本当は彼女が最後のメンバーの予定だったのですが、自分の頭にふと降りてきたアイデアだけは否定したくないので、次に登場するメンバーこそが正真正銘、最後のメンバーにしようと思います。
もしかしたら、最後の方に登場するかも?
入部テストの為のレースは何事も無く終了し、参加したウマ娘達はレースの疲れを少しでも癒す為に、各々で休憩を取っていた。
「お疲れさ~ん! よく頑張ったな、お前達! ほれ、まずはこのスポドリで水分補給でもしとけ! 一本100円だ! 凄く良心的な値段だろ?」
こんな時もちゃっかりと金儲けだけは忘れないゴルシ。
彼女のような性格の子こそが、意外な所で凄い働きをするのかもしれない。
「ゴルシさん……」
「んお? どうしたユニコーン? お前も飲むか? ほれ」
「いや、僕は別にいいですよ。走ったわけじゃないし。それよりも、お聞きしたい事があって」
「なんだ?」
徐に顔を近づけてからヒソヒソ声で話すユニコーン。
傍から見たらかなり怪しい。
「その売ってるスポドリ……大きな量販店とかに一個30円とかで売られてる超格安のヤツですよね? 段ボールとかに入った状態で陳列されてる……」
「ユニコーン」
「はい?」
珍しくゴルシが真剣な顔でユニコーンの方を掴む。
何事かと思ってキョトンとしていると、やっぱりな言葉が飛び出した。
「バレなきゃ…問題無いんだよ」
「ゴルシさんっ!?」
「結果としては一個につき70円の儲けだが、そこはアレだ。塵も積もれば何とやらってな」
「この人はもう……」
分かってはいたが、何を言っても無意味だった。
というか、それ以前に会話が成立しない。
チームスピカのメンバーを本気で尊敬したユニコーンであった。
「気にすんなって。これもまた立派な戦術だよ。ほれ、其処のお前も飲んどけ! ユニコーンの奴が奢ってくれるってよ!」
「そんな事、一言も言った記憶ないんですけどッ!?」
勝手に奢った事にされてツッコまざるを得ない状況になる。
そんなゴルシがスポドリを手渡したのは、先のレースで見事な活躍したパーンサロイドだった。
「あ…ども。ありがとうございます」
「にしても、お前凄かったよな~! なんだアレ?」
「あはは……ゴールドシップさんにそう言われると照れますね……」
「おふ……珍しく初心な反応……」
純粋な返事をされて別の意味で気圧されたゴルシ。
だが、それも今だけの話。
どうせいづれは、皆揃ってゴルシに影響されてしまう運命なのだ。
「お疲れ様。ゴルシさんじゃないけど、ボクから見ても本当に凄かったと思うよ」
「ど…どうもです。けど、皆さんに比べれば、まだまだですよ」
一流のレーサーである彼女は分かっていた。
今の自分はあくまで『プロの真似事をしているだけの素人』でしかないと。
どれだけ別の競技で素晴らしい成績を残していても、この場での自分は初心者なのだと。
「パーンさん! お見事でした!! 流石は私が見込んだだけはありますね!」
「バクシンオーさん…恐縮です。というか、私っていつ見込まれたんですか?」
「昨日、一緒の部屋になった瞬間からです!」
「ワオ…めっちゃ初耳」
会話の展開の早さも見事にバクシンしている。
せめて、その辺りは普通でいてほしかった。
「え? パーンサロイドさんって、サクラバクシンオーさんと同室なんですか?」
「そうですけど……」
これまた癖の強い子と一緒になったもんだ。
同年代のウマ娘として、ユニコーンは慈しみに満ちた眼で彼女の肩に手を置いた。
「何か困った事や悩みがあれば、いつでも相談に乗るからね」
「は…はぁ…ありがとうございます」
せめて彼女だけは『バクシン!』が口癖になったり、会話が成立しないようなウマ娘になって欲しくないと願わずにはいられなかった。
「お~い! パーン!」
「テストとはいえ、入って来て早々に一着を取るだなんて思わなかったよ。やるじゃん!」
「ターボさん…テイオーさん……」
昨日、一緒に校舎を見て回った皆に褒められる。
これまでにも、ゴーカートのレースでいい走りをした時などは良く父親に褒められてはいたが、それとはまた別の意味で嬉しくなった。
「ははは…なんか、さっきから褒められてばかりで照れちゃいますね…」
気恥ずかしそうにしながらタオルで顔を拭いて汗を拭うフリをして、実際には照れ隠しで顔を隠しているだけだった。
「皆、休憩している所すまないが、こっちに注目してくれないだろうか?」
テスト前と同様にスマホを手にしたフウウンサイキがパンパンと手を叩いて全員の視線を自分の方へを向けさせる。
「これから、うちのトレーナーから合否の発表がある。聞いてくれ」
そう言われて全員が思わず立ち上がろうとするが、それを傍にいたアウセンザイターとパスチャーキングが静止させた。
「いや、無理に立ち上がらなくてもいいぞ」
「Exactly! 楽なPostureで聞いていてくだサーイ!」
二人にそう言われては、彼女達もそれに大人しく従うしかない。
皆は大人しく再び座った。
「おぉ~…あいつ等がちゃんと言う事を聞いてやがる……」
「フウウンサイキもそうだけど、あの二人も独特のカリスマ性があるものね」
「僕も見習いたいですよ……」
沖野と東条が素直に感心する中、南坂だけは肩を落としてトホホな涙を浮かべる。
いつもカノープスのメンバーに振り回されている彼からすると、カリスマなんて喉から手が出るほど欲しいものなのだろう。
「準備出来ました。いつでもどうぞ」
『ありがとう』
またもやスピーカーにして、受話器越しにいらない咳払いが聞こえた。
『え~…まずは皆、テストお疲れ様。皆、見事な走りだったと言わせて貰うよ』
最初は予想出来ていた定型文。重要なのはここから。
『正直に話すと、最初は僕も一体誰を合格させようか決めかねていたんだ。昔から優柔不断な性格でね。一度でも迷うと中々に決められないんだよ。けれど、君達が実際に走っている姿をこの目で見た瞬間、自然と僕の中で答えは決まっていた』
ここで一気にテスト受講者たちがざわめきだす。
どう考えても、次に合格者発表があるからだ。
『変に勿体ぶっても皆も嫌だろうし、ここで発表してしまおう。それでは、今回の入部テストの合格者は……』
ごくり。
場は一気に静まり返り、木々のざわめきや唾を飲む音しか聞こえない。
あのゴルシでさえ、非常に珍しく空気を読んで黙っている。
天変地異の前触れかもしれない。
『……受験番号24番パーンサロイドさん。君だ』
「…………ふぇ?」
一瞬、本当に時が止まった。
どこかに100年ぶりに蘇った吸血鬼か、ヒトデが大好きな海洋学者でもいるのかもしれない。
「わ…私……?」
『そう、君だ。おめでとう』
全員が一斉に彼女に注目する。
当の本人はというと、まだ現実味が無いのか、口から飲みかけのスポドリを派手に零していた。
『まずは理由を言わないとね…って、聞いてる?』
「だ~……」
「ちょ…パーンさんっ!?」
「完全に意識が異次元を漂ってるよ……」
「ほ~れ、しっかりしろ!」
「あべしっ!?」
生半可な事では意識を取り戻せないと判断したのか、ここで伝家の宝刀『ゴルシキック』が炸裂。
軽く飛ばされたが、そこはゴーカートで鍛えた体。
普通に起き上って頭を振った。
「あれ…? 私…何してたんだっけ?」
「だ…大丈夫なのっ!?」
「心配はいらねーだろ。今のは本来の威力の10%ぐらいでやったからな」
「あれで10%なら、100%はどんな威力なんだろ……」
それを味わえるのは、彼女を勝たせたトレーナーだけだろう。
是非とも頑張ってほしい。
『えっと…合格の理由を言ってもいいかな?』
「どうぞ」
『うぉっほん! 最初にも言ったけど、今回のテストでは最終的な着順で合否は決めていない。確かに彼女は見事に一着でゴールはしたけど、それだけでは決定的な理由にはなり得ない』
「それじゃあ、なんで……?」
『心から楽しんでいたからさ』
「楽しんでいた…?」
参加者のウマ娘の呟きに寺田は真摯に答える。
それが、彼女達を不合格にした自分の責任だと考えているから。
『恐らくではあるけど、皆は心のどこかで気負っていたんじゃないかな? 合格したい。一番になりたいって』
「それは当然です」
『だろうね。それは何も悪い事じゃないし、自分自身を奮い立たせるには十分すぎる理由になる。だがしかし、気負い過ぎは良くない。それでは、君達の良い所も悪い所も正しく理解出来ない。けれど、彼女は違った』
少しだけ間を空けてから、再び話し始める。
『どこまでも、パーンサロイドさんはレース自体を楽しんでいた。無邪気に、純粋に。仮に一着じゃなくても、不合格になっても、君は後悔しなかったんじゃないのかな?』
「ですね~。そりゃ、人並みに『悔しい~』とかは思うかもだけど、そこまで深刻には考えないんじゃないかな? 多分、数秒後には反省や後悔よりも『今日のレースは凄かったな~』的な考えに変わると思いますよ?」
レースを…テストを楽しむ。
そんな発想なんて彼女達には微塵も無かった。
『今回テストを受けた君達は知らないかもしれないが、実は前にあった一回目の入部テストの合格者は、君達もよく知っているユニコーンドリルだったんだ』
「「「「えぇっ!?」」」」」
『その合格理由も、彼女と全く同じだった。勝ち負け以上に大切な事を最初から知っていた。だからこそ、ユニコーンドリルは現在、華々しい成績を残しているんだ』
「いや…なんでそこで急に僕の話になるんですかね……」
呆れつつも顔を真っ赤にして照れまくるユニコーン。
彼女からしたら、完全なとばっちりである。
『これで納得するかどうかは君達の自由だ。納得できなかったのなら、またいつか開催するであろう入部テストに参加してくれればいい。僕はいつでも歓迎するよ』
誰も何も言わない。というか、しれっと大きな発言がされたことに全員がポカーンとなっていた。
「「「「「またするんですかっ!?」」」」」
『え? そりゃするよ? その方が面白そうだし』
チャンスはまだ完全に潰えたわけではなかった。
それを聞かされて、不合格を言い渡されたウマ娘達の目に活気が戻り始める。
『とはいえ、それだけじゃなんだか申し訳ないから……』
「なんだか嫌な予感がするのだが……」
フウウンサイキの予感は見事に的中する事になる。
『これより、全参加者たちの諸君に体験入部をして貰おうと思う!』
「そ…それって……」
「もしかして……」
『今日だけではあるが、君達が憧れているウマ娘達から指導を受けていくといい! これが私から君達に与える参加賞だ!』
「「やっぱりっ!?」」
「ワ~オ!」
「たいけんにゅーぶ?」
「フッ…やるな。見事なアフターケアだ」
フウウンサイキとユニコーンは案の定と言った感じで驚き、パスチャーは別の意味で驚き、ウララは全く意味を理解していない。
そして、アウセンザイターは普通に感心していた。
「あはは……なんつーか…寺田さんらしいよ…」
「体験入部…その手があったわね」
「この大らかさは本当に見習いたいですね。って、なんかごく自然にうちのターボさんが参加しようとしてるっ!?」
こうして、チームSRWの第二回入部テストは賑やかな形で終わりを迎えたのであった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
一方、その頃。
トレセン学園の門の前で、一人のウマ娘が懐かしむように校舎を見上げていた。
どこかで見たような光景だが、気にしてはいけない。
「ヘヘ……ここに戻ってくるのも久し振りだな。娑婆の空気は美味いぜ……」
金色の長い髪を持つウマ娘で、髪にはドクロの髪飾りを付けている。
目つきは悪く、何かを企んでいるような怪しい笑み。
初対面で彼女を見れば、誰もが『不良』という二文字が頭をよぎるだろう。
「ウチの連中も元気にやってるかな…。少なくとも、フウウンサイキの野郎やアウセンザイターの姉御は元気だろ。あの二人が風邪をひくとか想像も出来ねぇしな。というか……」
門の前には彼女一人。他には本当に誰もいない。
虚しく風が吹き、目の前を空き缶が転がっていった。
「なんで人っ子一人いねぇンだよっ!? 別に出迎えをしろとまでは言わねぇけどよ、それでもこれはおかしくねぇかッ!?」
御尤も。
その理由を知っている人物が、校舎の中からやって来た。
「あ…ダブルアールさん。おかえりなさい。ご実家から戻ってこられたんですね? ご用事はもう終わったんですか?」
「うっす! たづなさん! チームSRW所属『ダブルアール』、只今戻ってきました! 家の用事ならばっちし終わらせてきたッス!」
ダブルアールと呼ばれたウマ娘は、言葉遣いとは裏腹に丁寧なお辞儀をしてみせた。
不良のように見えても、礼儀はちゃんとしているようだ。
「それは良かったです。まずはゆっくりと休んでください。チームの皆さんへの挨拶は後日でもいいと思いますし」
「お言葉に甘えたいところなんスけど…一つだけいいッスか?」
「なんでしょうか?」
「どうして、こんなにも人通りが少ないんスか? 今日って別に休校日とかじゃないッスよね?」
「多分それは、チームSRWの入部テストを見に行ってるからだと思いますよ?」
「入部テストだぁっ!?」
自分も同じチームなのに、全く何も聞かされていない。
あまりのショックに、思わずたたらを踏んだ。
「…たづなさん。それってどこでやってるんスかね?」
「いつもの練習場でやってると思いますよ? 寺田さんがそこに行くのを見ましたし」
「あざーっす! そうと決まれば……全力ダッシュだ!! いくぜ!!」
そう叫ぶと、ダブルアールは自慢の足を使って練習場へと向かって走っていった。
後にはたづなだけがポツンと残された。
「時間的に、もうテストは終わってるって思うけど……大丈夫かしら?」
そーゆーことは、もっと早く言って欲しい。
そんな訳で、最後の新キャラは『マジンカイザーSKL』から『SKL-RR』こと『ダブルアール』になりました。
全く前知識が無いので一から調べましたよ~。
どうやら、SKL-RRって最終回にしか登場してないっぽいですね。
ある意味、パスチャーキングと共通点があります。
公式でもちゃんとした呼び方が決まっていないようなので、色々と考えて一番語呂が良いと思った『ダブルアール』という名前にしました。
彼女がどんな適性を持ち、どんなキャラなのかはこれから明らかにしていきます。
もう既に、私の中じゃ彼女のキャラ像は出来上がっているので、後はそれを形にしていくだけです。