ついでに、他作品の単語やら何やらが色々入ります。
「ヒキ
「ヒキ男言うのやめてね。後、一応俺先輩なんだけど」
放課後。俺は鞄を持って廊下を歩いていると、1年生の
「TG部にそんなかったるい縦社会なんて無いんだよ?みんな平等に楽しむのがモットーよ」
「そもそも俺強制的に入れられたんだけどね」
同じクラスで同じ生徒会に所属している藤原という女子が居るのだが、彼女からTG部に入らないかとお誘いがあったのだ。
しかし。
『面倒なので結構です』
と断ったのだ。しかし翌日の放課後、生徒会に行こうとしていたら目の前が一瞬にして暗転した。そしてどこかに引き摺られていき、暗転した光景が一転して全然知らぬ部屋に。
『ようこそTG部へ〜』
『いや説明』
藤原に誘拐されてしまったのだ。「後1人居たら4人専用のゲームが出来るんですよ〜」とか言って無理矢理連れて来たのだ。その次は「男が1人居ないと出来ないゲームなんです〜」とか言って拉致られた。
『わざわざ誘拐して来るのも面倒だし、比企谷に部活に入ってもらおうよ』
槇原のその言葉で藤原と、3年の目ギガ子先輩が合意し、俺の是非は関係無く生徒会と掛け持ちをしてTG部に所属している、というのが事の顛末だ。
「今日も新しいゲームを仕入れたんだよ?」
「TG部ってすぐゲーム買うから結構部費使うよな」
サッカー部やバスケ部などの体育会系の部活より使っているのでは無いだろうか。
「おっすおっす」
「よっすよっす」
TG部の部室に入ると、槇原とギガ子先輩の妙な挨拶が交わされる。
「あっヒキ男くん。見てみて、新しいカードゲーム購入したんだ」
「なんすかそれ」
「ヴァルキリーブレイカーだよ」
「なんすかそれ」
ギガ子先輩が見せて来たのは、英語で"VALKYIE BREAKER"と表記されていたカードパック。本当になんだこれは。遊戯王とかデュエマの派生か何かか。
「あ、ヴァルキリーブレイカーだ!このTG部にもやって来たんだ!」
待って全然知らないゲームなんだけど。
「まさかヒキ男知らないわけ?遊戯王やデュエマ、ポケカに並ぶカードゲームだよ?嘘でしょ?世間にアンテナ張り巡らせなきゃ」
「なんで知らないだけでこんな言われんの俺」
本当この後輩遠慮ってものが無いな全く。
「凶暴なリス、シマウマライダー、ダッシュコアラ、ジャンピングラビット…スターターパックじゃやっぱりこの程度のカードばかりだね」
「取説見る?ヒキ男知らなそうだし」
槇原が説明書を渡して来る。彼女達がきゃっきゃきゃっきゃとカードの開封をしている傍らで、俺は説明書を読み始めた。
このゲームで使うカードの種類は3種類で、5000あるライフが0になったら負け。モンスターカードにはそれぞれ属性があり、火、水、氷の3種類。もうちょいバランスの良い属性は無かったのか。
そして勝負を開始する為の掛け声が存在する。それが「レッツ、ブレイキン」だそうだ。ダサ過ぎる。
「何すかこの奇天烈なカードゲームは」
「レッツ、ブレイキン!」
「始めちゃったよ」
槇原とギガ子先輩がダサい掛け声でヴァルキリーブレイカーを開始し始めた。ルールはなんとなく分かったけど、凶暴なリスとかダッシュコアラとか、ヴァルキリーブレイカーとか言う名前のゲームなのに雰囲気が一切合ってねぇ。
もう頭が痛い。帰っちまおう。
「あれれー?帰って良いのかな、ヒキ男。この部屋には
「初耳なんだけどその女の子」
「私の許可無く帰ったら鎖耶禍ちゃんの呪いが降りかかるけど。それでも良いなら」
「何そのシンプルに怖ぇ忠告は」
鎖耶禍ちゃんが誰なのかは分からない。藁人形と似たような物だろうか。なんにせよ、呪われるなんてそんな非科学的な事があるわけない。
「因みに鎖耶禍ちゃんはそれだよー」
メガ子先輩が指差した先にあるのは、お札が多量に貼られたお人形であった。
待って怖過ぎる。何あれいつの間にあんな人形置いてたの?最早ゲーム関係無いだろ。あれどっちかっていうとオカルトだろ。インテリアとして飾るのもどうかと思うぞ。
「呪われたくなかったらここに居てねー」
1番怖いのは鎖耶禍ちゃんを利用してきゃっきゃきゃっきゃカードゲームを楽しむこの2人なんだけどな。ほとんど監禁だろこれ。
「遅くなりました〜…って、あー!ヴァルキリーブレイカーだ〜!」
「そうなんだよチカちゃん。今、マッキーと遊んでるんだー」
「良いなぁ〜」
良さが全く分からんけど、まぁカードゲームという遊び自体に楽しさがあるのは確かだろう。まず俺にそんな相手が居ないから、1人で遊戯王とデュエマしてたんだけど。それでも楽しかった。
「あー負けたー!」
勝負着くの早いな。
「まさか金色獅子王《魅卦》が出るなんて…!」
やたら強そうな名前のカードが出たな。
「そういえば、新しくゲームを色々仕入れたんですよね〜」
「うん。例えば……これとか」
ギガ子先輩が取り出したゲーム。その名前は。
「う、宇宙エロ本争奪ゲーム!」
「名前卑猥過ぎんだろ」
「これって確か、府上学園のゲーム制作部(仮)が生み出したオリジナルのゲームじゃないですか!一体どうやって…?」
「プロデュースした子が知り合いでねー。作るのに時間は掛からないって言って、くれたんだー」
要の所はお手製のゲームって事だろうか。にしてはしっかりとした箱だし。というかごめんその前にゲーム制作部(仮)ってなんだ。名前はっきりしろよ。
「ジョーにガインジーに…あ、エロインダー!」
最初のジョー以外登場人物名どうなってんだよ。ガインジーとか絶対ガンジーから引っ張って来ただろ。エロインダーとか卑猥の塊みてぇな名前じゃねぇか。
これ作った奴の頭ん中エロばっかか。
「全く付いていけねぇ…」
俺は諦めて鞄からラノベを取り出し、続きを読み始めた。本当もうこれ俺要らんだろ。帰って良いだろ。鎖耶禍ちゃんの呪い絶対嘘だろ。
「ヒキ男がまた何か読んでる。今度は何読んでんの?」
と、槇原は俺の両肩に手を置いて後ろから覗き見る。
そういう無邪気な行動がですね、男子を勘違いさせ、結果死地へ送り込む事になるんです。分かったら今後、ボディータッチはしない、休み時間や放課後に男子の席に座らない、忘れ物を男子から借りない、徹底して下さいね。
「あ、よう実読んでる。最近第2期放送したよね」
よくご存知で。この槇原とギガ子先輩は、藤原曰く酷いアニオタなのだそうだ。アニメに関しては俺も通ずる所があるし、会話に付いていけないわけでは無い。
「マッキーちゃんって、なんだかんだで比企谷くん……じゃなくてヒキ男くんに懐いてますよね〜」
「私もそうだけど、同じ趣味が通じる事は嬉しいもん。ヒキ男くんがTG部に来て、より一層楽しくなったよ」
嬉しい事言ってくれてるんですが、誘拐したのそっちなんですよ。後さっきからヒキ男ヒキ男言うな。引きこもりしてる男みたいに聞こえちゃうだろ。
「あっそうだ。ヒキ男くんもさ、ちょっと手伝ってよ」
「?何をですか?」
「子ども作るの」
「へぁッ!?」
何言ってんのメガ子先輩。俺今驚き過ぎて喉から自然界のものでは無い声が出てしまったのだが。
「あー、まだ途中だよね。ヒキ男くん居るし効率アップだね」
効率アップとか何言ってるの?倫理観マジでイカれてんのか?
「中々作るのしんどかったですもんね〜。この間だって大き過ぎて入らなかったですし」
「えっなんでそんな飄々と言えるの?今自分が何言ってるののか分かってないの?」
「結局大き過ぎたからカッターで周りを削るか穴をドリルで拡張するかの2択だったね」
「ひぃっ!」
なんちゅう事してんの?それもう子ども作るとか言うレベルじゃないよ。なんでそんなバイオレンスな事をやっちゃうの?何その非道徳的なプレイは。
「…あ、あのさ、流石にそういう事はよくないぞ?今なら間に合うからさ」
「え、もう既に作っちゃったよ?子ども」
「はぁ!?」
既に手遅れでした。間に合うとかそんな問題じゃなかった。
「もうなんでもいいから、早く子ども作ろうよ!」
「1万円札はもう作ったんですよね?」
待ってこいつら金の偽造までしてるのか。
いや待て、普通におかしい。話がなんかおかしい。この3人は確かに手遅れなほどの人格破綻を起こしているが、ここまで非常識じゃない筈。
「…い、一応聞くけど。これ一体なんの話してる?」
「え?ハッピーライフゲームの話ですけど」
「ハッピーライフゲーム…」
確か、俺が居ない間に藤原が生徒会に持ち込んでプレイしていたあのクソゲーか。
「こ、子ども作るってのは…?」
「人生ゲームとかである駒の事だけど」
「……で、ですよねぇ…」
あー本当に焦ったわ。ギガ子先輩が子ども作るとか言い出すし、他も何か相槌するし。問題なのが、この人達なら本当にやり兼ねない可能性がある破綻者だって事なのだ。
つまり、勘違いした俺は悪くない。紛らわしい言い方をした彼女達である。
「あっれぇ、ヒキ男は一体何を想像してたのかな?」
と、ニヤニヤしながら詰める槇原。
クソっ、こいつここぞとばかりに揶揄ってきやがる。槇原って案外ドSっ気があるんだよな。
「かれんとおんなじ勘違いしちゃってまぁ。お可愛いねぇヒキ男」
うっぜぇこいつマジうっぜぇ。調子に乗ったらすぐこれだよ。それで2人はなんでそんな微笑ましいものを見てる感じでいるの?先輩が後輩に揶揄われてるんだよ?止めるべきだろ。
「でもあの時焦ったよね。かれんの勘違いのせいで警察来たんだから」
「心臓が止まるかと思いましたよ〜」
そりゃそうだろ。警察呼び出して強引に引き止めなければならない状況下だったんだぞ、今の。
「急に子ども作るとか言い出したら勘違いするだろうよ」
「そんな倫理に欠けた事するわけないでしょうよ。このエロ谷め」
「ヒキ男以上の蔑称はやめて?」
結局、その日の部活は槇原にずっと絡まれて揶揄われていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
休日。
缶コーヒーが切れていたので、近くにあるコンビニで購入して済ませたその帰り道。前方に見覚えのある人物を目視した。
その人物とは、槇原である。
「そこのヒキ男、今暇かな?」
「暇じゃないですさようなら」
「まぁちょっと」
槇原をスルーして帰ろうとするも、そうは問屋が卸さなかった。
「今から漫喫行くんだけどさ、ヒキ男もどう?」
「だから暇じゃないっつってんだろうが」
「よし行こ」
「聞けよ」
この後輩もうちょっと言う事聞いて欲しいなぁ。融通の効かない後輩は伊井野1人で十分だから。
で結局、都心部にある漫喫に来ちゃったわけなんですが。
「えっいつまで居るつもりなの?」
槇原が指定したパックは、30分とか1時間とかそんなレベルでは無かった。なんなら6時間すら余裕で超えるレベル。
「さぁ?まぁ門限ギリギリに帰れるぐらいまで居たら良いんじゃない?」
「て事は仮に門限が10時とかだったら9時とか9時半までここに居るって事?嘘だろ?」
ちょっとの買い物が1日満喫で過ごす事になるなんて、誰が想像していただろうか。
「1人でアニメ観るのも全然良いけどさ。偶には同じ趣味同士の人間と観たいわけよ。マイナーなアニメ通じる子って秀知院には中々居ないから。ね、良いよね?」
本当に融通の効かないこの後輩に、溜め息しか出ない。
「…折角来ちまった以上、すぐ帰るのもあれだからな」
「その反応を待ってたんだよ、捻デレのヒキ男くん」
「お前もしかして小町と交流ある?」
その造語を生み出したの俺ん家の妹なんだけど。
「誰?お米?」
「お米じゃねぇよ」
人の妹を米扱いするとは良い度胸だなこの後輩。
「…というか、俺缶コーヒー買いに来ただけなのになんで漫喫来てるんだろ」
「良いじゃん別に。どうせヒキ男暇でしょ」
わざわざ漫喫じゃなくても自分の家で見ろよ。アニオタなら絶対ネトフリやアマプラぐらい入会してんだろ。
内心、槇原にそう文句を溢しながら部屋に入る。
「何か観たいのある?」
「なんでも良いよ別に」
「じゃああれにしようよ。回復術士の…」
「ストップストップストップ」
こいつえっぐい事言いかけたぞ。そんなんここで見たらただただ気まずいだけだぞ。こんなん女子と一緒に観るべきもんじゃないだろうよ。
「なんでも良いって言うから」
「悪かったからそのチョイスはやめろ。ちょっとエッチいとか言うレベルじゃないだろあれ」
「やっぱヒキ男知ってるんだね。変態」
まさかこれ誘導尋問?何、俺がどんなアニメ観てるかどうかの確認の為にこんな誘導尋問したの?
「…ていうか知ってるお前もお前だろ」
あんなハードなアニメ観てる女子が居るとは思わなんだ。いや、そういう内容より戦闘シーンやキャラクターが良いと言われたらなんとも言えないんだけどさ。
「私は別に気にしないよ。もうそういうのは見慣れたし」
見慣れたとか言う問題じゃなくてね?男女が密室でそういうのを観る事に問題があるんじゃないかって話なの。
「…とりあえず、別のにしよう。わざわざそれ観なきゃならん理由無いだろ。ほら、これとかで良いだろ」
俺が指差したのは、"SPY×FAMILY"という作品だ。放送してから更に有名になった作品。OPやEDが有名な歌手だからという理由もあるかも知れない。
「安直なチョイスだね。…そういえば、この主人公の声ってどことなくヒキ男に似てない?」
「そうか?」
「ヒロイン枠の方なんて、あの龍珠組の娘と同じ声の気がするんだよね」
言われてみれば確かにそんな気もしないわけではない。例えば鬼滅の刃の胡蝶しのぶや、ワンパンマンの地獄のフブキの声に似ている気がする。
まぁ声が似てる人なんて世の中存在するわけだし、他人の空似的なやつだろう。
「まぁ良いやこれで。これ観終わったら他のアニメ観ようよ。リゼロとかとあるシリーズとかさ」
そう言って、俺達2人は共にアニメを見始めた。所々で槇原が発狂しかけるも、俺がなんとか抑えるという行動が定着しつつあったのだった。
夜飯もまさか漫喫で済ませる事になるとは思わなかった。そして指定していたパックの時間もそろそろ切れて、退出する時間となった。
「うわ、もう夜の9時じゃねぇか…」
「いやぁやっぱアニメは最高だねぇ。文明の進歩だよ」
店の外に出て、彼女は背伸びをしてそう言う。
「でも流石に目ぇ疲れたわ…」
ずっとアニメを観ていたのだから、光による目の疲れがあって当然っちゃあ当然だが。
「今度はギガ子とチカも一緒に連れて観ようよ」
「3人で勝手に観てろよ。俺は行かんぞ」
「そんな事言って良いの?ヒキ男がとんだエロいアニメを知ってるむっつりスケベな奴って秀知院に広めるよ?」
「お前鬼か」
「上弦と下弦を束ねている不変を好む鬼だけど何か?」
「誰が鬼舞辻無惨だ」
生徒会選挙の件で周囲から結構嫌われているのにも関わらず、更にそこに余計な情報まで追加されたらクソほど面倒なのだが。
小町が入学する時どうやって俺との関係を隠せば良いんだよ。比企谷なんて苗字中々居ないんだぞ。
「…気が向いたらな」
「最初からそう言えば良いものを」
皆さん、こいつの頭一発ぶっ叩いても文句は言いませんか?構わないなら全力でぶっ叩きます。
「さーてと、そろそろ帰らなきゃね」
「…近くまで送るぞ」
ぶっ叩きたいほど鬱陶しい後輩でも、流石にこんな夜に1人帰らせるのは気が引ける。
「えっまさか女子を途中まで送ってなんか良い雰囲気になりそうみたいなラブコメが展開してる今?マジで?」
「帰る」
「ああもう冗談だって、半分!」
半分本気なのかよ。
「ヒキ男のそういう所、私は嫌いじゃないよ」
「俺はお前のそういう所、苦手だけどな」
「またまた。可愛い後輩でしょうが」
「どこがだよ」
こんな厚かましくて鬱陶しい絡みしかしないクソッタレな後輩に、可愛げも何もあるかよ。
それこそ槇原とラブコメ展開なんて絶対にあり得ねぇよ。
マッキー先ハイがヒロインみたいになったけど、原作ルートじゃ決してそんな事はありません。この物語のみの設定なので。