やはりこの生徒会はまちがっている。   作:セブンアップ

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 早坂愛エンドです。


早坂愛エンド

 

 秀知院を卒業してしばらくが経った。彼ら彼女らは自身の未来の為に、それぞれ違う道を歩んだ。

 一方、俺は東京の大学に進学。普通にぼっち大学生になるかと思いきや、本当に早坂……もとい、愛が俺と同じ大学に来ちゃった。その上、愛の住んでいる家に同棲。大人の階段も既に登ってしまった。

 

 結論を言おう。

 

 急展開過ぎるだろ。

 

 さて、話は変わるが俺が今どこに居るのか教えよう。東京でも無ければ、千葉でも無い。ではどこか。

 

 横浜である。

 

 愛が前々から練っていた横浜でのデート。俺は1人の時ならワクワクしながら綿密な計画を立てるが、誰かと居る時は基本的に後から付いて行くスタイルである。そんなわけで、今回の横浜は彼女に任せっきりなのである。

 

「で、どこに行くんだ?神奈川なんて初めて来たけど」

 

「最初はあそこ。汽車道通って、ハングリータイガーでランチ。その後はワールドポーターズで映画を観た後、コスモワールドで遊ぶの。カップヌードルミュージアムでオリジナルのカップヌードルを作って、人力車で繁華街に移動して脱出ゲーム。ディナーはそこで済ませて、その後はクルージング。赤レンガでスケートして、最後は丘公園で」

 

「お前これ1日でやろうとしてる?俺死ぬよ?」

 

 なんか綿密なプラン練っておいて申し訳ないんだが、これ今日中で全部済ますの無理がある。それこそ殺せんせーにでも協力してくれなければ実現不可能レベル。ヌルフフフ。

 

「…だから2日に分けるの。明日、土曜日でしょ?」

 

「なんで拗ねてんの」

 

「だって、シミュレーションしたもん。ちゃんと完璧だったもん」

 

 「もん」じゃねぇよ可愛いな。子どもっぽいとこも面倒なとこも可愛いな。可愛ければもうなんでも良いや、うん。とにかく可愛い。

 

「まぁ、なんだ。それだけ楽しみだってのは伝わったから」

 

 俺は愛の手を握る。

 

「俺行き先知らんから。お前に連れて行って貰わんと迷子になる」

 

 握られた愛は呆気に取られ、その後機嫌を取り戻したのかこちらに向けてはにかむと同時に、握り返してくる。

 

「ずっと離さないよ。例えどこかに行ったとしても、私は八幡を見つけるから」

 

「セリフだけならカッコいいな」

 

「ふふっ…。それじゃあ行こっ」

 

 こうして、俺達の横浜デートが始まった。

 最初は駅から歩いて少し先にある、汽車道という所へ向かった。どうやら鉄道廃線跡を利用して開通した遊歩道らしい。

 

「これ休日じゃなくて良かったな。絶対人多いぞこんなん」

 

「金曜日を全休にして良かったかもね」

 

 大学の特徴と言えば、1日の時間割を自分で決められる事。だからこうやって意図して全休を作る事も出来る。土日は大学が休みだから、金曜日、あるいは月曜日に全休を作れば3連休的なお得感がある。

 

「にしても寒いな…」

 

「でも、八幡にくっ付くと暖かいよ?」

 

 愛はそう言って、俺の左腕に抱きつく。ああもうそういう行動1つ1つ可愛いからやめてくれませんかね。本当にちょっと暖かくなっちゃったじゃないですか。心が。

 

「…叶う筈が無いものだと思ってた。八幡とこうして付き合う事も、こうして横浜に来る事も。四宮家の傀儡である以上、私に自由なんて無かったから」

 

「…そうだな」

 

「でも、実現した。好きな人と、とても幸せな時間を送れてる。私史上、今1番幸せだよ」

 

 大袈裟…とまでは言えなかった。事実、愛は自由の効かない1年半を送っていた。四宮家の傀儡で無くなっても、今度は俺が彼女達との関係に決着を着けなければならなかった。その結果次第では、愛とこうして来る事も無かった。

 

「史上の幸せ感じるの早過ぎだろ。まだ始まったばっかだぞ」

 

「それって、今以上に私を幸せにしてくれるって比喩と受け取っても良いの?」

 

 付き合って以降、自分に対する好意を引き摺り出そうとしてくる。若干ドS気質があると言うか、俺が恥ずいのを分かった上で聞いてくるのだ。

 

 俺がこうして返答に遅れたり、言葉に詰まったりしたら。

 

「照れてる。…嬉しいな、もっと私を幸せにしてくれるんだ」

 

 こうして揶揄ってくる。魔性の女かよちくしょうが可愛いな。そんなんもう幸せにしなきゃならんくなるだろ。いや最初から不幸にするつもりも無いけども。

 

「相思相愛だね」

 

 よくもまぁそんな事を恥ずかしげも無く言えるな。どこで手に入れれるんだそのメンタルは。言われた俺はもうKOなんですが。

 

「…早よ行くぞ」

 

 もー無理恥ずかしい。何、メロメロにさせて来てんの?なら甘い。もう俺は既にメロメロである。これ以上俺をメロメロにさせてみろ。これ以上無いキモい顔した男が君臨するだけだ。

 

 汽車道を通り抜けた後、埠頭の近くにあるショッピングモール、ハンマーヘッドにやって来た。丁度昼飯の時間なので、愛が練ったプランの中に組み込まれたハングリータイガーとか言うお店に行く事に。

 

「何この景観超エモい」

 

「語彙がギャルになってるし」

 

 愛がここに行きたがる理由も分からないでは無い。というか普通に分かる。汽車道もそうだったが、このハンマーヘッドのハングリータイガーも中々に絶景である。昼間でこれだ。夜ならばもうテンションぶち上げだろう。

 

「前のお前を真似しただけだが?」

 

「昔の話を引っ張り出さないでよ」

 

「"実はぁ、最近比企谷くんのこと気になってて〜。"だっけか」

 

「1番最初のやつじゃんそれ…」

 

 人を欺き、四宮家の為に情報収集していた愛。その成れの果てが、あの偽ギャル。今では良い思い出だが、愛本人はちょっと気にしているようで。黒歴史的な意味で。

 

「そんなん言い出したら、八幡だってカッコつけて"ダウト。ちょっとあざとい。"とか言ってたじゃん。ダウトって何よ。ライアーゲームにでもハマってたの?」

 

 互いが昔のお互いの粗探しをして罵り合っている。傍から見ればそう見えるのだろうが、俺達の間に嫌悪感も何も無い。寧ろ、会話を弾ませるスパイスとなっていた。

 

 そうして会話を楽しんでいると、注文していた品がやって来た。

 

「おお……めちゃ美味そうだなこれ」

 

 俺達は互いにハングリータイガーオリジナルのハンバーグステーキを注文した。他にも種類はあるにはあるが、金銭的な意味で容易に頼めないし、愛は愛でそこまで食べるわけでも無い。金銭的にも胃袋的にも1番安定するのが、このオリジナル。

 国産シャトーブリアンってなんだよ。あれか、乾先輩呼んで解説お願いした方が良いのか。

 

「いただきます」

 

 俺達は早速、ハンバーグを頂く事に。すると愛が、ナイフで切った一口サイズのハンバーグを差し出す。

 

「はい、あーん」

 

「…いや、同じメニューだろうよ。別にそれする必要…」

 

 すると右手に持っているナイフをこちらにちらつかせる。おっとこれ断れば俺がステーキになるやつですね?人肉ステーキの完成とか嫌過ぎる。でも愛なら喜んで食べそう。カニバリズムが趣味とか怖いよう。

 

「いただかせていただきます」

 

 俺は愛が差し出すハンバーグステーキを頂く。…うん、普通に美味い。この店の肉美味いわ。

 

「美味しいです」

 

「じゃあ次は私」

 

 今度は愛が口を開けて待つ。何このバカップルっぷりは。同じメニューなのにわざわざあーんする辺りマジでバカップル。そのバカップルですが何か?

 

「…あ、あーん」

 

 小町とか小さい子にやるならまだしも、同年代にこれをするのはいつまでも慣れない。俺はハンバーグを切り取り、フォークで刺してそれを愛の口の中に。

 

 口にしたハンバーグを咀嚼し、飲み込んだその感想は。

 

「美味しいね」

 

「…そうだな」

 

 満面の笑みを浮かべた。

 

 確かに美味い。景観だけでなく、味も折り紙付き。汽車道もそうだったが、愛には確かにデートプランのチョイスのセンスがあるのは分かった。ただ時間配分が下手くそである。

 確かどこかの誰かさんにボロカスに言われたとか言ってた気するけど、これもしかして石上だったりしない?俺でこの感想が出るんだぞ。あいつならもっとバイオレンスな言葉を引き出してもおかしくないが。

 

 そんな感想を心の中で浮かべながらハンバーグステーキを美味しく頂いているわけなのだが。

 

「…さっきから何してるのお前」

 

 愛がスマホをこちらに向けている。明らかに写真を撮っている奴の構えである。

 

「んー?八幡が食べてる写真」

 

「…お前、食べてる時毎回撮ってるよな」

 

「そうだよ。今や私の写真フォルダの8割は八幡の写真だから」

 

 怖ぇよ。俺の写真が8割とかそのスマホそろそろぶっ壊れるぞ。比企谷菌はバリアー通さないウイルスなんだぞ。そのスマホもいつか必ず感染して死ぬ。

 

 昼食を済ませたら、再び外に。次に向かうのは、同じショッピングモールのワールドポーターズ。ここで映画を観る事が決まっているわけだが、どの映画も特に観たいわけでも無い為、どれでも良いと思っていた。

 

 だが、逃してはならない悪魔の作品が公開中となっていた。

 

「これ観たかったんだよね。"今日は甘口で"

 

 何故だ。何故お前はそこにいる。ここでも邪魔するのか今日あま。一体俺はお前に何をしたというのだ。生きてるからか?俺が生きてるからお前は実写版になり映画化するのか?なら死ねば良いのか?映画を観て人が死ぬという史上初の殺人事件が起こり得るぞ。

 

「この漫画超泣けてさ〜……って、どしたの?そんな殺人鬼を間近で見るような表情して」

 

「…ははは…」

 

「えっマジどうした」

 

 なんでも良いと言ってしまった建前、断る事が出来ない。それにどうやら愛が観たかった映画。二重の意味で断れない。

 

「…ばっちこーい」

 

「これ以上無い気合の無さのばっちこいは初めて見たけど。それじゃ行こっ」

 

 俺は絶望を露わにしたままチケットを購入。その後、愛は「映画と言えばポップコーンとコーラでしょ」とか言って、分ける前提でのポップコーン1つと、コーラ2つを買って、奥に進んだ。

 

「八幡も今日あま読んでたんでしょ?かぐやが言ってた」

 

「…そうだね。泣きまくりましたよ」

 

 それはもう色んな意味で。

 

「だよね。実写版の序盤って結構不評だったけど。最終話で評価爆上がりしたよね」

 

 "今日は甘口で"の実写版を観たのは、小町が観ていたから一緒に観ていた。愛の言う通り、確かに不評だらけの駄作と言われても否定出来ない物だった。

 だが最終話にて、有馬(ありま)かなと鳴嶋(なるしま)メルトの演技が一変。トレンドにも入るレベルの出来栄えとなったそうだ。最後なんて小町泣いてたし。

 

 ただ、俺個人的にはあのストーカー役の…星野(ほしの)アクアとやらの演技が、あの2人を際立たせたように見えた。ネットではキモいとか言われていたらしいけども。

 

「そろそろだね」

 

 シアタールームを照らす光はゆっくりと暗くなり、映画が始まる前の注意や予告などが始まった。

 実写版の出来栄えが悪かった故に、あの錯覚は起きなかったが、もし最終話のような出来栄えが来たらそれもどうなるか分からない。

 

 なんで俺は映画を見るだけで覚悟を決めなければならないのだろうか。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 映画は終わり、俺達は外に出てコスモワールドにやって来た。

 どうやら不味い事になってしまった。またあの錯覚に襲われている。あの恋したい欲に。

 実際にはもう既に恋は成就してるにはしてるのだが、なんて言えば良いのだろう。

 

 なんかイチャイチャしたくなってきた。

 

 普段小町を愛でているように、愛を愛でたくなってしまっている俺ガイル。やっぱあの映画…ていうかあの作品自体、俺との相性が悪い。毎度毎度アイデンティティークライシスする俺の身になってみろ。

 

「…八幡…」

 

 愛がこちらを見上げる。潤んだ瞳、若干赤色に染まった頬。彼女の表情が先程よりも艶かしく見えてしまうのは、"今日あま"特有の錯覚なのだろうか。

 

「キス…したい…」

 

 あっこれヤバい。

 俺はあまりの可愛さに思わず、彼女の耳元に顔を近づけて。

 

「…後でいっぱいしような」

 

 そう囁く。愛は先程よりも頬を赤く染め、期待をするような表情になる。"今日あま"の余韻が残ったまま、俺達はコスモワールドを楽しんだ。

 全部は流石に周る事が出来なかったが、それでも充実した時間となった。

 

 コスモワールドで夕飯を済ませて、いよいよ本日最後のイベント。運河パークから出港する横浜ナイトビュークルージング。ただ今、俺達はナイトクルーズにて横浜の夜景を楽しんでいる。

 

 で、今の俺の気分だが。

 

「死にたい」

 

 コスモワールドのアトラクションにより、"今日あま"の余韻が払拭された。

 何?「キスしたい」て言われて「後でいっぱいしような」て。平たく言ってキモい。マジキモい。お前誰だよ死ねよ。

 

「…八幡…」

 

 愛は変わらずベタベタ引っ付いている。あの一言が影響しているのか、"今日あま"を見る前よりも密着度や甘え方が激しくなっている。

 

 あー死にたい。早くホテルに行って布団の中で悶えたい。

 

 と、2人共夜景を楽しむ余裕が無かった。気付けばクルージングは終了していて、運河パークの近くで予約していたホテルに赴いていたのだ。

 

 エントランスにてルームキーを受け取り、愛が予約していたであろうセミダブルルームの中に入る。部屋はそこまで大きくは無くとも、寝泊まりする分には十分。

 

「八幡っ…」

 

 俺は勢いよくベッドに押し倒される。それに理解する暇も無く、愛は俺の唇を奪い、いつものように蛇の如きテクニックで舌を掻き回す。最初ほどのインパクトは無くなったが、それでも毎度毎度このキスは濃厚過ぎる。前にハッスルし過ぎた時なんて、酸欠状態になりかけた。

 

「ぷはっ……ねぇ…八幡からもして?もっと八幡と交わりたいの」

 

「お前さっきから静かだったのってこれ我慢してたからか?」

 

「だって、八幡が後でいっぱいしてくれるって言ったもん」

 

「…言いましたね」

 

 嫌とかじゃない。むしろこれこそばっちこいだ。しかし、俺がちょっと愛を誘惑するような事言ったら、愛は自身が満足するまで止まらない。

 

「早く、して…?」

 

 愛は目を閉じ口を開き、舌を少し出す。俺からのキスを待っていると言わんばかりの顔。流石に最後までやったらお隣さんに怒られるかもだろうが、キスぐらいなら許容範囲か。

 

「…キスばっかだなおい」

 

 俺は愛の要求通りに従った。彼女は俺から離れまいと全身を使ってしがみつき、俺は俺で彼女を引き寄せるように抱きしめる。

 

 高校1年の時の俺にこんな場面見せたら間違いなく発狂するだろう。それほど、常軌を逸している。俺じゃなくとも、俺の事を知っている人間が見たら平常心を保てなくなるに違いない。「この人こんな事する人だったの」的な感じで。

 

 だが、別にそれでも構わない。愛に応える。それが俺の役目だから。どれだけ求愛されても、どれだけ執着されても。俺は彼女に全てやると決めた。

 俺の人生を歪ませる権利は愛にあり、彼女の人生を歪ませる権利は俺にある。それが俺達の関係なんだ。

 

「っはぁ…はぁ…っ…」

 

 愛は満足したのか、顔を離す。彼女も俺も、口元がベタベタである。どれほどの時間、どれだけ濃密なキスをしたのかを事細かに説明するのは恥ずかしいので省略する。

 

「…しよっか…」

 

 愛は財布から避妊具を取り出して、妖艶な表情で俺を誘う。

 

「お前明日も周る事分かってる?」

 

 大概こういうのをする時は、次の日は何も無い日と決まっている。流石に次の日に朝から夕方まで大学だったりバイトだったりだと、俺の体力が保たない。

 

「だって、いっぱいしてくれるんでしょ?それって、私をいっぱい愛してくれるって事なんでしょ?」

 

「キスの話だろあれは…。というか、お隣さんに怒られても知らんぞ」

 

「大丈夫、我慢する。我慢するから…」

 

 嘘吐け。お前普段からじゃ考えられない声出すじゃねぇかよ。初めて聞いた時びっくりしたわ。超エロ過ぎて。

 お隣さんが居るのかどうかは分からないが、流石にこいつの喘ぎ声を聞かせるわけにはいかない。というか聞かせるのもなんか嫌だし。

 

「…声出そうになったら首を噛むなりキスするなりしろ。ここ家じゃないんだから。お隣さん…というか周りにお前の声聞かせるわけにもいかんからな」

 

「それって、私の声を独り占めしたいって事……?」

 

「周りに迷惑を掛けたくないだけだ。……まぁ、そりゃちょっと嫌だけども」

 

 すると、愛の様子が変わる。先程までただ発情していた犬のようだったのが、一変して捕食者のような目となる。瞳孔が開いて、昏い目でこちらを捉えている。

 

「…これだから捻デレは嫌なの。中毒症状になるんだもん」

 

 そんな捻っては無かったろ今の。ちょいデレだろうよ。

 

「絶対に私だけにしてね、その捻デレ。というかデレるのは私だけで良いの。他の女にしたらその女絶対に潰す。2度と八幡に近づかせないようにする。勿論、八幡にもお仕置きはするからね」

 

 愛が見せたのは、謎めいた入れ物。どうやら取り出したのは避妊具だけでは無かった。俺は恐る恐る尋ねる。

 

「…それはなんですか」

 

「媚薬だよ。まだ八幡は他の女に現を抜かしてなかったけど、もしそうなる事があればしばらく媚薬漬けにしてあげる。私以外に目がいかないように。私以外どうでもよくなるように、徹底的に私だけを見てもらうの。八幡には私以外要らないでしょ?」

 

 なんで持って来てんのそんなの。というか避妊具もなんで普段から携帯してんの?どこでも出来るようにって事ですかそうですか。そうかそうか、君はそんな奴だったんだな。

 

 可愛いな。

 

 まだ夜中とまではいかないが、自分でもらしくないほど気持ちが高揚しているのが分かった。だから今の愛の行動も言動も、なんか可愛く見えてしまう。可愛いから許す。

 

「八幡」

 

 愛は纏っている服をゆっくりと脱ぎ出していく。見えるのは、彼女が着けている黒の下着。男ならきっと誰しもが見惚れ、気持ちが昂ってしまう彼女のその姿。容姿やプロポーションが相まって、多少見慣れたとはいえ、未だに落ち着かない。

 

 こういう姿を見る事が出来るのが俺だけだと思うと、なんだか独占欲が溢れてきてしまう。人の事を重いとか面倒とか言えなくなるわこれ。面倒なのは分かり切ってたけど。

 

「私の身体()に、君の愛をいっぱい感じさせて」

 

 …今更だが、俺ももう愛から離れる事が出来なくなってしまったかも知れない。愛が俺に沼っているように、俺もまた愛に沼っている。

 互いが互いを求め、執着して、交わって。そして溶けていく。その過程が俺達にとって心地の良いものになってしまっている。どれだけ歪な関係であっても、俺達はそれを肯定し続ける。

 

「八幡っ…!」

 

 …とりあえず、明日に響きませんように。

 

 





 次のエンドは誰にしましょうか。

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