかった。しかし表情は崩さない。
もしかしたらバトルを挑まれるかもしれないので表情を悟らせる訳にはいかない。
トレーナーの駆け引きは既に始まっている…!
「リョウ様、お待ちしておりました。お嬢様がお待ちです」
執事長と思わしき初老が俺に綺麗な礼をした後に案内してくれた。
案内された一室は応接間というべき一室で、そこに座っていたのが…
「初めまして、リョウさん。私があなたを呼んだ者ですわ。
リリィ・リベール…どう呼ぶかはお任せします。」
立ち上がり、初老の人よりも洗練された礼で俺を迎えた少女。
薄紫の長い髪で青い瞳。
スラッとしたプロポーション。
何だこの美少女は?これが天に愛された少女か。
特性は天の恵み…間違いない。キッスは許さない。
「どうも、リョウです。それで、リリィさんはなんで俺を?」
「そう!その事についてです!まずはこの映像を見て欲しいのです。」
そう言って、デカイ液晶テレビから映像が流す。
その映像が…
俺のポケモンリーグでの戦いだった。
しかも全部のリーグ戦。
これ虐めでしょ、もっぴー知ってるよ。
え、この美少女は俺に羞恥心与えて何がしたいの…?
そこから、俺の心と俺のリーグ戦の対決が始まった。
・
・
・
地獄を見た。
自分が戦うところを延々と見せられる地獄を見た。
ゲッソリしてる本人と違ってこのお嬢様めっちゃ生き生きとしてるの何なん?
これもう虐めでしょ。
そんで極めつけに先生になってくれとか。
羞恥心耐久調整してから謎のメガトンパンチしてくるの謎すぎてナゾのみだからやめて?
「もしリョウさんが受けてくださいますならこの屋敷に滞在していただいて結構ですし道具などの費用も負担いたしますわ。」
「えっ」
めっちゃ好条件。
先生やるだけで費用を肩代わりしてくれるとな。ポケモンの道具や食事も馬鹿にならない。
カビゴンとかの大食いポケモンとかは特に。
幸い、俺の手持ちはあれほど食べるポケモンはいないけど…裏を感じてしまう!
「なんで俺なんですかね?」
「それはもう!私がリョウさんのファンだからですわ!
リーグ戦を勝ち抜いたらこうしようと思ってましたの!」
「思い切り良すぎじゃない?」
俺の意思はどこ?ここ?
しかも俺のファンっていたのか。
…いや、俺の映像ばっかだったしそうなのか。
あ、なるほどな!
この子俺に惚れてるな?(極度の疲労)(あり得ない)(高嶺の花)(ちくわ大明神)
うん、ごめん、無いね。
でも破格の条件だ。
…よし!
「是非、受けさせてください。」
「ほ、本当ですか!?」
「その代わり!」
舞い上がりそうなリリィさんを大きな声で制止させる。
「教えるならしっかりと教えます。」
「ええ、それくらい承知してます。むしろしっかりしてくださらないと困りますわ先生!」
あ、もう先生固定なのね。
いやリリィさん可愛いから許すわ。
ポケモンの知識なぁ…
「えぇっと…まずはどこまで知ってますか?リベール家の御令嬢ですし、そういった教育は受けてますよね?」
「ええ、ある程度の知識はあります。技に関しては問題ありません。…ただ、少し…いえ、かなり疑問がありますの。」
「疑問?」
「はい、先生。これは疑問の一つなんですが…」
「『じゃくてんほけん』は何故弱点技に反応してあそこまで力を引き出しますの?私触ったりしてみましたが何の変哲のない保険証みたいな道具でしたわ。」
頭の中に雷が発生するとはこの事か。
まさかそこに疑問を持ってしまうとは思わなかった。
いや、待って欲しい。
よくよく考えれば俺も分からない。
そもそも、保険ってなんだ。
弱点くらったから保険貰いに行くのか。
保険会社か、保険会社が来てるのか!?
なるほど、リリィさんはかなりの常識を持っていらっしゃる。
「俺もちゃんとした答えがあるわけじゃないんだけど…多分、ポケモンにしか刺激されない何かがあるんじゃないかな。
ポケモンに持たせて、そのタイプの弱点を道具が把握してる、とか…?」
「道具に意思があるってことじゃありません?
とても怖いのですが…?」
くそぅごもっともすぎて何も言えねぇ!
でもこうとしか考えられなかったんだ!
どんなポケモンに持たせても弱点に当たったら攻撃性能が上がるんだぞ!もう道具が認識装置みたいなのあるとしか思えねぇよ!
…いや待て…
「保険会社にあらかじめタイプを申請しておけばいける…?」
「やはり不正では?」
「い、いや公式の道具だから…今度聞いてみよう。」
「ですが先生の言葉もあながち間違いではないかもしれません。
ですので、そこまで真剣にならなくとも…」
「いや、ここは不安だから後で聞いておく。」
「そ、そうですか。」
自分のせいと思って慌てるリリィさん。
可愛い。
しかし、こうして見るとリリィさんって小さいな。
俺が17で178位あるとして、リリィさんは…150代位か?
そう考えているとジト目で俺を見てくるリリィさん。
「今何か失礼なことを考えて?」
「いません。というか、リリィさんっていくつなんですか?」
「私ですか?14ですわ。」
「14か~…」
「ちょうど先生がホウエンで旅をしていた時ですわね。」
「いやそうなんだけど…」
そうなんだけどファンって怖い。
結構細かに知られているんだけど。
え、俺の年齢知られてるの?
リーグ出てるからそりゃ分かるだろうけどよく年齢まで見てんな。
「リリィは旅はしないの?」
「知っておかなければならないことが多くありますわ。
何も知らずに旅をするのと事前に知っておいて旅をするのとでは危険度が違います。」
「仰る通りすぎて過去の俺を殴りたいよ。」
「あ、いえ!先生は問題ありませんわ!」
「君の中の俺ってどうなってんの?やっぱいいわ、言わないで。」
めっちゃ目を輝かせてたから止めといた。
でも、ここまで勉強熱心なのは良いことだ。
旅に出ないのは知識を増やしておくのもだけど家の事情もあるのだろう。
「ですが、先生が来てくださるなら私も旅に出る許可を貰えるかと!」
「え、あの滞在…」
「勿論すぐにとはいきません。許可を頂けるまではこの屋敷に滞在してマンツーマンで教えてくださいまし。」
「あーよかった。」
せっかくの好条件の半分がダストダスに変わるところだった。
うーん、旅かぁ…イッシュリーグも当分先だしな…
携帯というか、スマホを取り出して調べる。
…あった。
でも遠くないか?
「どうかなさいましたか?」
「リリィさん、ガラル地方って知ってる?」
「ええ、勿論。様々な表情を持つ地方、ガラルですわね。
ダイマックスという変わったポケモンバトルのシステムがあるとか…」
盾に剣が差し込まれると例えられる地方、ガラル。
俺がその地方の名前を出した理由は明白だ。
「そのガラル地方でジムチャレンジが行われるんだ。」
「え?で、ですが…ジムチャレンジには確か…」
ジムチャレンジとは、こっち風にいうとジムリーダーを倒してバッジを集めてチャンピオンへの挑戦権を獲得するための競争だ。
けれど、リリィさんが困ったような顔を浮かべるのには理由がある。
参加するにはジムチャレンジ関係者からの推薦状が必要。
けど、心配することはない。
「俺の出身は?」
「ホウエンですわね!」
「すぐ答えてくる君が怖い。
その通り、ホウエン地方だ。それで…ホウエン地方出身のガラルジムリーダーがいるんだよね。」
「…!」
「まだ期間はある。それまで知識だけじゃなくてどう戦うかの戦略も教えたりする。勿論、推薦状だって用意して見せる。どう?」
本音を言うとガラル行きたい。
けど、どうせなら俺が育てたリリィさんが勝ち進む姿を見てみたい。きっと良い経験になる筈だ。
リリィさんはガタリと立ち上がる。
あまりの勢いのよさにビックリした。
「是非!!」
何というか、思い切りが良いな。
御令嬢ってもしかしてリリィさんみたいなのが多いのかな。
やる気があるのは良いことなので何も考えないことにした。
「よし、そうと決まれば今のうちに色々と知っておくぞ!
道具についての理解やポケモンの知識!俺の知ってる範囲でしっかり教えよう!」
「はい!あ、それなら一つ…」
「ん?」
「はい、命の玉という道具についてなのですが…」
ああ、命の玉ね。
体力が削られる代わりに高い威力を出すことが出来るようになる道具だ。
「どうしてあの玉を持つだけで威力が上がって体力が奪われますの?それはゴーストポケモンの呪いではありませんか?」
「…スゥーッ、はい、ちょっと待ってね…」
このお嬢様、知りたがりだなぁ!!
良いんだけど、良いんだけどさぁ!
命の玉の体力が削られる理由!?知らねぇよぉ!
そういう道具だとしか思ってなかったもん!
でも確かに今にして思えば呪いっぽいな!
お嬢様は良い常識をお持ちでいらっしゃる!!
「分かった、教えよう。」
「はい!」
「玉は…威力増幅装置だった…ッ!」
「先生、真面目に教えてくださいませんか?」
「真面目だよ!極めて俺は真面目だよ!むしろ俺が聞きたいくらいだよ!でもありがとう疑問に気づけた!」
「どういたしまして?」
ええい首を傾げるな!
でも、そうとしか言いようがない。
威力を底上げする代わりに体力が削られる。
あれだ、等価交換って奴だ。
命の玉は真理の結果だった…?
「そうか、等価交換だ。」
「つまり、強くなる代わりに体力を奪ってるんですわね。
…やはり呪いの道具ではありませんか?くっつきバリの方がまだ分かりますわよ。」
「…そうだね。」
沈黙が部屋を包んだ。
そして、最終的に俺とリリィさんで出した結論はこうだ。
命の玉は、威力増幅装置という呪いの道具。
そして、俺の中での結論はこうだ。
もしかしたら俺はストレスで禿げるのかもしれない。
このとき俺のパートナーのポケモン達は心配するように俺を見ていたが俺が知るよしもなかった。
これは疑問が尽きないお嬢様とそれを教える先生である俺の話だ。
「先生、どうしてピカチュウが風船と電気玉を同時に持ってますの!?反則ですわ!!協会に通報いたしましょう!」
「待ってそれは違うそれは空を飛ぶイメージをするための風船なのであって道具のふうせんとは違う!!」
…ガラル入国までに俺は生きているのだろうか。
・リョウ
主人公の一人。
ホウエン出身でホウエンリーグ、シンオウリーグに出て惨敗しそこから悔しさをバネにイッシュリーグで本戦を勝ち抜くまでに成長した。が、この作品においてリーグ戦の事は導入程度の内容なのでその内忘れ去られる。
実力者ではあるがポケモン世界特有のこういう効果の道具という考えが浸透している。普通はそうなる。
・リリィ・リベール
もう一人の主人公。
名家であるリベール家の御令嬢でいつか旅することを夢見ていた少女。色々と学んでいるものの気になるものが多すぎるのが悩み。
割と常識的な面もあるがぶっ飛んだ事もする。
ガラル入国に向けて猛特訓という名の『先生、これはどうして?』で先生が逆に死にそう。
割と根性論は好き。
反省はしてない。後悔もしてない。
やりたいからやった。
尚、作者は道具の知識はゲームのみです。実際はこういうのってのがあれば教えてください。
先生の心が砕け散ります。