私が一番最初に引き当てたSSRという事もあって愛着が湧きまくってるんですよね。
最初は何も考えずに育成をして失敗続き…で、ある程度慣れてきて、最低でも全ての目標をクリアするぐらいの事は出来始めたのでリベンジのつもりでやったら…強すぎました。
当時の自分がどれだけバカだったのかって実感しちゃいましたよ…。
あんなにも強いウマ娘の強さを引き出せていなかったとは…情けない限りです。
秋華賞…決着!
明鏡止水の境地へと至った事による圧倒的な速さにより、見事一着を獲得したフウウンサイキはトリプルティアラを獲得、同時に史上五人目となる三冠ウマ娘の称号をも手にした!
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…!」
レースを走り切り、フウウンサイキはまだ半ば呆然としながらも徐々に速度を落としていき、ゆっくりと止まった。
「か…勝った……のか……?」
なんだかまだ夢心地のような気分。
自分の心が極限まで研ぎ澄まされ、誰よりも早くゴールし勝利を手にする。
ついさっきまで、それ以外の事が全く考えられなくなっていた。
レースが終わった事でようやく、彼女は呼吸を整えつつ頭が冷えていく。
「私が…三冠……取ったのか……」
会場全体が割れんばかりの歓声で包まれる。
今になってようやくそれに気が付いたフウウンサイキは、袖で額を伝う汗を拭いながら観客席を見上げた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!! 感動したぞぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「こんなにも興奮したレースを見たのは初めてだ!! 本当におめでとう!!!」
「俺達は間違いなく歴史の生き証人になったんだ!! こんなに光栄なことは無いぜ!!」
「フウウンサイキ―――――!! 最高にカッコよかったぞ――――――っ!!!」
「アンタこそ間違いなく最高のウマ娘だ――――――――っ!!!」
今までにも多くの歓声を受けてきたことはあるが、今日のは間違いなくそれ以上だった。
観客達の声を聞き、ようやくフウウンサイキは実感する。
自分は勝利したのだと。あの最強の四人と同じ場所へと立ったのだと。
「ハ…ハハハ……! 勝った…勝ったんだ…私は……!」
いつもならば軽く受け流す事なのに、どうしてか今日だけは嬉しくて仕方がない。
三冠を手にしたからなのか。否、そうではない。
寧ろ、今までがおかしかったのだ。
この『喜び』は当然の事。
フウウンサイキは嬉しかったのだ。レースに勝ったことが単純に嬉しかった。
自分の感情に余計な理由なんてつけなくていい。
あるがままを受け入れればそれでいいのだ。
「「フウウンサイキ先輩!!」」
「ウオッカ…スカーレット……」
彼女と同じように激戦を繰り広げた後輩である二人が嬉しそうに話しかけてきた。
二人とも、フウウンサイキと同じように汗だくであるにも関わらず、その顔は非常に爽やかな笑顔を浮かべている。
「先輩の走り…本当に凄かったです!!」
「けど、次はこうはいきませんから! リベンジは必ず果たします!」
「…あぁ! 望むところだ! とはいえ、私もそう簡単には負けてやらんぞ!」
「「上等!!」」
激戦を繰り広げた三人のウマ娘がガシッと握手をする。
それだけでまた観客達が更に盛り上がった。
『なんて感動的な光景なのでしょうか! 戦いの後に生まれる友情…まさに青春!!』
『伝説は終わらない…否! これから始まるのです!! 皆さん、共に見届けましょう! 彼女達の戦いを! その雄姿を!!』
解説二人の締めで観客の興奮は最高潮に。
ガラスが割れてしまうんじゃないかと心配する程に。
「ところで先輩。まだ変身したまんまなんですか?」
「ほへ? 変身?」
ウオッカが言った何気ない一言に、フウウンサイキの目が点になる。
それを見て二人はようやく気が付く。
「もしかして先輩……」
「自覚なしだった…?」
「な…何がだ?」
自分の姿は自分じゃ見られないもの。
特にレース中に自分がどんな風になっているかだなんて気にしている暇はない。
「手鏡ならばここにありますわよ」
「なに?」
いきなり声を掛けられて振り向くと、そこには彼女にとって友人とも呼べる数少ないウマ娘であるメジロマックイーンの姿が。
正確には彼女だけでなく、チームスピカやチームSRWの皆や、レース前に会ったアグネスタキオンの姿もあった。
「フウウンサイキさん…あれが修行の成果なのですか?」
「そうとも言えるな」
「なんですの? その曖昧な言い方は」
「さぁな。それよりも手鏡を貸してくれ」
「はいはい」
マックイーンから手鏡を手渡され、レース後初めて自分の顔を見て…完全に固まった。
「……なんじゃこりゃ」
「いや…それはこっちの台詞なんですけど」
「レース終盤になっていきなりピカーッって光り出したんですよ? 気付いてなかったんですか?」
「あ…あぁ……」
レースが終わってもまだ金色のまま。
正直、こんなこと初めてなのでどうすればいいのか全く分からない。
(な…なんでこんな事になってるんだっ!? あ…そういえば、師匠やドモン君、シャッフル同盟の皆も同じようによく金色に光っていたような気が……。これってどうやって戻るのっ!? まさか…ずっとこのままだったりッ!?)
ンな訳ねーだろ。
本人はポーカーフェイスのまま頭の中で混乱しまくっているが、そんな事なんて全く知らない空気詠み人知らずの二人がいた。
「Congratulations!! 本当におめでとうございマース!! これでフウウンサイキがAutumn queenネ!! Tripe tiaraゲットデース!!」
「フッ…やっぱり、アタシの目に狂いは無かった。フウウンサイキこそが伝説のスーパーウマ娘だったんだ!!」
「「えぇ~っ!? そうだったの~っ!?」」
パスチャーキングは全身でフウウンサイキを称えているが、その横でゴルシがまたトンデモ発言をしている。
しかも、ハルウララとトウカイテイオーがそれを素直に信じる始末。
「なんかよ、こう…『波~!!』的なやつって出せないのか?」
「いやいやいや! 幾らなんでもそれは無茶振りが過ぎますってゴルシさん!」
「ユニコーンちゃんの言う通りですよ! 流石にそれは……」
「石破天驚拳……修行してみるか?」
「「なんかそれっぽいこと言ってるっ!?」」
((そこまでしなくていいから!!))
ゴルシの爆弾発言に対して必死にツッコむユニコーンドリルとスペシャルウィーク。
だが、そんな二人を余所にフウウンサイキは自分の顎に手を当てて真剣に考えだす。
そんな彼女に対し、師匠と兄弟弟子の幻影は必死に首を振る。
「フウウンサイキ」
「タキオン……」
いつも通りの飄々とした笑顔を見せながら、タキオンが彼女を手招きする。
「見させて貰ったよ。それが君の『限界の先』なんだね」
「そう…なるのかな」
「本当に凄いとしか言えない走りだった。解説も言っていたが…明鏡止水…か。言い得て妙だが、不思議としっくりと来る言葉だと思うよ」
明鏡止水。
まさか、本当に自分がその領域へと至れるとは思わなかった。
誇らしいような、ちょっぴり気恥ずかしいような。
言葉では言い表せないような気持だった。
「おっと。やっと元に戻れるようだね」
タキオンの言う通り、徐々にではあるがフウウンサイキの身体が元の色に戻っていく。
体を覆っていた熱が抜けていくような感覚を覚えながら、ようやく全身を覆っていた緊張が解れた気がした。
「おや? 君の右手の甲にある刺青のような物はなんだい? そんなもの、前は無かった筈だが……」
「刺青?」
そう言われて自分の手の甲を見てみると、そこには彼女もよく知っているハートの紋章があった。
「おぉ~! なんかめっちゃイカすッスね!」
「まるでトランプのマークみたいだけど……」
「これは…キング・オブ・ハートの紋章…!」
嘗ては師匠が、その後に想い人が継承し、今度は自分の手にそれがある。
これが意味する事を彼女は誰よりも理解していた。
(この世界で…私がシャッフルの紋章を受け継げと…その資格があると仰るのですか……?)
ふと空を見上げると、曇りかけていた空が晴れ、隙間から眩い陽光が差し込んでくる。
その向こうにて、二人が笑みを浮かべながら頷いているのが見えた。
(分かりました…! このフウウンサイキ…必ずや、この紋章に相応しいウマ娘になってみせます!!)
やるべき事がまた一つ増えてしまった。
けれど、それは決して嫌な事ではない。
寧ろ、何よりもやり甲斐がある事だ。
「遂に私達の所まで昇って来たな…フウウンサイキ」
「アウセンザイター…」
「これは、私達もウカウカしてられんな。帰ったら早速トレーニングをしなくては。恐らく、今日のレースは我が友シンボリルドルフも見ている筈。今頃、彼女は既にジャージに着替えて猛特訓の真っ最中やもしれん」
「あの会長が…猛特訓…!?」
自分にとって憧れの存在であるルドルフが猛特訓をする。
別におかしい事じゃないが、このレースを見てからというのが信じられなかった。
少なくとも、テイオーから見たアウセンザイターやシンボリルドルフは、常に冷静沈着で落ち着いているイメージがあったから。
「何も不思議な事ではないぞ。私以上に、我が友ルドルフは負けず嫌いなウマ娘だ。あんな燃えるようなレースを見せつけられれば、嫌でも闘争本能に火が点くというものだろう。君は違うのか? トウカイテイオー」
「ボクは……」
そんな事、有る筈がない。燃えない訳がない。
心が、魂が真っ赤に燃えている。
あの黄金に勝ちたいと。越えたいと!
「しっかし……とんでもない事になりやがったな。五人目の三冠ウマ娘…これは間違いなく国内外にあっという間に広まっていくだろう」
「そうなのですか? 沖野トレーナー」
「間違いないよ。この手の情報が広まる速度は常軌を逸してるからな。もしかしたら近い内、お前も日本を代表するウマ娘の一角として他の三冠ウマ娘達と一緒にジャパンカップに出場する事になるかもしれない」
「私が日本代表…か」
実際、彼女自身はネオ・ホンコンからネオ・ジャパンに途中から移籍したようなものだから、そんな自分が代表と言われてもなんだか実感が湧かない。
「フウウンサイキさん」
「スズカ…?」
彼女に声を掛けたスズカの顔は、穏やかながらも決意に満ちていた。
静かに燃える青い炎…そんなイメージを沸かせる程に。
「今度は私が相手よ」
「あ~! スズカさんだけズルいです! 私もフウウンサイキさんと走りたいです!」
「ボクも! ボクだって走りたいよ! そんでもって絶対に勝ってやる!」
「皆さんがそう仰るのならば、私も挑戦しない訳にはいきませんわね」
「お前達……」
チームスピカの皆(ゴルシを除く)から挑戦状を叩きつけられる。
これが『高みへと至る』という事なのか。
フウウンサイキは初めて、己の師匠が『ガンダム・ザ・ガンダム』の称号を貰った時の気持ちを分かった気がした。
「ならば、全員纏めて掛かってくるがいい! 例え何人が相手であろうとも、この私の前は走らせん!」
堂々と全員の挑戦を受けた彼女の目にもう迷いはない。
前だけを見つめ、突き進むだけだ。
自分の夢へと向かって。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
レース後のインタビュー。
フウウンサイキだけでなく、壮絶な激闘を演じたウオッカとダイワスカーレットも一緒にインタビューを受けていた。
大勢の報道関係の人間が並ぶ中、彼女達は堂々と質問に答えている。
「フウウンサイキさん! 三冠を手にして五人目の三冠ウマ娘となった感想はどうですかっ!?」
「感無量…とだけ言っておきます。無論、だからと言って慢心する気は無いですが」
彼女から発せられる空気にインタビュアーは少しだけ気圧される。
両隣にいる二人はもう慣れてしまったので平気な顔をしているが。
「ここから更に自分の足に磨きをかけていきます。これは終わりではなく始まりなのだから」
「始まり…ですか?」
「そうです。前にも言いましたが、ここで改めて私が目標として掲げている事を言っておきましょう」
フウウンサイキの目つきが急に変わり、後輩二人は『いつものが来る』と感じて目をキラキラさせながら少し離れた。
「私の夢は唯一つ! 引退するその瞬間まで、出場するレースの全てに勝利すること!! 私はいつ、誰の挑戦でも喜んで受けよう! 捨て身のつもりで掛かってくるがいい!! 例え誰が相手でも、私は必ずや勝利してみせる!! この……」
右手の甲を掲げ、師と友から継承した称号を高らかに宣言する!
「キング・オブ・ハートの名にかけて!!!」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
ウィニングライブ。
レースにて一着を取ったウマ娘がセンターを務めるライブで、彼女達はレースの特訓だけでなくダンスや歌のレッスンなども普段から欠かさず行っている。
それは勿論、何事にも全力投球がモットーであるフウウンサイキも例外ではない。
舞台裏、フウウンサイキとダイワスカーレット、ウオッカの三人は本番を前に待機していた。
「まさか、先輩と一緒に走れるだけじゃなくて、歌まで歌えるなんてな~…。オレ、マジで今日の事は一生忘れないわ……」
「大袈裟…って言いたいけど、実は私も地味に感動はしてるのよね」
そんな風に語る二人の手には汗が滲んでいて、レースの時よりも緊張していることが伺えた。
「そういや、今日歌う曲は新曲だって聞かされてるんですけど…」
「私も。なんかレースへの出場が決まった時に歌詞とか教えられました。なんでか曲名は書かれてなかったけど」
「それは普通に印刷ミスなんじゃないのか?」
変な所で抜けているトレセン学園に呆れながらも、フウウンサイキは息を吐きながら今日歌う歌の事を話した。
「まぁ…その…なんだ。実はだな、今回歌う事になっている曲は、実は私が作曲家の方に頼んで作って貰ったものなんだ……」
「「マジでッ!?」」
「マジで。因みに、作詞は私がした」
「「うそぉっ!?」」
「ホント」
ちょっと恥ずかしげに語るフウウンサイキであったが、なんだかワクワクしているようにも見えた。
常に威風堂々としている彼女の少女らしい一面を見て、逆に親近感が湧いた二人。
「曲名はなんていうんですか?」
「言ってもいいが……笑うなよ?」
「「はい!」」
「曲名は……」
「勝利者達の挽歌……だ」
それから一年後、とある山奥にて……。
サイキ「石破…天驚けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!!!」
ウオッカ&スカーレット「「ホントになんか出たぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」
ゴルシ「すっげぇぇぇぇぇぇぇっ!! これでフリーザも一撃だな!!」
けど、当然ながらレースには使えないので完全に宝の持ち腐れになったとさ。