先生となった俺ことリョウは名家であるリベール家のご令嬢のリリィさんにトレーナーの知識を教えることになった。
なったのだが…
「先生、なぜもくたんを持たせると炎タイプの威力が上がりますの?普通相手に持たせた場合に威力が上がるのでは?」
「先生、フィールド系の道具はなぜ適応したフィールドでないと効果を発揮しないんですか?」
「こだわり系…普通こだわるだけで早さや技の威力が上がるのはおかしくありません?」
いや質問多いわ
気になることはどんどんと質問してくるからその都度俺も考えたり、論文で見た事を話したり、協会に問い合わせてみたりしてるがそれでも多い。
お陰で俺もそこらの論文を読み漁ったりして無駄に知識ついたわ。
しかし、リリィさんのこういった姿勢にもしっかりとした理由がある。
彼女の努力家としての面は確かに厄介ではあるが好感は持てる。
「リリィさんはなんか夢とかあるの?」
「リベール家の者として、より相応しくなり栄光と勝利を捧げるためですわ。」
「はえースッゴい。」
「それに、私は非才ですから。より努力しなくてはなりません。」
非才っていうのはよく分からんけどリリィさんは家の為に必死に知識を身に付けている。
少し疑問を感じると凄いけど…まあ、俺も考えさせられるから為にはなってる…のかな?
為にはなってると思おう。じゃないと禿げる。
ガラルのジムチャレンジまでの知識の叩き込み。
あれから既に三日は経っているがお嬢様の疑問が尽きることはない。尽きて(懇願)
正直な話、リリィさんなら上位者になれると思う。
無論、ポケモンとのコミュニケーションがどうなるかは分からないが彼女ならやれるだろうと俺は信じている。
じゃなきゃこの仕事は放り捨ててる。
「そう言えば、ポケモンは持ってないんですね。」
「…母と父が持たせてくれませんでした。」
「あっ…」
地雷踏んだ。
割と深い地雷踏んだぞ。
この子もしかして闇深系ですか?普段の疑問をビシバシ付き出すのはストレス解消だった…?
そんなことはない。
彼女の学ぶときの姿勢は真剣そのものだ。
そのものな筈だ。そのものであってほしい。
「ごめん、そうとは知らず。」
「いえ、構いません。遅かれ早かれ伝えていたことですわ。
ところで、先生?」
─来た。
この一拍置いて先生と呼ぶ時。
これもまた彼女の質問の瞬間だ。
ふっ、何度もくらえば俺も耐性がつく。
こういうのは慣れだよ、慣れ。
よっしばっちこい!
「ふしぎなアメってありますわよね。」
「ああ、あの舐めさせたら強くなるアメな。」
「何故舐めるだけで全体的に強くなりますの?
それはいけない薬なのでは?そして、そのアメ自体の購入自体が犯罪への一歩なのでは…?」
…いやぁその質問は予想外だわ。
まさか犯罪の可能性を問いてくるとは思わなんだよ。
待ってね、ふしぎなアメねーふしぎなアメ…
ふっ…俺がいつまでも怯む俺と思うなよ!
「ポケモンの成長を促すエネルギーが詰まってるんだそうだ。
けど、俺ら人間が食べると普通におやつを食べてるようなものらしい。」
「成分とかは分かりませんの?何も分からない物を食べさせてポケモンが依存症などにならないか心配ですわ…それに、それだけのエネルギーならコンディションに支障を来す可能性もあるでしょう?」
あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ!!!
成分は分からねぇよ!成分とかは製作会社に聞いてくれよ!
製造元に聞いてくれよ!ミーはトレーナーでそれは本職のじゃん!
研究者に聞いてくれよ!
俺はなんでも知ってる訳じゃないんだよぉ!
メタグロスみたいにスーパーコンピューターの脳みそはしてないのよぉ!!
「俺は……無力だ……」
「そ、そんな!先生が悪いのではありません!些細な事で質問する私が悪いのですわ!」
自覚あったんですねお嬢様。
しかし、その取り組み姿勢を崩す真似はできない!
例え将来俺が禿げるとしても!!
「いや、いいんだ。俺の知識が不足しているのが悪いんだ。」
「いえ、よくよく考えればこれは専門の知識がないと難しい話でしたわ。私の落ち度です。」
「次こそはしっかりと説明して見せるぞ。」
「そうですか…では、まずこれを。」
そう言って取り出してテーブルに置かれたのはディスクだった。
これはわざマシン。
ディスクの中に『ポケモンの技』が入っていて覚えられるポケモンに使うとその技が使えるようになるという優れものだ。
「これがわざマシンですわよね。」
「うん、これは…『10まんボルト』が入ってるんだな。」
何故分かるか?
何故分からないんだい…?
わざマシン24といえば『10まんボルト』だよ…?
「それでですね…どう覚えさせますの?」
…うん?
そんなこと聞いてくるとは珍しい。
そんなの常識だろうにどうしたんだろう。
─しかしこの時の俺は失念していた。リリィさんが俺達トレーナーのかつて持っていたが捨て去った常識を持っていることを。
「そりゃもちろん、3、2、1…ポカンだよ?」
「いえ、ですから。そのポカンまでのやり方を知りたいんですわ。
まさか額に当てたら覚えるわけではないでしょう?専用の機械とか、そういったものを使うのですよね。是非それを見せてほしいのですが…」
「……」
なるほどな。
馬鹿なのは俺だったって訳だな。
ふぅー…そういやそうだ。
なんで覚えるんだ、これで…?
今更ながら3、2、1…ポカンってなんだ。ポカンってなんだよ額ぶっ叩いてんの?
そりゃ技忘れるわ。
いや違う、そうではない。
専用の機械だと!?
「見たこと、ないですねぇ…」
「えっ…つまり、本当に額に?」
「少なくとも、俺の時はそうだったな。」
「ポケモンは…読み取り機械でしたの…?」
「待て待て待て、何か仕組みがあるのかもしれない!協会に連絡してみよう!」
そう言って俺はスマホを操作してポケモン協会に連絡を入れる。
すぐに繋がった。
『はい、ポケモン協会ですが。』
「リョウといいます。わざマシンで技を覚えさせるとき、どうしてますか?」
『3、2、1…ポカンですね。』
「読み取り機械は?」
『?…申し訳ありません、そのようなものは…』
「あ、はい。ありがとうございました。」
通話を切って、天を仰ぐ。
俺は知ってはいけない闇に触れているという漠然とした何かを感じ取っていた。
これを伝えればこのお嬢様はどうするんだ…俺は伝えていいのか…?
見ろ、隣のお嬢様の期待と不安の入り交じった眼差しを。
俺は仕組みなんてない、ポカンだ!って言ったらどうなる!?
『先生もおかしな方でしたのね…』
失望の眼差し…ッ!!
俺のメンタルが耐えきれなくなる!
くそ、どうすればいいんだ!
「あ、先生。」
「あぁ……どうした…?」
「どうやら、わざマシンには特殊な波長のような物があってそれで覚えられるらしいです。」
「…え、それどこにあった?」
「ポケモン協会の公式HPですわ。」
あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ!!!
ごめんなさいポケモン協会!
疑問にもったリリィさんじゃなく、俺がおかしかったんだ!
胃が軋む…!だがこれは俺の失態…甘んじて受け入れよう。
俺は、無力だ…!
けど、これで反省したぞ。
次からは公式HPもチェックだ。
「そうだ、話題を変えるけど、リリィさんは最初のポケモンはどうしたい?」
「どうしたい、とは?」
「俺がリリィさんに似合うポケモンを選ぶか、ガラルで捕まえるか。」
「…先生が選んでくれますの?」
「お、おう。」
なんだその見上げるような視線は可愛いだろやめろ。
色々とピックアップしてあるとか言えないだろ!
いや、別にいいんだけどさ!
…まあそれはそれとしてリリィさんには可愛さというより凛々しさが似合うと思うんだ。
在り方を貫いてるし、俺としてはそれが魅力だとも思う。
なんでそれに合ったポケモンにしようと思うが…
「なら、お願いしてもいいでしょうか?」
「ああ、任せてくれ。」
「先生が私のためにくださるポケモン…うん、楽しみですわ。」
「期待が重いッ」
待ってくれ、そこまで期待されると俺は応えられるか分からない。
そもそも今考えてるポケモンでも問題ないか分からないってのに!
くそぅ…
だがこれもガラル入国ひいてはリリィさんの成長のため!
俺はやるぞ、やってやる…やってやるぞ!
俺の行動範囲は広いんだ…武者修行の為にリーグ戦を捨ててまで俺はあの地方で特訓してきた…故に!俺が選ぶポケモンは最良に違いない!そう思わないと押し潰されそうだから心だけでも保とうと思う。
「ところで先生。」
…おう、どうしたんだお嬢様。
俺のやる気アップをぶち壊すような出だしはやめてくれ。
「なんだい。」
「いえ…今更ながらなので申し上げにくいのですが…」
「言ってくれ!もうなんでも良いから疑問をぶつけてくれ!じゃないと俺の存在理由が無くなるッ!!」
「え、ええ分かりましたわ。」
勢いに引いてるのか少し苦笑いされた、泣きそう。
「わざマシンは全てに技の内容が入っている訳ですよね?」
「まあ、そうなるね。」
「どうやって技をすぐ使えるようになるほどの情報を入れてるんですか?」
「専門家が大勢で研究してデータ化してるんじゃない?ポケモンの力も借りてさ。」
「なるほど…ありがとうございますわ。」
やったぞ、今回は普通に乗りきれたぞ!
いやぁ、わざマシンの知識も抑えとかないとな。
多分次はひでんマシンだな!
ポケモン見繕いはする、知識補充もする。
両方やらなくっちゃあならないところが先生の辛いところだな。
何、気にすることはない。川´_ゝ`)
俺はやれる、そう、あの時の地獄の特訓に比べればな…!
「そういえばずっと気になってましたの。」
「お、なんだいなんだい?」
「先生はなぜ私にご自身のポケモンを見せてくださらないの?
「あ、そういえばそうだった。」
俺のポケモン、見せてあげないとな。
どいつにすべきか…ああ、ここはイッシュリーグで大健闘したアイツにしよう!
モンスターボールを取り出して、スイッチを押す。
その後俺は出てくるように指示をする。
「出てきてくれ、リッター。」
モンスターボールから光が溢れる。
光はだんだんポケモンの姿を形取り…
そこには盾を装着した剣のポケモンがいた。
一つ目で俺とリリィさんを確認すると礼儀正しく礼をした。
対するリリィさんはとても興奮した様子だった。
「ギルガルド!カロス地方のポケモンですわね!?
覚えています、あのイッシュリーグの時の奮戦…凄まじかったですわ!チャンピオン、アデクさんのポケモンを2体も撃破したあの大進撃!私観客席で感動いたしましたもの!!」
『──』
リッターや…その哀れむ目をやめてくれ。
まさかここまで喜ばれるとは思ってなかったんだよ。
リッターはカロス地方で武者修行をしていた時に捕まえたポケモンだ。ヒトツキの頃から育てていたから信頼関係は固い…と思いたい。
冷静な性格のこいつは俺のバトルスタイルと合ってるから本当にお世話になってる。
すると、他のモンスターボールも主張を始める。
待て待て、お前らも信頼してるから!
リッターはリリィさんの相手を一通りやるとそのまま俺の傍へと戻ってきた。
お前、疲れないの?
鋼タイプだから疲れないの?
なら俺も鋼タイプにしてくれよ。こちとらタイプヒューマンだよ。
『──?』
くそうこやつめ動じておらんわ。
「とても貴重な経験をしましたわ。カロス地方…いずれ行ってみたいですわね!」
「まずはガラルだけどね。でも、俺も楽しみだな。
ガラル地方は色々な地方のポケモンがいるらしいからね。」
「そうなんですの?」
「環境が一致してるのかも。天候が変わりやすいのもあって珍しいポケモンからよく見かけるポケモンまで幅広いんだとか。」
「なるほど…」
にしても、ガラル地方ねぇ。
ローズさんって人が盛り上げまくって今のガラルがあるらしいけど、この人絶対怖い人でしょ。
リョウ詳しいよ、そういう偉い人は裏の顔がある。
イッシュもそんなんだからな!
…カロスとかもそうだったなぁそういえば。
あれなの?地方一つに何か悪さする一大組織ってあるの?
しかも伝説のポケモン利用したとか聞いたしさ。
「そういえば、先生!」
「はいなんでっしゃろ。」
「先生に選んで貰うと決めたはいいのですがタイプは決めてますの?」
「何か希望ある?」
「はい!フェアリータイプが気になっております。」
フェアリータイプか。
最近発見されたタイプで、今までのポケモンの中でそのタイプを有するポケモンも多く発見された。
プリンとかもフェアリータイプが追加されてノーマル・フェアリーの複合だったか?
まあ、そんなこんなで色々と研究されてるタイプの一つだ。
「分かった。」
「ありがとうございます、先生!」
こう笑顔で言われると嬉しいよね。
美少女なら尚更嬉しい。
心がピョンピョンするじゃ~^^
凛々しいフェアリー…うん、もうなんか分かったわ。
任せろ!
「じゃあ三日くらい空けます…」
「先生、私を連れてはくれないんですか!?」
「ポケモンを連れてない一般人だぞ!?しかもお嬢様だぞ!?勘弁して!」
「では待ってる間に何をしろと言うんです!?」
「ええい課題用意してやらぁ!」
「流石は先生ですわ。」
憧れを捨ててくれねぇかなホント。
頼むから俺が悪かったからぁ…この人相手に課題なんて出したら戻ってきた時にどんな質問が書かれまくってるか分からないじゃん何やってんの俺。
馬鹿じゃねぇの俺。
『──…』
だからその哀れむ視線をやめろぉ!!
こうして、リョウ先生のリリィお嬢様へ献上するポケモン探しが始ま…りません、次の話でさっさと帰ってきてもらう!
・リッター(ギルガルド)
カロス地方でリョウに捕獲されたヒトツキから進化したポケモン。
冷静な性格(尚、この世界で性格での能力補正はない。)
リョウをトレーナーとして認めており、指示には全て従う。
今回の件では「主が面倒を見てるし、粗相の無いようにしよう。…それはそうと面倒背負いましたね?」とリョウに哀れみの視線を送っている。
ねね、君才能あるね!王にならない?(図鑑説明から)