音のヒーローアカデミア   作:いろはす/1roh4su

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第十一話・俺と緑谷と焦凍の個性

Side.耳郎響香

 

 ネット上で物議を醸しそうな爆豪と麗日の試合の後。

爆豪の爆破によってデコボコにされたステージの補修タイムを終え、緑谷と轟による第二回戦第一試合が始まろうとしていた。

 

ちなみに響崎は控室に行ってしまったのでこの場にはいない。……もちろんその対戦相手の飯田も。

 

それにしても緑谷と轟が戦うのか。朝の宣戦布告の件もあるし二人とも全力でぶつかり合うんだろうけど……。

 

「緑谷は個性使うたびに腕壊すもんなあ……」

 

「緑谷が一撃で決められたらってとこだな。腕ぶっ壊れちまった後じゃどうしようもねえし」

 

上鳴もそう同調する。

緑谷の個性は火力だけで言ったらトップクラスなのに体が耐え切れないってのが本当に惜しい。相澤先生もよく言っているけど制御さえできるようになればやれることは多いだろう。

 

「二人まだ始まっとらん?」

 

「うら……」

 

緑谷達が入り口から出て来たのとほぼ同時に、麗日が観客席に戻ってきた。

 

「見ねば」

 

多分ウチと同じように泣いてしまったんだろう。そのまぶたは赤く腫れてしまっていた。

 

「目を潰されたのか!!! 早くリカバリーガールの元へ!!」

 

「行ったよ。コレはアレ、違う」

 

なにか勘違いしている飯田、ふつーわかんないかなあ……。

麗日が目を擦りながら席に着く。

ふとステージを見ると二人はすでにステージ上に立っており、開始の合図を待つだけの状態になっていた。

 

『今回の体育祭、両者トップクラスの成績!! まさしく両雄並び立ち今!! 緑谷(バーサス)轟!! START!!』

 

プレゼント・マイクが意気揚々と開始を告げたその瞬間、轟が仕掛けた。

 

右半身から冷気を放ち氷結攻撃を繰り出す。

凄まじい勢いで緑谷に迫りくる。

 

どうやら緑谷の『超パワー』の個性を警戒して速攻で決めるつもりらしい。

 

それに対し緑谷は素早く腕を構えて衝撃波を放ち、氷を砕いて攻撃を打ち消す。

 

『おオオオ!! 破ったあああ!!』

 

ここからだと見にくいけど緑谷の指が赤黒く変色しているところを見るに、個性把握テストの時に見せた指一本だけで個性を使ったのかな。

 

すると再び轟が氷結を使う。がそれを緑谷が二本目の指を犠牲に攻撃を打ち消した。

轟はその後も繰り返し氷結攻撃を仕掛け、それを緑谷が打ち消す。

 

「ゲッ、始まってんじゃん!」

 

とここでこの試合の前に鉄哲と腕相撲勝負をして見事勝った切島が観客席に戻ってきた。

 

「お! 切島二回戦進出やったな!」

 

「そうよ。次おめーとだ爆豪!」

 

「ぶっ殺す」

 

いつも通りそう返した爆豪にやってみなと豪快に笑う切島。でもすぐに真剣な表情になってぼやき出した。

 

「……とか言っておめーも轟も、強烈な範囲攻撃ポンポン出してくるからなー……」

 

「ポンポンじゃねえよナメんな」

 

爆豪の言葉に思わず首をかしげる面々。ちなみにウチもどういうことかわかってない。

皆が皆そんな反応をしているのを見た爆豪が小さく舌打ちをして解説し始める。

 

「筋肉酷使すりゃ筋繊維が切れるし、走り続けりゃ息切れる。"個性"だって身体機能だ。奴にも何らかの"限度"はあるハズだろ」

 

「あー、考えりゃそりゃそっか……じゃあ緑谷は瞬殺マンの轟に……」

 

「耐久戦で挑む気ってことだね」

 

ステージでは未だ凍らせ砕くといった攻防が続いている。緑谷の変色した指の数は四本、早くも右手の指が全滅したことになる。

すると轟が地面を凍らせ坂を作って緑谷に接近し、考える時間を与えずに攻撃を仕掛けた。

 

その刹那、暴風が観客席に吹き抜けた。

 

吹き荒れる風が収まるとそこにいたのは左腕を負傷した緑谷。どうやら咄嗟に腕一本を犠牲にして氷結を打ち消したようだ。

その風圧を受けた轟は背後に氷壁を作ることで吹き飛ばしを防いでいた。

氷壁から離れ、白い息を吐きながら緑谷に近づいていく。

轟はちらりと観客席に目をやり、とどめの氷結を繰り出した――!

 

するとそれまで痛みからか俯いていた緑谷が顔を上げ、衝撃波を放って迫りくる氷を打ち砕いた。

でも指は全部壊れているはず、つまり緑谷は一度壊れた指を使って再び衝撃波を放ったことになる。

 

「まじか緑谷……!」

 

そう呟いた切島の顔には汗が浮かんでいる。それも当然、一度折れた指にもう一度折れるほどの力が加わるだなんて考えるだけでも恐ろしい。

 

ステージ上では緑谷がボロボロの拳を握りしめ、轟に向かって何か話している。

すると――

 

()()でかかって来い!!」

 

観客席にまで聞こえるほどの大声で緑谷が叫んだ。

その言葉を受けた轟は苛立った様子で緑谷へと近づく。

だが、その動きはさっきより明らかに鈍い。

 

これって多分だけど、さっき爆豪が言ってた轟の個性の"限度"だよね、よく見たら体に霜降りてるし。自分の冷気に耐えられる限界があるのか……。

 

轟が接近したその時、緑谷が右腕を大きく振りかぶり、個性を発動して轟を殴った。さっきの衝撃波を生み出したパンチに比べるとかなり威力は落ちているけれど、それでも常人のそれとは比べ物にならないだろう。

 

『モロだぁ――生々しいの入ったあ!!』

 

勢いよく吹き飛ばされた轟は殴られたお腹を押さえながらも立ち上がり、緑谷を睨みつけながら個性を使う。

轟の右足から迫る氷結を緑谷はいとも容易く避けた。明らかに氷結のスピードも遅くなっている。

それでもなお(半燃)を使おうとしない轟は氷結で攻撃するも、緑谷は指を口に引っ掛けて衝撃波を放って相殺した。

 

全身ボロボロの状態でなお轟の懐に飛び込み頭突きを食らわせ、殴り飛ばした緑谷。

またしても吹き飛ばされた轟はゆっくりと立ち上がり――

 

左半身に()()()()()()()を纏った。

その熱は観客席にまで届き、轟の体に降りた霜を溶かした。

 

本領を発揮した轟とそれに相対する緑谷の顔は、ここからではよく見えないけど笑ってるように見えた。

 

「焦凍ォオオオ!!! やっと己を受け入れたか!! そうだ!! 良いぞ!! ここからがお前の始まり!! 俺の血をもって俺を超えていき……俺の野望をお前が果たせ!!」

 

突然聞こえたその大声に思わず目をやると、そこにいたのは轟の父親にしてナンバーツーのヒーロー、≪エンデヴァー≫。

 

……今のって激励? エンデヴァーってそういうタイプの人なの?

 

困惑しつつもいい所なのでステージに目を戻す。

 

すると二人が動いた。

轟が左を燃やしながら右で氷結を使う。その勢いは精彩を取り戻し、緑谷に向かって凄まじい勢いで進んでいく。

緑谷もこれまた凄まじい跳躍力で氷を躱して右手を振りかぶる。

その様子を見た静止役の≪セメントス≫がセメントを操るというその個性で素早く壁を構築し威力を抑えようとしている、間に合うのアレ!?

 

轟はゆっくりとした動きで左手を突き出し、身に纏っていたその炎を緑谷に向けて放った。

 

 

WHAKOOOOM!!

 

 

瞬間、さっきのとは比べ物にならないほどの爆風が観客席を襲い、思わず目を瞑ってしまう。

 

「何コレェエ!!!」

 

凄まじい風圧に堪らず峰田が叫んだ。

恐る恐る目を開けると、ステージ中に煙が充満していて何も見えない。

 

『何今の……お前のクラス何なの……』

 

『散々冷やされた空気が瞬間的に熱され、膨張したんだ』

 

『それでこの爆風てどんだけ高熱だよ! ったく何も見えねー。オイこれ勝負はどうなって……』

 

未だ煙で見えないステージを見ながらプレゼント・マイクがそう呟いた。

 

でもそんな煙もだんだんと晴れていき。

 

「!!」

 

先に見えたのは――

 

壁に寄りかかっているボロボロの緑谷の姿だった。そのまま体勢を崩し倒れこんでしまう緑谷を見て我に返ったミッドナイトが勝者を告げる。

 

「緑谷くん……場外。轟くん――……三回戦進出!!」

 

ハイレベルな戦いに歓声が沸き起こった。

ミッドナイトの指示でハンソーロボが現れ、倒れている緑谷を搬送していく。

その様子を見た切島がホッとため息をついた。

 

「マジビビったぜ……。やべえよあいつらの威力」

 

「ちょっと私デクくんのとこ行ってくる!」

 

「俺も同行しよう」

 

麗日がそう言うと飯田も立ち上がる。それに便乗する形で峰田や蛙吹も一緒に緑谷のいる保健室へと向かって行った。

 

『あーっと、ステージがまたしてもぶっ壊れちまったから少々補修タイムを挟ませて貰うぜ!』

 

プレゼント・マイクがそう言うと、セメントスがステージの補修を始める。

その様子を見ながらウチは、すっかりぬるくなってしまったジュースを一気に飲み干した。

 

 

 

 

 

 

Side.響崎結弦

 

 なにやら緑谷と轟の試合の影響でステージ補修が行われたらしいけど、アイツらどんな試合したんだ……? 気になるし終わったらVTRで確認しようかな。

 

控室でそんなことを考えていると、スタッフに入場を促されたので椅子から立ち上がって入場口へと向かった。

 

『波乱の第二回戦第一試合を終え、第二試合!! 一回戦では翻弄されてたが実力を見せつけてくれ! ヒーロー科、飯田天哉!! (バーサス)、こちらもまだまだ底が見えない! 同じくヒーロー科、響崎結弦!!』

 

入場口からステージへと出て、同じく向かいの入場口から出て来た飯田と向かい合う。

 

「響崎くん、君と俺とは友人だ。だからこそ君の強さは解っているつもりだ、申し訳ないが全力で行かせてもらうぞ」

 

「こっちのセリフだよ。手を抜いて勝てる相手じゃないってのはわかりきってる。俺も本気で行くよ」

 

そう言うと、飯田は腰を落として構える。どうやら自慢の機動力を生かしていきなり突っ込んでくるつもりのようだ。

対して俺は特に構えず自然体で立ち、開始の合図を待つ。

 

『それじゃあ早速、START!!』

 

開戦の合図と共に猛スピードで飯田がこちらへ向かってくる。

……てあれ? あんな速かったっけ?

 

「うおっとお!?」

 

俺の頭を狙って蹴り抜かれた足を間一髪で避け、バックステップで距離を取る。

 

「速攻でケリを付けるぞ、響崎くん!」

 

そう言うと飯田は再び蹴りを放ってくる。慌てて回避を試みるもわずかに間に合わず、爪先が頬を掠めた。

 

「ちっ!」

 

瞬時に身体能力増強を10%で発動して足を振り抜いた状態の飯田に足払いをかけようとするも回避されてしまう。

またしても突っ込んでくる飯田。そっちがその気なら……!

 

俺は突撃してくる飯田から逃げようとせず、カウンター狙いで拳を構える。

飯田が腕の範囲内に入った瞬間、俺は拳を飯田に向かって振り抜くもその拳は空を切った。

 

「な……ガッ!!?」

 

『おーっとここで飯田の蹴りが響崎の後頭部を打ち抜いたあ!!! 結構すごい音したぞ!!? 響崎は無事かあ!!?』

 

後頭部に衝撃を感じ、直後に顔面にも同程度の衝撃を感じた。

恐らく蹴られた勢いで地面に叩きつけられたのだろう。鼻が熱いから鼻血も出ているかもしれない。

飯田は俺が気絶したと思ったのか攻撃が止まる。それを良いことに俺は両手を地面について跳ね起きると、気絶したと思っていた相手が跳び起きたことに対する驚きを顔に表している飯田の顔に向かって――。

 

 

SPANG!!

 

 

思いっきり両手を叩き合わせた。いわゆる猫騙しである。もちろんただの猫騙しではなく、個性の応用で猫騙しの"音"を増幅させた特別仕様の猫騙しだ。

至近距離で聞いた飯田の顔が苦悶にゆがみ、その耳からは赤い雫が零れ落ちる。おそらく鼓膜が破れたのだろう。

 

倒したと思っていた相手が起き上がり、さらに突然大きな音が鳴った驚きからか、飯田の思考が一瞬止まった。

その隙に俺は身体能力増強を50%にまで上げ、飯田の腕を掴み思いっきり投げ飛ばした。

 

「ぬわあああああ!!?」

 

俺の人間離れした膂力によって投げられた飯田の体は宙を舞う。明らかに場外に落ちる軌道を描く飯田は慌ててエンジンを吹かしてステージに戻ろうとするが、それは俺が許さない。

投げ飛ばした飯田を追うように跳び上がり、空中で身動きの取れない飯田を蹴り飛ばして場外ラインの外に叩き込んだ。

 

「飯田くん場外! 響崎くん、二回戦進出!!」

 

『ここで決着! 飯田、素晴らしい蹴りを叩き込むも響崎のほうが一枚上手だったあ!! 激戦を繰り広げた二人にエヴィバディクラップユアハンズ!!!』

 

悔しそうな表情を浮かべる飯田が近づいてきて手を差し出してきた。

 

「君はやはり強かった。今回は敗北してしまったが、これも俺の未熟さ故なのだな……」

 

「俺もあの蹴りの当たり所によってはわかんなかったよ。飯田はとても手強い相手だった」

 

そう言うと俺は飯田の手を取り、握手を交わす。

試合を終えた後の会場は熱気に包まれていた。




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