雄英体育祭、予選を兼ねた第一種目は障害物競走だという事で、ミッドナイトが詳しい説明を始める。
「障害物競走。計11クラスでの総当たりレースよ! コースはこのスタジアムの外周約4キロ! 我が校は自由さが売り文句! コースさえ守れば
ここは個性使用可の雄英高校体育祭。障害物競走は障害物競走でも、中学の時の体育祭でやったようなものとは大きく異なってくるだろう。つまりいかに他人を蹴落とし、自分がのし上がるかの勝負となるわけだ。
「さあさあ位置につきまくりなさい……」
ミッドナイトの合図で全員がゲートの前に立ち並んだ。
俺のいる場所は真ん中より少し後ろあたり、轟あたりがスタート直後に一斉に妨害を企てると予想しての位置取りだ。もし妨害してきた場合、地面が凍り付くタイミングで空中にいる必要がある。つまり狙うは――
「スタート!!」
――スタートゲートの壁!
スタートの合図と共に50%の出力で身体能力を底上げする。更に跳び上がって壁を蹴り、狭いゲートでギチギチに詰まってしまっている生徒たちの上を跳びこえた。
『さーて実況してくぜ! 解説アーユーレディ!? ミイラマン!!』
『無理やり呼んだんだろが』
そのころ実況席では、プレゼント・マイクと無理やり連れてこられた解説の
『早速だがミイラマン、序盤の見どころは?』
『今だよ』
プレゼント・マイクの質問に一言で答える相澤先生。
ちょうどその時、戦況が動いた。
「いってえな!!」
「スタートゲート狭すぎだろ!!」
身動きもできないほどの人だかりとなったスタートゲートの壁を蹴り、配管工さながらの動きで壁伝いにゲートを潜り抜けようとしたその時、轟が周囲の生徒達を凍らせて動きを止めた。
「あっぶな! 空中にいて正解だったよ……」
ゲートを通過するともう壁はないので地上を駆けることにする。
今現在の順位は轟に次いで二位。
「そう上手くいかせねえよ半分野郎!!」
後ろを振り返ると爆豪や八百万、切島らが氷結を回避して迫ってくる。
A組は各々個性を駆使して氷結攻撃を搔い潜っていたようで、全員が無事。
そんななか、もぎもぎを踏み台にして跳躍し、俺や轟に攻撃しようとした峰田を機械の腕が殴り飛ばした。
『ターゲット……大量!』
そこに現れたのは入試の時の
『さぁいきなり障害物だ!! まずは手始め……第一関門、ロボ・インフェルノ!!』
「入試ん時の0ポイントヴィランじゃねえか!!!」
「マジか! ヒーロー科あんなんと戦ったの!?」
「多すぎて通れねえ!!」
0ポイントヴィラン……。入試の時に一回ぶっ壊したけど、この数を壊し切るのは面倒だ。おそらくこの障害物、最適解はいかに避けて通るか。
「一般入試用の仮想ヴィランってやつか……」
轟はそう呟くと、地面を凍らせながらおもむろに右手を振り上げ――
攻撃を仕掛けようと前のめりになったロボットを氷漬けにして脚の間を潜り抜ける轟。
「あいつが止めたぞ!!」
「足元の隙間だ! 通れる!」
「やめとけ、不安定な体勢ん時に凍らしたから……倒れるぞ」
轟の言葉通り、不安定な体勢で無理やり凍らされたロボットは徐々に傾き……盛大に倒れた。
『1-A轟!! 攻略と妨害を一度に!! こいつぁシヴィー!! すげえな!! 一抜けだ!! アレだなもうなんか……ズリィな!!』
『合理的かつ戦略的行動だ』
『流石は推薦入学者! 初めて戦ったロボインフェルノを全く寄せ付けないエリートっぷりだあ!!』
砂埃の中から他のロボットが出てくる。俺はすかさず跳び上がり、ロボットを蹴り越える。
ついでに一瞬だけ出力を100%まで引き上げ、踏み台にしたロボットを蹴り倒す。
「お、おい誰か下敷きになったぞ!!」
「死んだんじゃねえか!? 死ぬのかこの体育祭!!?」
あれもしかしてやらかした?
そう思って後ろを見てみると、ロボットの装甲を破って切島が飛び出て来た。
「てめェコラ響崎! よくもやりやがったなおめー!! 俺じゃなきゃ死んでたぞ!!」
「ごめんね切島! 他の人じゃなくて良かったよ!!」
背後から飛んでくる切島の怒号に返事をしながら再び走り出す。
出力は10%まで抑えた。開会式前に耳郎に頼んで許容量いっぱいまで補充させてもらってはいるものの、この先の障害物が何かわからない状況で無駄遣いするのは得策じゃないという判断だ。
『同じく1-A響崎!! ロボットを飛び越え、凄まじいスピードで轟の後を追う!! 速えー!!』
『あいつの個性は出力を変更できる。アレでも最高速の10%ほどだ』
『マジかよそりゃ!? なんてこった! そして同じく1-A爆豪もロボを飛び越えたあ!! クレバー!』
後ろからすごい数の爆発音。おそらく爆豪が爆破の勢いで飛んできてるな。まだ距離は空いてるから問題はないけど、直に追いつかれてしまうだろう。
そうこうしているうちに第二関門が見えてきた。なんだあれ、穴?
『おいおい第一関門チョロいってよ!! んじゃ第二はどうさ!? 落ちればアウト!! それが嫌なら這いずりな!! ザ・フォール!!!』
前方に広がるのは途方もない大きさ、深さの穴。その穴にはたくさんの足場が乱立しており、足場はロープでつながっている。
なるほど、綱渡りか。
前方を行く轟はロープを凍らせて滑走する作戦のようだ。
俺も負けじと出力を再度50%まで上げ、足場から足場へと跳躍する。幸い足場と足場の間隔はそこまで広くない。普通の身体能力じゃ厳しいだろうけど増強系の個性持ちなら跳び移れる人もいるだろう。
『さあ先頭は難なくイチ抜けしてんぞ!!』
「くそがっ!!」
轟はもう第二関門を突破し終え、少し遅れて俺もそれに続く。すると後ろからスピードを上げた爆豪が追従してきた。
「おそらく兄も見ているのだ……かっこ悪い様は見せられん!!!」
やや後ろの方では飯田が個性を使いロープの上を滑ってきている。
ちんたらしてる暇はないぞ……俺!
俺は身体能力増強の出力を50%から引き下げず、そのまま走り出した。
あっという間に轟に追いついた俺はそのままの勢いで轟を追い越した。
『おっとここで先頭が変わったー!!』
颯爽と駆け抜け、最終関門へとたどり着くも、足が止まる。
『先頭が一足抜けて下はダンゴ状態! 上位何名が通過するかは公表してねえから安心せずに突き進め!! そして早くも最終関門!! かくしてその実態は一面地雷原!!! 怒りのアフガンだ!!』
地雷原、これはただ走るだけじゃだめだ。地雷の位置はよく見ればわかるけど、50%だと視認しても止まれない可能性がある。ゆっくり慎重に進もう。
いつの間にか追いついてきていた轟もスピードを緩め地雷を確実に避けて進んでいる。
「俺は関係ねー!!」
すると後ろから地雷原の上を飛んでくる爆豪に二人とも抜かされてしまった。
「てめェ宣戦布告する相手を間違えてんじゃねえよ」
どうやら開会式前に轟が緑谷に宣戦布告をしたのが気に食わないらしい。俺のことはそっちのけで轟の妨害を始めた。
『またここで先頭が変わったー!! 喜べマスメディア!! おまえら好みの展開になってきたぞー!!』
「じゃあ俺はお先に失礼しますね」
互いの妨害をしあう轟と爆豪を尻目に俺がペースを上げようとすると
「「させねぇ!!」」
と二人で息を合わせて妨害に来た。
さっきまで足引っ張り合ってたのは何なんだ。
爆豪が爆破し、轟が凍らせ、俺が突き飛ばす。三人仲良く足の引っ張り合いをしながらもペースを上げていく。
『後続もスパートかけてきた!!! だが引っ張り合いながらも先頭3人がリードかあ!!!?』
地雷が邪魔すぎる。音響放出で一掃できれば話は早いんだけど……そんなことしたら後続に道を作ってしまう。
どうやら轟も同じことを考えているようで大規模氷結は行おうとしない。もうすぐ地雷原を抜ける。その瞬間に100%で駆け抜けるしかないか?
『先頭爆豪・轟・響崎!! 最終関門を今抜けそうだが――』
そう考えながら爆豪の爆破を捌いたその時だった。
BOOOOOM!!!!
『後方で大爆発!!? なんだあの威力!? 偶然か故意か、A組緑谷爆風で猛追ー!!!?』
3人が一斉に後ろを振り向くと、鉄板をボード代わりにして爆風に乗り猛スピードで飛んでくる緑谷。
その勢いは加速し、俺達の頭上を追い越した。
『っつーか抜いたあああああー!!!』
「デクぁ!!!!! 俺の前を行くんじゃねえ!!!」
「後ろ気にしてる場合じゃねえ……!」
俺達は足の引っ張り合いをやめて緑谷を追い始める。
「音響放出、デトネーティングノイズ!!!」
俺は両手を地面につき、反動が起こらない程度に加減して音を解き放つ。
地面を伝わった音の衝撃は地雷に衝撃を与え、一斉に爆発させた。
『ここで響崎、周囲の地雷をぶっ飛ばしたー!! 安地が出来ちまったが大丈夫かあ!!?』
俺はすぐさま身体強化を50%まで引き上げて緑谷を追いかける。
3人が並んで緑谷に肉薄するも、緑谷は手に持っていた鉄板を地面に叩きつけ、俺が爆発させなかった地雷を作動させた。
BOOOM!!!
爆風で緑谷は加速し、俺達は足を止められてしまった。すぐに駆けだすも轟に後れを取ってしまう。爆豪は緑谷が投げ捨てた鉄板が直撃したらしく飛び出してくる様子はない。
『緑谷間髪入れず後続妨害!! なんと地雷原即クリア!! イレイザーヘッド、おまえのクラスすげえな!! どういう教育してんだ!』
『俺は何もしてねえよ。奴らが勝手に火ィ付け合ってんだろう』
『さァさァ序盤の展開からだれが予想できた!?』
『無視か』
『今一番にスタジアムへ還ってきたその男、緑谷出久の存在を!!』
緑谷の帰還に沸き立つ観客席。上位争い4人の順位は1位が緑谷、2位に轟、3位が俺で4位が爆豪という結果になった。
『さあ続々とゴールインだ! 順位などは後でまとめるからとりあえずお疲れ!!』
「お疲れ響崎。3位おめでとう」
立ち止まって休んでいると、耳郎が声をかけに来た。
「おー、耳郎もお疲れ。緑谷が飛んできたときはびっくりしたよ」
現場を見ていた耳郎によると、緑谷は地雷原に突入した後、何やらぶつぶつ呟きながら一心不乱に地面を掘っていたらしい。多分地雷を集めてまとめて作動させて、あの爆発を引き起こしたんだろうねとのことだ。全く無茶なことするなあ……緑谷。
「1年ステージ、第一種目もようやく終了ね。それじゃあ結果をごらんなさい!」
ミッドナイトの合図でモニターに順位が表示された。
上位42名が予選通過らしいけど……AB両クラスから一人ずつ脱落者が出てるな。B組は昨日の人以外面識ないからだれかわからないけど、A組からは青山が脱落してしまったらしい。
さっき青ざめた顔でトイレへ走っていってたけど、またお腹壊しちゃったのかな。
「さーて第二種目よ!! 私はもう知ってるけど何かしら!!? 言ってるそばから――コレよ!!!!」
ミッドナイトの指さす先にある文字は"騎馬戦"。続けて説明が行われる。モニターを見ると13号とプレゼント・マイクとオールマイトの写真が表示されている。
……オールマイトが騎手はおかしいでしょ。
「参加者は2~4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ! 基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど一つ違うのが……先程の結果にしたがい各自にポイントが振り当てられること!」
「入試みてえなポイント稼ぎ方式か、わかりやすいぜ」
「つまり組み合わせによって騎馬のポイントが違ってくると!」
「あんたら私が喋ってんのにすぐ言うね!!!」
勝手に補足説明を入れた麗日にツッコミを入れるミッドナイト。説明の機会を奪われて怒っているのだろうか。
「ええそうよ!! そして割り当てられるポイントは下から5ずつ! 42位が5ポイント、41位が10ポイント……といった具合よ」
なるほどつまり俺は200ポイントの持ち点があるってことか……。
「そして1位に与えられるポイントは1000万!!!!」
……は?
バッとその場にいる全員が緑谷を見る。
1000万ってことはそれをとれば一気に1位に踊り出れるってことだから、多分緑谷はチームを組むのに苦労するだろうなあ……。
なんてことを思いながら、俺は緑谷から距離を置いたのだった。
UA3000感謝!