我ら! チームSRW!   作:とんこつラーメン

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まだまだウマ娘の勢いは収まりそうにないですね。

私も一日の大半をウマ娘に費やしてますし。








嵐の前の百合畑②

 まだまだ夜は終わらない。

 全てのウマ娘を尊敬し、同時に尊く思っているアグネスデジタルが次にやって来たのはレクリエーションルーム。

 所謂『ゲームコーナー』であった。

 普通ならば、このような場所の使用は固く禁じられている所だろうが、そこは天下のトレセン学園。

 ウマ娘達の事を第一に考えている学園側は、コレ系の事は別に禁止にはしていない。

 なので、夜の自由時間となっている今は数多くのウマ娘達が集まって来ていた。

 

「ん? あそこにいるのは確か……」

 

 ゲームコーナーに入ったデジタルがまず見かけたのは、アームレスリング用の台にて向かい合うように立っているダブルアールとメジロライアンの二人。

 その周りにはそんな彼女達を応援しようと、ウオッカやヒシアマゾン、テイオーなどを初めとした面々が集まっていて、その中には何故かエアグルーヴまで混じっている。

 更に言えば、なんとレフェリーはゴルシが勤めていた。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!? これはなんという展開だっ!? まさに一進一退の攻防ってやつかっ!? アタシの血も滾ってきやがったぜぇぇぇぇぇっ!!」

「なんでレフェリーのお前が一番興奮してんだよ…。つーか…!」

 

 ダブルアールの目が、目の前にいるライアンの顔を捉える。

 勝負が始まってから二人の腕の位置は殆ど動いてはおらず、少しでも気を抜いた方が一気に敗北に直行する。

 先程から、そんな静かで激しい勝負が繰り広げられていた。

 

「ライアンよぉ…! テメェ…暫く見ねぇ間に随分とパワーを上げてやがるじゃねぇか…! このオレさまとここまで戦り合うまでに強くなってるとは思わなかったぜ…!」

「それはこっちの台詞だよ…ダブルアール…! 休学中に体が鈍ってると思ってたけど…全然そんな事は無かったみたいじゃないか…! それどころか、明らかに強くなってるし…!」

「当ったり前だろうが…! 幾ら休学中だからって…オレがのんびりと休みを満喫するようなキャラに見えんのかよっ!?」

「いいや……見えないねぇっ!!」

「おらぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「でやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 遂に二人揃って勝負に出た。

 全身を震わせながら、全体重を掛けて相手の腕を倒そうとする。

 

「ぐぬぬぬぬぬぬ…!」

「おおおおおおお…!」

 

 僅かずつではあるが、ダブルアールの方が優勢になってきた。

 だが、まだライアンの方も逆転の可能性は残されている。

 

「ダ…ダブルアール先輩、頑張ってください! で…でもでも…ライアン先輩も応援したいし…チクショー! 一体オレはどっちを応援すればいいんだよぉ~!?」

「そんなのどっちでもいいじゃん! 二人とも頑張れ~!」

「流石はダブルアールとライアン…ゴルシじゃないけど、見ているこっちまで熱くなっちまいじゃないか!」

「どうでもいいが…さっき風呂に入ったばかりなのに、もう汗を掻いてどうするんだ……」

 

 応援している中で唯一、エアグルーヴだけが冷静なツッコミをする。

 別に二人を応援していない訳ではないが、それでも真面目な彼女は言いたくなってしまうのだ。

 

「こなくそぉ~……うぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 バシン!!

 ダブルアールが渾身の力を込めたパワーが炸裂し、ライアンの腕を一気に台へと叩きつける。

 

「勝負ありだ! ダブルアールの勝ち~!!」

「よっしゃぁぁぁぁぁっ!!」

「くあぁぁ…負けたぁぁぁぁっ! けど、面白かった!」

「こっちもだぜ! ったくよ~…馬鹿力すぎんだよ。ほれ、手が真っ赤になっちまったじゃねぇか」

「それもまたこっちの台詞。手を握ってる間、すっごく痛かったよ?」

 

 お互いに手を見せ合うと、どっちの手も真っ赤になっていた。

 それだけ強い力で握っていたという証拠だ。

 

「パワー自慢同士の腕相撲……くぁ~! マジで迫力あった~!」

「だね~! ボクも今度、誰かとやってみようかな…?」

「アタシはパスかな~…。少なくとも、ライアンやダブルアールとやり合ったら、確実に腕を持っていかれそうだ」

 

 今回の勝負は、この二人だからこそ拮抗したのであり、そうでなければすぐに決着はついていた事だろう。

 数少ない例外を除いては…だが。

 

「ライアン! 今度はレースで勝負しようぜ! そっちもオレが勝つけどな!」

「なんの! レースとなれば話は別だよ? 今度こそ絶対に勝つんだから!」

 

 勝負の後に紡がれるウマ娘同士の友情。

 その周りで二人を称える他のウマ娘達。

 まさか、来て早々にこんなにも尊い光景を見られるとは思わなかったデジタルは、思わず涙を流しながら両手を合わせて三女神に対して心からの感謝をしつつ拝んでいた。

 

(あぁ……尊い…♡ しかも、つい最近になって戻ってきたダブルアール先輩のあんな姿を見られるだなんて……最高すぎ…♡)

 

 ダブルアールの不良っぽい見た目の中に秘められた優しさに心を打たれたウマ娘は非常に多い。

 デジタルもそのギャップに見事に萌えてしまった一人だ。

 

「レースと言えば、ダブルアール」

「ん? なんだよエアグルーヴ」

「ブライアンが悔しがっていたぞ。今度こそは絶対に勝つと言っていた」

「それって…休学前にした模擬レースの事を言ってる?」

「だろうな。模擬とはいえレースはレースだ。自分を負かした相手に対抗心を抱かないウマ娘はいないだろうさ」

「ヘッ…上等じゃねぇか。ブライアンもライアンも、オレが纏めてぶっちぎってやるぜ」

「言ったな~? 見てなよ~!」

 

 まさかの強敵二人に対する宣戦布告。

 普通ならば無謀極まりない事だが、この場にいる全員が知っている。

 ダブルアールはそれだけの実力があり、やるといったら絶対にやるウマ娘なのだと。

 

「それはいいけどさ…二人とも、汗臭いぞ?」

「はははは! 腕相撲で思い切り汗を掻いちまったからな! よし! 今からもう一回風呂に入ってくるか! ライアンも行くだろ?」

「勿論! スッキリしてから寝たいしね!」

「オ…オレもご一緒してもいいですかッ!?」

「それじゃ、ボクも行く~!」

「おいおい…このゴルシ様を忘れて貰っちゃ困るぜ?」

「だとよ。エアグルーヴも一緒に行こうぜ?」

「分かったよ。どうせ、私が『行かない』と言っても無理矢理についてこさせるつもりだったんだろう?」

「分かってたか」

「当たり前だ。もう何年の付き合いだと思ってるんだ」

 

 そうして、集団はそのまま楽しそうに話しながら再び温泉へと入りに向かった。

 それも非常に興味をそそられるが、それ以上にデジタルには気になる事があった。

 

「今…エアグルーヴ先輩…『付き合い』って言った? って事は、まさか先輩はダブルアール先輩と…!?」

 

 妄想が止まらない。

 デジタルの脳内では、二人っきりになっているダブルアールとエアグルーヴがベンチに座っていちゃついていた。

 そんな妄想暴走を止めてくれたのは、別のウマ娘達の声だった。

 

「バクシン! バクシン! バクシーン! こんな障害物程度で、私のバクシンは止められませんよー!」

「流石はバクシンオーさん…レースの組み立てなんて全く無い、常に全力疾走モード! やっぱり凄いです!」

「なんて言ってるけど、パーンサロイドの方がもっと凄いじゃん。コースの位置取り、ペース配分、仕掛け時の見極めとか、全部が完璧だ」

「あのナリタタイシンさんにそこまで褒めて頂けるなんて光栄です!」

 

 パーンサロイド、サクラバクシンオー、ナリタタイシン。

 この三人がレースゲームで遊んでいて、その周りにはさっきと同じように別のウマ娘達が見学していた。

 

「フレー! フレー! タ・イ・シ・ン! 頑張れ頑張れタ・イ・シ・ン!」

「チケット五月蠅い! 集中出来ないから!」

「あわわわわわわ…! 私が占いゲームをしに少し目を離した間に凄い展開になってます~!」

「これは凄いね~。完全に私のような凡人には絶対に踏み入れない領域ですわ~」

「パーンサロイドさん…なんと理想的なレース展開をする方なのでしょうか。これは侮れませんね」

 

 タイシンの幼馴染であるウイニングチケットは分かるのだが、なんでかマチカネフクキタルやナイスネイチャ、そしてまさかのミホノブルボンも一緒に三人のレースゲームを見ていた。

 特に、ブルボンの視線はずっとパーンの方だけに集中していて、彼女の一挙一動を事細かに観察している。

 

(情報では、パーンさんはゴーカートの世界王者と聞いていますが…成る程。納得しますね。レース中のあらゆる動作に躊躇いが一切無い。自分のしている事が必ず良き結果になると信じているから。どうやら、また一人巨大な壁が出現したようですね…)

 

 必ずや将来、パーンサロイドが自分にとって強大なライバルとなって立ちはだかると確信したブルボン。

 だからこそ、今のうちに少しでも多くの情報を持ち帰って対策を立てたい。

 

「このまま一気にゴールまで一直線ですよー!!」

「…って思いますよね? ところがぎっちょん!」

「う…嘘でしょっ!?」

「ちょわぁ~っ!?」

 

 最後の直線で、先を行っていたバクシンオーとタイシンのマシンを一気に抜き去り、そのままゴールまで突っ込んで一着でフィニッシュ!

 

「ど…どういう事なのですかっ!?」

「簡単ですよ。コーナーでは常にインを取って、ストレートに入る時も次のコーナーの事を考えて位置取りをする。そうすることで少しずつではありますけど燃料を節約してたんです。結果として、お二人のマシンよりも燃料に余裕が出来たので……」

「最後のストレートで一気に全速力を出せたって訳か…。はぁ…やられたよ。参った。降参だ」

 

 苦笑いを浮かべながら、タイシンが両手を上げて降参のポーズ。

 

「あの負けず嫌いのタイシンが素直に負けを認めたッ!?」

「仕方ないじゃん。あそこまでやられたら悔しいって気持ちすら起きないよ。一周目の時点から勝敗は決してたってわけだし」

「お見事ですパーンさん! 普通のバクシンではなく、緻密な計算に元に構築されたバクシンとは! お見逸れしました!」

「そ…それ程じゃないですよ…あはは……」

 

 尊敬する先輩達に褒められて、思い切り照れるパーン。

 そんな彼女を見て、複雑な表情をする者が約二名いた。

 

「もしも、これがトゥインクルレースの舞台だったなら…とてつもない事になっていましたね……」

「いやはや…これは凄いね~。久し振りに見ちゃったよ。生まれながらの生粋の『天才児』って奴をさ」

 

 ブルボンはパーンの秘められた能力に戦慄し、ネイチャはまたもや己と比べて自己を卑下してしまう。

 分かってはいても、もう完全に癖になっているのでやめられなかった。

 

「けど、本当に凄かったよパーンさん! 今度は私も混ざっていい?」

「大丈夫ですよ。このゲーム、最大で8人までプレイ可能ですから」

「だってさ! ブルボンもフクキタルもネイチャも一緒にやろうよ!」

「いや…私は別に……」

「是非ともお願いします」

「先程の占いゲームでは大吉と出ましたから問題ありません! 幸運パワーで勝ってみせますよー!」

「ちょ…二人ともっ!? あ~…もう! この流れで自分だけ『やらない』なんて言えないじゃんか~! やりますよ! やればいいんでしょ!?」

 

 結局、全員揃ってレースゲームをすることに。

 なんだかんだと言いつつも、ネイチャはかなり楽しんでいる様子だったが。

 

(あれが噂の期待の転入生ちゃんか…。実力云々はともかくとして……)

 

 引っ込んだはずの涙が再びちょちょぎれて滝涙ジョー。

 もうさっきから拝む事しかしていない。

 

(めっちゃ可愛い…♡ あの照れ顔とか絶対に反則でしょ……尊い…♡)

 

 推しのウマ娘一人追加入りました。

 その後、彼女がバクシンオーと同じ部屋と聞いて、学園に帰って即座に新しい薄い本の作成に取り掛かったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 何度も何度も尊い光景を見続けて流石に精神的に疲労したので、自分の心と体を休める為にどこかに座ろうと旅館内を歩き回っていると、デジタルはマッサージチェアが並んでいる一角に出た。

 

「マッサージ器……偶にはいいかも?」

 

 そう思って近づこうとした瞬間に気が付く。

 何台か並んでいたマッサージチェアには先客がいた事を。

 

「ア~…shoulderの凝りが解れていくようデ~ス…」

「とっても気持ちいいデース…♡」

「アアアアア~…なんだか瞼が重くなってきまシタ…」

 

 パスチャーキングにタイキシャトル、エルコンドルパサーの外国出身のウマ娘。

 またの名を『デスデス三姉妹』。

 三人揃って語尾によく『デス』が付くことから、密かにそう呼ばれている。

 

「ゆ…揺れてる…! 心なしか残像が見える…?」

 

 一体何が揺れているのかは皆の想像に任せよう。

 ともかく揺れているのだ。激しく。強く。大きく。

 

 だが、マッサージチェアに座っているのはこの三人だけではなかった。

 

「すっごくリラックス出来るわね~」

「ですね~…温泉もいいけど…やっぱこういうのが一番ですよね~」

「カ・イ・カ・ン♡ ってやつよね~…」

 

 スーパークリークにダイワスカーレット。そしてマルゼンスキー。

 さっきのレースゲームの所にマルゼンがいない事を不思議に思っていたが、ここで皆と一緒に普段の疲れを癒していたのだ。

 勿論、この三人もまた激しく揺れ動いている。

 特に、同年代である筈のスカーレットの強大な『戦闘力』には同じ女子として驚くしかない。

 

(こ…これは滅多に無いチャンスなのでは?)

 

 決意するが早いが、デジタルは速攻で空いている一番端のマッサージチェアに座り、横に座っている彼女達の事を血走った目で凝視しながら体を揺らしていた。

 

(て…天国……)

 

 興奮の余り、鼻から真っ赤な『愛』が溢れているが深く気にしてはいけない。

 あのゴルシでさえドン引きする程の逸材が彼女なのだ。

 こんな状態の彼女はそっとしておくのが最適解であると全員が理解している。

 

 今回の夏合宿。ある意味で最も収穫があったのはアグネスデジタルなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回から遂にユニコーン編の集大成に近づきます。

その後は勿論、60秒の奇跡を目に焼き付けに行きます。



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