ボクっ娘薬師は勇者に媚薬を渡した【完結】   作:ボクッコスキー

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この話は蛇足かもしれないしそうじゃないかもしれない。ページの下まで読み切って判断するも良し。そっとブラウザを閉じるも良し。きっとそんな、最終話。


ボクっ娘薬師は物語の終わりを飾った

 やあやあ、久しぶりだね君たち。ボクだよ。

 

 いやぁ実に上手くいったようで何よりだよ。勇者はちゃんと生き返れたようだ。勇者に効く薬というものは毎回が初実験なので、普段は冷静なボクでもどきどきしてしまうのだ。

 

 ……おいおい?もしもーし?聞いているかね君たち。どうしたんだい、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして。

 

 

 

 

 どうして生きているのかだって……?

 

 

 

 

 愚問だね。ボクは天才薬師、自分の作る毒の対策は万全さ。ついでに今回は犯罪者という汚名まで浄化するために、特別に調整したのを用いたというわけだ。あの王様は巧いことやるからね。ボクも警戒していたというわけだ。

 

 まあそんなこんなでボクは元気だよ。今は世界各地を旅しようと思っている。前回のように新しい薬草を使った調合を試したくてね。ボクが元々住んでいた家は更地にされてしまったし、旅立ちには良いタイミングだったというわけだ。

 

 旅に先だっていくつもの薬を用意した。飲むだけで食事と同等の栄養が取れる薬だとか、力が一時的に強くなる薬だとかだ。本当は火に絶対的な耐性を持つ薬とかも試したかったのだが、自ら火に入る気にはならずに被検体を探しているところである。

 

「というわけなんだよ、王様」

 

「……そんな昔語りはどうでもよい」

 

「ひどいなぁ。ボクを殺そうとしたくせに」

 

 ボクは兵士たちに囲まれながらも嗤う。ここで殺されることはないと知っているから。

 

「そんな話はどうでも良いから!お願いだから解毒薬を処方してくれ!」

 

 悲痛な声を上げる王様は、今までの威厳などない。それもそう。今この城下町は、疫病らしき何かに侵されているのだから。

 

「そもそもボクの毒のせいだと決めつけられてるのが非常に不愉快なんだよ。民衆が噂するように、勇者の死によるものかもよ?」

 

「死んでおらんのだろう、貴様が生きておるということは」

 

「ま、正解だね。そしてもう一つ答えをあげよう。この疫病はボクのせいじゃないさ。でも、ボクには対抗できる薬がある」

 

「もうどうでもよい。早く希望を申して薬を置いてゆけ」

 

「じゃあ、今後はボクらに一切関わらないでくれよ。それが平和的で一番だろう?」

 

「ああわかった。だから薬を」

 

「ああそれと、用水路の水を飲み水にするのはやめた方が良いよ」

 

「……それだけか?」

 

「残念ながらボクの薬に特効薬のような効果はないよ」

 

「だましたな……」

 

「勝手に騙されたんじゃないか。しかも勝手に人を疑った上にね」

 

 まったく、面倒な王様だ。

 

「それに、なぜか王様まで届いてないようだけど」

 

「なんだ?」

 

「すでに街の診療所ではボクの薬による対処療法が始まっているよ。この国の統治は大丈夫かい?」

 

 まあ、城の方にまで薬を流さなかったのはボクの言伝あってのことだけどね。

 

「貴様は死んだはずとはいえ犯罪者のはず……」

 

「あー、まあ言うかどうかは迷ったけれど、言っておくか」

 

 ボクはクククと笑う。

 

「薬師とは嫌われ者な一面もあってね。昔から名前なり顔なりを変えて生きているのさ。というわけで、ボクをボクだけとして捉えない方が良いよ、〇〇様」

 

 王は明らかに狼狽えた表情を見せる。それもそうか、親しい者しか知らぬ忌まわしき幼名で呼ばれたのだから。

 

「面白い風習だよね。悪魔の名前を子供につけるだなんて」

 

「貴様どうしてその名を」

 

「時にだね王様。確かまだ10も歳がいかぬ頃、大層大変な思いをしたようじゃないか」

 

「まさかあの時の薬師……?」

 

「ご名答。記憶力は流石だね」

 

「でもあの頃と歳が変わらぬように見えるぞ」

 

「あー、まあ簡単に説明するとだね。不完全ながらにもできたんだ、不老不死の薬というものが」

 

「馬鹿な」

 

 うん、ボクも馬鹿な話だと思うよ。なにせこれはレシピというよりただの薬草そのものの効果なのだから。

 

「まあ、というわけで色々と思い入れを持ちながら君に従っていたんだけどね。まさかあの時の小僧が牙を剥くなんてボクは罪な女だね」

 

「貴様……!」

 

「まあ安心してくれたまえよ。すぐにこの国をどうこうするつもりはないし、むしろ今は助けてるようなものだ」

 

 だけれど……

 

「だが、もし今後ボクや、そうだな……元勇者やその仲間たちに接触するようなことがあれば……これ以上は言わなくても良いかい?」

 

「悪魔め……」

 

「酷い言い方じゃないか。ボクだって人間だよ?傷つく心はあるんだからね」

 

「不老不死のバケモノにココロだと、ふざけるなよ」

 

「だから不完全って言ってるじゃないか。まだ人間でいるつもりだよボクは」

 

 まあもしボクが人間じゃなくなり、人間の害となりさがった時には……

 

 きっと、勇者と呼ばれる人類の英雄がボクを討ち滅ぼしに来てくれるだろう。

 

「じゃあさようなら、王様。二度とボクの前に顔を見せないでくれよ」

 

 敵意剥き出しの視線が刺さる中、ボクはクククと嗤いながら部屋を後にする。まるで物語の悪役みたいでワクワクするね。

 

 さて、このまま旅に出るとしよう。これからもまだまだ永い人生だけれど、ボクの試したいレシピは無限にあるのだからね。

 

 

 ボクの旅は、これからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

《あとがき》

 

 この度は、ボクっ娘薬師は勇者に媚薬を渡したを最後までお読みいただき誠にありがとうございました。アニメ・漫画作品でも気にかけていた二つの大きな作品がつい先日完結し、自分も何か完結した物語を作りたいと思ってここまで書き上げました。

 今回の作品は、完結させることの難しさや、完結に至るまでの描写の濃さなどで多くの壁にぶつかっており、読者が置いてきぼりになってないかなどを心配しながら筆を取っていました。その点を踏まえて上記2作品はやはり、名作品であったのだなと感嘆する次第です。

 そして何より、感想や評価を入れてくださった皆様にお礼を。本当にありがとうございました。元々は1話の書き出しのみで終わるはずだった今作品を続けるきっかけになりました。もしまだだという方は、ページの下の方にあります感想評価の欄を是非ご利用ください。あなたの『好き』の一言で筆をとる人は多いです。

 では、長々となってしまいましたが、これで最後の挨拶とさせていただきます。本当に、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『数年後 とある街』


「なに!こんなのぼったくりじゃあないか!」

「女のガキにはこの価値はわからんさ」

「ボクを見た目で判断するのは良くないよ。ボクは天才薬師なのだからね!」

「はいはい、それで自称天才さんは屋台の料理すら食えないほどに金欠であると」

「自称とはなんだ自他共に認める天才だぞボクは!」

「あーはいはい、もうわかったからどっかいってくれよ」

「ぐぐぐ……」

 実に困った。まさかこの国の物価がここまで高いとは。いや、ひとつ前の街で散財したわけではないのだ。ただ珍しい薬草が多く入っているのを見ただけで……

 いや、実に困った。食べなくても死なないがそれとこれとは違う。

「なんだオヤジ、困りごとかい?」

「ああお客さん、実はこのガキがですね」

 ボクと店主との戦いに割り込んできた青年は明らかに多めの金をカウンターに置いた。

「ほら、俺が出すからこの娘にもあげてくれよ」

「まあそれならいいが」

 肉串を受け取るとボクはたまらずかぶりつく。くそう、値が張るだけある素晴らしい味わいだ。

「なぁ、そのだな」

「ありがとう、助かったよ。それでボクに何か用かい?」

「実は俺たちも今旅をしてるんだ。だけど俺たちのメンバーには薬師が足りなくてな。よければ一緒に来ないか?」

「へぇ、珍しいね。旅に薬師を連れていくなんて」

「ほら、勇者記があるだろ?あのメンバーにちなんでね」

「いいのかい?あの勇者記では薬師は裏切り者だよ」

「いいんだよ」

「何故だい?」

「そりゃ決まってんだろ」

 青年はボクを真剣な眼差しで見つめる。

「それが事実じゃないと俺が、俺たちが知ってるからだ」

「……」

「アンナもサラもローザも、そして俺——元勇者のウィルだって、レニがそんなことをしないと知ってる。いや、俺たちだからというのが正しいのか?」

「見ないうちに随分と口が回るようになったじゃないか」

「レニのおかげさ。お前とのお茶会は随分と口の筋肉を鍛えさせられたからな」

「役立ってくれたようで何よりだよ」

「それで、一緒に来てくれるか?」

「答えを口にするのは必要かい?」



俺たち、ボクたちの旅はこれからだ。
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