けど、その代わりにタキオンとフクキタルとネイチャが同時に☆3になりました。
こっちの方が普通にテンションが上がりましたね。
ユニコーンの休憩中に、いきなり集まってしまったトレセン学園屈指の実力を誇るスプリンター達。
マルゼンスキーとタイキシャトルを見た途端に一瞬だけユニコーンの顔が険しくなったのは内緒。
「いやー…ユニちゃんの水着姿とか久し振りに見るな~…グヘヘ…」
「早くもキャラ崩壊してるよ、カレンさん」
にじり寄りながら手をワキワキさせているカレンにドン引きする。
これさえなければ、普通に仲のいい友達なのだが。
「私達も噂…聞いたわよ。ユニちゃん」
「マルゼンさん……」
「あの日以来、ずっと短距離から離れていたユニちゃんが、また短距離に戻ってくる気になった。それだけで、お姉さんのテンションは爆上げなんだから」
「あはは……御心配をお掛けしました」
マルゼンスキーはスプリンターとしての大先輩にあたる。
実際、まだチームに入っていなかった頃から彼女に色々と教えて貰った頃もあるほどだ。
「私たち全員、本当に楽しみにしてるのよ? 今度あるスプリンターズ・ステークス…あの大舞台をここにいる皆で走る事が出来る。しかも、それがユニちゃんの短距離復帰レースにもなってる」
「今、学園内で一番のニュースにもなってるぐらいなんですよ?」
「そ…そうなの?」
ニシノフラワーからの言葉に耳を疑うが、カレンが見せてきたスマホの画面がその言葉を完全に肯定していた。
「これが、その証拠」
そこに映し出されていたのは、学園の掲示板に張られている学園新聞。
新聞にはデカデカとこう書かれてあった。
【トレセン学園の『青き流星』ことユニコーンドリルが遂に短距離に復帰っ!?】
文字と一緒に新聞に映っていたのは、ユニコーンの練習風景。
ジャージを着て必死に走っている様子がそこにはあった。
「い…一体いつの間にこんな物がっ!? 全く取材に協力した記憶が無いんですけどッ!?」
「鬼気迫る感じのユニちゃんに話しかけずらかったんじゃないのかな?」
「それならせめて、練習後とかに話しかけてきてくれればよかったのに…」
まさかのパパラッチ的な事をされて、急激にユニコーンの顔が赤くなる。
別に練習風景を見られることは構わないのだが、こんな有名人紛いの事をされると普通に照れる。
「ユ…ユニちゃん…」
「ど…どうしたの? カレンさん…」
「照れてるユニちゃんが可愛過ぎ。よし、こうしよう。今度のレースでカレンが勝ったら、ユニちゃんはカレンの彼女になるってことで」
「勝手に決めないでくれるかなっ!? 因みに、ボクが勝った場合は…?」
「カレンがユニちゃんの彼女になる」
「勝っても負けても結果が全く変わってない!」
完全にカレンのペースに乗せられている。
心なしか、寮にいる時以上にテンションが上がっているような気がする。
「むむ? この委員長がいる前で不純異性交遊は看過できませんよ!」
「不純でもないし、異性でもないから大丈夫だもーん」
「確かにその通りでした! では、遠慮なく続けてください!」
「だって! バクシンオー先輩の許可も下りた事だし、もっとカレンとイチャイチャしよ?」
「しませんから! というか、さっきからフラワーさんが顔を真っ赤にして俯いてるから! 飛び級の子に変なのを見せないで~!」
流石に目の前で年上の少女達が二人で物理的な意味で絡み合っているのは刺激が強すぎたのか、フラワーは両手で顔を覆い隠しながら耳をピクピクとさせつつ尻尾を思い切り左右に振っていた。
「ハハハハハ! 本当に二人はラブラブなのネ!」
「はい!」
「違いますから! というか、そろそろ本気でカレンさんを止めてくれませんかねっ!?」
「ンー……無理ね!」
「なんでっ!?」
「楽しそうだから!」
「そんな理由でっ!?」
タイキシャトルは基本的に目の前で楽しい事が起きれば、それを最優先させるタイプのウマ娘である。
そんな性格だからか、口調が似ているパスチャーキングやエルコンドルパサーとも非常に仲がいい。
「楽しそうだからコソ……次のレースでは絶対に手は抜かないワ。全力で勝ちを取りに行かせて貰うカラ」
「…それはこっちの台詞ですよ。タイキさん。ここにいる皆を追い抜いて、勝つのはボクです」
タイキシャトルの宣戦布告に、ユニコーンも同じように返す。
目の前で急に表情が変わった彼女を見て、カレンの興奮が頂点に達する。
「ユニちゃん……」
「きゅ…急にどうしたの?」
「新婚旅行はどこに行こうか? カレンはハワイがいい」
「なんか結婚すること前提の話が飛び出してきたんですけどッ!? というか、鼻血出てるから!」
カレンの目が完全に座り、真顔のままで鼻血を垂らす。
もしもここが浜辺でなかったら襲われそうな勢いまである。
この絶体絶命のピンチの瞬間、全てのウマ娘達の動きを完全に止めてしまう匂いが漂ってきた。
「「「「「「ん?」」」」」」
匂いのした方向を見ると、そこでは水着エプロンという衝撃的な格好をしたアウセンザイターが幾つものバーベキューセットに囲まれた状態で煌めく汗を流しながら只管にバーベキューを焼いていた。
そして、その傍でアグネスデジタルが目をハートマークにしながら鼻血を出している。
「そう言えば、アウセンザイターさんが秘伝のスパイスを使ったバーベキューを作るって言ってたっけ……」
「それマジッ!? やっば…早く行かないと無くなっちゃうじゃん!」
「流石はアウセンザイター…チョベリグね!」
ここで食欲がカレンを正気に戻してくれた。
今日ほど、アウセンザイターに感謝したことは無いかもしれない。
だが、それよりもユニコーンには気になっている事があった。
「あの…バクシンオーさん」
「どうしました?」
「…『チョベリグ』ってなんですか?」
「さぁ…? よくマルゼンさんが使っていますが、私にもよく意味は分かりません」
「ですよね……」
世の中には、知らなくてもいい事が沢山あるのものだ。
「あ…ダブルアールさんとシンボリルドルフさんが手伝いに来た」
どうやら、二人もさっきまでトレーニングをしていたらしく、汗だくになってはいるが、かといって特に疲れた様子も見せていない。
伊達にトレセン学園で最強クラスの実力は持っていないということか。
それにより、アグネスデジタルの興奮がMAXに到達し、その場で倒れてしまった。誰も気にも留めようとしないが。
「…ボク達も行きましょうか? なんだかお腹が空いてきましたし」
「そうですね! 委員長たる者、空腹の状態では皆の見本にはなれませんからね!」
「…だそうです。フラワーさんも行きましょう?」
「あ…はい」
フラワーの手を握って立ち上がらせると、彼女の顔が更に真っ赤になる。
それを見てカレンは確信した。新たなライバルが出現したと。
(くぅ…! いいもんいいもん! ロリっ子には無い魅力でユニちゃんをメロメロにしてみせるんだから!)
せめて、レースで争ってくれ…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
夏合宿に来た全てのウマ娘達が待ち侘びた昼食タイム。
誰もが楽しそうにバーベキューを食べていた。
「ん~! 思い切り体を動かした後の肉は最高だぜー!!」
「これを食べられただけでも、今年の夏合宿に来た価値はあるわね……」
両手に何本も手にしながら食べまくる、毎度御馴染みのウオッカとスカーレット。
だが、そんな風にして食べているのは彼女達だけではない。
「うまーい!! ターボ、これなら幾らでも食べられるぞ!」
「言いたい事は分かりますが、少しは落ち着いて食べたらどうですか? まだまだ、バーベキューはあるんですから」
「けど、これはマジで美味しいよね。本気で食欲が止まらないし」
「いやー…こんなにも美味しいのを食べ放題って、普通に罪悪感があるねー」
ツインターボにイクノディクタス、ナイスネイチャにマチカネタンホイザ達『チームカノープス』の面々も、満足げにバーベキューを堪能していた。
「済まないな、我が友ルドルフ。そして、ダブルアールよ。君達にまで手伝わせてしまって」
「気にするな。普段はこっちの方が世話になってるんだ。偶には恩返しをさせてくれ」
「会長の言う通りっスよ! それに、バーベキューならちーっとばっかし自信があるんで!」
「ふっ…本当に頼もしい友たちだ! ならば、私も本気を出すとしよう! 行くぞトロンベ!!」
鮮やかな手付きで次々と肉と野菜を焼いていくアウセンザイター。
その光景は最早パフォーマンスの域に達していた。
「とってもおいしいね! ライスちゃん!」
「うん! だけど…いのかな? こんなにも美味しいバーベキューを食べて、後で何か不幸な事が起きないかな……」
「ライスさんは心配性ですね。大丈夫です。美味な物を食べたからといって、不幸になったという事例は今まで一度も確認されていません」
ウララとライスが一緒に食事をしている中、少し落ち込みそうになったライスを励ますのはミホノブルボン。
淡々とした口調と無表情な部分があるせいでサイボーグ疑惑があるウマ娘だが、そんな事は決してない。
「まさか、お前までもバーベキューに飛びつくとは思わなかったぞ。タキオン」
「そうでもないさ。私だってアウセンザイターの食事は大好きだよ。ただ美味いだけじゃなくて、栄養配分なども完璧だからね。悔しいが、こればかりは認めざるを得ないよ」
「フウウンサイキさん、こちらも焼けましたわよ」
「そうか。済まないなマックイーン」
「おや? 君も一緒とは珍しいね、メジロマックイーン」
「わ…私が誰と一緒にいても、私の勝手でしょうッ!?」
「ふぅ~ん…?」
「???」
タキオンとマックイーンに挟まれながら、頭の上に疑問符を浮かべるフウウンサイキ。
この三人の関係が発展する日はまだまだ遠そうだ。
「全力で走った後のバーベキューは格別デース! あむ……ン~♡」
「ふぅ…パスチャーキングさん。美味しいのは分かりますけど、もう少し落ち着いて食べる事は出来ませんの? 仮にも、私と同じ『キング』の名を持つウマ娘として……」
「もう一本いただきマース!」
「ちょ…聞いてますのッ!?」
「パスチャー先輩! もっと持ってきましたデスよ!」
「Thank you! エルももっと食べまショウ!」
「ハイ! 遠慮なくいただきマス!」
「エルさんっ!?」
完全マイペースなパスチャーとエルに振り回されるキングヘイロー。
普段の高飛車な態度が消えて、完全に貧乏くじを引いている。
「こ…こんなにも美味しいバーベキュー…初めて食べました! これならまだまだ食べられ…って、うわぁっ!?」
「美味しいです! 美味しいです! とっても、とっても美味しいです! 本当に無限に食べられそうです!」
「全くだな。これなら午後からも頑張れそうだ」
初めての味に感動していたパーンの横では、トレセン学園の大食い代表のスペとオグリの二人がとてつもない勢いでバーベキューを平らげていく。
この時の彼女達の腹は完全にブラックホールと化していた。
「そっちの方が美味しそう…ユニちゃん貰うね! あむ!」
「あ! ボクのお肉がっ!?」
「ユニコーンさん…これを食べてもいいですよ?」
「え? いいの?」
「はい。一人だけで食べるのは勿体無いですから」
「それじゃあ、貰おうかな? あーむ」
「あーっ!? ユニちゃん、カレンのも食べていいよ!」
「こっちもっ!?」
カレンがユニコーンの肉を食べたかと思ったら、隣にいたフラワーが自分の分の肉を御裾分けする。
それを見ていたカレンも、自分の肉をあげようとする。
見事なまでに第二の三角関係が誕生していた。
「ユニちゃんったら、すっかりモテモテねー。まるでときメモみたい」
「仲良きことは美しきかな! いいですね!」
「…ワタシも、パスチャーにこれぐらいした方がいいのカシラ…?」
敢えてマルゼンの言葉をスルーする二人。
深く気にしてはいけないのだ。誰も得なんてしないから。
こうして、夏合宿のなんとも賑やかな昼食の時間は過ぎていくのだった。
因みに、さっきからずっと気絶をしていたアグネスデジタルはというと、目の前の光景全てが尊すぎて…天に召されていた。
だが、彼女はまだ知らない。
このような光景はまだまだ序の口であることを。
夜こそが、最も百合の花が咲き誇る時間なのだと。
次回は夜のお話に突入。
それが終われば遂に…?