魔人ブウを倒してから1年半、地球には再び長い平和が訪れていた。しかし、ブウとの戦いの最中には既に悪の手が忍んでいたことを、知る者はいなかった。
エイジ775の夏頃、オレンジスターハイスクールに通う孫悟空の息子孫悟飯は、夏休みに入っていた。その間、父親の孫悟空と時間を共にすることも多かった。
「父さん、一緒に釣りに行くなんて久しぶりじゃないですか?」
「そうだな、セルゲームの前に釣りしたのは覚えてっけど、その後すぐオラが死んじまったかんな。」
「悟天はお父さんと釣りをするの、初めてじゃないか?」
「うん、今までは兄ちゃんと2人で釣りするだけだったし、お父さんもいるとやっぱり楽しいや!」
「そいつはよかった、ようし悟飯!悟天!沢山釣って帰って、母さんにご馳走してもらうぞ!」
「「はい!」」
彼らは平和なひと時を満遍なく楽しんだ。その一方で、平和に浮かれず鍛錬を続ける1人のサイヤ人の姿も見えた。
「たぁっ!はぁっ!」
シュッ シュッ
300倍の重力室で修行をしているサイヤ人の王子・ベジータ。ここ最近はこの重力室に引きこもり修行を続けている。
「これではカカロットの領域に踏み込むことができん!!!」
バン
あれ以来ベジータは、孫悟空が持つ変身形態『超サイヤ人3』の習得を目指し、修行を続けていた。
「ベジータ!いい加減に出てきなさいよ!あんた何日そこに引きこもってるの!」
「うるさい!今この時期が1番肝心なんだ!邪魔するんじゃない!」
ベジータの妻・ブルマは、戦闘バカのベジータにかなり世話を焼いている。しかし、そんな戦闘バカのサイヤ人でも頑なに引きこもるわけではない。
「あっそ!せっかく今日はバーベキューしようと思ったのに。」
「...バーベキューだと...!?」
「気になるでしょぉ?だったら、シャワー浴びて着替えて待ってなさい!」
「チッ...」
誇り高きベジータも、食には抗えない。
生き残ったサイヤ人達は平和を満喫していた。
--------正午
ランチタイムの時間。多くの人々の飲食店内への移動が盛んなこの時間帯、都中に大きな影が降り立った。地鳴らしが響き渡り、人々が何事かと周囲を窺った。そこで人々が目にしたのは宇宙船の姿だった。
「う、宇宙船だぁあああああ!」
「パパ!宇宙船だよあれ!」
ザワザワ...ザワザワ...
人々が動揺をする中、宇宙船の中部にあるシェルターが開いた。中から出てきたのは1人の宇宙人だった。
「どうやら、ここが地球のようだな。」
(驚いた...サイヤ人が生息していながら、ここの星の者達は平和に暮らしている。一体サイヤ人達はこの星の何に絆されたのだ...?)
人々がその姿に驚く中。彼はこう告げた。
「我が名はフリジット。サイヤ人に復讐を果たし、この宇宙の征服を果たすのだ!!!」
ブゥゥウウウウウウウウン
フリジットはそう言い放つと浮かび上がり、巨大なパワーボールを都のど真ん中に向けて打ち放った。
カッ
「うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
フリジットの一撃により、華やかだった都の周辺は瞬く間に荒廃した。そんな騒動をいち早く目の当たりにしたのは、孫悟空だった。
「貴様...!!!」
悟空はフリジットがパワーボールを放つ前に巨大な気を薄々と感じ取り、その都に移動したが、手遅れだったのだ。
「早速獲物が1匹、かかったな...」
「!」
悟空はフリジットの姿がフリーザの姿に酷似していることに気づいた。
「ふ、フリーザ!!!」
「間違いない、奴が孫悟空だ...」
辺り一面静寂に包まれる中、激しく睨み合う孫悟空とフリジット。
(殺気を感じねぇ...奴はオラのことを知ってるようだが...)
『悟空よ...』
北の界王が悟空に呼びかけた。界王は、この騒動についてやフリジットの目的をキャッチしていた。
『奴はフリーザの弟だ。生き残ったサイヤ人達が地球にいることを知ったことから復讐を果たしにきたようだ...』
「復讐...?貴様、フリーザの仇を討ちにきたのか!?」
フリジットはその言葉を聞くなり、ニヤリと笑みを浮かべ、嘲笑い始めた。
「フハハハハハハハハハハハハハ!フリーザの仇討ちだと?くだらんな。むしろ、憎きフリーザを葬り去った孫悟空...貴様には感謝しているほどだ。」
「なっ!?」
界王からフリーザの弟だという事実を聞いていたこともあり、フリジットのフリーザへの厭忌心に驚いた。
「おめぇ、一体何が目的だ!」
「貴様たちサイヤ人への復讐だ。一族の仇討ちなどという綺麗事のためではない...!俺自身のためだ...」
しかし、彼から殺気を感じない悟空は、真の目的を掴めないままだった。
「おめぇの目的がなんなのか、オラ知ったこっちゃねえけどな...この地球をぶっ壊そうってんなら、容赦はしねぇぞ!」
ゴゴゴゴゴ...
悟空が戦闘態勢に入った。合わせるようにフリジットもパワーを上げていく。
「どぅありゃあああああああ!」
バシュン ドン!
悟空の猛攻も、フリジットに軽くあしらわれる。悟空はなんとか立て直すが...
「喰らえ!」
ズオッ...
フリジットはターゲットを悟空ではなく別の小さな都に切り替え、特大の一撃でその地域を壊滅させた。悟空の怒りを引き出すためである。
「しまった!!!」
悟空はなんとか食い止めようとしたが、時すでに遅し。その都はあっという間に荒野へと姿を変えた。
「貴様ッ...はあっ!!!」
シュウウウウウウウウ...
ブーン...
金色に輝く髪、強靭な肉体を照らすオーラ。悟空はフリーザを圧倒した伝説の戦士・超サイヤ人に変異した。
「ようやく本気を出したな。なら、この俺も本気を出すとしようか...!」
シュウゥウウウウウウ...
ドンッ
フリジットの気も最高潮まで高まった。殺気を隠していたフリジットからも殺気が溢れ満ちていた。
「これ以上地球や皆に手出しはさせねぇ!」
ドンッ
悟空は地面を思い切り蹴りフリジットに突撃した。
バッ
ドギュッ
「だりゃー!!!」
バキッ
「なんだと!?」
悟空の猪突猛進ぶりに怯むフリジット。悟空はそんなフリジットの僅かな隙を突いた。
「貰った!」
バシュッ
悟空がフリジットに一撃を重い浴びせた。しかし、その瞬間...
「はあっ!!!」
キュピッ
「な、何!?」
宇宙船から、別の仲間が飛び出し、悟空目掛けて縄を放った。悟空は抵抗する間も無く、呆気なく縄で捉えられた。すると、至近距離で構えていたフリジットが紫色に光り輝く液体を詰め込んだ注射器のようなもので悟空の体を正面から突き刺した。
グサッ
「あ...あっ...」
悟空は一瞬にして気絶してしまった。フリジットは再びニヤリと笑みを浮かべた。
「フッフッフッ...野蛮なサイヤ人、戦って解決するなどという可能性の一部でしかない愚かな打開策で物事を進めるなど、考慮すべきではなかったのだ。」
「やったなフリジット。まずは1匹目か...」
「すまんがカイス、孫悟空を宇宙船の中に縛りつけておいてくれ。」
フリジットの部下(?)であるカイスが、孫悟空を担ぎ運び出した。
「後はベジータだけだ...奴も捉えて2人まとめてこの手で引導を渡し、サイヤ人の歴史に終止符を打つのだ...!」
悟空を仕留めたフリジットが次に目をつけたのはベジータ...サイヤ人復讐計画・フリジット軍の侵攻が始まろうとしていた。
一方その頃、孫悟空の行方を知らずに困惑している悟飯と悟天は...
「父さん、一体どうしたんだろう...急に急ぎの用事が出来たって...」
「僕たちになんか隠し事でもしてるのかな?」
悟飯も悟天も真相を掴めないままだった。
「それに、父さんは絶対についてくるなって言っていた...これは、嫌な予感がする。」
悟空な言葉から、色々と察し始めた悟飯はカプセルコーポレーションに悟天と2人で赴き、ブルマ達に事情を説明した。
「え?孫くんがいきなり?」
カプセルコーポレーションでは、バーベキューの最中だった。
(チッ、何故悟飯と悟天のヤロウにも肉を分けるんだ...俺の分が減ってしまうだろう...!)
ベジータが小腹を空かせてウズウズしている中、悟飯と悟天は父親の行動を具体的にブルマに説明していた。
「なるほどね...孫くんが急にそんなこと言うなんて、よっぽどのことが...でも、一度家に帰って様子を見てみれば?そのうち帰ってくるかもしれないし。」
「わかりました...もしここに現れたら、家に帰るように伝えてくれませんか?」
「わかったわ。」
現段階では、行動の意図が掴めないために、悟飯と悟天一度家に帰り様子を見ることにした。
「帰る前に、沢山お肉あるから食べて行きなさい。チチさんには連絡入れておくから。」
「やったー!」
「チッ」
ベジータの腹は鳴るばかり...今起こっている出来事をまだ知る余地もない悟飯達、果たして悟空の行動の真相を掴めるのだろうか...。そして、帝王の弟・フリジットを倒す事は出来るのか...?