音のヒーローアカデミア   作:いろはす/1roh4su

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今回は短めです。


第十六話・電脳ヒーロー事務所

「コスチューム持ったな。本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ」

 

「はーい!!」

 

職場体験当日。俺達雄英高校1年A組の面々は職場体験先へ向かうため、相澤先生引率の元雄英高校の最寄り駅に集まっていた。

 

「伸ばすな、「はい」だ芦戸。くれぐれも失礼のないように! じゃあ行け」

 

相澤先生は間延びした返事をした芦戸を一睨みすると、俺達に手早く出発するように指示した。

こんないつもの光景も職場体験に行っている一週間の間は見れないのだと思うと、少し寂しく感じてしまう。

 

「響崎は東京だっけ?」

 

「そうだよ。上鳴も確か東京だったよね」

 

出発までまだ少し時間があるのでなんとなくいつもの三人で集まると、自然にこれから向かう職場体験先の話になった。

 

「≪トール≫の事務所から指名来てたからな。もしかしたら響崎とは職場体験中にばったり出くわすかもしれねえぜ!」

 

「ウチだけ離れてんのなんかあれだなあ……。まあ自分で決めたことだし合わせるようなモノじゃないから仕方ないけどさ」

 

ワクワクしているのを隠しきれていない上鳴の様子を見て、一人だけ体験先が離れている耳郎は少し物憂げな表情を浮かべて言った。

 

「響崎くん上鳴くん、出発十分前だ。そろそろホームへ行こう」

 

すると同じ列車に乗る予定の飯田が声を掛けてくれた。俺達はその提案に従うことにして話を切り上げる。

 

「じゃあね耳郎」

 

「また来週な!」

 

「早よ行け」

 

そう言葉を交わすと俺達は耳郎と別れ、乗り場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 どことなく重苦しい空気の中、体感小一時間ほど列車に揺られて保須駅に到着した。

 

「俺はここだ。響崎くん上鳴くん、また学校で会おう」

 

「うん、気を付けてね」

 

「またな飯田」

 

保須のヒーロー事務所が体験先の飯田はここで降りることになる。

俺と上鳴は車両から出ていく飯田を見送った後、同時に溜息をついた。

 

「俺、飯田とどんな話すればいいかわかんねえよ……」

 

閉じるドアを見てそうぼやく上鳴。

さっきまでの重苦しい空気の原因、それはヒーロー名決めの日の放課後のことだった。

いつもの二人と話していた俺は、上鳴から飯田の兄、インゲニウムが最近巷で有名なヴィラン――通称ヒーロー殺しに襲われ大怪我を負ったことを知った。

事件があったのは体育祭の日らしく翌日にはニュースにも取り上げられたらしいのだが、ニュースを見ていなかった俺はその事件を全く知らなかったのだ。

実の兄がヴィランに大怪我を負わされた飯田はとても辛いだろうが、今日の今日までそれを周りに見せなかった。

辛そうに見えないからと言って本当に辛くないわけがない。

 

「「はあ…………」」

 

動き出した列車の中で、俺達は何度目かの深いため息を漏らした。

 

 

 

 

 

 

 最寄り駅に到着した俺はスマホの地図アプリを駆使して職場体験先へと辿り着いた。

 

「ここか……」

 

東京都郊外の街の駅前にある雑居ビル。その下に俺の職場体験先は存在している。

俺は地下へと続く階段を降り、緊張故か凄い速さで拍動する心臓を押さえつけるために大きく深呼吸をする。

 

「…………よし、失礼しまーす」

 

意を決した俺は飾り気のない金属製の扉を開ける。

 

「いらっしゃい」

 

扉を開けてすぐ、心地の良い声が俺の鼓膜を打った。

聞いているだけで全身を多幸感が覆いつくしていくような感覚に陥る声だった。

 

「僕はこの”電脳ヒーロー事務所”の所長、白城報太郎(しらきほうたろう)。よろしく」

 

「雄英高校ヒーロー科1年A組の響崎結弦です。一週間お世話になります」

 

簡単にそう名乗ると、白城さんはついてきてと言って事務所の奥へと進んでいってしまった。俺は慌てて彼の背を追った。

ついていった先にはコスチューム姿の一人の女性ヒーロー、そして向かい合うように黒髪の雄英の制服を着た男子がいた。

 

()()()()()()()()()()、連れて来た」

 

白城さんがそう声をかけると、二人は撫子と真紅の視線をこちらに向ける。そんな中、俺はふとこちらを見つめ続ける真紅の瞳に既視感を感じた。

そんな俺の思考を遮るように、女性ヒーローが口を開いた。

 

「響崎くんね? 相棒(サイドキック)時藤流為(ときとうるい)、ヒーロー名は≪ノルン≫です。こっちの雄英生はキミと同じ、職場体験生の逢坂紘(おうさかひろ)くん。ヒーロー名は……なんだっけ?」

 

ノルンさんが逢坂にそう問いかけると、彼はそれまでずっと俺に向けていた視線を逸らして呟いた。

 

「…………≪ドラクレア≫っす」

 

……人見知りなのだろうか。

時藤さんも「その人見知り、早く治した方が良いかもね」と苦笑いを浮かべている。

 

「で、この人が電脳ヒーロー≪ウィザード≫。どーせまたヒーロー名名乗ってないんでしょう、白城先輩」

 

呆れたようにそう言われ「良くわかってるじゃん」と笑う白城さんに時藤さんは額に手を当ててため息をつく。

この一瞬で電脳ヒーロー事務所の力関係というか、時藤さんが苦労してるってことは良くわかったかも。

そんな時藤さんの非難の目も気に留めず、腰かけていた机から降りた白城さんは手を叩いた。

 

「とまあ、あと一人サイドキックがいるんだけど、今は見回り中だから紹介はまた後でってことで。ここまでで何か質問はある?」

 

そう言ってこちらを見る白城さんは、俺達が何も言わないのを確認してから話を先に進めた。

 

「それじゃあとりあえず、手合わせしようか。キミ達の今の実力も把握しておきたいしね」

 

 

 

 

 

 

「時間も限られてるし、二人纏めて相手するよ。一応こっちもプロだし」

 

白城さんはそう言い、俺達には二分間の作戦会議時間が与えられた。

すると、それまで沈黙を貫いていた逢坂が口を開いた。

 

「…………アンタ、体育祭の時にぶつかった人ッスよね」

 

そう言われた瞬間、俺は先程感じた既視感の正体に気づいた。

雄英体育祭の時、轟との試合の前にぶつかった人だ。

 

「どこかで見たことあると思ってたら、あの時の」

 

そう答えると、逢坂は頷く。

 

「…………個性的に日中はあんまり役に立てねぇから体育祭では活躍できなかったんスよ」

 

という彼の個性は『吸血鬼(ヴァンパイア)』。蝙蝠の飛膜を展開して空を飛んだり、血を操ったりと吸血鬼っぽいことなら大抵なんでもできる代わりに日光と流水が苦手という、まさに伝承の吸血鬼のような個性だという。十字架やニンニクは全く問題ないのが伝承のソレとは違う点。

 

「作戦会議って言っても、白城さんの個性、詳しくは知らないからなあ……」

 

「報に……ウィザードの個性なら俺知ってるッスよ」

 

「マジか」

 

逢坂曰く、白城さんの個性は『データ』。自分の体や触れている物体をデータ化して転送したり、機械やネットワークに入り込むという。それを聞いた俺はふと思ったことを零した。

 

「それってどうやって攻撃すればいいの?」

 

体をデータ化できるということはタイミング良く個性を発動すれば物理攻撃を回避することも出来るということだ。

実質物理無効、そんな厄介な個性を持つプロヒーロー相手にどう立ち回れば良いのか。

 

「……データ化を解除した隙を突くくらいッスかね」

 

……それ、なんて無理ゲー?

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