四方世界四方山話   作:猩猩

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ずっと仲間探しばっかりしてるけど、自由に仲間を作れるゲームはキャラメイクが一番時間かかるものなので許して下さい!なんでもしますから!



女性陣の誰かが!


一党・5

「これで五人か」

 

 新たに一党(パーティー)へ加わった五人目 ―――― 放蕩無頼を交え卓を囲み、仲間の顔を見渡しながら湾刀武者は呟く。

 自分以外が女性であることから拒否される可能性も危惧していたが、彼女達に放蕩無頼は受け入れられたらしい。

 能力や人格、この場での言動を総合して仲間とすることに納得が行ったのだろう。何よりだ。

 受け入れられた当人はと言えば、陽気に礼を述べ挨拶を述べごく自然に卓へ着いたのだが。

 断られていたら断られていたで、彼は気にする様子を見せず挨拶をして去っていたことだろう。

 この気性のさっぱりした所は彼の美徳だ。少なくとも湾刀武者はそう思っている。

 

「せやな。どないしよか、もう一人探す?」

「ふむ」

 

 神官射手の言う通り、冒険者の一党としてはもう一人ぐらい探してもいい。

 六人の一党というのが冒険者の伝統 ―――― というわけではないが、定番(セオリー)ではある。

 もっともそれは迷宮に挑む時(ダンジョンアタック)の定番であって、多様な依頼を受ける場合そうとも言い切れないが。

 そも六人の一党ともなれば、有利不利のどちらもが大きくなってくるのだ。

 

「人数が多ければそれだけ一党としての戦力は増すね」

「けれどもそれだけ統率は難しくなりますわね」

「お銭も頭割にせなアカンから、稼ぐのが大変になるわな」

「人数増えた分稼ぎやすくもなるけどな。ま、その辺は頭目どんの考え次第ってやつよ」

「ううむ」

 

 放蕩無頼の言葉に他の三人も大きく頷き、決定権を渡された湾刀武者は腕を組んで考え込む。

 まず六人になる最大の利点は、女闘士の言う通り戦力だ。

 頭数が多ければ多いほど戦力は大きくなる。子供でも分かる理屈だ。

 何の特技もない新人ですら荷物を持たせるぐらいは出来るし、他の仲間が知恵を使い指示を出せばもっと様々なこともさせられる。

 それが何らかの技能を持っていたり、術師の類であればなおのこと。

 つまり一党の人数は多ければ多いほどいいのだ。戦力だけの話ならば。

 しかし人数が増えれば、戦女神の巫女の言う通り統率の問題が出てくる。

 一人が指揮を取れるのは五人まで、という定説がある。

 これは古くから言われている ―――― それこそ神話の頃から言われている事だ。

 実際軍隊でも五人、つまりは伍を基本単位として部隊を組む。

 何故なら一人の人間が管理出来るのは、自分を除ければ五人が限界だからだ。

 全員の状態を把握して、状況に応じて判断を下し、それに基づいた指示を出す。

 それはやはり五人が限界であり、頭目(リーダー)の負担を考えたら人数を減らした方がいいとさえ感じる。

 これより増やすとなれば、それこそ軍隊のように単一の役割で纏め上げ指示の内容を絞るしかない。

 槍兵に魔術を使えという指示は出ないし、弓兵に騎兵を迎え討てとは言わない。

 兵科ごとにやることは決まっているのだから、管理はずっと楽になる。

 しかし冒険者ではそうはいかない。状況に合わせ臨機応変に動かねばならない。

 斥候がそのまま戦士となることもあれば、戦士が術を使うこともある。

 魔術師だとて火の玉や雷を投げ付けるだけでなく、その知識と知恵で以て一党に貢献してもらわねばならない。

 そして何より冒険者の一党とは「頭目と仲間」だ。

 今のように決定権や指示は頭目が下すが、それは頭目が仲間を従えるということではない。

 頭目は仲間に対して「命令」を下せる立場にはないのだ。

 軍隊であれば上官は部下に「命令」を下せる。

 部下は命令に対して再解釈を行い動き方を決めることが出来るが、命令そのものは基本的に絶対だ。

 無論明確に誤った命令が飛んでくる場合もあり、上の立場の人間とは誤った命令に対しては従ってはならないのだが。

 大王とまで言われた古の名将が言った

『命令に従うことしか出来ないなら、将ではなく一兵卒が相応しい』

『将とは命令違反が出来ねば務まらない』

 というやつだ。

 命令を順守しつつ、必要ならば命令違反を犯しその責任を負う。将とはそれが出来ねば務まらない。

 大袈裟に ―――― 極限まで大袈裟に言えば冒険者とは全員が将で、その頭目とは『将の将』なのだ。

 それも指示は出せるが命令権は存在しない、と言えば統率を取るのがいかに大変か分かるだろう。

 加えて言うならば、人数が多ければ多いほど人間関係の問題が発生する危険は上がる。

 人間 ―――― 正確に言えば只人は三人いれば派閥が出来るという。

 そこまで大袈裟に言わずとも、なんとなく気の合う合わないで緩やかな集団は出来るものだ。

 六人の一党の場合、最悪三人ずつの集団が二つ出来上がることがある。

 別に気の合う合わないだの、男女で分かれるだの程度なら危惧するほどの事ではない。

 が、これが閥となり主導権争いに発展したり不和の種を抱えたりすればどうなるか。

 そして不和の種は窮地や土壇場で芽を出すもの。それ故に取り返しがつかなくなる。

 迷宮の奥深く、他者の目のない所。大量の財宝。不和を抱えた三人の集団が二つ。

 いったい何が始まるんです?と問われれば、こう答えるより他ない。

 

 ―――― 戦争だ。

 

 そうならないためには頭目が気を回すか、上手く回るよう気を使える人間を仲間に入れるか。

 あるいは全員が危険性を認識し、揉めるなら冒険前にという意識でいるかだ。

 幸いこの一党なら今のところ心配はなさそうではあるが。

 もし揉め事が起き一党が離散するとしてもそれは冒険の前か後の話だろう。

 放蕩無頼を迎えたことから分かるように、湾刀武者含め全員が割り切れる人間のはずだ。

 放蕩無頼もまたいざという時はキッチリ割り切れる人間であることを、湾刀武者は付き合いの中で知っている。

 しかし一党を率いる ―――― 気付けば流れでそうなっていた ―――― 頭目たる自分の負担は大きくなるのは確かだ。

 それも考慮はせねばならないと湾刀武者は己に言い聞かせる。

 そして利点(メリット)不利な点(デメリット)の双方に当てはまるのが、一党の経済状態だ。

 報酬は平等に山分けが基本となる以上、人数が多ければ多いほど一人当たりの取り分は減る。

 つまり安い ―――― ゴブリン退治の様な依頼などは全く財布の足しにならないということだ。

 もし受けるのであれば2件3件と複数纏めて受ける必要が出てくるだろう。

 後は単純に報酬の高い、つまり危険な依頼を受けることになる。

 もっとも黒曜二人、白磁三人 ―――― 放蕩無頼は「冒険者」としては登録したばかりだった ―――― の一党にギルドがそこまで高度な依頼を受けさせてくれるとは思えない。

 加えた人間の等級にもよるが、すぐに大物を借りに行くのは無理だろう。

 人頭獅子(マンティコア)のようにたまたま遭遇したなら話は別だが。

 つまり装備だのなんだの以前の問題として、餓えぬために必死に働かねばならなくなるのが不利な点となる。

 しかしその稼ぐための依頼をこなすにあたり、「戦力が多い」という点が有利に働きもする。

 単純に言ってしまえば、頭数が多ければ個々の負担もそれだけ軽くなる。

 負担が軽ければ安定して消耗も少なく依頼をこなす事が出来る。

 ギルド側も人数が多ければ等級と比べて少しばかり難しい依頼であっても、受注することを許してくれるだろう。恐らくだが。

 そして極めて個人的なことを言えば、六人の一党を纏め上げられれば湾刀武者個人の手腕は高く買われるはずだ。

 それは昇級において有利に働くはずであるし、等級が上がれば生計は立てやすい。

 功成り名を遂げ ―――― 身を退くかどうかはその時考えるとして、とにかく己の剣名を上げるには昇級する必要がある。

 ―――― それに、売り手が売りやすくしてやらないといけないからな。

 自分を冒険者に誘ってきた最初の仲間 ―――― 正しく商売仲間と言える神官射手。

 細かいことは彼女が受け持つとは言ったが、頼りっきりというのも申し訳ない。

 何より自分と組めば儲けられると見込んでくれた彼女の為に、己の値は上げておきたいと湾刀武者は思う。

 銘酒に例えられたからには、特上の酒になってやろうではないか。

 これで売り出しに失敗したら、彼女を指差して笑ってやればいいのだ。

 笑いはするが、恨み事を言うつもりは一切ない。その時はこちらの見込み違いでもあったのだから。

 まあ食っていけないということはあるまいし、安酒でも飲みながら笑ってやろう。

 

「で、どうするんや旦那?」

「私達は君の判断に従うよ」

「誰か加えるならどんな人がいいかも考えませんと」

「それならオイラに心当たりあるぜ!」

「そうだな……」

 

 あらぬ方向へズレ始めていた思考が仲間の言葉で軌道修正される。

 さて、六人目を加えるか否か。加えるならばどんな人材がいいか。

 

「仮に加えるとしたら、どんな人間が仲間に欲しい?」

「んー、今の一党は前衛三人に後衛二人やろ?ここは後衛やないか?」

「私とリーダーは前衛だけれども、君は前衛でいいのかい?イマイチなんだろう?」

「イマイチって言っても頭目どんと比較しての話で、オイラそこそこ出来るからぜ?」

「イマイチな方に前衛を任せて後衛を探すか、イマイチな方に変わる前衛を探すか。どちらかですわね」

 

 さて、どうしたものか。湾刀武者はもう一度考え込む。

 まずこの一党に足りないのは遠距離攻撃 ―――― 具体的に言えば弩弓の類の遣い手だ。

 神官射手の投矢銃(ダートガン)があるものの、流石に射程で弓と張り合うには無理がある。

 さらに言えば遠間でやりあえる人間が一人というのも大問題だ。

 彼女が行動不能になれば撃たれ放題ということになるし、距離を詰めるために危険を冒さねばならない。

 術の類で対応できなくはないが、術の回数を考えるとそうそう頼ってはいられない。

 そう考えると術士の類もまた欲しい。一党全体が保有する術の回数と種類は戦術の幅に直結する。

 いざ、という時に戦局を一変させる力があるのが術や奇跡なのだ。

 なら後衛で決まりかと言えば、前衛も欲しいと言えば欲しい。

 前衛は一党の要であり、これが崩れると後衛は無防備になる。出来る人間は何人いてもいい。

 それに技術を突き詰め術理を修めた前衛の業はもはや魔法の域に達する。

 今はその域になくとも、成長を見越して前衛を加えるのは「アリ」だ。

 贅沢を言ってどちらもこなせる人間を探す、というのもいいだろう。

 必要に応じて放蕩無頼と前衛後衛を入れ替えればいい。

 勿論その場合純前衛、純後衛ほどに頼れないのだが。

 あるいは六人目を加えず、この五人でやっていく選択肢もある。

 完璧な一党とは紙の上にしか存在しないもの。そう割り切るのも大事だ。

 それに必要な人材は揃っていると言えばいるのだ。充分やっていける。

 

 さて、どうしたものか。湾刀武者はもう一度同じ言葉を胸中で呟く。

 イマイチとは言ったものの、放蕩無頼は前衛として役に立たないわけではない。

 戦士としての力量もあるだけに、間違いなく純粋な斥候よりはやれる。

 だが湾刀武者や女闘士の様な純粋な戦士と比較した場合、一枚も二枚も落ちるのは否めない。

 不安というほどではないが、万全でもない。帯には短いが襷には長いのだ。

 この彼に前衛を任せ後衛を探すか。

 彼には斥候としての役割に集中してもらい前衛を探すか。

 その中間。前衛も後衛も出来る人間を探し、適宜彼と入れ替えるか。

 あるいは六人目を探さず、この五人の一党でよしとするか。

 話し合いの末、湾刀武者達一党が出した結論は ――――

 

六人目をどうする?

  • 前衛を探そう
  • 後衛を探そう
  • どちらもできる人間を探そう
  • この五人でやっていこう

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