やはりこの生徒会はまちがっている。   作:セブンアップ

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かぐや様の異世界編

 

 シューチイン地方。地方人口の大多数が貴族やご令嬢であり、格差社会がはっきりしている。世間では勝ち組の富裕層と、負け組の貧困層で分けられているが、そもそも富裕層の格が凄すぎて貧困層が他の地方からすればそこまで貧困じゃなかったりする。

 

 そんな格差社会が特徴の地方ではあるが、この地方にはギルドが存在する。どの地方にもギルドを設置する事が義務付けられている。その理由は簡単。

 この世界には魔王が存在するからだ。ギルドから派遣されて魔王討伐に向かった者は数知れない。しかしその者達が再びこの地に帰って来る事の無い、最凶の魔王。故に姿も名も不明。

 

「…面倒だから今日は休もうかな」

 

 貧困層(疑)の俺も、ギルドの一員である。とはいえ、魔王討伐だけの仕事ではなく、お尋ね者や救助など、様々な依頼がこのギルドに集まる。難易度によって報酬が違う。言ってしまえば、このギルドは良くも悪くも富裕層と貧困層に対して平等だと言える。

 

「ダメですよ!私達は魔王討伐しなきゃダメなんです!その為には依頼を受けて、その報酬で良い装備を揃えるんです!」

 

 俺の隣に居るやや小さめの人物は、イーノ。

 駆け出しの時に、キューバリファカチンモというモンスターの一掃の依頼を請け負った際、襲われていたので助けたのだ。それ以降、俺の後を付いて来るようになった小動物的存在。

 

「とはいえ、俺達2人じゃ負担が大き過ぎる。連携プレーが得意ってわけじゃないが、効率重視で考えるなら人は多い方が良い」

 

 人が増えれば俺はそこまで働かなくて済むし。そのまま報酬も貰えてラッキー的な。これが正に、寄生プレイである。

 

「確かに装備だけでなく、魔王に立ち向かっていける人材を集めなければなりませんね…」

 

「そういえば、この間お前の連れを見たけど。あの子はどうなん?」

 

「コバちゃんですか?彼女は私の幼馴染ですけど、私的にはコバちゃんを危ない目に遭わせられないというか…」

 

「それもそうだな」

 

 人を集めるとはいえ、無理強いするのはよろしく無い。ソロで動いている人間が居れば良いのだが…。

 

「うぇっ…うっ……げぇ…」

 

「うわびっくりした!」

 

 俺とイーノが着いてる席の足元に、惨たらしく泣きながら倒れている人物がいた。

 

「ど、どうかしましたか!?」

 

 イーノがその人物の身体を起こすが、泣きじゃくっていてなんのこっちゃさっぱり分からない。とりあえず空いてる椅子を見つけて、その人物を座らせる。

 

「…なんか温かい飲み物でも要るか?」

 

「…うん…」

 

 このギルドは居酒屋でもある。依頼を受けに来るだけでなく、ただ飲みを楽しむ者も居るのだ。温かい飲み物を頼んで、彼女に飲ませて落ち着かせた。

 

「…はぁ…ちょっと落ち着いたわ。ありがと」

 

「それは良かった。…で何してたのお前」

 

「見たら分かるでしょ。私はそこで……」

 

 しばらくの間を置いて。

 

「…何してたんだろうね」

 

 分かんねぇのかよ。

 

「えっと、貴女の名前は…?」

 

「私はマキ!マキ=シジョー!シューチイン城のミユキ王子の妻である、カグヤ姫の再従姉妹祖母に当たるシジョー家の令嬢よ!」

 

 知らんし遠い関係だなおい。

 

「シジョー家って、確かシノミヤ家の…!」

 

「そうよ、シノミヤ家の分家のシジョー家の人間」

 

「そんなご令嬢がギルドに来るとは、中々やるな」

 

「元々はギルドなんて来るつもりは無かったの。小さい頃の幼馴染のナギサに誘われたから来てるだけ。魔王討伐なんて面倒な事したくないわよ」

 

 という事は、こいつはソロじゃないのか。

 

「でもねー……最近ナギサを幼馴染と見れなくなったの…」

 

「どう、したんですか?」

 

「私達のパーティにはもう1人、ツバサくんって男の子が居るんだけど。ずっと3人でパーティ組んで依頼を受けて来たのにさ、急にあいつら男女の関係になって……」

 

 この子あれですね。そのツバサって子が好きな感じなんですね、うん。でもナギサって人がその子と付き合った所為でパーティから抜けたと。

 

「ナギサもツバサも幸せだったから、最初はそれで良いかなって思ったの。…でもあいつら、私の目の前でイチャイチャチャッチュッしやがるのよ!」

 

 悪魔だな。もしかしたらそいつら魔王の配下だったりしない?

 

「往来の場でそんな事を!許せない…今すぐ取り締まってやりましょう!」

 

「落ち着け」

 

 放置すればすぐにでも取り締まりそうなイーノを抑えて、シジョーの様子を伺う。

 

「…そうだ。お前が良いなら、うちに来るか?生憎人手が足りてない」

 

 追い出されたわけでは無さそうだが、今のこいつの精神的にまたあのパーティに戻るのも考えにくい。

 

「誰のパーティには入らないわよ。言ったでしょ、私はナギサに誘われて嫌々ギルドに来てるって」

 

「…そうか」

 

「で、でも……あんた達がどぉぉーしても必要だって言うなら?偶には手伝ってあげなくもないわ」

 

 何この時代錯誤のツンデレ。ある意味レアだぞこんな奴。

 

「これで3人になりましたね!シジョーさんの役職はなんですか?」

 

「マキで良いわ。私はボマーよ」

 

 この世界には役職がある。人の適性によって、その役職は決められる。今シジョーが言ったボマーというのは、文字通り爆弾を操る事が出来るろ

 

「特に地雷を設置するのが得意よ」

 

 なるほど、地雷か。となるなら罠係として使う方が効率的か。

 因みに俺は後方支援のアーチャーで、イーノは膨大な知識を必要とする魔術師だ。こう見ると、まともな近接戦闘の人間が誰1人居ない。遠距離に偏り過ぎだろ。

 

「ねぇ、あの方ですわよね。ドラグナーと狂戦士の2つの適性を持ってるモモって方」

 

「うん。彼女に睨まれたら最後、無事に帰れないらしいよ。なんせ、彼女の親ってシューチイン地方の外れにある"リュージュ団"の長の娘なんでしょ?」

 

 突然、ギルド内がざわめき始めた。というのも、稀に見る複数適性持ちのモモ=リュージュがギルドにやって来たからだ。

 

「うるせぇんだよお前ら。私が何でもかんでも人殺すと思ったら大間違いだ。ぶっ殺すぞ!

 

「どっちぃ!?」

 

 …このように、嫌われている孤高の戦士。

 俺も噂でしか知らないが、彼女は近接戦闘ならこの地方でもトップクラスらしい。だが協調性は皆無の上、今のように嫌われている。故にソロである。

 

「ねぇ、あの女誘ってみるのはどう?今の私達、近接らしい近接を持った役職居ないじゃない?彼女を誘えば、戦力が強化されると思うんだけど」

 

「…でもどうやって誘うんだよ。あれだけ荒れてたら、話を聞いてもらえるのも一苦労すんぞ」

 

「そこは頑張りなさいよ。あんたこのパーティのリーダーでしょ」

 

「えぇ…」

 

 とはいえ、確かにシジョーの意見にも一理ある。彼女が入れば、協力はさておき戦力は上がる。これで無理なら諦めよう。1人で座っている彼女に近づき、話しかけた。

 

「少し良いか?」

 

「あ?なんだお前」

 

 リュージュは鋭い目付きで睨む。少し怯むが、臆せず話し続ける。

 

「…俺らのパーティ、今人手不足なんだ。もし良かったら、俺らのパーティに加入してくれないか?」

 

「はっ、誰が入るか。私は誰ともパーティなんて組まねぇ。つうかお前、イカれてんのか?私の事を知らないわけじゃないだろ」

 

「…"リュージュ団"の娘って事か?」

 

「あぁそうだ。その気さえあればお前もお前のパーティだって殺せる。そんなイカれた女を誘うたぁ、女にでも飢えてんのか?」

 

「ばっ、違ぇよ」

 

 捉え方次第では確かにそういう風に見えなくは無いけど、なんちゅう事言うんだ。

 

「き、近接戦闘の人間が居ないんだよ。だからその手のプロに加入してもらうのが合理的だ」

 

「その為に私を誘うってか。お前も大概イカれてんな。私と目を合わせねぇ奴の方が多いってのに」

 

「生憎、俺はお前の噂は興味無い。親が王だろうが悪魔だろうがなんだろうが、そいつはそいつだ。お前の親がどんな人物かは知らんけど、親がヤバいからお前もヤバいとはならんだろ。俺はそういう判断の仕方は好きじゃないんでな」

 

 血が繋がっていても、家族ってのは近しい他人とも呼べる。親と子は同じじゃない。親は親、こいつはこいつの生き方がある。一個人の生き方に、誰も縛る事なんて出来はしない。

 

「本当にイカれてやがんな、お前」

 

「変人とは言われたりするけどな」

 

「違いねぇ」

 

 リュージュは肯定して笑う。

 

「ま、私だってソロじゃ限界が出てきたとこなんでな。後方支援が揃ってんなら申し分ねぇ。お前の誘い、仕方無ぇから乗ってやるよ」

 

「それは良かった」

 

 これで近接戦闘のプロフェッショナルを引き入れる事が出来た。とにかく、当面はリュージュを含めたこの4人でなんとかするしかない。

 とはいえ魔王の所在地も顔も何も知らないんじゃ、しばらくは同じ時間の繰り返しになるだろう。

 

 そのしばらくの日が経ち。

 

「号外!号外ですわ〜!」

 

 街の中がいつも以上に騒がしい。号外と言って記事をあちらこちらに投げており、街の人やギルドの人がその記事を拾い読む。当然、俺もその記事を手に入れて。

 

「…魔王の正体、遂に判明」

 

「本当ですか!?」

 

「カグヤ姫に仕えるメイド、アイ・ハヤサカが魔王城に潜入。最深部の手前に辿り着いたものの、魔王達に気付かれてしまい、転移術式で間一髪脱出。初めて魔王城を脱出した事、並びに魔王の正体が判明した事を喜ぶべきだろう……だとよ」

 

「流石に、カグヤに仕えるだけの実力はあるわね。魔王城は脱出不可能と言われた場所なのに」

 

「…で、これが魔王の正体か」

 

 ハヤサカが目撃した魔王の顔が描写されている。しかも3人居るし。魔王って3人居て良いものなの?

 

「…なんだか、あまり覇気を感じない魔王ね」

 

「そうだな。この真ん中の奴なんて、遊戯場で遊んでそうな奴だぞ」

 

 魔王の特徴は、3人とも桃色の髪だと言う事。顔立ちも似ている事から、おそらく3姉妹だと言う事が予想出来る。左はツインテール、真ん中は黒色のリボンを頭に装着し、右の奴はなんだかおっとりした表情である。

 本当に魔王ならではの覇気を感じない。が、こういう奴に限って一癖も二癖もある奴だと俺は思う。

 

「…とはいえ、力は依然明かされていないようだな。最深部までの道のりや罠とか記されているけど、結局の所犠牲者が減る事は無いだろうな」

 

「力が足りないのでは、返り討ちになっちゃいますからね…」

 

「とにかく、俺達には魔王と渡り合える力が無い。高難易度の依頼を受け続けて、高めていくしかないな」

 

 魔王の正体が分かっても、倒す術が見つからないのでは意味が無い。

 当面の目標は自信の力を高める事だ。俺達は4人で引き続き、ギルドの依頼を受け続けて力を高めていく事にした。

 

 そう決めた俺達は今日も依頼を受け、モンスターを討伐する。そして日没になれば街に帰り、報酬を貰って宿に泊まる。そしてまた明日になって、依頼を受ける。魔王と確実に渡り合える力があると自覚するまで、その流れは変わらない。

 

 そう思ったのだが。

 

「…眠れねぇな」

 

 普段なら疲れて爆睡しているのに、今日に限って眠れやしない。ずっとベッドに寝転んでいるのもあれなので、外の空気を吸いに俺は夜中に宿を出る。

 夜中だから、周りは誰1人として居ない。普通に考えればおやすみしている時間帯だからだ。こんな時間帯に尚この街を歩き回る人物が居れば、シューチイン地方の警護団ぐらいだろう。

 

 静かな夜の街を歩いていると、前方からローブを纏った人物が歩いて来るのが目視出来る。こんな時間帯にあんなあからさまに怪しい格好をしてる奴が居れば、当然警戒する。

 

「こんな夜中に1人だなんて、危ないですよ〜?」

 

 ローブの人物が詰め寄りながら話し掛ける。

 

「なら治安の為に怪しいあんたが出てったら良い話だろ」

 

「それならここに来た意味が無いじゃないですか〜」

 

 するとその時、背後からも謎の気配を感じた。振り向くと、同じローブを纏う人物が2人。完全に挟まれてしまった。

 

「ここに来たのは目的はカグヤさんと、もう1人に用があるんですよ〜。それは〜…」

 

「うっ!」

 

 途端、俺の身体が動かなくなった。目の前の奴か、後ろの2人かは分からないが、バインドを先に仕掛けられた。

 

「君なんですよ、ハチマン・ヒキガヤくん」

 

「お、れ…!?」

 

「それじゃあお姉様、モエハ〜。お家に帰りましょう〜」

 

 背後の2人は「はーい」と間伸びした声で転移魔法でその場から消えた。指示を出した女は俺の手を掴んで。

 

「さ、行きましょう」

 

 そう言って、縛って動けなくなっている俺を強引にどこかに連れて行った。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 翌日。

 

「クソ、どこにも居ねぇ!」

 

「あいつ部屋に荷物置いてどこ消えたのよ…!」

 

 ハチマンが消えた翌日、パーティメンバーであるリュージュとシジョーは焦燥感を露わにして探し出している。

 

「どこ……どこ行ったの…?」

 

 イーノはハチマンが居なくなった事で、保っていた精神が崩れ落ちていた。彼女はハチマンに依存しており、ハチマンの言う事を全て従うほど慕っていたのだ。

 

「あの、すいません」

 

「あぁ?なんだお前」

 

 リュージュに話し掛けたのは、片方だけ長い髪を下ろす男。どこか暗い印象を見受けられる人物だった。

 

「そこの道端でこんなの落ちてたんですけど、もしかして探してる人の持ち物だったりします?」

 

 その男が見せて来たのは、"チバ"と書かれた紋章。その紋章は2人も見覚えがあった。何故なら、時折彼はチバを武勇伝のように話すほどチバを愛しており、その様子を呆れるように見ていた事があったからだ。

 

「これ、どこで見つけたの!?」

 

「宿のすぐ目の前です。歩いてたらやたら綺麗な紋章を蹴ってしまったんで、やっちまったと思ったんですけど…」

 

 消えたハチマンと、不自然に道端に落ちていた紋章。

 

「あいつ、誰かに連れて行かれたのか…!?」

 

「でも誰に…?」

 

「魔王の正体が分かった途端にあいつが消えた。って事は、魔王直々にあいつを連れて行ったって可能性が高ぇ」

 

 リュージュは力強く拳を握りしめた。掌から血が流れ始めている事に気付かないほど。

 

 ハチマンは自分を、リュージュ団のモモでは無く、ただのモモとして受け入れてくれた。その事が彼女にとって嬉しかったのだ。パーティとして共に動いていく中で、イーノと似たような感情を彼に抱き始めた。

 

 そんな彼を自分から奪った魔王。憎悪が溢れ出てやまない。

 

「絶対ぶっ殺してやる」

 

 隣に居るシジョーも同じ気持ちだ。

 最初は仕方無く付き合っていたが、日が経つに連れなんだか楽しくなっていたのだ。このパーティに居る事、ハチマンと一緒に居る事が。

 

 また自分から大切な人が奪われる。リュージュと同じように、魔王に対する憎しみが込み上げてくる。

 

「そうね。でも、ただ殺すだけじゃ物足りないわよね」

 

 そんな様子を見ていた長髪の男、ユー・イシガミは少し引いた。普通なら「許さない。私達から大切な仲間を奪うなんて」的な感じで、皆で力を合わせていく流れだと思っていたのに。

 

「こわ。この人らどんだけ重いんだよ」

 

 そのハチマンとやらに対する愛が重過ぎる。そんな感想を直接言うと魔王の前に自分が殺されそうなので、言わないようにした。

 

 一方、魔王城では。

 

「人生遊戯しましょ〜!」

 

「ねぇ、お兄さんの目ぇすんごい腐ってますね〜。ただの人間の目がここまで腐るなんて興味深いので、ほじくっても良いですか〜?」

 

「お姉さんと一緒に遊ばな〜い?一緒に気持ち良くなる遊び〜」

 

 やべー奴らに捕まった。ハチマンはそう思った。

 1人はなんか遊戯をしようと誘って来るし、1人は人の目をほじくってホルマリン漬けにしようとか言うし、1人はやたらと露出した身体で誘惑してくるし。

 しかもこれがシューチイン地方を脅かす魔王だと言う。冗談だった方が嬉しかった事だろう。しかし現実である。

 

「…おい、そこのヘンテコリボン」

 

「ヘンテコリボンとは失礼ですね!私にはチカと言う名前があるんです〜!」

 

「…なんでも良いが、俺を拉致ってどうする気だよ。俺を狙ってたんだろ?」

 

 カグヤ姫が目的なのはまだ分かる。シューチインの姫が殺害、あるいは連れ去られたんじゃ少なくともシューチイン地方にダメージを負う。その上、人質としても使える。

 しかしハチマンは単なる冒険者みたいな人物。そんな者を捕まえて、一体どうするのか。

 

 そう考えているハチマンに、チカは少し顔を赤らめて答える。

 

「そ、その〜……ひ、一目惚れなんです…」

 

「……ふぁ!?」

 

 「何を言っているんだこいつは」とハチマンはただ思った。一目惚れ?魔王が?なんだそのよく分からない冗談は、と。

 

「ほら、女の子をキューバリファカチンモの群れから助けたじゃないですか。あの場面を見てですね〜……その、カッコいいな〜って……えへへ」

 

「は、はぁ…」

 

 チカがハチマンを捕まえたのは、一目惚れした相手と一緒に居たかったからである。そんなチカの意図など露知らず、ハチマンはただ呆然としていた。

 

「で、でもお前らを倒しに来た冒険者の中にもカッコいい奴ぐらい居ただろうよ。なんで俺?」

 

「?冒険者なんて来てませんよ?私達ずっとこのお部屋で暮らしてますから」

 

「は?」

 

「あ〜、もしかして〜」

 

 チカの姉であるトヨミが思い出したかのように声を上げる。

 

「部屋までの廊下ね〜、私が改造しちゃったの〜。スリルがあった方が良いかな〜って大きな刃物が落ちてきたり、ししまトナカイが飛び出したり、かどまツリーが下から生えたり〜」

 

「私達いつも外出る時、転移で出てるもんね〜。長らく廊下なんて使って無いもん」

 

 数々の冒険者が帰って来れないのは、このトヨミという魔王の魔改造が原因であった。

 

「でもこの間、金髪の人が遊びに来てくれたのに、すぐ帰っちゃったよね〜」

 

「無茶苦茶だろ…」

 

 こんな奴らがシューチイン地方を脅かす魔王だったとは。何より、こんな連中に捕まった事に対する不甲斐なさがハチマンの精神的体力を削った。

 

「そ、そんな事より!かよわい乙女が告白したんです!…返事、頂けますか…?」

 

「ごめんなさい無理です」

 

「えぇ〜!なんでですか〜!!」

 

 異世界に於いても、ハチマン・ヒキガヤ……いや、比企谷八幡は数々の女難が降りかかる。

 

 こんな異世界はまちがっている、と彼なら鬱気味に呟くだろう。

 

 




 設定がガバガバの異世界編。原作主人公である四宮と白銀を名前しか出さない扱いをしている私。

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