やはりこの生徒会はまちがっている。   作:セブンアップ

2 / 115
かぐや様は止められたい

 

 

「ラブレター!?」

 

「ええ。とても情熱的な内容で、一度食事でもどうかと」

 

「つまりあれか。デートしてくださいってやつか」

 

 四宮にラブレターを送るとは、無謀にも程がある。白銀という相手がいる時点で既に勝ち目はないのだが、そもそも四宮相手に頭ん中をピュアピュアさせてラブレターを送るとか、自ら死地に赴くようなもの。そんなに死に急ぎたかったのか。

 

「比企谷くん?何を考えているのですか?」

 

「に、にゃんでも?」

 

 四宮の圧にびびって噛んでしまった。

 

「んんっ!…それで行くのか?」

 

「勿論です」

 

 四宮がそう答えた瞬間、背後からパキィっと何かがへし折れた。わお、白銀くんすっごい嫉妬してますね。

 

「勇気を振り絞ってこんな情熱的な恋文をくれる方です。きっと好きになってしまうに違いありません」

 

「この間から思ってたんだけど、お前そんな恋愛脳だったか?お前のことだから、"誰がこんな喋る雑草とデートなんて行くもんですか"って一蹴しそうだが…」

 

「比企谷くんは私をなんだと思っているの?…このような恋文を送った方は、きっと相当な覚悟を決めたはず。そんな方のお誘いならば、私は喜んでお受けするわ」

 

「お、おう…そうか」

 

 どうやら四宮は本気で行くようだ。白銀が止めない限り、多分四宮は本気で行く気だ。

 

 …別に白銀の恋を応援するわけではないが、万が一、白銀が四宮に振られようものなら夢見が悪いし、後々が面倒くさい。仕方ない。

 

「…あんまおすすめはしないけどな」

 

「…何故ですか?」

 

「ラブレターを送るってことは、確かに相当な勇気があるやつだ。どっかの誰かさんとは違うわ。…だが、それだけで好きになるなら、お前の愛の価値観はその程度ってことだ」

 

 ちらっと白銀を見ると、俺に向けてサムズアップしてる。別にお前のためではないんですけどね。さっさと好きでもなんでも言って引き止めろ。

 

「比企谷の言う通りだぞ四宮。それに、生徒会長として不純異性交遊は感心しないな」

 

「大袈裟ですね。食事に行くだけではないですか」

 

「判断するのは教師だ。停学処分ということもあり得るだろう。…しかし、どうしても行くと言うのであれば。俺から教師に話を通しておいてやろう」

 

 なんでそうなる。それ単純に教師にチクってるだけじゃねぇか。お前そこそこ狡いことするな。生徒会長がそんなんでいいのか。

 とはいえ、この攻撃は四宮の余裕を奪う。四宮が先に折れるか?

 

「構いません。それが真実の恋ならば、私は退学だろうと受け入れるつもりです」

 

 折れなかったわ。つーかさっきからずっと思ってたんだけど、何このラブコメ。ツンデレ同士のラブコメ。

 

「それに真実の恋ならば、私は身も心も捧げる覚悟はあります」

 

 四宮の会心の一撃。これには白銀も大ダメージ。白銀は動揺を隠せずにいた。

 

「バカかお前。それは流石にやり過ぎだろ」

 

「バカじゃありません!熱烈な愛を伝えてきている人です!退学も覚悟で応えなければ、不義理ではないですか!」

 

「ふ、ふざけるな!だったらお前に告白ッ…!!」

 

 そこで白銀は言葉にするのを止めた。自分が今、何を言いかけたのかを理解したからだ。

 こいつらの気持ちを知ってる俺ですら、今ドキッとしたよ。遂に告白するのか、と。やっとこいつらはくっつくと、どこか安堵する俺がいたのだが。

 

「…を仮にしたら?仮にだぞ。その男のことは忘れるんだろうな?」

 

 うん。やっぱり世の中上手くいかないことが多いよね。分かりきってたよ。白銀がこのまま勢いで告白しないくらい、分かってた。

 

「アホか……」

 

 ほとほとこいつらに呆れるばかりだ。流石の四宮も、このチキンっぷりに呆れて…。

 

「か、可能性は…あります」

 

 んーなんでこの子モジモジしてるの?なんでこの初々しい反応してるのん?

 

「その程度のものが真実の恋、ねぇ?ハッハッハ!他の男に言い寄られた程度で忘れられるものが真実の恋のはずがない」

 

 ここぞとばかりに四宮を追撃する白銀。あの、側から見てると結構ゲスいことをしてると思うのは俺だけ?

 

「可能性はあるって言っただけじゃないですか!」

 

「そうかそうか。ご大層な恋だな」

 

 えーめっちゃ足震えてる。ガクガクって効果音が付きそうなくらい足震わせてる。

 

「もう知りません。本当に行くんですから」

 

 そんな白銀を見た四宮は怒り、鞄を持って生徒会室から出て行こうとする。だが、四宮の肩を掴んで静止する。

 

 問い。この部屋には四宮大好きっ子が存在します。それは誰か?

 答えは。

 

「かぐやさんが誰かのものになっちゃうなんてやだあ!退学なんてやだあ!びええええ!」

 

 藤原でした。

 彼女はこれでもかというくらい号泣し、四宮を引き止める。そんな藤原に、四宮は観念した。

 

「あぁもう分かりましたから!行かないから離して!」

 

「びええええん!!」

 

「もういい加減泣き止みなさい!」

 

 この生徒会室で唯一、常識が通用しない非常識人。ダークマター的存在と言える。

 

「助かったよ、比企谷」

 

「なんでもいいけど、はよ告ってはよ付き合うかはよ振られるかどっちかにしろ。振られる方法なら俺が教えてやるけど」

 

「そんな方法いらんわ!」

 

 この調子だと、しばらくはこのとんだ茶番に付き合う羽目になるんだろうな。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。