やはりこの生徒会はまちがっている。   作:セブンアップ

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比企谷八幡ハーレムハッピー(バッド)エンド

 

 逃げてはいけない選択から逃げてしまった。自分を好いてくれる彼女達を誰1人として裏切りたくなくて。その結果、彼女達の気持ちを裏切った。

 

 だから、これは罰なのだ。彼女達の気持ちから逃げた罰なのだ。

 

「言ったよね。逃げたらどうなるかって」

 

「監禁や無理矢理薬を飲ませるのは法に触れてしまいますが……先輩が私から離れるならやむを得ません」

 

「あんたは誰かを選ばなきゃならなかった。誰か1人を選んだとしても、私達は祝福するつもりだったのよ」

 

「でも誰も選ばなかった。お前は、私達の気持ちを裏切ったんだよ」

 

「八にぃの事だから、きっと私達全員の気持ちを裏切りたくなかったんだよね。裏切りたくなかったから、誰も選ばなかったんだよね」

 

「でも世の中って、そう上手くいかないんですよ〜?逃げてしまったら、追いかけられるのが世の理なんですよ」

 

 俺の周りには、6人もの女性が居た。早坂愛、伊井野ミコ、四条眞妃、龍珠桃、白銀圭、そして藤原千花。客観的に見れば大ハーレム。男の夢かも知れない。

 

「それにしても、書記ちゃん凄いよね。本当に一夫多妻制を叶えるなんてさ」

 

「愛があれば、なんでも出来るんですYO」

 

「流石千花ねぇっ」

 

 彼女達は和気藹々と話しているが、俺にはその会話に入る気力も、聞く気力も無かった。ただ彼女達に従い、彼女達の思うがままに操られる。今の俺には選択肢も決定権も無い。

 

 ここでの俺の役割。それは、彼女達全員を愛する事。

 

「良かったな八幡。大ハーレムだ」

 

「私達の様な美少女を一気に侍らせる事が出来るのよ。嬉しいわよね?」

 

「…そう…だな……」

 

 喉から必死に出した声は、枯れかけた声。喉を潰されたとかでは無く、今まで俺はずっと叫び続けて来た。

 喉だけじゃない。身体のあちこちには、彼女達のキスマーク、ないし暴力による傷が多く付けられている。

 

 彼女達の蹂躙によって付けられた、彼女達のモノだという証。

 最初はそれが罰なのだと思っていた。痛く、苦しい。しかし彼女達の苦しみはこんなものではないと、自分自身に言い聞かせて追い詰めた。

 

 しかし、途中からそれが愛されているのだと実感し始めた。

 

 彼女達が俺に暴力を振るうのは。監禁をするのは。薬漬けをするのは。きっと俺への求愛行動なのだろうと思い始めた。その愛が段々と心地良くなり、今では彼女達の愛が無ければ生きてはいけなくなってしまっている。

 

 きっと彼女達に捨てられたら、俺は生きてはいけないだろう。俺の生きる理由は彼女達ありき。誰か1人欠ける事だけでも、俺は耐えられないのかも知れない。

 

「八幡、声かれっかれじゃん。水飲む?」

 

「あぁ…」

 

 愛は俺に水を飲ませてくれた。しかし、ただで飲ませるわけもなかった。彼女は自分自身に水を含み、そのまま俺に口で移す。冷たい水と、彼女の温かい舌が絡まり合い、水が溢れてしまう。

 

「…ぷはっ……まだ飲む?」

 

「お前絶対キスしたいだけだろ」

 

「でも八幡はとても気持ち良さそうだよ?」

 

「八にぃっ、私ともしよ」

 

 愛と桃が何やら言い争う中、圭が勢いよく啄む。どこで覚えたのか分からない、キステクニック。圭だけでは無い。彼女達のテクによって、俺は骨抜きにされてしまっている。争う事など出来ないのだ。

 

「これだけの女性とキス出来て、更に処女まで頂いちゃって。八幡くんは幸せ者ですね〜」

 

「性行為なんて卑猥なものだと思ってましたけど…先輩との行為があんなに満たされるものなんて知りませんでした」

 

「ていうか正直、この中で1番性欲強いのミコだろ。余裕で4回戦とか行くし。八幡死んでんのに1人で腰振ってちょっと引いたわ」

 

「皆さんもそんな変わりないでしょう!?」

 

 何回、何十回、彼女達と交わったか記憶に無い。避妊具なんて使ってすらない。きっと彼女達のお腹には、俺の子どもが居る可能性だってある。誰も堕すつもりは一切無いだろう。

 

「楽しみね。あんたの子どもが生まれる日」

 

 眞妃は幸せそうにお腹をさする。まだ認知したと言う報告は聞いていないが、それも時間の問題だ。

 

「6人一気に妊婦さんにしちゃうなんて、八幡くんも雄ですね〜」

 

「これでもう私達から逃げられない。元より逃すつもりも無いけどね」

 

 俺は逃げた試しどころか、逃げる気すら失せていた。監禁されてから、この地下部屋の外に一切足を踏み出していないのだから。

 

 俺の首には愛が作ったチョーカーがある。中にはGPSを埋め込まれていたりしているのだが、それより驚きなのは、地下部屋の扉に設置されている感知器と連動している事。俺が一歩でも外に出たら、それを感知し、そこかしこのガス噴射口から媚薬効果が混ざった催眠ガスが吐き出される。

 電撃では無い分まだマシではあるが、起きた途端に俺の目の前に彼女達が居るという状況下に陥る。そして、何度も何度も彼女達による愛の蹂躙を受ける。催眠効果が切れても、媚薬効果は持続する仕組みであり、途中から俺も彼女達へ求愛してしまう。

 

 ここまで説明すれば分かるだろう。物理的に考えて、俺はここから逃げられない。チョーカーを無理矢理外そうものなら、チョーカーの内部に装備されている媚薬が塗られた小さな針が首を刺す。

 

「それに、八幡ももう私から離れられない。私達の愛を感じて、離れられなくなったでしょ?私達以外に、八幡をあんなに愛する人間なんて、他に居ない」

 

「私達が居なくなったら、八幡は1人になる。そんなの、耐えられねぇよな?」

 

 彼女達が居なくなれば。確かに俺は自由になるかも知れない。薄暗い部屋に一生監禁なんて事も無くなる。だがその代償として、彼女達の求愛が全て消える。

 

 …無理だ。俺はもう彼女達から離れられない。彼女達のキスも、性的行為も、暴力も。彼女達の行為全てに、俺は愛を感じてしまった。依存してしまった。あれらが無ければ、俺は生きていけなくなる。

 彼女達の求愛行動、それに俺が応える。それが俺の生きる理由。求愛行動が無くなってしまえば、俺の生きる理由が消えてしまう。

 

「…嫌、だ…」

 

「ん?なんて?」

 

「お前らが居なくなったら、俺は…俺は……」

 

 きっとこんな枯れた声じゃ誰にも聞こえていないかも知れない。それでも、彼女達が目の前から居なくなる事を考えたら、言わないわけにはいかなかった。

 

「大丈夫ですよ。私達、八幡くんから離れるつもりはありません。ていうか今更リリースされると困っちゃいます」

 

「千花…」

 

「先輩が私の前から居なくならない限り、私は絶対先輩を見離しません。ずっと、ずーっと一緒です」

 

「ミコ…」

 

 俺はこんなにも愛されている。愛に、ミコに、眞妃に、桃に、圭に、千花に。6人の女性から手に余るほどの愛を与えてくれる。そんな存在、きっと探しても見つからない。

 

「ふふ、意地悪してごめんね。でもこれで分かったでしょ?」

 

 愛は俺の頬に優しく触れる。しかし、彼女の目から一切の光が無かった。にも関わらず、口角を釣り上げている。

 

「八幡はもう私達から離れられないの。私達も八幡から離れられない。共依存でも良い。私達は八幡を愛して、八幡は私達を愛するの。それが私達にとって、1番の幸せなんだよ」

 

「愛…」

 

「でも私達から目を背けるなら容赦はしないわ。1度裏切った事を忘れないから。今以上に痛めつけて、今以上に私達の愛を八幡に与えるわ。もう2度と離れようなんて気にすらならないように」

 

「…もう逃げるつもりも、離れるつもりもねぇよ…」

 

 先程も言ったが、俺に決定権なんてない。彼女達の言葉が、俺の行動理由である。客観的に見れば、俺は彼女達のマリオネットかも知れない。薬で洗脳されているのではないかと思われていても仕方がない。

 

 それでも。マリオネットになっていても、洗脳されていても良い。彼女達を愛する為、そして、彼女達に愛される為。その為ならば、時間や感情…諸々何もかもを全て捧げる。これは義務じゃなく、俺の意思だ。

 

「俺も…お前ら以外には何も要らないから」

 

 俺の人生は、こいつらの為だけにあるのだから。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 八幡が寝てしまった時間帯。私達は書記ちゃん、風紀委員ちゃん、圭ちゃん、そして彼女達を抱き寄せる八幡の寝顔を近くで見ながら、眞妃と桃の3人で深夜のガールズトークに勤しんでいた。

 

「これでもう、八幡は私達から離れられない。離すつもりも無いけどね」

 

「にしても、ようやく堕ちたな。今まで抗ってたってのに、今じゃ私達無しでは生きていけなくなっちまった」

 

「あれだけ薬漬けにしたからね。ていうか、あの手の薬って身体に異常が無いの?服用し過ぎると身体に悪いのが薬でしょう?」

 

「あぁ。効果絶大な媚薬だが、何度服用しても悪影響を及ぼさねぇのが特徴だ。そういう薬のツテは龍珠団がよく分かってるからな」

 

「何その都合の良い薬」

 

 薬なんて使わなくても、元々彼は私達を意識していた。誰もが大事で、だからこそ誰の気持ちにも応えなかった。誰かを犠牲にして成り立つというのは、八幡にとっては毛嫌いする事だから。

 

「ていうか1番凄いのは千花でしょ。総理大臣になるし、一夫多妻制を定めるし」

 

「八幡の事1番好きなのもしかしたらこいつじゃねぇのか」

 

 私も驚きだった。身近に居る人間が総理になって法を改正するなんて、誰が想像出来る?ポケモンGOしていて頭に飾る黒のリボンを失くす彼女が総理になるなんて。世も末だ。

 でも、今回ばかりは大活躍である。お陰で私達は、彼から名前を貰ったのだから。

 

 比企谷愛。比企谷ミコ。比企谷眞妃。比企谷桃。比企谷圭。比企谷千花。

 

 私達6人全員、彼の姓である比企谷を貰った。つまり、6人は彼の妻という事。フィクションの世界でしかあり得ない状況下に、私達は居る。八幡と出会う前であれば、きっとドン引きしていたかも知れない。

 

「八幡を1番好きな人なんてここには居ないよ。みんな、八幡が好きだから。そこに格差なんて無いよ」

 

「…それもそうだな」

 

「そして、それは八幡も同じ事。八幡も私達を愛してるから」

 

 私達は今、とても幸せだ。これからも、八幡にいっぱい愛されるから。今の八幡の拠り所は私達。その拠り所を消させまいとして、きっと今まで以上に愛してくれる。私達と同じように、あるいは私達以上に、病的なまでに。

 彼の愛はもう、小町ちゃんに向かない事だろう。あれだけ溺愛していた妹さえも忘れ、今では私達と共に居る事を選び、繋ぎ止めている。監禁する前の八幡ならば、考えられない事だ。

 

「良かったでしょ?私の提案飲んで」

 

「遺憾ながらな。私の居場所はこいつしか無い。誰かを選んで振られたならまだしも、誰も選ばず振られるくらいなら縛り付けた方がマシだ」

 

「縛り付けるなんて生易しいもんじゃなかったでしょ、あんたの場合。思いっきり殴ってたじゃない、ボッコボコに。身体にまだあんたが殴った傷跡が残ってるわよ」

 

 眞妃は呆れる。

 監禁してすぐ、桃は怒りのまま八幡を殴った。千花は止めていたが、他は彼女を見届けていた。本当なら、ミコが1番止めるものだと思っていたけど。

 

『先輩にも同じ苦しみを与えなければ、きっと伝わりません。ですので今回の件に関しては不問とします。本来なら裁判沙汰ですが』

 

 逆にミコが桃の暴力を後押ししていた。依存しているからこそ、自分から離れられない為には暴力でさえも容認するという事なのだろう。

 

「けどこれが1番効果的だったろうが。今じゃ八幡は、私の暴力でさえも私の愛だと思い込んでる。逃げねぇなら別に殴る気はねぇのに、捨て猫みてぇな表情して強請ってくる。ありゃもう末期だろ」

 

「でも、気持ち良いでしょ?八幡が私達に対して、愛を求めてくるの。今までなら無かったもん」

 

 私はとても気持ち良い。いっぱい愛を求めてくるから。他の誰でもない、八幡に愛を求められるのが幸せなのだ。

 

「否定はしないわ。幸せな気分になるもの」

 

 彼には今以上に、もっと私達を、私達の愛を求めて欲しい。数分私達居なくなっただけで不安がるほどに、ドロドロに依存して欲しい。脳内全てが私達の事だけになっていて欲しい。

 

「…そうだな。これ以上無い幸せだ」

 

 私達も、今以上に君を、君の愛を求めるから。もっともっと依存するから。君が居ないと死んでしまうぐらいに。

 

「ふふふ……これからもずーっと一緒だよ…。八幡」

 

 八幡は私達だけのモノで、私達は八幡だけのモノ。私達の間に、他の女も、男も要らない。私達、7人だけが居ればそれで良い。この関係が、この空間が、私達の幸せであり、本物なのだ。

 

 もしこの関係を侮辱する人間、壊す人間が居るというのなら。

 

 迷わず殺す。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 千葉県には、誰の目にも止まる豪邸がある。その豪邸の表札には、"比企谷"という名前が刻まれていた。この豪邸は千葉の観光名所になりつつあるが、有名となったのは建物の豪華さだけでは無い。

 

 ここの主、比企谷八幡という男が、日本で初めて一夫多妻を叶えた人間である事。

 

 藤原総理大臣により、日本は一夫多妻制を正式に定めた。そのニュースは日本を震撼させた。比企谷家を始め、桐ヶ谷家や上杉家、唯我家なども続いて一夫多妻制に乗っ取り、複数の女性と結婚したとニュースが取り上げられた。

 反面、一夫多妻制を否定する派閥もあった。だが藤原総理大臣の、愛による弁論により、否定派閥を粉砕。これにより、一夫多妻の家庭が増加し始めたのだった。

 

 そんな事すら露知らず、一夫多妻第1号家庭である比企谷家の地下部屋では。

 

「ミコ…」

 

「んっ……先輩、もっとギュッて抱きしめて……」

 

 伊井野ミコ、もとい、比企谷八幡の妻の1人、比企谷ミコを抱きしめている。

 他にも、件のニュースで話題となった藤原総理大臣こと藤原千花は、一夫多妻制が正式に定まってから、比企谷千花となった。

 龍珠団の長である龍珠桃も、今では比企谷桃に。ただ、グループの名は変えないらしい。先代が引き継いで来た名前は、そのまま後世に残したいそうだ。

 秀知院学園生徒会長であり、スタンフォードの推薦を勝ち取った白銀御行の妹、白銀圭も名前が変わり、比企谷圭に。

 四条家の令嬢でもあった四条眞妃は、比企谷の嫁になって比企谷眞妃になる。四条家の跡を継ぐのは、弟である帝となったそうだ。

 

 そして。

 

「八幡、私も居るんだよ?」

 

「分かってる。愛、お前も」

 

「うん…」

 

 ミコと同じように、もう1本の腕で抱きしめられた彼女こそ、日本で一夫多妻制を定めるきっかけとなった。旧姓は早坂。そして今では、比企谷愛と名乗っている。

 

 以上の6名が、比企谷八幡の妻である。

 

「ミコ……愛……」

 

 ミコと愛以外は外に出払っている。八幡専用の部屋…もとい、八幡を監禁する為だけに作られた地下部屋で、2人の女性を抱擁している。

 

 この豪邸自体は元々、四条家が所有していた屋敷。それを眞妃が引き継ぐ形となり、今では比企谷家の屋敷と化した。この地下部屋も元は、四条家に対する反乱異分子を消す為の部屋だったが、眞妃と愛の指示で改装されて、八幡を監禁する為だけの部屋へと変貌させた。

 

 秀知院を卒業してから、数年が経っている。あれから日本は、彼女達は大きく変わった。

 

 しかし1番変わったのは、この男。

 

「八幡。キス、しよ……?」

 

「ダメですっ。私が先に愛してもらうんです!」

 

 2人の女性の我儘に、八幡は嫌な顔1つも見せず。

 

「最初はミコからな」

 

 ミコに対して、躊躇いもなくキスをする。触れ合うだけのマウストゥーマウスでは無く、舌を入れ絡め合った濃厚なキス。しかし、彼らにとってそれは特別なキスでは無い。単なるキス。

 

「んぅ…むっ…れろっ……」

 

「八幡、私は?」

 

 ミコと八幡のキスに、愛は拗ねた様子。その様子を見た八幡は、一旦ミコとのキスをやめ、愛とのキスに移る。彼と彼女の口内で、唾液と舌が熱く絡まり合っている。濃厚なキスをしているせいで、無意識に互いが互いを強く抱きしめていく。

 

「せ、先輩……もう1回…もう1回、私を愛してください……」

 

 先程のキスに加え、愛と八幡のキスを眼前で見ているミコ。上気した頬、少し荒い息、そして無意識のうちに自身の手がデリケートゾーンへと伸びている。完全に発情していた。

 風紀を乱す者に制裁を加えていたミコの影は既に消え、今では自身の依存相手である八幡からの愛を貰う為に風紀を乱そうとしている。

 

 八幡に1度愛された彼女は、更に依存。八幡だけじゃなく、八幡との行為に快楽を覚えた。彼の愛が、直接自分に注がれている気がしたから。以降、八幡との行為に積極的になる。愛する者の為ならば、自分の信念すら捻じ曲げてしまう。

 

「ぷはっ…ダメだよ、まだ私の番だから…ね?八幡」

 

 キスだけでは終わらない様子が垣間見える愛の表情。彼女もまた、彼から愛される事を知った。ミコや愛だけでなく、彼女達6人全員、八幡と繋がり、愛された。

 こちらから愛する事があっても、八幡から愛されるなんて事は無かった。捻くれていて、人と距離を置こうとしていたのだから。

 そんな八幡も今では、彼女達を愛し、愛し、愛し尽くすのだった。妹の小町すらも彼の脳内から消え、代わりに彼女達6人が刷り込まれたのだ。

 

 以前の比企谷八幡はもう居ない。今存在するのは、彼女達6人の為だけに生きる比企谷八幡。監禁されて数十日の日が経ち、八幡は彼女達によって壊されたのだ。

 

 暴力による恐怖。性行為による快楽。薬による洗脳。言葉による優しさ。彼女達6人はあらゆる手を尽くして、比企谷八幡を破壊した。それが愛によるものか、または自分達の気持ちを裏切ったものによる憎しみなのかは分からない。

 

 しかし依然として、彼女達は彼を愛している。どんな事があっても、心から比企谷八幡という男を愛しているのだ。

 

 そして、それは八幡も同様に。

 自身を病的に愛してくれるのは彼女達である。自身の居場所は彼女達である。八幡は、彼女達が自分から離れる事を恐れている。彼女達の存在そのものに依存している。自分の手から離さない為、繋ぎ止めておく為に、彼は彼女達と同等か、それ以上の愛を彼女達に与える。

 

「おいおい、人が飯の食材買いに行ってる間に何盛っとんだ」

 

「私達を差し置いて2人だけ先に愛してもらっているなんて、とんだ不調法者ね」

 

「ずるいです。私だって八にぃとキスしたいのに…」

 

「昼ご飯は精の着くご飯ですよ〜」

 

 残りの4人である、眞妃、桃、圭、千花が帰宅。3人の行為を見て、文句を言っている。1人だけ今日の献立のジャンルを言っていたが。

 

「お前ら退け。今度は私の番だ」

 

「ダメだよ。今から八幡に愛してもらうんだから」

 

 1人の男を巡って争う彼女達。男の夢であると思う者は居るかも知れない。しかしここに至るまで、地獄の苦しみを味わう事になる。それを味わって尚、男はハーレムを求めるのだろうか。

 

 答えは不明である。

 

「八幡」

 

「先輩」

 

「ねぇ、八幡」

 

「おい」

 

「八にぃっ」

 

「八幡くん」

 

 彼女達6人は声を揃えて、彼に迫って尋ねる。

 

「最初は誰が良い?」

 

 6人同時に迫られる八幡。しかし、ここで敢えて1人を選べば、それは八幡から何か特別な扱いを受けたという他ならない。

 

 どう答えるのか。

 

「最初も最後も、対して変わらない。最初でも2番目でも、最後だったとしても。俺はお前達を平等に愛する。お前達の望むままに愛する。俺の全部は、お前達のモノだから。…けど」

 

「けど?」

 

「…愛、ミコ。眞妃、桃、圭。そして千花。…お前らは、俺の女だ。俺はお前らに全てやる…だから」

 

 最後に彼はこう伝えた。

 

「お前らの全部を俺にくれ」

 

 結果として、答えは出していなかった。いや、出していたと言えば出していた。誰が最初でも最後でも良いと。その後、彼は順番など関係なしに、皆を平等に愛すると言った。

 

 ここまで明確に言葉にされた事は今まで無かった。八幡が自分達を自身のモノと言った事も。

 

 その言葉に、彼女達は。

 

「…当たり前だよ。私達は八幡のモノで、八幡は私達のモノなんだよ?」

 

「先輩からの愛は、私達だけのなんです。私達だけが受けていい愛なんですよ」

 

「むしろやっと自覚したのって感じよ。これだから、あんたは不調法者なのよ」

 

「お前が私達を拠り所としているように、私達もお前を拠り所としてるんだ。そんな簡単に離してたまるか」

 

「他の女に絶対八にぃは渡さないし、私達も他の男のモノになるつもりも無いよ。ずーっと一緒だから」

 

「これからも、私達は八幡くんをいっぱい愛します。だから、八幡くんも私達をいっぱい愛してくださいね?」

 

 内容が違えど、想いは同じ。彼女達は皆、彼を愛している。そして彼もまた、彼女達を愛して居る。互いに、病的なまでに。

 

「あぁ。…これからしばらく…いや、死ぬまで一生…。俺は…俺達は…」

 

 今度は八幡と彼女達が声を揃えて。

 

「ずっと一緒」

 

 …そう。これから彼は、彼女達と共に一生を送る。もしかすれば、生まれ変わってもそうなるのかも知れない。確証は無い。…しかし、彼の愛と彼女達の愛ならば。不可能を可能にしてもおかしくないと、そう思わせられる。

 きっと彼と彼女の物語は、いつしか歴史の教科書にでも記載されるだろう。それは何故か。

 

 これは彼と彼女達の間違った青春だから。

 




 なんかもうすんごいことになった。これにてメインヒロイン、そしてハーレムエンドは終了しました。残りは、サブヒロインでもない不知火ころもや藤原姉妹になります。

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