ボクっ娘薬師は勇者に媚薬を渡した【完結】 作:ボクッコスキー
やあやあ、君たち。ボクだよ。あの後は何が起こったかって?いやぁなんのことかな。
まあそんなことはどうだっていいんだ。
ベッドから抜け出したボクは這うように上半身だけでかばんへとたどり着く。情けないことに腰が抜けてしまってね。眠りも浅かったようで疲労も取れてない。
「……その薬は?」
「ああ、君も起きたのかい?なに、ただの疲労回復ポーションさ」
瓶を揺らせば、黄金色の液体が揺れる。ただのなんて言いはしたものの、これもこの世でボクしか作れない薬の一つだ。実は旅の途中での料理に含ませていたりもして、効果は実証済みである。ちなみにそれが発覚したとき、幼馴染っ娘にめちゃくちゃ怒られたのは他のメンバーには内緒だ。
ごくごくと飲み干せば、全身の疲労が嘘みたいに消え飛ぶ。いや、怪しい成分は入れていないよ?副作用も確認済みで、すこーし敏感になるくらいである。
ああもちろん、夜でのそういった扱い方を考えなかったわけではない。むしろ安全性が高いので、旅に出る前はこれを遊郭に売っていた。実を言うと貴族たちよりも金払いが良いので、お得意様だったりする。
「だ、大丈夫なのか?」
「健康に問題はないさ。ああでも、腰が抜けたのはどうしようもないから、ベッドに運んでくれるかい?」
腕で這うのは力がいるからね。せっかくなら手伝ってもらうことにしよう。
「他にはなにかあるか?」
「特にないよ。ボクは寝直すから、他のメンバーには適当に言っておいてくれたまえ」
「ああ。……そうだ、なにか欲しい物は」
「ないよ。ほら、早く行ってくれないとボクも安心して眠れないだろう?」
「ああ、すまない」
まったく、今更親切にしても昨晩の事はなくならないんだからな?
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次に目を覚ましたのは、夕食の準備が始まったころだった。鼻孔をくすぐるこの匂いは、夕食の期待値を存分に高めてくれる。
「あら、目が覚めたのね」
ベッド脇の椅子に腰掛けていたのは、勇者の幼馴染ことアンナである。彼女は読み途中の本を閉じて私の顔を覗き込む。
ふむ、どうやら渡した香水をうまく使っているようだ。彼女専用に作り上げたこの香りは、同性の私でも思わずどきりとしてしまうほどに魅力値を高めてくれる。
「それで一つ質問なんだけど……」
「あ、あぁ……なんだい?」
まるでキスをするかのように迫る顔。つい昨夜のことを思い出しかけて思わず頬を染める。
「これ、なにかしら?」
「……へ?」
「とぼけても無駄よ。匂いを嗅いだだけでわかるわ。どういった用途に作られたものなのか」
クルクルと手で回すソレは、昨晩の串である。もちろん、この天才の私が組み上げた保存効果もしっかりと効いているはずのシロモノである。
「ええっと……君、それはとーっても危険物なので是非こちらに手渡してもらいたいんだが」
「へぇ、とても危険なのね。天才のあなたが冷静さを欠くほどに」
「まままさか!ボクはいたって冷静だよ!」
「ふーん、まあいいけど」
彼女はスッと目を細めた。殺気のような鋭さすら感じる。
「それで、これは結局使ったわけ?」
「えっと……まだソレは実験もこなせていない試作品で……」
「あらそう。あっちなみに言っておくけれど、この宿って横の壁が薄いのよね。お陰で隣の部屋の激しい声とかは丸聞こえだったわ」
私の借りている部屋は角部屋だが、唯一の隣室というものはこの目の前の彼女が泊まっている部屋だ。
「いや……そのだね……事故みたいなものなんだよ」
「へぇ……」
「そんなことはいいから!早くその危険物をよこしたまえ!」
私が彼女に飛びかかり、もつれあいになる。彼女が驚いている隙に、奪い返した串を持って扉へと走る。
もし神というものが実在するとしたら、今の私は非論理的な方法に頼ってでも殺すだろう。
「おーい!メシ持ってきたぞー!」
「えっふぎゅっ!」
ノックもしない無法者によって開け放たれた扉は、内側にいた私を綺麗に吹き飛ばした。まったく、これがコメディものじゃなかったら大怪我だぞ。
さて、薬はっと……あっ幼馴染っ娘の太ももに刺さっちゃって……
脱兎の如く逃げ出そうとする私を、彼女は素早く捕まえる。迷いのない彼女に、私が運動で勝てるわけがなかった。
「ふふ、逃がさないわよ」
「ま、待て!わかった逃げないから!」
「あらやだ、つれにゃいんだかりゃ」
さすが剣士である。この天才の私の薬に、数秒とはいえ耐えたあげくに、反撃までしてくるとはな。
彼女にソレを刺された後の記憶は、そっと心の奥深くへと封印することにする。
意外と反応もらえて嬉しかったので感謝の投稿。ネタはもうない。誰かくれ。