ボクっ娘薬師は勇者に媚薬を渡した【完結】   作:ボクッコスキー

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文章のテイストが少し変わっていますのでお気をつけください。
追記:描写力・内容密度の練度不足を痛感いたしました。


ボクっ娘薬師は勇者に自由を渡した

 次に目が覚めると、そこは見知らぬ古屋の中だった。生活感から、誰かの家であることがわかる。

 

「あら、本当に目が覚めた」

 

「……ローザ?」

 

 声の聞こえる方を見れば、本を閉じてローザが寄ってくる。

 

「まさか本当に生き返るとはね……何者なのよあの娘」

 

「生き返……そうだ、俺なんで生きてるんだ」

 

 俺はレニから出された毒を飲んだはずである。レニも死亡を確認してから立ち去っていたし、毒が効かなかったわけではあるまい。

 

「ま、説明は後にしましょ。お腹が空いてるでしょう?」

 

「ああ、腹と背中がくっつきそうだ」

 

 辺りを見回しながらも空腹だけは強く感じる。鏡を見れば、髭が伸びきっていた。

 

「なぁ、ローザ。俺、何日眠ってたんだ」

 

「えーっと、1週間くらいかしら」

 

「1週間も……?」

 

「栄養失調で死ぬんじゃないかと思ったわ」

 

「いやおかしい。そもそも俺は毒を飲んで死んだはずじゃ」

 

「……」

 

「死んでることになってんだな?」

 

「いいえ、実際に死んでたわ。ここ1週間のあなたは間違いなく死体同然だった」

 

「どういうことなんだ……」

 

「私にわかるわけないでしょ」

 

「でも確かにレニは、俺の脈や心音が止まったのを確認していったぞ……?」

 

「あなた今なんて?」

 

「ん?だからレニは俺の脈や心音を……ん?なんで俺が覚えてるんだ……?」

 

 頭がおかしくなりそうだ。

 

「そういや俺はなんでここに?」

 

「えっと……凱旋パーティーの日から数日後に突然私の家の前に捨てられてたのよ」

 

「よく保管する気になったな」

 

「不自然な点が多過ぎたからね」

 

 ローザは言う。俺の死体は火葬され、国をあげての盛大な葬式が行われたと。

 

「俺は……なぜ生きてるんだ」

 

「レニ……の薬の効果でいいのかしら」

 

「そういえば魔法使いでも薬草の知識はあるよな。そんな薬は作れるのか?数日間人を死んだ状態にする薬ってのは」

 

「こんな話は聞いたことがあるわ。相反する二つの毒を組み合わせることで、いつもより遅れて効果の出る薬があるって」

 

「遅れて?」

 

「つまりは服用してからしばらく時間が経った後に効果を持つ薬ってことよ。ただレシピの伝承は途絶えているわ」

 

「じゃあレニはそれを?」

 

「違うと思うわ。そもそもこの薬が遅らせるのは毒の効果よ。時間が経てば毒が体に巡って死に至るわ。今回のように死を偽装して生き返るような代物じゃないの」

 

 ローザはそう言いながら、ドロドロのスープを持ってくる。

 

「ほら、お腹は空いてても胃は弱ってるはずだから、あまり急いで食べないように」

 

「ああ、ありがとう」

 

 久しぶりの栄養が身に染みるのを感じながら、俺は仲間たちを思い浮かべる。

 

「他の皆はどうしたんだ?」

 

「アンナもサラも、元いた場所へと帰っていったわ。あなたの遺体のこともまだ知らないはずよ」

 

「……レニは?」

 

 ローザは目を背ける。そんな、嘘だろ……。

 

「彼女は毒を飲んで……そして死んだわ」

 

「でも俺が生き返ったようにレニも!」

 

「あなたは火葬だったから棺の中身が見られることはなかったの。おそらくレニの策略のうちなのだろうけどね」

 

「じゃあ……レニは」

 

「土葬よ。遺体を入れた棺が土に埋められていくのをこの目で見たわ」

 

「でも……レニなら……」

 

「あのねぇ……希望を抱くのは好きにしなさい。でも現実から目を背けないで」

 

 ローザの目は真剣だ。

 

「あなたは公に死んだことになってる。あなたは完全に、勇者の役目から解放されたのよ。余生は好きに暮らしなさい。それが……レニの望みでもあるはずだから」

 

 レニに殺されたと思ったのに、そうではなかった。

 むしろ俺は、レニに生かされたのだ。

 

「しばらくはここにいてもいいし、どこかへ行ってもいいわ」

 

「勇者が生き返ったとなったら騒動にならないか?」

 

「ないわね。勇者の顔なんて誰も見てないもの。見ていたのは勇者という肩書きと力だけ。たとえ自分が勇者だーなんて叫んでも、酔っ払いの戯言かと思われるでしょうね」

 

「勇者って……」

 

「一般人にとっては遠い昔話のような存在よ。だから安心してどこにでも行きなさい」

 

「どこへ……でも……」

 

 ならば俺がやりたいことは一つかもしれない。

 

「なぁ、ローザ」

 

「なにかしら」

 

 俺はローザに手を差し伸べる。

 

「実は世界を旅しようと思う。そしてその仲間を今、探してるんだ。一緒に来ないか?」

 

 ローザはしばらく顎に手を当てて考える素振りを見せる。

 

「……50点。私が行きたいと思う?」

 

「残念だ。レニはいなくとも、また皆で旅をしたいと思ったんだが」

 

 ローザは立ち上がって、クローゼットの方へと向かった。中から大きなカバンや、外行き様のローブを取り出す。

 

「残念がっている暇があったら旅立ちの準備をしなさい」

 

「ん?でも今50点って」

 

「ええ50点よ。50点満点中ね。私が興味ない人間の遺体を保管するヤバイ人間に見えるのかしら?」

 

「興味がある人間でも遺体を保管するのはやばいと思うんだが……」

 

「……残念、反論の余地がないわ」

 

 ローザは帽子を深めにかぶってそう言った。

 

 

 じゃあ次に近いのは、アンナのいる街だろう。アンナならきっと、村に閉じこもる生活より旅を選んでくれるはずだ。

 アンナと合流できたら、次はサラを迎えに行こう。王女が旅に出ることってできるのか……?いや、やってみなきゃわからないか。もし無理なら、攫ってでも連れて行こう。彼女自身はきっと、仲間との旅を望んでくれるだろう。

 

 

 

 

 俺たちの旅は、ここからだ。

 




ボクッコスキー先生の次回作にご期待ください。
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