ボクっ娘薬師は勇者に媚薬を渡した【完結】   作:ボクッコスキー

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展開に迷いが生じた結果、すこし真面目になりそうな匂いが漂う回になってしまった。

小説情報を短編→連載に変更しました


ボクっ娘薬師は勇者に苦言を呈す

 やあ、君たち。まあなんだ、かろうじて生きているボクだ。

 

 何があったか?それを話すよりも先に薪を持ってきてもいいかな?いや実はね、旅立ちの日が早まって、今日は野宿なのさ。その理由も含めて、事の顛末を語ろう。

 

 何度目かの気絶をしたボクを助けてくれたのは、魔法使いのローザだった。彼女はボクの嫌いな非理論的秘術、つまりは魔法をもって勇者を眠らせた。しかし、勇者の暴虐とボクの悲鳴にすら聞こえるナニかは宿中に響き渡ったようで、ボクらは支度する暇もなく追い出されるようにして出てきたというわけだ。

 

 何?顛末ではなく中身が知りたい?まったく君たちは……。しかしながらだね、実のところボクも記憶がないんだ。脳の自衛作用により忘却したというよりかは、本当に意識があった部分が少ないんだ。まあ当たり前なのだがね。この世界で誰よりも筋力と持久力に優れた人間の彼の全力を、ボクというそれはそれは小さい器が一身にうけたのだ。まさか始まりのあの一日目ですら、相当な加減をされていたとはね。まったく勇者というものは恐ろしい人間だ。

 

「お姉さまは休んでて!私がお姉さまの分もとってくるから」

 

「だからボクはもう大丈夫と言っているだろう。こっちよりもアンナの方を手伝いにいってやりなよ」

 

「むう……お姉さまが言うなら」

 

 ん?どうしたんだい君たち。なになに、新キャラの紹介を早くしてほしい?何を言っているんだい、すでに紹介はしたはずだよ。ああ、そうだ。そのまさかなのだ。

 彼女こそ、無口で無表情ぎみだった格闘娘なのである。

 

 こんな話がある。

 とある事故が起きた。被害者は入院し、その後退院して社会復帰をした。もちろん加害者も、罪を償い社会へと戻っていった。しかしながら、その事故を目撃したとある人物は、度々脳裏に事故の光景がフラッシュバックし、まともに生活ができなくなった。

 まあ、言いたいことはそんなところである。非常に不思議なことに、彼女の中で勇者は加害者であり、そしてボクは救世主兼被害者なのである。現に彼女がここ数日勇者と話す姿はみない。

 

 まあ、少し行き過ぎな気もするというのが本音だがね。彼女は元から少し、いやかなり思い込みが強い方だったからね……。まあモルモット……じゃなく被験体……でもなく、自分に信頼をおいてくれる仲間が増えるというのはいいことに違いない。ああ、まだ薬の実験台にはしてないからそんな目で見ないでくれたまえ。

 

 道中はもちろん安全だよ。勇者という最強戦力に加え、ボクの魔除けの芳香薬、それに魔法使いは結界を張っているらしい。そんな三重体制の中で襲いかかってくるのは、よっぽどのバカものでしかない。

 

「ぐへへ、女だ」

 

「男が来る前に逃げるぞ」

 

 そう、バカだ。薪を拾っていたボクを取り囲む男たちは、本当にバカだ。まあ、早急に対処できるものでもないので、おとなしく担がれてるボクもボクだがね。

 

 

__________________

 

 

 やあ、またボクだよ。あの後?ああ、聞かない方がいいよ。なに?聞きたい?仕方ないなぁ。

 

 あの後彼らのアジトに連れて行かれたボクは、自衛手段その1を発動した。ただちに充満した気体状の毒は、耐性のない男たちの体にすぐ巡り、ただちに絶命した。ちなみにボクは耐性をつけているし、後に解毒剤も服用したので無事である。いまはアジト近くの水場で、体や服に付着した毒を洗い流しているところだ。

 

 あの毒は使い勝手が良くて好きなのだが、耐性がないものには少量でも健康被害をおこしかねないのが難しいところだ。ああ、安心してほしい。数日して霧散すれば、ほぼ効力はなくなる。自然環境には優しい毒だよ。

 

「匂いはこっちに続いています!」

 

「わかった。レニ、無事か!」

 

 囲いになっている茂みから飛び出してきた勇者と目が合う。まったく彼は、こういった分野でもう少し頭が働けば良いのだが。

 

「心配してくれてありがとう」

 

「あっえっとその……すまん!」

 

「なに、今更かい」

 

 水場にいるボクはもちろんのことながら裸だ。勇者はすぐに後ろを向く。夜に十分見ているだろうに今更である。

 

「お、お姉さま!」

 

「サラ、ちょっと手伝ってくれるかい?服まで洗いたくてね」

 

「うん」

 

 格闘娘は自分が濡れることも気に留めず服を洗い始める。まるで助手を手に入れたかのようで、正直気分が良い。

 

「ああ、そういえばウィル」

 

「ん?」

 

「あっちの方に小屋があっただろう?あれには近づかないように他の二人にも伝えてくれないかい?」

 

「ああ、わかった。……まさかおまえ」

 

「まあ、そのまさかだよ」

 

「……あの毒って対人でも使えたんだ」

 

 確かに魔物退治でも常用した毒だ。

 

「もし、あの毒は元々対人用に開発したって言ったら軽蔑するかい?」

 

「……ノーコメントだ」

 

 まあ勇者なら、否定しないでくれるだろうと思っていた。彼は身内に対してはとことん優しくなるタイプの人間だ。騙されやすいとも言えるので改善してほしいポイントなのだがね。

 

「今度何かあったら、先に俺を呼んでくれ」

 

「一丁前にヒーロー気取りかい?本当に手放したくないものなら、常に手の届く範囲においておくものだよ」

 

「……」

 

 そういえば彼は、人間を殺すことを嫌う。今回の件でボクの株は落ちたかな?まあ気にしないのだがね。ベタベタした人間関係は苦手なのだよボクは。

 

「ほら、覗く趣味がないのならさっさと行きたまえ」

 

「ああ、先に戻っておく」

 

 そういって勇者は、小屋の方へと向かっていった。まったくあの男は……弔いでもするつもりだろうか。善の人間といえば聞こえはいいのだが……。

 あの毒はボクに効きづらいというだけでなく、勇者には一切効果がない。そもそも勇者の加護が人外じみているのだ。たとえ媚薬という分野においても、勇者に効く薬を作り出すのは難しい。ボクは天才だから作れるがね。

 

「……ねえ、お姉さま」

 

「ん、なんだいサラ」

 

「もしあいつから酷いことされたら、私を呼んでね」

 

「本当にいいのかい?ここ数日、君は彼を怖がっているように見えるが」

 

「う……」

 

「冗談さ。頼れる部分があったら頼るから心配しないでくれよ」

 

 そういって頭を撫でてやれば、気持ちよさそうに目を細める。猫化が進みすぎてないかい……?

 




更新頻度は不定期です。ごめん
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