我ら! チームSRW!   作:とんこつラーメン

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今回から次回にかけて、フウウンサイキのレースをお送りします。

それに合わせて、なんとか頑張ってモブウマ娘達の名前を調べました。

一から名前を考えるのはまだまだ難しそうですからね。






燃え上がれ闘志、忌まわしき宿命を越えて

 秋華賞。

 秋に行われるGⅠレースであり、数多くのウマ娘達が秋の女王の座を狙って出走してくる戦い。

 チームSRWに所属するフウウンサイキも、このレースへと出場する予定となっている。

 

「…………」

 

 そのフウウンサイキはと言うと、自分の控え室にて座禅を組み一人で精神集中をしていた。

 先程まではチームメイトたちが来ていて応援などをしていたが、レース開始まであと少しと言う時間になったので、彼女達は観客席に移動して一人にさせた。

 

 目を瞑り、耳も尻尾も微動だにしない。

 そんな彼女の右目だけが僅かに開かれ、ドアの方を見た。

 

「……入ってきたらどうだ? そんな所にいたら不審者と間違われるぞ」

 

 その一言で観念したのか、ドアの向こうにいた存在がゆっくりと入ってくる。

 

「…流石は私の数少ない友人であるフウウンサイキ君だ。まさか、ドア越しに私の気配を見破ってしまうとは」

 

 両手をヒラヒラとさせながら来たのは、メジロマックイーンと同じぐらいに付き合いが長くなっているアグネスタキオンだった。

 今日もまた、制服の上に白衣を着た独特のファッションで来ている。

 

「君がレース前に座禅を組んでいるとは、今日のレースは相当に気合が入っているという事だね」

「勘違いをするな。私はどんなレースにも常に全力で挑んでいる。それが、同じ時代を生きる同志でありライバルでもあるウマ娘たち全員に対する礼儀だからな」

「相変わらず、息の詰まりそうな生き方をしているんだね。まぁ…それが君の魅力でもあるんだけどさ」

「何が言いたい?」

 

 片目だけでなく、両目をハッキリを見開いてからタキオンを見る。

 彼女の顔は珍しく真剣になっていて、いつもの飄々とした感じは微塵も無い。

 

「今回の秋華賞には、君を慕っているウオッカやダイワスカーレットも出場する事になっている」

「らしいな。だが、誰が相手であろうともやる事は変わらない。全力で走り、全力で勝利する。それだけだ」

「そんな事は分かり切っているよ」

 

 傍に会った椅子に腰かけ、脚を組んでフウウンサイキを見つめる。

 呼吸は整っているし、疲労している様子も無い。

 コンディションは間違いなく完璧だった。

 まさに『絶好調』と言えるだろう。

 

「君は、私が目指しているものを知っているかい?」

「限界のその先…だったか」

「そうだ。私の身体は私自身が誰よりもよく知っている。その限界もね」

「タキオン……」

「私はね、フウウンサイキ……君こそが真の意味で『限界を越える』存在になりうるのではないかと推察しているんだよ」

「私が……?」

 

 部屋に来た時にユニコーンドリルが置いて行ったペットボトルのお茶を手に取って、紙コップに入れてから一口。

 

「君はもう扉の前に立っている。あとはソレを開くだけだ。見せてくれ…限界の先を。ウマ娘の可能性を」

「…いいだろう。皆と一緒に見ていろ」

「フフ…楽しみに待っているよ」

 

 軽く手を振ってから、タキオンは部屋を出て行った。

 一人になってから、フウウンサイキは考える。

 

「限界の先…か」

 

 その言葉をより明確に表現するものを彼女は知っている。

 それは嘗て、彼女の師匠や想い人が到達した究極の領域。

 全ての邪念を消し去り、まるで澄み切った水のような心。

 

「私に至れるのか…あの境地に……師匠やドモン君のように……」

 

 修行はしてきた。武術もレースも常に全力でやってきた。

 怒りに振り回されたことなんて一度も無い。

 条件だけならば揃っているようにも感じられるが、フウウンサイキには分かっているのだ。

 何かが足りない。致命的な何かが。

 

「……時間か」

 

 座禅を解き、無音で立ち上がる。

 考えてても仕方がない。

 今は唯、駆け抜けるのみだ。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 観客席には、チームSRWのメンバーだけでなく、チームスピカのメンバーも駆けつけていた。

 勿論、同じチームメンバーであるウオッカとダイワスカーレットを応援する為だろう。

 

「やっぱり、他のウマ娘達の顔つきがいつもとは完全に違うな……」

 

 スピカのトレーナーである沖野が険しい顔をしながら呟く。

 それを傍で聞いていたスペシャルウィークが心配そうな表情をする。

 

「フウウンサイキさんが出るから…でしょうか…」

「だろうな。悔しいが、アイツの実力は完全に頭一つ分以上に抜き出ている。格闘技で鍛えている足腰がダイレクトにレースに反映されてるからな…」

 

 他のチームでも、フウウンサイキの評価は非常に高い。

 多少の放浪癖がある事を除いても、かなりの引っ張りだこだった。

 

「この前、テイオーはフウウンサイキさんと話をしたのでしょう? どんな様子でしたの?」

「凄かったよ…本当に。完全に圧倒されちゃった感じかな」

「圧倒……」

「なんとなくだけど、マックイーンと仲がいい理由が分かったかもしれない」

「は…はぁっ!?」

 

 何気なく聞いてみたマックイーンだったが、完全に藪蛇だった。

 多少の事は冗談で流せるように頑張りましょう。

 

「あれ? ゴルシさんは?」

 

 いつの間にか姿を消していたゴルシを探してスズカが周囲を見渡す。

 それを見た沖野は、ジト目で少し先を指差す。

 

「あそこでなんか弁当売ってる」

「え?」

 

 そう言われて振り向くと、なにやら前にも見たことがあるような法被を着たゴルシが普通に仕事をしていた。

 意外と売り上げているのが地味にムカついた。

 

「ゴルシちゃ~ん! 私にもちょ~だ~い!」

「あいよ! …って、ウララじゃねぇか。お前も来てたのか?」

「うん! フウウンサイキちゃんの応援に来たの!」

 

 いつものように100万ドルの笑顔でフウウンサイキの顔写真が張られている団扇を見せる。

 因みにこれ、寺田トレーナーの手作りである。

 トレセン学園の購買部でも現在絶賛販売中。税込200円。

 

「ミーにもワンモアプリーズね!」

「お~! パスチャーキングもかよ! つーか、チームSRW勢揃いかよ! なんだ? 今からバルマーかインスペクターとかが攻めてくんのか?」

 

 来るわけないだろ。

 

「因みに、ユーゼスのオッサンとは前にホットドッグの大食い競争で壮絶な死闘を演じた仲だぜ? そして、ヴィガジの頭を剃ったのはアタシだ」

 

 ゴルシなら本当にやってそうで普通に怖い。

 

「ふむ…中々に良い味付けの唐揚げだ。肉汁も悪くない。やるな」

「おぉ~! あのアウセンザイターから褒められるとは、アタシの料理の腕も来るところまで来たって感じか? よし、今度試しに遠月学園に殴り込みでも掛けるか! マックイーンと一緒に」

「なんでそこで私を巻き込みますのッ!?」

 

 さっきまで傍観を決め込んでいたのに、やっぱりゴルシと言う名の運命からは彼女の脚力を以てしても逃げられないようだ。

 

「フウウンサイキが出るんだから、そりゃ応援に来るよな…チームSRW」

 

 沖野だけじゃない。学園のトレーナーならば誰もが一度は鍛えてみたいと思う程の錚々たる面々。

 テイオーからの話を聞いて、ハルウララすらも今や立派にその競合軍団に馴染んでいるように見えた。

 

「ウララちゃん…!」

 

 そして、そのテイオーは完全にウララも越えるべき壁として認識していた。

 テイオーだけではなく、他のウマ娘達も今の覚醒しつつあるウララには一目置きつつある。

 学園と言う閉鎖空間では、情報はあっという間に端まで行き渡るものだ。

 

「あ…チームスピカの皆さん。こんにちは」

「こんにちは、ユニコーンドリルさん」

 

 数少ない常識人枠であるユニコーンドリルが挨拶をすると、それにスペが答える。

 似た者同士なのか、この二人も妙に仲が良かった。

 

「あれ? そちらのトレーナーさんはいらっしゃらないんですか?」

「そうなんデース…。うちのTrainerは体調不良でお休みなんデース…」

「頭が痛い~! って言ってたよね~」

「あれは明らかに二日酔いの症状だったな。彼は間違いなく下戸だった筈だが…」

 

 スズカの純粋な疑問にSRWのメンバーはそれぞれ答える。

 すると、沖野が非常に気まずそうな顔をして顔を逸らした。

 

「いやおいトレーナー。なんでそこで思い切り顔を逸らす? それじゃあ、怪しんでくださいって言ってるようなもんだぜ? 少なくとも、この虹色の脳細胞を持つゴルシ様の目は誤魔化せないぞ? なんせ、金田一一に推理のノウハウを叩きこんだのはアタシなんだからな」

 

 ハイハイソウデスネー。

 ソレハスゴイナー。

 

「実は…昨夜、トレーナー同士の飲み会があってさ……それで酔って暴走したおハナさんと葵ちゃんが…その…寺田さんに絡んで無理矢理……」

「「「あぁ~…」」」

「???」

 

 パスチャーとユニコーン、アウセンの三人はすぐに事情を察したが、我らが純粋無垢なウララは全く何を言っているのは分からずにハテナマークを出していた。

 

「一応、俺と南坂、黒沼さんの三人で必死に止めたんだぞ? それでも全く歯が立たなかった……マジで恐ろしかったわ……」

 

 その時の事を思い出したのか、顔を青くして体を震わせる。

 完全なトラウマになってしまったようだ。

 

「あの人達に酒を飲ませ過ぎるのは危険だって身を持って理解出来たぜ……」

 

 また一つ賢くなったようでなにより。

 これをトレーニングに活かせれば最高だ。

 

「…帰ったら卵粥でも作ってやるか」

「本当に悪かった……」

 

 沖野トレーナー猛反。

 そんな事を話している間に、出走するウマ娘達がゲート付近に集まってくる。

 勿論、ダイワスカーレットやウオッカも一緒だ。

 

「もうそろそろゲートインか。どうやら間に合ったようだね」

「お前は……」

「「タキオンさん!」」

 

 アウセンザイターが驚き、スペとユニコーンが口を揃える。

 そんな彼女はと言うと、手に栄養ドリンクを持っていた。

 

「スカーレットを見に来たデスカ?」

「いいや、残念ながら違うよ。私が応援するのは彼女さ」

 

 タキオンの視線の先には、一人遅れてきたフウウンサイキの姿が。

 彼女の勝負服は、師匠の服を模したチャイナドレス風の道着になっているが、ちゃんと太腿の部分を隠す短いズボンを履いている。

 胸からヘソの部分にかけては、師匠の『愛機』を彷彿とさせる黒いジャケットを身に着けている。

 そして、その頭には想い人が常に身に着けていた赤い鉢巻が靡いていた。

 

「フウウンサイキ先輩……なんつープレッシャーだよ…!」

「気合の入り方は私達以上ね……当然だけど」

 

 周りからすれば、フウウンサイキはこれさえ勝てればもう一つの三冠…即ち『トリプルティアラ』の称号を手にする事になる。

 それは同時に、史上五人目の三冠ウマ娘が誕生するという事と同義なのだ。

 

「……………」

 

 無言のままゲートへと入る。

 彼女が遅れてきたことに対し、誰も何も言わない。

 否、言えないのだ。

 フウウンサイキが出す雰囲気に完全に飲まれていた。

 ダイワスカーレットとウオッカ以外は。

 

(あの人と一緒に走れる…それだけでもう悔いはない! なんて言いたいところだけど……)

(やるからには絶対に勝ちたい! 憧れのあの人に!)

 

 彼女に合わせて、他のウマ娘達もゲートに入る。

 決戦の時…迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、フウウンサイキ完全覚醒。

Gガン好きなら、それだけで分かりますよね?
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