我ら! チームSRW!   作:とんこつラーメン

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日常描写というタグは有りますが、レースをしないとは言っていません。

彼女達にとって、レースも立派な日常ですから。

そして、今回の主役である『彼女』と並ぶのは…?







It`s so cool!

 GⅠの一つである『日本ダービー』。

 2400という距離にて繰り広げられている激戦は、今まさに佳境へと差し掛かろうとしていた。

 

『もうすぐ最終コーナーへと差し掛かる所で、現在先頭は12番キングヘイロー! その後ろに控えているのは5番エルコンドルパサー! その差は1バ身から2バ身! このままの位置をキープしたままゴールへと雪崩れ込んでいくのか~!?』

 

 キングヘイローとエルコンドルパサー。

 現状、今回のレースは完全にこの二人の舞台と化していた。

 前を行くキングヘイローをいつでも追い抜けるように、エルコンドルパサーの目は完全に彼女の事を捉えている。

 虎視眈々と背後からの逆転を狙うエルコンドルパサーの圧力をヒシヒシと感じながらも、キングヘイローは少しでも距離を離す為に必死に足を動かす。

 

『二人の後方はほぼ縦一列状態となっている! このまま勝負は決してしまうのかっ!? と言っている間にも最終コーナーへと突入しました! それでもまだ二人の距離は縮まらない~!』

 

 あと一歩…否、あと半歩!

 残っている力の全てを注ぎ込み、前にいる王を抜き去る!

 エルコンドルパサーの目に火が点いた。

 

『おぉ~っと! ここでエルコンドルパサーが追い上げてきた~! 完全にキングヘイローと並んだ~! 果たして、勝利の女神はどちらに微笑むのか~っ!?』

 

 先頭を走る二人の想いは唯一つ。

 動け! 奴よりも早く!!

 

 だが、ここで誰もが予想だにしない事が発生し、レースは終盤にも拘らずこれまでで最も大きく動いた。

 

『こ…これはぁ~っ!? なんと、後方から凄まじい勢いで追い上げてくる黒い影が! か…彼女は……!』

 

 黒い髪を靡かせ、己の前を行く連中を次々と追い抜いていくカウガール。

 まるで、この瞬間を待っていたと言わんばかりの走りに、会場全体が熱狂に包まれる。

 

『アメリカから来たパワー溢れる元気印のカウガール! 7番パスチャーキングだぁ~!!』

 

 つい数秒前まで後方集団にいたにも関わらず、まるで疾風のようなスピードで一気に追い縋る。

 そして、気が付けばキングヘイローとエルコンドルパサーの後方に位置付けていた。

 

『まるで弾丸のように突き抜け、先頭の二人を完全に射程圏内へと捉えた~! このままもつれ込んで…いや…まだだ! まだパスチャーキングの速度は衰えていない! それどころか、更に加速している!』

 

 一着争いをしていた二人の横に並び、足並みを揃え始める。

 完全にパスチャーキングも一着争いに加わった。

 

『もうどうなるか全く予想がつかない! キングヘイローか! エルコンドルパサーか! それとも、パスチャーキングかっ!? 一体誰が栄光を手にするのか~っ!?』

 

 もうすぐゴールなのに、まさかの膠着状態。

 このまま写真判定になってしまうのか?

 誰もがそう思い始めた…その時だった!

 

『ほんの…ほんの僅かではあるがパスチャーキングが前に出たぁ~!! そして、そのままゴォォォォォォォォォォルッ!! 最後の最後にパワーを見せつけ、見事一着はパスチャーキング!! 二着は僅差でキングヘイロー! 三着はエルコンドルパサーとなりました!!』

 

 とてつもない大逆転劇に、レース場全体が割れんばかりの拍手と歓声に覆われ、それに対してパスチャーキングは満面の笑みで応えていた。

 

 

 

 

 

 

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「…完全に負けましたわ。流石は私と同じ『キング』を名に持つウマ娘…」

「うぅ…世界最強を目指す私がこんな所で……」

「エルコンドルパサーさん。時には素直に負けを認める事も強くなるための道ですわよ」

「分かってマ~ス……。けど! 次こそは絶対に勝ってみせマス! 何故なら私はエルコンドルパサーだから!!」

 

 惜しくも一着を逃した二人の前で、パスチャーキングは会場に足を運んできてくれた全ての観客に手を振っている。

 この太陽のような明るさこそが、彼女の人気の理由でもある。

 

「キングヘイロー…エルコンドルパサー。こんなBig stageで二人と走れて、最高にWas goodだったネ!」

「その言葉は、そのままそちらにお返ししますわ。あんなにも凄い追い込みを見せられたら、ウマ娘ならば誰でも心を振るわせられるというもの。けど、次はこうはいきませんわよ?」

「私もデ~ス! いつの日か必ず、また同じレースに出場しまショウ! そして、その時は今回のリベンジをさせて貰いマース!」

「OK! ミーはいつでも誰のchallengingを受けるネ! それがwinnerの務めなのだかラ! けど、その前にやる事があるワ!」

「そうですわね」

「えぇ!」

 

 三人が揃って振り返ると、それだけで先程以上に会場が湧き上がる。

 

「最高の逆転劇を見せてくれてありがとう! パスチャーキング!!」

「これからもずっと応援し続けるぞ~!!」

「Thank you! ミーも皆の事が大好きヨ~!」

「今日は惜しかったけど、それでもめちゃくちゃカッコよかったぞ!!」

「今度こそは一着を取れるって信じてるからな! キングヘイロー!」

「勿論ですわ! キングとして、必ずや皆さんの期待に応えてみせますとも!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ! エルちゃぁぁぁぁぁぁんっ!!」

「エルちゃん! 俺だ! 結婚してくれぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「なんか私だけ違いませんカっ!?」

 

 三者それぞれに熱狂的なファンがいるようだ。

 エルコンドルパサーだけ別方向に行っているようだが。

 

「皆ー! 今日はミーたちのレースを応援しに来てくれて本当にthank youネ! そのお礼に、私達の最高のWinning liveを見せてあげるワ!」

「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」

「貴方達の魂に、文字通りの『STORM』を巻き起こしてあげちゃうカラ!」

 

 

 

 

 

 

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 まだまだ冷める様子を見せない会場を、パスチャーキングと同じチームメイトであるフウウンサイキとユニコーンドリルが見つめていた。

 

「ふっ…パスチャーキングめ。私が修行をしていた間に、自慢のパワーに更なる磨きを掛けたようだな」

「本当に頑張ってましたから。こっちが心配になる程に」

「そのようだな。並の修行では、あれ程の追い込みは出来まい。僅差であったとはいえ見事な走りだった」

 

 今回、会場に来ているのはこの二人だけで、ハルウララは寺田トレーナーと一緒に学園でトレーニングに励んでいる。

 といっても、今回のレースを見逃している訳ではなく、ちゃんと中継にてパスチャーキングの活躍を見て応援していた。

 

「やっぱり、パスチャーキングさんが勝ったのね」

「お前は……」

「サイレンススズカさん……」

 

 そんな二人の傍に静かにやって来たのは、チームスピカのエースとも言うべき存在のサイレンススズカ。

 話をしながらも、彼女の目はずっとパスチャーキングに向けられていた。

 

「分かっていたんですか? 今回のレースでパスチャーキングさんが勝つって」

「分かっていたというよりは…勘かな。不思議と彼女が勝つような予感がしたの」

「真の強者にのみ到達し得る領域…か」

 

 フウウンサイキは知っていた。

 本当に強い者は、他者の戦いを一目見ただけで勝敗が分かってしまうことを。

 少なくとも、シャッフルの紋章を受け継ぐ5人と、彼女の師匠はそんな類の人間だった。

 

「間違いなく、パスチャーキングさんはいつの日か必ず私の前に立ち塞がる存在……そして」

 

 視線を外し、隣にいる二人の事を交互に見つめる。

 その目には燃えるような闘志が宿っていた。

 

「貴女達二人も」

「ほぅ…?」

「特に、フウウンサイキさん。私は…貴女と全身全霊を賭けたレースがしたい」

(なんという目をするんだ…こ奴は。どんな結果が出ようとも決して満足せず、常に挑戦者であろうとしている戦士の目。面白い……!)

 

 スズカに見つめられ、思わずフウウンサイキも全身に鳥肌が立つ。

 己の舞台はここではないと分かっているのに、体の奥底から溢れ出ようとする闘争本能が押さえ付けられない。

 

「もう既に、チームSRWのメンバー全員が『私の視界』に入っている」

「それだと、ウララちゃんも入ってる事になりますけど…?」

「彼女の事を余り甘く見ない方が良いと思う」

「え?」

 

 意外な言葉にユニコーンはキョトンとなって目を丸くした。

 

「あんな風な子ほど、覚醒した時の爆発力は凄まじいよ。スペちゃんがいい例」

「その意見には私も同意する。ウララの奴は…我等の想像以上に化ける可能性を秘めているやもしれんぞ?」

 

 腕を組んでニヒルな笑みを浮かべるフウウンサイキであったが、その口には棒付きキャンディーが咥えられているので、いまいち締まらない。

 

「…で、もうレースは終わったわけだが、これからどうする?」

「貴女達は?」

「取り敢えず、ライブを観て行こうとは思っている。その後はアイツの下まで行ってやるつもりだ」

「じゃあ、私もそれに付き合う」

「いいんですか? この会場にはスピカのメンバーも来ているんでしょう?」

「トレーナーさんには後でメールをしておけばいい。それよりも、今はパスチャーキングさんと話がしてみたい」

「…だ、そうですけど?」

「大人しそうな顔をして意外と頑固だからな…。別に断る理由も無いから構いはしないのだがな」

「決まりだね」

「やれやれ……」

 

 後頭部を掻きながら溜息を吐くフウウンサイキではあったが、その顔は笑っていた。

 

 

 

 

・・・・・

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・・

 

 

 

 

 

 ライブ終了後。

 舞台裏にて先程の三人とパスチャーキングが会っていた。

 

「見事なライブだった。ダンスのキレも素晴らしかったぞ」

「ワォ! フウウンサイキにユニコーンドリル! それに…サイレンスズスカ? また珍しいトリオね」

「スズカさんも、パスチャーさんのレースを観に来てたらしいですよ」

「Really!? それはホントウですカッ!?」

「本当だよ。…パスチャーキングさん」

 

 スズカが一歩前に出て、自分よりも少しだけ背の高い彼女の事を見上げる。

 その目は鋭く、刃のように輝いていた。

 

「今度は私と走ってほしいの。貴女とでしか見えない景色を見てみたいから」

「……OKよ。そのchallenging…喜んで受けるワ」

 

 嘗ては挑戦する側だった自分が、今では挑戦をされる側になる。

 一人のウマ娘として、断る事など出来る筈も無い。

 

「では、そろそろ行くとするか。外で待っているぞ」

「慌てなくても大丈夫ですからね~」

「それじゃあ。今日はお疲れ様」

 

 去りゆく三人の背中を見つめながら、パスチャーは誰かに向かって呟いた。

 

「…ミーがここまで来れたのは、支え合えるFriend達がいたから。競い合えるrival達がいてくれたから。そうよネ……ジャック…メリー…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




キングヘイローは同じ『キング』だから、エルコンドルパサーは同じアメリカ出身だから絡めました。
因みにレース展開は適当に考えました。

ウマ娘となったパスチャーキングは黒髪ロングの美人で、分かりやすいぐらいのボン! キュ! ボン! です。
レースの最中なんて当然のように揺れ捲りです。

余談ですが、マスクを外したエルちゃんが可愛過ぎて辛いです。

次回はチームSRWのリーダーが登場予定。
どんな時もBGMを強制的に変えて、ドイツ語で『穴馬』の意味を持つ、料理の達人で皆からも非常に頼りにされている、あの方が出る…?
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