我ら! チームSRW!   作:とんこつラーメン

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本格的なレース描写。

ちゃんと出来ているのかどうかドキドキです。

そして、このレースがチームSRWの新たなメンバー登場にフラグに…?







我が心、明鏡止水

 フウウンサイキがゲートに入ったのを皮切りに、次々と他のウマ娘達もゲートへと入っていく。

 その様子を、解説席にて一組の男女が眺めていた。

 

『遂に始まります、秋の女王を決める秋華賞。今回、解説席には解説一筋ン十年のベテラン『ストーカー』さんに来ていただきました。ストーカーさん、今日のレースはどのように見ていますか?』

『そうですね……』

 

 オールバックに眼帯をした男性がウマ娘達の事をじっくり一人一人眺めていく。

 その眼光は鋭く、全てを見抜いてしまいそうな迫力があった。

 

『矢張り、一番人気でトリプルティアラにリーチが掛かっている2枠12番のフウウンサイキですね。ここから見ても一発で分かります。今日の彼女は今までの彼女とは一味も二味も違う』

『…と仰いますと?』

『なんと言いますかね…オーラが、別の言い方をすれば闘志が違います。私はこれまでにもずっと彼女のレースを見続けてきましたが、今日はそれまでとは明らかに空気が違う。まるで、彼女の周囲だけ空気が…空間が震えているようにさえ感じられる』

『確かに…表情もなんだか違いますね。やっぱり、三冠を意識している…と言う事なんでしょうか?』

『それも有るでしょうね。他のウマ娘達は、彼女から発せられているプレッシャーにどう打ち勝つかが鍵となるでしょう。とはいっても、既に何人かのウマ娘達はそのプレッシャーを力に変えているようですが』

『え?』

 

 ストーカーが肘を付きながら微笑を浮かべる。

 その目は二人のウマ娘に向いていた。

 

『1枠4番ウオッカ……同じく8番ダイワスカーレット……相手は自分達よりも絶対的に格上だと分かっているにも拘らず、彼女達は全く闘志を衰えさせていない。それどころか、逆に闘志を更に燃やしてさえいる』

『なんと…!』

『真の強者とは、己と敵対している者でさえも更なる高みへと導いてしまうと言います。この秋華賞……我々が想像している以上に荒れるやもしれませんね…!』

『これは楽しみになってきました! 各ウマ娘、全員がゲートインした模様です! ではストーカーさん! いつものをお願いします!』

『分かりました!』

 

 いきなり椅子の上に立ち上がり、眼帯と上着を脱ぎ去って声高らかに叫びだした!

 

『それでは……秋華賞レース! レディ……ゴ―――――――ッ!!!』

 

 ファンファーレがレース場全体に鳴り響く。

 遂に、決戦の火蓋が切って落とされたのだ。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 誰も何も言わない。

 後はただ、ゲートが開くのを待つばかり。

 頭の中にあるのは、誰よりも早くゴールに辿り着く事のみ。

 空は僅かに曇り始め、今にも天候が崩れそうになってはいるが、辛うじて現状を保っていた。

 

 ゲートの中にてスタートを待っている彼女達の想いは共通してただ一つ。

 誰よりも早くゴールへと辿り着く。ただそれだけだ。

 

 そして……ゲートが開いた!

 

『ゲートが開き各バ一斉にスタート!!』

 

 大歓声の中、全員が集団で固まって進んでいく。

 そんな状態でありながら、隙間を縫うようにして前へと進んでいくウマ娘がいた。

 

『まずは固まった状態からの始まりとなりました! 現在、先頭は11番のキズナワン! その後ろを7番サンバイザーと9番レジェーラが追い縋る! これはもしかして掛かってしまったのかっ!?』

『そうかもしれませんね。彼女達はまるで真ん中辺りに位置しているフウンサイキから逃げるように動いているように見えます。悪い意味でプレッシャーに飲まれてしまったのかもしれません』

 

 必死に少しでも差を広げようとする二人の後ろから、あるウマ娘が射程圏内へと収め始める。

 

『ウオッカ! ここで4番ウオッカが前に出てきました! まさか彼女も掛かってしまったのか~っ!?』

『違いますね。これは彼女の必勝手段。前へと出はするが、かといって出過ぎはしない。体力を維持しつつも良い位置をキープするつもりなのでしょう』

『現在ウオッカは三番手に位置しています! まだまだ大きく引き離された者はいない! こんな中、大注目の一番人気のフウウンサイキは7番手に位置しています!』

『非常に余裕のある走り……後ろに下がり過ぎなければ幾らでも後半で挽回が出来る。問題は、どこで一気に攻勢に出るかですね。少しでもタイミングを間違えれば致命傷になりかねません!』

『全くもって目が離せない状況になってきました! 果たして、ここからレースはどう動いていくのか~!』

 

 喉を潤す為に、レースを見ながらも器用に傍に置いてあったドリンクを手にするストーカー。

 その彼の目が大きく見開かれた!

 

『むっ!? これは…!?』

『今度はダイワスカーレットだ! 最初のコーナーに差し掛かったところで傍にいた16番ボルジアと18番クイーンベレーを追い抜いて、ダイワスカーレットが前へと出る! そしてそのまま、ウオッカの少し後ろについて4番手につきました! だが、その差は半バ身も無い! 殆ど密着状態になっている~!』

『これは気が抜けない状況になってきましたね。実力伯仲の相手が傍にいると言う事は、少しでも気を抜いた瞬間に追い抜かれる可能性があるという事。私には分かる…彼女達は我々には見えない牽制を幾度となく繰り返している!』

 

 第一コーナーを抜け、次の直線へと入っていく。

 ここで僅かではあるが、またレースが動く。

 誰もが注目していた彼女が前へと出てきたのだ。

 

『このタイミングで12番フウウンサイキが徐々にではあるが前へと出て来始めた! 彼女が遂にアクセルを踏みだしたのか~!?』

『いや…まだだ。フウウンサイキは攻め時を待っている。最高のタイミングを見計らいながらも自分にとっての最高の位置を探している!』

『6番タイガーヒルと10番クールマが必死に追い縋るが、全く追いつける気配がない! そうこうしている間に、もうすぐ第2コーナーへと差し掛かろうとしている! 未だに先頭はキズナワンだが、果たしてこのまま逃げ切れるのか~っ!?』

 

 全員が揃って第2コーナーへと入っていく。

 すると、ここで集団が真ん中から綺麗に分かたれた。

 

『おぉ~と! 第2コーナーでいきなりウオッカとダイワスカーレットがスピードを上げてきた~! 二人並ぶ形で一気にキズナワンとサンバイザーとレジェーラを抜き去ってトップに躍り出たー!! しかも、その際に二人の位置が逆転し、現在の先頭はダイワスカーレット! その僅か後ろにウオッカが並んでいる! って…えぇっ!?』

『こ…これはっ!?』

 

 一瞬目を離した隙。

 誰もがスカーレットとウオッカに目を奪われた僅かな瞬間に、いつの間にか彼女も同じように前へと出てきていた。

 

『フ…フウウンサイキだー!! まるでウオッカとダイワスカーレットに追従するかのようにして、フウウンサイキも先頭集団に潜り込んできた―!!』

『決着の時は近い…! ここから先は刹那の瞬きさえも許されませんよ! 会場にいる皆さん! そして画面の前にいる視聴者の皆さんも、決して目を離さないでください!!』

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

(いつか来るとは思っていた…けど!)

(まさか、私達に合わせて仕掛けてくるだなんて!)

 

 一着争いをしているウオッカとダイワスカーレットの真後ろで、フウウンサイキが付かず離れずの位置を完全にキープしている。

 現状、フウウンサイキは前の二人に阻まれているような状態になっているが、彼女の程のウマ娘ともなれば、一瞬で戦況を覆ることは容易だ。

 前の二人がフウウンサイキから一ミリでも前へと出ようと必死になっている時、彼女は頭の中で迷いを抱いていた。

 

(二人には悪いが、このまま抜き去る事は可能だ…。だが、本当にそれでいいのか? このまま勝って本当に私は限界を超えたと言えるのか? 自分自身を越えられないままの勝利なんて、このレースに参加した全てのウマ娘に対する冒涜なのではないのか?)

 

 そんな事を考えつつも速度は全く落とさないのは流石の一言ではあるが、このままでは事態は好転しない。

 一体どうすればいいのか。そんな事が不意に頭をよぎった時…フウウンサイキはとある幻影を見た。

 

(この馬鹿弟子がぁぁぁっ!!)

(し…師匠…!?)

 

 それは、嘗て彼女の前で死した師匠だった。

 生前と何ら変わりない姿で現れ、彼女に対して激高した。

 

(他の者達に対する冒涜だと? いつから貴様はそんなにも偉くなった!?)

(し…しかし…私は……)

(これまでの戦績や実力なぞ関係ない! この場にいる以上、全員が対等ぞ! どうしてそれが理解出来ん!!)

(全員が対等……)

(そうだ!)

 

 今度は彼女の『想い人』の幻影が現れる。

 彼もまた全く姿が変わっていない。

 

(俺も沢山迷って、皆に迷惑を掛けた。だが、それでも俺は立ち上がり続けた! 何故か分るか!?)

(それは……)

(勝ちたいからだ! 色んな人達に支えられながらも、戦い続けた俺の心の中には常にその思いだけがあった! お前はどうだッ!?)

(私は…私は……!)

 

 歯を食いしばり、拳を握りしめる。

 そっと目の前の扉に手を掛け、そして……

 

(余計な事なぞ考える必要はない!)

(このレースに…この戦いに勝ちたい! それだけでいいんだ!)

(勝ちたい…私は…!)

((前だけを見続けろ! 迷いも拘りも捨て去って、勝利へと向かって…叶えたい夢へと向かって只管に突き進め!! 未来と言う名の『到達点(ゴール)』へと!!))

(私は……勝ちたい!!! この戦いに!!!)

 

 『扉』は開かれた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 レースも完全に終盤に突入。

 あと僅かで決着が付く距離にて、突如として金色の光が辺りを包み込む。

 それは暖かな光。そして、静かな光でもあった。

 

(な……っ!? こ…こいつは…!?)

(フウウンサイキ先輩の身体が……!)

((黄金に光り輝いているッ!?))

 

 決してレースを妨害する程ではないが、それでも光は眩かった。

 走っている全てのウマ娘達を平常心に戻してしまうほどに。

 

「私の……!」

「え…?」

 

 大きく一歩を踏みしめた時、ダイワスカーレットは視界の端にて確かに見た。

 フウウンサイキの足元が焦げている様子を。

 何らかの理由によって燃えている事を。

 

「私の身体が真っ赤に燃える!!」

 

 明らかに雰囲気が変わる。

 まるで太陽のような熱を感じるのに、そこには確かな静寂もあった。

 

「勝利を掴めと! 轟き叫ぶ!!」

 

 次の瞬間、フウウンサイキの姿が消え去った。

 まるで風のように、光のように一瞬で。

 

『き…消えた――――っ!? フウウンサイキが消えてしまった――――っ!? 突如として光を放ったと思ったら、今度は姿を消してしまった―――っ!?』

『違います! よく見てください!! ウオッカとダイワスカーレットの前方を!!』

『こ…これは―――――――――――――っ!!?』

 

 二人の遥か前方、明らかに3~4バ身以上も離れた場所に全身を黄金に光り輝かせながら凄まじい速度で走っているフウウンサイキがいた!

 その姿はまるで金色の流星!

 一筋の光と共に、更に差を広げていく!!

 

『あれはまさか…明鏡止水っ!?』

『し…知っているのですかッ!?』

『はい! 精神を極限状態にし、心身の動作と感覚が別次元の領域へと到達させると言われているゾーン…あれは、その更に先にあると言われている究極の中の究極!! 有史以来、どのウマ娘も到達出来なかったとされる境地!! それこそが明鏡止水!! まさか、レース中に覚醒するウマ娘が現代に現れ、その瞬間をこの目で拝めるとは……! 間違いなく歴史的瞬間です!!!』

 

 勝利に対する想い。夢へと向かう信念。

 そして、師と思い人達の言葉。

 それらがフウウンサイキから一切の雑念を消し去り、遂には彼らと同じ領域へと自らを導いたのだ。

 

『し…信じられない!! なんというスピード!! もうこのウマ娘を止められる者は誰もいないのか―――っ!?』

『圧倒的……そうとしか言いようがない…!』

 

 前には誰もいない。

 あるのはゴールだけ。

 黄金に輝く憧れの先輩の背中を見て、ウオッカとダイワスカーレットはほんの一瞬だけ笑みを浮かべた。

 

(はは……すげぇよ……マジで凄すぎだぜ……フウウンサイキ先輩……!)

(私達…こんなにも凄い人に勝負を挑もうとしてたのね……けど!)

 

 普通ならば心が折れるところだろうが、この二人は違った。

 否、二人だけではない。

 レースに参加した全てのウマ娘達の心は完全に一つとなっていた!

 

((だからこそ! その背中に追いついて、越えていきたい!!))

 

 もう差は開きすぎていて、一着は絶対に無理だろう。

 ならばせめて、二着の座は絶対に譲らない!

 あの人に少しでも近づくのは自分だ!

 その執念が、ウオッカとダイワスカーレットの闘争本能に火を着けた!

 

『フウウンサイキの後方では、ダイワスカーレットとウオッカの熾烈な二着争いが始まっている!! なんという壮絶な攻防!! こんなにも熱く燃え上がるレースが未だ嘗てあったでしょうか!!』

『私は…今…猛烈に感動しています…! 今の時代に生まれてよかった…!』

 

 当然の如く、フウウンサイキは誰よりも早くゴールへと辿り着く。

 その瞬間、レース場にいる全ての者達が確かに見た。

 彼女の背中に黄金に輝く翼があった事を。

 その背中を支えている、二人の男がいた事を。

 

『ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォルッ!!!!! フウウンサイキ、圧倒的過ぎる力を見せつけ一着でゴール!! 黄金に輝く秋の女王が誕生したと同時に、史上五人目となる三冠ウマ娘が誕生しました―――っ!!』

『これでまた…歴史が大きく動きますね……!』

『そして、激しい攻防の末に二着となったのはウオッカ!! 僅かな差でダイワスカーレットは三着となりました!!』

『彼女達も本当に見事でした! 今回のレースを切っ掛けにして、必ずや彼女達はこれまで以上に大きく成長してくれるでしょう!』

 

 こうして、フウウンサイキは遂に『限界の先』へと到達し、見事に秋華賞を制したのであった。

 当然、今回のレースは国内外に大きく知れ渡っていくことになる。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 レース場の片隅。

 観客席の一角にて一人の少女が興奮した様子でレースを見ていた。

 

「凄い……凄すぎる!! これがウマ娘同士のレース! なんて迫力なんだろう!」

 

 興奮した様子で何度も、その場でピョンピョンと飛び跳ねる。

 周りの大人は、それを微笑ましく見つめていた。

 

「少し早めに東京に来てレースを見ようと思って、ここまでやって来てみたけど……最高すぎ!! こんなのを目の前で見せつけられたら……」

 

 頭にある緑色の耳袋に入った耳がピョコピョコと動き、その尻尾が激しく揺れる。

 

「私の中にあるお父さん譲りのレーサー魂とマグネットパワーが燃え上がっちゃうよ!! あぁ……今から楽しみだなぁ……トレセン学園……。フウウンサイキさんのサインとか貰えるかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回はレース直後の様子から。

途中から普通に『明鏡止水 ~されどこの掌は烈火の如く~』を聞きながら書いてました。

自分でも驚くぐらいに執筆が捗ってしまった……。
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