ダブルアールとスズカの因縁浅からぬ仲を知ってしまったスペは、一体どんな行動に出るのか?
ダブルアールがトレセン学園に戻って来てから数日。
スペは、彼女とスズカの事が気になって授業やトレーニングに集中出来ない日々が続いていた。
「はぁ~…」
今日も今日とて、授業中にボーっとしていて先生に怒られたばかり。
肩を落としながらトボトボと廊下を一人で歩いていた。
「ダブルアールさん…そんなにも凄いウマ娘なのかな……」
スズカを負かし、錚々たるメンバーである『三冠五人衆』にも匹敵すると言われている程の実力者。
一体どんな走りをするのか、どんな人物なのか、気になって仕方がない。
「本当は本人に直接聞けばいいんだろうけど……」
彼女の出す雰囲気に加え、その見た目の強面な感じとが相まって、中々に話しかけずらい。
コミュ力が比較的高い方のスペであっても、自分から不良っぽい相手に話しかけるほどの度胸は無い。
「誰かダブルアールさんの事を知ってないかな……」
なんて事をぼやいていたら、スペの目の前を制服姿のダブルアールが横切って行った。
態度も見た目も不良のような空気を出している彼女であったが、ちゃんと制服は着こなしていた。
「~♪」
なにやら鼻歌を歌いながら、上機嫌な様子で廊下の向こうへと消えていくダブルアール。
そこでスペは咄嗟にある事を思い付いた。
(あの人の後を付けていけば、何か分かるかもしれない!)
どうして、そんな結論になる?
ここにマックイーン辺りがいてくれれば、いいブレーキ役になってくれたのだろうが、生憎と彼女は今、テイオーと一緒にトレーニングルームにて運動をしている最中だ。
「そうと決まれば! そこのお二人、手伝ってください!!」
「「えぇっ!?」」
本当に…本当に偶然にもそこにいたナイスネイチャとマチカネタンホイザの肩を掴み、二人を引きずりながらダブルアールの後ろに着いていくことに。
こうして、哀れな犠牲者である二人の放課後は犠牲になったのだ。
「「勝手に犠牲にするな!!」」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
まず、ダブルアールがやって来たのは、校舎裏にある花壇。
いつもならば、生徒会副会長のエアグルーヴや、草花が大好きなニシノフラワーなどがいて花の世話をしている場所だ。
勿論、今日も二人は仲良さげに花の世話をしている。
だがしかし、そこにダブルアールという存在が加わることは違和感しかなかった。
「よぉ! 久し振りだなフラワー! エアグルーヴはこの前会ったよな」
「ダブルアールさん! お久し振りです!」
「偶には生徒会室にも顔を出したらどうだ? 会長やブライアンも会いたがっていたぞ」
「気が向いたら行かせて貰うさ」
怖がられるかと思いきや、まさかの歓迎ムード。
これには流石のスペもビックリ。
「っていうか…なんで私達も一緒に隠れないといけない訳?」
「しかも、サングラス&マスク装備で……」
「何事も、まずは形から入るのが私ですから!」
完全に不審者全開である。
彼女達がトレセン学園の生徒でなければ、即座に通報されているレベルだ。
「見てください! このお花、少し前に咲いたんですよ!」
「おぉ~! やったじゃねぇか! きっと、今までずっとフラワーが心を込めて世話してくれた事に、コイツなりの全力で応えてくれたんだろうぜ!」
「はい!」
フラワーの頭を撫でながら、花が咲いたことを一緒に喜んでいる。
傍から見ていると、完全に仲睦まじい姉妹のようだ。
「雨の日や風の日も頑張っていたからな」
「生徒会の皆さんや、他のチームの子達も手伝ってくれたお蔭です!」
そう言われて、ふと思い出す。
確かに、前に台風が接近してきた時に生徒会のメンバーや色んなチームの皆と一緒に花壇の花を守る為に頑張った事がある。
あの時の花が咲き誇っているのか。
「うっし! そんじゃ、オレ様も少し手伝っていくとするかな!」
「また、ここも賑やかになるな」
肩をグルグルと回した後に、スコップを使って器用に土を解していく。
粗暴な口調からは想像も出来ない程に、優しく丁寧な手付きだった。
「ダブルアール先輩って、あのギャップに萌えちゃう後輩の子達が続出すちゃうんだよね~…」
「うんうん。一昔前の不良漫画とかに登場しそうな感じ出してるもんね。それがリアルにいちゃうんだから、そりゃ大抵の子はKOされちゃうでしょ」
意外過ぎる一面を知ってしまったスペ。
これだけでも、これから彼女を見る目が一気に変わってしまう。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
花壇を後にしたダブルアールは、次に職員室へと入っていった。
本当なら中まで着いていきたいが、流石に職員室の中は抵抗があったので、廊下の物陰にて彼女が出てくるのを大人しく待つ事に。
「先輩の事だから、先生に怒られて…的な事は無いと思うけど」
「そうだよね。じゃあ、なんで職員室に呼ばれたんだろ…」
(怒られてる事…無いんだ…)
スペの中のダブルアールは、特に理由も無く授業をサボって屋上で寝てそうなイメージがあった。
「あ、出てきた」
両手でドアを開いてから、中に向かって頭を下げながら挨拶をしていた。
「失礼しましたー」
腰を曲げる角度も申し分ない。
礼儀としては完璧だった。
(何か細い紙みたいのを持ってるけど……)
(あれって、まさか……)
(タンホイザさん、何か分かったんですか?)
(先輩が持ってるのって、多分あれだよ。私達もよく貰ってる定期テストの合計点数が書かれてる……)
((あぁ~!))
そう言われてみると、確かに自分達もこれまでに何度もアレを手にしたことがある。
だがしかし、ここでまた別の疑問が生まれてきた。
(けど、なんでそんな物を先輩が?)
(ほら。先輩って長い間家の事情で休学してたじゃん。そのせいで受けられなかったテストをやって、その結果が出たんじゃないのかな?)
(成る程~)
それならば納得だ。
同時にスペは気になってしまった。
ダブルアールはどれぐらい頭がいいのかを。
(後を追いましょう!)
(うん! なんか楽しくなってきたかも…)
(まだやるんだ……)
段々とスペに感化されつつあるタンホイザに呆れつつも、一緒に着いていく律儀なネイチャであった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
職員室を出てから、ダブルアールは適当に校舎内をぶらつく。
キョロキョロと辺りを見渡している所を見ると、誰かを探しているようだ。
「お?」
探し人を見つけたのか、小走りでその人物の方に向かっていく。
勿論、スペ達三人もその後を付ける。
「探したぜ~! エアシャカール!」
「うげ…お前かよ…ダブルアール…」
彼女が探していたのは、ある意味で同類とも言えなくはないウマ娘のエアシャカール。
二人が並ぶと、統一感的な意味で絵になる。
「ほら、オレって休学してたからテスト受けられなかっただろ? それを昨日受けたんだけどよ、その結果がもう出たんだよ!」
「ふ~ん……で?」
「合計点数で勝負しようぜ! お前は何点だったッ!?」
「なんでだよ…ったく……」
ウザそうにはしているが、拒絶する気配はない。
シャカールは知っているからだ。こんな時の彼女には何を言って無駄だと。
「えっと…確か、五教科合計で487点…だったと思う」
「よし! オレの勝ちだ!!」
「はぁっ!? テメェは何点なんだよッ!?」
「見て驚け! 五教科合計で491点だ!!」
「んなっ…!」
僅か4点差とはいえ、負けは負け。
堂々と胸を張って点数の書かれた紙を見せつけて、シャカールの身体をプルプルと震わせていた。
(よ…よんひゃくきゅうじゅういってんっ!?)
(あれ? スペちゃん知らなかったっけ? ダブルアール先輩って物凄く頭いいんだよ?)
(前に全国模試を受けた事があったらしくて、その時は全国3位だったらしいよ?)
(ぜんこくさんいっ!?)
(因みに、その時の全国一位はアウセンザイター先輩で、第二位はシンボリルドルフ先輩だったりするんだよね)
(あわわわわわわわ……)
これまた想像もしていなかったことに空いた口が塞がらない。
まさか、あの二人と比肩する程の頭脳の持ち主だったとは。
全国模試なんて、スペからしたら受ける事すらも烏滸がましいと思っている。
それと、負けはしたが十分すぎるほどに優秀なエアシャカールの方にも注目してあげてほしい。
「ちゃんと、休んでる間も勉強は欠かしてねぇンだよ!」
「ちくしょ…! 次こそは絶対に勝つ!!」
「お~お。いつでも掛かってこいや。なんなら、勉強でも教えてやろうか? 同じ部屋のよしみでよ」
「余計なお世話だ!!」
ここでまた新たな情報判明。
あの二人はルームメイトだった。
これに関してはネイチャとタンホイザも知らなかったようで、目を丸くして驚いていた。
(あの二人…同室だったんだ……)
(めっちゃ絵になる。というか、簡単に想像できる)
部屋中が荒々しくなっているイメージを抱く三人だったが、実際には彼女達の部屋はこまめに掃除をしているので非常に綺麗で、二人揃ってちゃんと整理整頓もしているので、部屋が散らかっているなんて事態には今までに一度もなっていない。
勿論、外では口喧嘩をしてはいるが、部屋の中では割と仲が良かったりする。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
更衣室にてジャージに着替えたダブルアールが次に足を運んだのは、今まさにテイオーやマックイーンが使っているトレーニングルームだった。
流石に着替えを覗くような真似はしなかったが、とある不可抗力にて彼女のお尻付近に可愛らしいクマさんがいたのは内緒。
彼女が来た以上、追跡しているスペ達もこっそりと侵入したのだが、ここにいたのは彼女達だけではなかった。
「よぉ! お前ら、やってっか!?」
「「ダブルアール先輩ッ!?」」
「ダダダ…ダブルアールさんッ!?」
二人に混じって、パーンサロイドも一緒にエアロバイクを使っていた。
矢張り、同年代という事もあってか馴染みやすいようだ。
「お? 早速、こいつらと仲良くなってんのか? 感心感心」
「そ…そんな…まだそこまで仲良くだなんて……」
照れくさそうにしているパーンサロイドを横目に、軽く準備運動をしながらダブルアールはベンチプレスのある場所へと行ってから寝転び、しっかりとシャフトを握りしめる。
「ちょ…先輩ッ!?」
「ちゃんと調整をしなくてもいいんですのッ!? それ、80キロはありますわよッ!?」
「ンな事ぐらい見ればわかるッつーの。だから、ここにしたんじゃねぇか。んじゃ……いくぜ!!」
バーベルをフックからゆっくりと外していき、肘を伸ばしたまま肩の真上まで上げる。
そこから静かに胸付近ギリギリまでシャフトを降ろしていき、再び肩の真上まで戻す。
「ふぅ~…」
大きく息を吐いてから、早過ぎず遅すぎずのペースを守って何度も何度もそれを繰り返していく。
80キロという重さを軽々と持ち上げているという、半ば現実離れをした光景に、テイオーやマックイーン、パーンサロイドを初めとするトレーニングルームにいるウマ娘たち全員が動きを止めて注目していた。
無論、それには全く別の目的でここまで来たスペ達も含まれている。
(うっわ……すっご…!)
(そういや、前に噂で聞いたことがあるんだけど……)
(なんですか?)
(ダブルアール先輩って…腹筋がバッキバキに割れてるらしいって……)
部屋全体が完全に静まり返っているのに気が付いたダブルアールは、動きを止めてから起き上がる。
「ん? なんで、お前ら揃ってこっち見てんだ?」
「あ…いや……凄いな~って…思って…」
「見事としか言いようがありませんわね……」
「ですね……言葉が見つかりません…」
「なんだそりゃ」
呆れながら周りを見て、それから汗を掻いて暑くなったのか、徐にジャージを脱ぎ始める。
その時、スペ達は見てしまった。
下に着ているタンクトップが捲り上がり、ダブルアールのお腹が丸見えになっている光景を。
(わ…割れてる……)
(割れてるね……)
(腹筋が割れてるウマ娘なんて…始めて見た…)
腹筋だけじゃない。その腕もまたがっしりとした筋肉が付いていて、見た目だけでも非常に強そうだった。
同じウマ娘とは思えない程に、筋肉質な体をしていた。
だが、彼女達はまだ知らない。
フウウンサイキも同じように腹筋が割れていて、全身に渡ってダブルアールに負けないぐらいに筋肉が付いている事を。
ジャージを脱いだことで、そのスタイルがハッキリと分かるようになって初めて気が付く。
ダブルアールのスタイルが、学内でも一二を争うレベルになっているダイワスカーレットに負けない次元にいる事実に。
(……デカいね)
(大きいね……)
(凄く…大きいです……)
自分達のと比べ、再び彼女のを見て、落ち込む。
ネイチャに限って言えば、そこまで卑下する程でもないとは思うのだが。
まだまだ、彼女達の追跡は終わらない。
【パーンサロイドのヒミツ】
実は、考古学検定の準一級なるものを持っていて、日本の歴史に関してだけ言えば、其処ら辺の教師よりも遥かに詳しい。