音のヒーローアカデミア   作:いろはす/1roh4su

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第一話・俺と入試と人救け

 事の始まりは中国、軽慶市。"発光する赤子"が生まれたというニュースだった。

以降各地で「超常」は発見され、いつしか「超常」は「日常」に、「架空(ゆめ)」は「現実」になった。

世界総人口の約八割が何らかの特異体質、"個性"を持っている超人社会となった現在、(ヴィラン)による犯罪が増加し、混乱渦巻く世の中で、かつてだれもが空想し憧れた一つの職業が脚光を浴びていた。

 

"ヒーロー"、そう呼ばれる職業である。

 

もうお察しの方もいるだろう。

この物語は、ある少年が仲間達とともに最高のヒーローの一人になる、そんな御伽噺だ。

 

 

 

 

 

 

――――雄英高校ヒーロー科。

そこはプロヒーローに必須の資格習得を目的とするヒーロー養成学校。全国同科中最も人気で最も難しく、その倍率は例年300を超える、いわば超名門校。

現役ナンバーワンヒーロー、オールマイトをはじめとした名立たるプロヒーロー達の母校でもあるその学校となればその高すぎる倍率も納得だ。

 

そんな雄英高校ヒーロー科の入学試験会場に俺は今いる。

周りを見渡すと大勢の受験者達(ライバル)

この場にいる人達全員蹴落とすくらいの気持ちで臨まないと。

意を決してモニターを見ると、逆立った金髪にサングラスの男性が喋りだす。

 

『今日は俺のライヴへようこそー!!! エヴィバディセイヘイ!!!』

 

静寂が痛い。どうやら実技試験の説明が始まったようだが、急にそんなテンションで来られても受験生としてはそれどころじゃないので返事をする者はいない。

 

『こいつあシヴィ―!!! 受験生のリスナー! 実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディー!?』

 

『YEAHH!!!』

 

またしても静寂。と思ったが後ろから何やら声が聞こえてきた。

 

「ボイスヒーロー≪プレゼント・マイク≫だすごい……!! ラジオ毎週聞いてるよ感激だなあ雄英の講師はみんなプロのヒーローなんだ」

 

どうやら彼は熱心なヒーローオタクらしい。

ブツブツと独り言を喋り続ける彼は隣に座っている少年に窘められその口を閉じる。

気を取られてしまったがともかく、入試要項は把握できた。

 

制限時間10分の間に、市街地を模した演習場で仮想敵を倒していく。仮想敵は強さに応じてポイントが割り振られた3タイプとポイントが割り振られていないお邪魔虫タイプが会場ごとに1体だけいる。こいつはポイントが得られないわりに大きく、相手にするのはあまり得策ではないだろう。そして当然、妨害などの行為はご法度でアイテム等の持ち込みは自由。

 

なにやら途中で質問をした男子受験生がさっきのヒーローオタクの彼に注意をしていたけど、物見遊山のつもりなら即刻去れとまで言う必要あったかなあ?

仮にも高校受験。物見遊山のつもりで来ている人なんていないだろうに。

 

何はともあれ、指定の演習場へ向かうとしますか!

 

 

 

 

 

 

更衣室で制服から動きやすいジャージに着替えた俺は、演習場の広さに口が開きっぱなしになってしまっていた。

 

「こんな広いのかよ……。雄英、お金持ってるなあ」

 

思わずひとりごちてしまう。広大な敷地に所狭しとビルが立ち並ぶその様はまさに市街地。

こんな演習場が複数あるなんて流石国立高校だ。

 

『ハイスタート―!』

 

え?

 

思わず思考が止まる。すたーと?なにが?

 

『どうしたあ!? 実践じゃカウントなんざねえんだよ!! 走れ走れぇ!!』

 

「しまッ…!?」

 

プレゼント・マイクの唐突な開始宣言で思考が止まったのは時間にして数秒。

いち早く思考を回復させたが遅い。すでに走り出してる人はいる。

 

「少し出遅れた!!」

 

だがまだ間に合う。俺は全力で演習場へと飛び込んだ。

すると早速ビルを破壊しながら突っ込んできたのは1Pの仮想敵。

 

「行動不能にすればいいんだよね!」

 

俺は個性で増強された己の拳で敵の関節を打ち抜いた。

わかってはいたが増強率が足りない。的確に弱点を攻撃しないととてもじゃないけど倒せない。

 

「余裕をもって戦いたいんだけどっ!!」

 

それには圧倒的に()()()()()()

的確にすべての関節を打ち抜いて1P敵を無力化する。

このままじゃさっきの説明の時に溜めた音もすぐに底をついてしまう。

 

「誰かが大きい音でもあげてくればいいんだけどそう都合よくは……」

 

BOOM!!!!

 

刹那、爆音が地面を揺らした。

見ると先程の説明会で注意されていたヒーローオタクな彼の隣にいた少年が掌から爆発を繰り出して敵を破壊していた。

 

「何はともあれ助かっ……」

 

『あと6分2秒~』

 

「ッ!? マズい!!」

 

咄嗟に爆音とアナウンスを吸音したので音は十分蓄えることができたけど……。

 

「時間を無駄にし過ぎた!!」

 

増強された脚力で駆けだす。試験時間の半分使って1Pだけなんて確実に落ちてしまう。

でもここまで音が溜まれば……

 

「あと6分位なら持つ!!」

 

 

 

 

 

 

「こいつで13P!!」

 

あれから3分ほどが経過した今、俺は比較的順調にポイントを稼いでいるが多分全然足りない。

というか爆発の人が倒し過ぎて敵の母数が明らかに減っているのだ。

 

「まだ0Pと遭遇してないのが唯一の幸運ってとこかな……って」

 

背後から聞き覚えのないとてつもなく重厚な駆動音がした。

まさかとは思うけど……。

恐る恐る振り返るとそこには今の今まで遭遇しなかった0P敵がそこに堂々と鎮座していた。

 

 

「0Pだ、逃げろ!!」

 

他の受験者の声で我に返る。

まだポイントが足りないしあんなのと戦ってる暇はない。

0P敵は周囲のビルをなぎ倒しながらも受験者へと向かっていく。

さっさと逃げないと面倒なことになりそうだ、逃げつつポイントを稼ぐのがこの場での最適解。

そう思い走り出そうとしたその時だった。

 

「いったぁ……」

 

見てしまった。

0P敵が壊した瓦礫に足を挟み、動けなくなった少女を。

その少女の方へゆっくりと身体を向ける敵を。

 

気づけば、足が動いていた。

少女のもとへと駆け寄り、瓦礫をどける。

幸いそこまで大きい物では無かったので簡単に動かすことができた。

そして少女を抱きかかえ、敵に背を向けて走りだす。

 

「あ、ありがとう!」

 

救出した少女が腕の中から声をかけてくる。

 

「ほんとはすぐに足、診たほうがいいんだけど……飛ばすから口閉じてて」

 

後ろから0Pが追いかけてくるこの状況で悠長に応急処置はできない。

無力化するか撒くしかないんだけど……。

 

「そう簡単にはいかないか」

 

俺はすばやく敵から距離を置き、少女を降ろす。

 

「あいつは俺が足止めするから、頑張って逃げて」

 

「えっでもアンタは!?」

 

「いいから。俺に任せて」

 

そう言うと俺は敵のところへ走り関節を全力で蹴り飛ばす。

しかし敵はびくともしない。

 

「はは……マジかよ」

 

思わず乾いた笑いが零れた。

カウンターの様に繰り出される敵の拳を何とか避ける。

 

こうなるともう()()()()に出るしかない。

一度使うと増強率が0になるからあんまり使いたくないんだけど。

再び敵の拳を避ける。

 

「あっぶなちょっと掠った!」

 

敵が拳を振り切った瞬間に全力で距離を詰め、敵の大きい上半身を支える腰に両手を押しあてた。

 

「これでも喰らっとけ!!」

 

今蓄えているすべての音を両掌に集結させ――放つ。

 

DOOOOOOM!!!!!

 

凄まじい衝撃と共に俺の体は吹き飛ばされる。

それと同時に0P敵の腰部も粉々に砕け散った。

 

それと同時に――

 

『終了~!!!!』

 

試験終了を告げるアナウンス。

吹き飛ばされたのは瓦礫の上。幸いそこまで上には飛ばなかったので負傷は腰が痛い程度だ。

他人のポイントなんて知る由もないし合否は定かではない。

でも、

 

「だいぶ厳しいだろうなあ……」

 

13Pは流石に少ない。

あの爆発の人なんて50P以上も稼いでるだろう。

合格できても滑り込み合格が関の山。

そんな悪い思考を振り払いながら起き上がろうと目を開ける。

するとそこには先ほど俺が助けた少女がこちらをのぞき込んでいた。

 

「よかった……生きてた……」

 

「あの程度じゃ死なないよ」

 

そう言いながら差し伸べてくれた少女の手を掴んで起き上がる。

 

「そういや足は? 大丈夫だったの?」

 

「足ならさっき救護の人が治してくれたから大丈夫」

 

「それならよかった」

 

たとえ受験に受かっていたとしても、あそこで見捨てていたら俺は一生後悔していたかもしれない。

合否はともかく、俺はヒーローとして当たり前のことができたのだと、そう思った。

 

「自己紹介がまだだったね。ウチは耳郎響香(じろうきょうか)。出身は静岡の辺須瓶(べすびん)中学。改めて助けてくれてありがと」

 

「ヒーローは助け合いだから気にしないで。俺は響崎結弦(きょうざきゆづる)。大阪の鹿利多(かりだ)中学校出身」

 

「へえ……大阪からわざわざ来てるんだ。ということは受かったら一人暮らし?」

 

「そうなるかな。まあ受かってるかは微妙なところだけど、落ちてても普通科受けるから」

 

「なるほどね……お互い受かってたらいいね」

 

「……そうだね」

 

その後、アナウンスにて退場を促され、その日は一人暮らしのために借りたマンションへと帰宅した。

 

 

 

 

 

 

一週間がたったある日。ついに雄英からの合否通知が届いてしまった。

30分ほど眺め、意を決して封を切る。

すると中にはスイッチのついた円盤のようなものが入っていた。

よく見るとホログラム装置のようだ。

恐る恐るスイッチを押してみると、

 

『私が投影された!!!』

 

誰もが認めるナンバーワンヒーロー、オールマイトがホログラムとして投影された。

どうやら彼は今年から雄英で教師として勤めることになったらしい。

 

『さて、先日の試験結果だが、筆記は文句なしの合格。8割も取れてる!』

 

それはもう死に物狂いで勉強したからね。でも問題は……

 

『でも問題は実技だ。響崎少年の獲得敵ポイントは13。いくら筆記がとれていても、これじゃあ合格をあげることはできない』

 

うっすらわかってはいた。わかっていてもやっぱり、悔しい。

でも決めたんだ。どんな結果でも、後悔しないって。

俺はヒーローとして正しいことをした――

 

()()()()ならね!』

 

「えっ?」

 

『実はこの実技試験、見ていたのは敵ポイントだけではない。人救け(正しいこと)をした人間を排斥するヒーロー科なんてあってたまるか!!』

 

おいおい嘘だろ?

 

『審査制の救助活動(レスキュー)ポイント!! 見ていたもう一つのヒーローとしての素質!! 自分のポイント不足も顧みず、耳郎少女を救出した響崎結弦は60P獲得!! 2つ合わせて73P!! 文句なしの次席合格だ』

 

「やってくれたなあ……雄英」

 

「来いよ響崎少年! 雄英(ここ)が君のヒーローアカデミアだ!」

 

拝啓、お母さん。

俺はどうやら、人救け(正しいこと)ができたみたいです。

ヒーローとしての第一歩を踏み出せたみたいです。




読んでいただきありがとうございます。
是非これからもお付き合いください。

主人公の軽い説明を入れておきます。

名前:響崎 結弦(きょうざき ゆづる)
個性:蓄音(ちくおん)*後に作中で触れるので細かい設定は省きます
出身校:鹿利多(かりだ)中学校
誕生日:7月31日(蓄音機の日)
身長:169cm
血液型:B型Rh-
出身地:大阪府
好きなもの:音楽、唐揚げ
性格:ノリが良い

ちなみにヒロインが耳郎な理由は"個人的に好きだから"です。同志は集まってください。
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