更に言えば、前回の主役であるフウウンサイキも出てくる予定です。
そして、それに付随して今回はどのウマ娘が登場するのでしょうか?
トレセン学園にある食堂の片隅に何故か設置してあるビリヤード台。
そこで三人のウマ娘がプレイをしているのだが、とある少女のキューが手球を弾き、それが9番のボールに当たってからポケットした。
「はい、これで終わりです。僕の勝ちですね」
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! また負けちまったぁぁぁぁぁっ!」
頭を抱えながらウオッカが全身を震わせてながらの叫びを上げた。
文字通りの『負け犬の遠吠え』だった。
そんな彼女を負かしたウマ娘は、なにやら申し訳なさそうにしながらキューを持っている。
青く長い髪をポニーテールに纏め、鋭いドリルのような角飾りがあるカチューシャを頭に身に着けていた。
小柄ながらも体の方はしっかりと鍛えられていて、常に背筋も真っ直ぐになっている。
「もういい加減に諦めたら? これで通算10連続の負けよ?」
「うぅぅ…ビリヤードって映画とかだとクールで凄いカッコいいのに…実際にやってみると難しすぎだろ……」
「相手が悪すぎんのよ。そもそも『ユニコーンドリル』は国内のビリヤード大会で大人に交じって何度となく優勝を掻っ攫っている程の実力者なのよ? 面白半分で始めた初心者が勝てるわけないでしょうが」
「あはは……僕も単なる趣味なんだけどな……」
一緒にいたダイワスカーレットが呆れたように苦言を呈するが、それでも諦めきれないのか、ウオッカはさっきから何度も唸っていた。
そんな彼女に紹介されたビリヤードの達人の名前は『ユニコーンドリル』。
フウウンサイキと同じ『チームSRW』に所属しているウマ娘だ。
『差し』に対して非常に高い適性を持つウマ娘で、その名の通り、ドリルの如き突破力でこれまでに幾多のレースを制してきた実力者でもある。
「そういうお前は勝負しないのかよ? 何でも一番を目指すんだろ?」
「流石の私も、自分が未熟だと分っている上での勝負は挑まないわよ。するとしたら、ちゃんと自信も実力も付けてから。我武者羅に突っ込んでいくだけのアンタとは違うのよ」
「んだとゴラァ~!」
「ちょ…二人とも、ケンカはダメだよ……」
なんだか一触即発の空気になりそうになった瞬間、食堂に誰かが慌てた様子で入ってきた。
完全に火花が散っていたウオッカとダイワスカーレットだったが、その相手を見た途端に大きく目を見開いて火花を消した。
「ふぅ…ようやく撒いたか」
「「フウウンサイキ先輩っ!?」」
「ん? そこにいるのは…ダイワスカーレットにウオッカ、それからユニコーンドリルか? 何をやってるんだ?」
やって来たのはフウウンサイキ。
誰かから逃げている最中なのか、三人の姿を見た途端に少しだけ肩の力を抜いた。
「あぁ…ビリヤードをやってたのか。しかし、ユニコーンドリルを相手にするとは無謀だな。ことビリヤードに関しては、私でも全く歯が立たない程なんだぞ?」
「「マジですかッ!?」」
フウウンサイキはトレセン学園にいるウマ娘達の中でも最上級クラスの実力者として知られていて、数多くの後輩ウマ娘達から羨望を集めている。
その実力は、生徒会長にして数少ない三冠ウマ娘の一角である『シンボリルドルフ』からライバル視されている程。
実際、フウウンサイキも三冠まであと一歩の所まで来ていた。
「こんな時間にフウウンサイキさんが食堂に来るなんて珍しいですね。いつもなら、この時間帯は自主トレをしてませんでしたっけ?」
「いや…私もそのつもりだったんだがな……自主トレに行く途中で厄介な奴に捕まってしまって。今はそれから逃げている最中なんだ」
「フウウンサイキ先輩が逃げてるって……」
「誰から?」
ユニコーンドリルとは同じチームメイトだからなのか『先輩』と呼ぶことは無く『さん』付けで呼んでいる。
それはそれとして、一緒にいた後輩コンビが小首を傾げていると、またもや食堂の扉が静かに開かれた。
「こんな場所にいたんだね…フウウンサイキ君。探したよ」
「ア…アグネスタキオン……」
タキオンの方は嬉しそうにしているが、フウウンサイキは逆に苦虫を噛んだような顔をしている。
どうやら、ずっと彼女を追いかけ回していたのはタキオンだったようだ。
「今日こそは、君の『気』の力をこの手で解明してみせる! ちょっと目を離した隙に修行に行ってしまったと聞かされた時は途方に暮れてしまったが、こうして戻ってきてくれたのであれば問題は無い! 是非とも全てのウマ娘の為に協力をしてくれたまえ!」
「これまでに何度も言っているが、気の力はそう簡単に解明なんて出来る事ではない! というか、どうしてそこまで拘るっ!?」
「興味があるからに決まっているだろう! 漫画やアニメにしか存在しない架空の能力と思われていた気の力を操るウマ娘が目の前に現れたんだぞっ!? どんな風になっているのか気になるのは当然というものだろう!」
「言いたい事は分かるが、ならばまずは自分が気を使えるようになろうとは思わないのかっ!?」
「それではダメなんだ。自分で言うのもアレだが、私は不器用なウマ娘でね。自分の力を自分で解析するなんて器用な真似は出来ないんだ」
「胸を張って言うような事か…?」
「そんな訳だから、私は君に協力を要請する! なに…心配はいらないさ。痛いのは最初だけ…その後は……」
「私の今は亡き師匠が耳元で『逃げろ』と叫んでいるので、全力で拒否させていただく! 正直、嫌な予感しかしない!」
あのフウウンサイキが全力で気圧されている。
凄くレアな光景だが、本人からしたら堪ったものじゃない。
「そんな訳で、私は失礼させていただく!」
「あ…待ってくれ!」
「そうだ! ユニコーンドリル! 寺田さんがお前の事を呼んでいたぞ! 何やら大事な話があるそうだ! ではな!」
「ト…トレーナーさんが? ってっ!?」
そう言い残すと、フウウンサイキは全力で走って食堂を後にした。
彼女を追い掛けてタキオンも食堂から出て行った。
フウウンサイキと互角のスピードを出している辺り、何気に彼女の潜在能力も凄まじいのかもしれない。
「嵐のように現れて、嵐のように去って行ったわね……」
「流石はフウウンサイキ先輩…去り際もカッコいいぜ!」
「その先輩の足に普通に追従出来てるタキオンさんも相当だけどね……」
人が見た目に寄らないように、ウマ娘もまた見た目に寄らないのだ。
「えっと…それじゃあ、トレーナーさんに呼ばれてるみたいなんで…行きますね?」
「おう! ビリヤードじゃ負けっぱなしだけど、レースじゃこうはいかないからな!」
「私もよ。寧ろ、私達にとっての本番はあっちなんだから」
「分かってますよ。それじゃあ、失礼します」
ちゃんとお辞儀をしてから、ユニコーンドリルは食堂を後にする。
同級生に対しても決して礼儀を忘れない心掛けがあるせいなのか、実は生徒会から勧誘を受けている。
本人は遠慮していつも断っているが。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
トレーナーとの話が終わって、ユニコーンドリルは校舎内の廊下を歩いていた。
その顔は先程までとは違い、どこか決意のようなものに満ちている。
「皐月賞…2000メートル…か」
話と言うのは、今度のレースに関する事だった。
これまでにも幾度となく中距離のレースは走って来たし、一着を取った事も一度や二度ではない。
勝てないレースじゃない。入念に準備やトレーニングを重ねていけば何の問題も無い。
だからと言って、彼女がここで慢心をする事など有り得ないのだが。
「明日から気合を入れ直して頑張らないと! うん!」
拳を握りしめて、明日に備えて今夜は早く寝ることを決める。
そんな彼女の後ろに、意外な客がやって来た。
「ユニコーンドリル!」
「この声は……」
本当は振り返りたくはないけど、根っからのお人好しである彼女には出来ない相談だった。
結局、半ば反射的に振り向いてしまう事に。
「チーム・カノープスに入る決意はできたかっ!?」
「いや…僕はもう既に別のチームに入ってるから無理だって何度も言ってるじゃないですか…ツインターボさん」
強気な笑顔と共に現れたツインターボに引き攣った顔しか出せないユニコーンドリル。
入学当初から、どういう訳か付き纏われているウマ娘だ。
最近では、同じ被害者であるトウカイテイオーと一緒に愚痴を言い合う機会が増えて、気が付けば普通に仲良くなっていた。
「移籍すればいいじゃん!」
「嫌ですよ。そもそも、移籍をする理由が無いし」
「な~ん~で~だ~よ~! いいじゃん! いいじゃん! 同じ髪色のよしみで入ってくれてもいいじゃんかよぉ~!」
「なんなんですか。その意味不明な暴論は。それだと、これから入学してくる青い髪のウマ娘達は全てチーム・カノープスに入らなきゃいけなくなるじゃないですか」
「ダメなのか?」
「個々人の自由意思を尊重しましょうよ……」
彼女に悪気が無いのはユニコーンドリルが一番よく分かっている。
ツインターボは純粋無垢、別の言い方をすれば我儘なのだ。
だからこそ、彼女のチームメイトは苦労しているのだが。
「そういえば、さっき皐月賞がどうとか言ってたけど…出るのか?」
「そのつもりです」
「じゃあ、ターボも出る! そして、お前に勝ってからチームに入れる!」
「どうして、そうなるんですか…。そんな約束は出来ないし、それ以前の問題として、そちらのトレーナーさんが許可を出してくれるんですか? ちゃんと計画もあるでしょうに……」
「大丈夫だ! 問題無い!」
「意味も無くフラグを立てないでよ……」
多分、本人は自分が特大のフラグを立てた事を理解していない。
それ以前にネタすら知らない可能性もあるが。
「まぁ…仮にツインターボさんが出たとしても、僕は負けるつもりはないですけどね」
「なんだとぉ~!?」
「距離適性の問題もありますけど、それ以前の話として僕はどんな距離でも絶対に負けるわけにはいかない」
「お前……」
窓から差し込む夕日に照らされながらユニコーンドリルは歩く。
その姿に思わずツインターボも立ち尽くしてしまった。
「じゃないと、僕の大切な『仲間達』や『あの子達』に顔向けできませんから」
優しき心の奥底に宿る、業火のような闘志。
本気になった青き電子の一角獣を止められる者はいない。
「それじゃあ…レース場で待ってますから」
「お…おう! 絶対に勝ってやるからな~!」
なんだかクールな感じになってしまったが、後に寮の自室に戻ってからベッドの上でゴロゴロと転げ回ってから悶絶して黒歴史が増えた事に激しく後悔する事になる。
若さと勢いで安易にカッコつけるものじゃないと学習したユニコーンドリルであった。
ユニコーンドリルがビリヤードが得意なのは、彼女の契約者である北斗の特技から来ています。
そして、実はちゃんと仲間のデータウェポンたちもそれぞれに転生して『○○娘』的な存在になっています。
白髪でショートヘアーの元気っ子ライオン娘『レオサークル』
オレンジ髪のスタイル抜群の美人ウシ娘『ブルホーン』
赤い髪の長髪で妖艶なお姉さんドラゴン娘『ドラゴンフレア』
紫の長い髪を一本に纏めているクールな美少女ヘビ娘『バイパーウィップ』
緑のボブカットな眼鏡っ子イノシシ娘『ガトリングボア』
そして、虹色の髪を持つ美幼女『フェニックスエール』
しかも、ユニコーンドリルとレオサークルのお姉さんとして、青と白の髪を持つ大人な女性のウマ娘(?)の『キバストライカー』もいます。
次回は、ロボなゲッターのマイナーな相棒メカであるアメリカ出身でマックでテキサスなロボットのサポートをしたお馬さんの登場です。
誰の事か分かるかな?