立ち位置的にはフェニックス一輝とアンドロメダ瞬を足して二で割ったようなキャラです。
要は、最後に出てきた主役メンバーだけど、性格は後輩気質…的な?
トレセン学園の校門前に、一人のウマ娘が興奮した様子で校舎を眺めていた。
「遂に…遂に来た! 夢にまで見たトレセン学園に! お父さん! お母さん! なんかロボっぽいお爺ちゃん! 私…ここで頑張って、絶対に立派なウマ娘になってみせるからね!」
やる気は十分にあるようで、さっきからずっと耳と尻尾が動きまくっている。
心なしか鼻息も荒いような気がするが、華の乙女なので野暮な事はしない。
実際、道行く人々も彼女の事を微笑ましく見ていた。
「なんか妙に見られてる気が……どこか変かな?」
急いで鞄の中から手鏡を出して身嗜みをチェックする。
髪が外に跳ねているショートヘアで、髪色は全体的に緑色なのだが、前髪に白いメッシュが入っていて、毛先に行くにつれて前髪と同じように白く変化していた。
「ん~…別にいつも通りの私…だよね?」
色々と角度を変えながら髪をチェックしていると、彼女の姿に気が付いた一人の女性が近づいてきて話しかけてきた。
「あの~…もしかして、今日から転入予定のウマ娘さんですか?」
「え? は…はい! そうですけど…どなたですか?」
「すみません。自己紹介が遅れましたね。私、トレセン学園理事長の秘書を務めています『駿川たづな』と申します。これから、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いします! わ…私は…えと…パーンサロイドと言います! 今日からお世話になります!」
転入生…パーンサロイドは元気いっぱいに挨拶をした。
まだまだ緊張はしているようだが、それでも頑張ろうという気概は充分に感じられた。
「はい。それでは早速、各施設などを案内…したかったんですけど……」
「どうかしたんですか?」
「実は、まだ終わっていない仕事が沢山ありまして…急いで片付けないといけないんです」
「それは大変じゃないですか! 私なんかに構ってないで、そちらの方を優先させて下さい! お仕事は大事です!」
「ご立派なんですね」
「実家ではよく、お父さんの仕事を手伝ったりしてましたので!」
「御実家と言うと…確か『司馬モータース』でしたよね?」
「はい! なので、実は機械弄りとかすっごく得意です!」
「それは頼もしいですね。あ…良い所に」
「へ?」
本当に忙しいのかよく分からない中で話していると、二人の傍を三人組のウマ娘達が歩いてきた。
「ユニコーンドリル! 次のレースで勝負だ!!」
「残念でした。次のレースは見送る事にしてるんです」
「な~ん~で~だ~よ~!」
「どこか怪我でもしてるの?」
「そうじゃありません。純粋にまだまだトレーニング不足だと判断しただけです。満足いかない状態で出て後悔するよりは、自分が心から納得した状態で全力を尽くした方が絶対にいいじゃないですか」
「成る程ね~…なんか分かるかも。とかなんとかいって、本当はこの前のフウウンサイキのレースに影響されたんでしょ?」
「まぁ…それもありますね。目の前であんな走りを見せられたら、そりゃ嫌でも意識しますって」
歩いてきたのは、ユニコーンドリルとツインターボ、それからトウカイテイオーという珍しい組み合わせだった。
「そこの皆さん! 少しいいですかっ!?」
「「「ん?」」」
急に呼び止められて、三人はたづなの方へと歩いていくことに。
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・・
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「…という訳なんです。お願いできませんか?」
「成る程ね~」
咄嗟に捕まえた三人に事情を説明し、パーンサロイドの事を頼もうとしていた。
当の本人は、その後ろにて早くも出会ってしまった有名人にガクブル状態になってしまった。
(あ…あの人は…中距離の天才と呼ばれているトウカイテイオーさん!? その横にいるのは『
いつもなら、すぐにサインを要求している彼女だが、興奮と混乱の余り、完全に頭の中からすっぽ抜けていた。
因みに、ツインターボの事は全く視界に入っていない。哀れ。
「全然いいよ! ね、二人とも!」
「勿論です。困った時はお互い様。僕達も普段から、たづなさんにはお世話になりっぱなしですから。こんな時ぐらいは頼ってください」
「ターボもオッケーだぞ!」
「ありがとうございます…皆さん! では、よろしくお願いしますね!」
丁寧にお辞儀をしてから、たづなは校舎の中へと急いで入っていった。
「それじゃ、行こうか。えっと……」
「パ…パーンサロイドっていいます! まさか、あのトウカイテイオーさんとユニコーンドリルさんに案内して貰えるなんて…光栄過ぎます!」
「そ…そう? そこまで言われると、なんだか照れるな~」
「僕の事まで知ってるだなんて…ビックリです」
「ターボの事はッ!?」
「えっと……ごめんなさい」
「えぇ~~~~~っ!?」
頑張れツインターボ!
地味に君の人気は高いぞ!!
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まず四人が訪れたのは、各教室が並んでいる校舎内。
これから先、トレーニング場と同じぐらい沢山通う場所なので、真っ先に覚えて然るべきだと判断したのだろう。
「ここが私達の教室がある場所だよ」
「わぁ~…綺麗な教室だな~…。前に私が通ってた学校とは全然違うや…」
「因みに、ここは中等部の教室ね。高等部の教室はまた別の場所にあるんだ。流石にそこはまだ案内しなくても大丈夫だと思うから、次に行くね?」
「はい! ところで、フウウンサイキさんって高等部なんですか?」
なにやら鼻息荒く尋ねてきたパーンサロイドを見て、テイオーとユニコーンはすぐに『はは~ん』と察した。
「サイキさんは高等部だよ。心配しなくても、ここにいる以上は必ずいつか会えるから」
「わ…私は別にそんな事なんて…ごにょごにょ…」
(((バレバレだっつーの)))
あのツインターボすらも心の中でツッコむということは、かなりバレバレな反応だったようだ。
「なんか、どこかでターボがバカにされたような気がする」
気のせいですよ。
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次にやって来たのは食堂。
近くを通り掛かった時にいい匂いがしたので入ってみた。
「ここが食堂。メニューも豊富で、許可さえ取れば自分で料理も出来るんだよ」
「毎回思うけど、ここってかなりの大人数が入るよね~」
「ほぇ~……部屋中からいい匂いが漂って……ん?」
なにやら奇妙な『山』が食堂の一角にある事に気が付く。
パーンサロイドは知る筈もないが、ある意味でトレセン学園の名物となっている光景だ。
「まーたやってるんだ…スペ先輩とオグリ先輩……」
「一体、あの細い体のどこにあれだけの量が入るんだろうね……冗談抜きでブラックホールでしょ……」
「あれ見てたら、ターボもお腹空いてきた」
「「分かる」」
見ているだけでお腹一杯になりそうではあるが、その料理を作っている者を知っていれば話は別だ。
なんて言っている内に、その料理人がまた別の品を持ってきた。
「待たせたな! 超大盛りのニンジンカレー(中辛)だ!」
「「いただきます!!」」
今日も今日とて趣味の料理で皆の舌を唸らせるのは、チームSRWリーダーのアウセンザイター。
ブランシュタイン家の紋章が描かれている黒いエプロンを着用し、華麗な包丁さばきで次々と絶品料理を量産していく。
「あ…あれってまさか…本物のアウセンザイターさんですかッ!? 三冠四天王改め、三冠五人衆の一角のッ!?」
「そうだよ。ああして食堂で料理をするのが、あの人の日課みたいになってるんだよね。最高に美味しい料理を食べられるから全く文句とか無いけど」
「うんうん。この前、御馳走して貰った『魚介類のマリネ』も凄く美味しかったよ!」
「ターボも、アウセンザイターの料理大好き!」
三人がの話を聞きながら、パーンサロイドはある事に気が付く。
カウンター席になにやら見たことがあるようなウマ娘達が並んで座っていた。
(あそこにいるのって…同じく三冠五人衆のシンボリルドルフさんっ!? その隣にいるのは『女帝』エアグルーヴさんだったりするッ!? え? なにこれ? どんな夢空間? つーか、さっきさらっと流したけど、あの大食いしてるのって日本総大将とまで言われているスペシャルウィークさんに、嘗ては『神』とさえ言われていたオグリキャップさんっ!? この食堂にいるウマ娘って、全員が超絶有名人ばかりじゃないのッ!?)
彼女からしたらとんでもない光景に、思わず白目を向いて気を失いそうになっているパーンサイロド。
かなり距離が離れている筈にも拘らず、そんな彼女達にアウセンザイターは気が付いた。
「そこにいるのは…ユニコーンドリルにトウカイテイオー。それからツインターボか。もう一人は見慣れないが…もしや転入生か?」
「そうなんです。今、色んな場所を案内して回ってるんですよ」
「成る程な。では、そんな君達にご褒美をあげよう。カウンターに座って待っていたまえ」
(カ…カウンターに座るって…あのシンボリルドルフさんやエアグルーヴさんと相席するって事っ!? なにそれ、どんな幸運? 私、転入初日にて早くも今年分の運を全部使い果たしてない?)
流石にそれは大袈裟すぎ。
パーンサロイドがアワアワしている間に、彼女の背中を押して席に座る。
「ユニコーン、その子が例の転入生か?」
「はい。ほら、自己紹介」
「ひゃ…ひゃい! パ…パパパパパパ…パーンサロイドといいましゅ! どうかよろしくお願いいたします!」
噛みまくり。
だが、そんな事なんて全く気にしないとんでもなく懐が広いシンボリルドルフは普通に受け流した。
「初めまして。シンボリルドルフ…生徒会長をしている。よろしくな」
「副会長のエアグルーヴだ。えっと…大丈夫か?」
「らいりょうぶれす……」
((いや、全然大丈夫じゃないだろ))
出逢って早々、大先輩二人にツッコまれる。
「サイン貰ってもいいですか?」
「「いきなり図々しいっ!?」」
「構わないぞ」
「「いいのっ!?」」
「あ。ユニコーンドリルさんとトウカイテイオーさんのサインも貰っていいですか?」
「「ボク達もっ!?」」
怒涛のツッコミをしている間に、ルドルフは慣れた様子でサインをしていた。
一体どこで練習したのだろうか。
「お~な~か~す~い~た~な~」
因みに、ターボはサイン云々の話は耳に入っていないようで、さっきから足をブラブラとさせていた。
「よし…後は……」
調理場の奥からアウセンザイターの声が聞こえてくる。
もうすぐ完成するのだろうか。
「ランツェ・カノーネ(ケチャップ)発射!」
そんな叫びが聞こえた数秒後、アウセンザイターは4人分の皿を持って戻ってきた。
「お待たせした。私特製のハンバーガーだ」
「「「「おぉ~!!」」」」
「ユニコーンはフィレオフィッシュ、テイオーはダブルチーズバーガー、ターボは月見バーガー、パーンサロイドはベーコンレタスだ」
バーガー自体は店でも食べれるものだが、彼女が作ったそれは明らかに完成度が違った。
どれもこれもが見ただけで超絶絶品だと五感全てで理解出来てしまうから。
「「「「いただきます!」」」」
我慢が出来ずに、四人は同時にかぶりつく。
その顔はすぐに満面の笑みへと変わる。
「「「「美味しい~♡」」」」
凝った言葉なんていらない。
というか、言葉では言い表せない程の美味しさ。
語るよりも食べたい。
そう思わせるバーガーたちだった。
「あれ? なんかさっきしれっと私の名前を呼ばれたような気がするけど…まだアウセンザイターさんには教えてませんよね?」
「フッ……調理をしながらもちゃんと聞いていたのさ」
((地獄耳だ…))
取り敢えず、心の中でツッコんでおいてから食事に集中する。
美味しい料理に勝てる女の子なんていない。
「お前達、食堂の次はどこに行くつもりだったんだ?」
「もぐもぐ……まだ決めてませんでしたね。適当にぶらつきながら案内してるって感じでしたし」
「ならば、生徒会室に来ないか?」
「いいの会長ッ!?」
「勿論だとも。学園にいる以上はいつかは来る機会もあるだろうしな」
「会長の仰る通りだな。場所ぐらいは覚えていても損は無いだろう」
ルドルフとグルーヴの意見を聞き、ユニコーンとテイオーは顔を合わせてから頷く。
「それじゃあ……」
「お言葉に甘えて」
「んんっ!?」
なんか、自分の知らない所で話が進んでいて、パーンサロイドは咳き込んでしまいそうになって、急いで傍にあった水を飲む。
(せ…生徒会室って……普段からシンボリルドルフさんやエアグルーヴさんがいる場所に行けるのっ!? 運を使い過ぎてマイナスになってないっ!?)
無用な心配をしているパーンサロイドの横で、ツインターボは無邪気にバーガーを食べながら口の周りをケチャップだらけにしていた。
完全な後輩枠になったパーンサロイドちゃん。
憧れの人物ばかりの環境で、彼女はどんな生活をしていくのか?
それと、思ったよりも楽しくなってきたので、短編から連載に変えました。
次回はパーンサロイドの校舎案内の続きです。
今回登場しなかった他のメンバーを出す予定ですが、どんな反応を見せてくれるのでしょうか?