やはりこの生徒会はまちがっている。   作:セブンアップ

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かぐや様は占いたい

 9月も中旬に差し掛かるも、未だに夏の暑さだけが残る今日この頃。俺達生徒会は、いつも通りに過ごしている。

 

 彼女以外は。

 

「うぅ〜……」

 

 何やら四宮が唸り声をあげている。

 

「かぐやさん、何か悩み事ですか?」

 

「…まぁ、悩み事と言えばそうなりますかね…」

 

 単なる悩み事か。だが相手が悪いな四宮。お前の前にいるのは藤原(ダークマター)だ。何の相談するのか分からんけど、早坂か柏木さんあたりにしとけ。傷がつく前に。

 

「ふむふむ……。では、この占い師千花(フォーチュンテラーCHIKA)が占ってしんぜます!」

 

「占い…?」

 

 藤原はとんがり帽子を被って、キリッとキメ顔をした。そんな藤原は、スマホを操作して四宮に見せる。

 

「このサイトに性別と誕生日を打ち込むだけで、かぐやさんの抱えてる悩みをバッチリくっきり解決します!」

 

「機械頼りかよ。せめて水晶玉くらい出せよ」

 

「全くです。大体、占いなんて馬鹿馬鹿しい。性別と誕生日だけで何が……」

 

 俺の言い分に賛同した四宮だが、何故か途中で止まった。そして怪しげにクスッと笑い。

 

「…面白そうですね。ぜひみんなでやりましょう」

 

「やるんかい」

 

 四宮が突然掌を返すあたり、何か企みを講じているとみた。まぁおそらく、白銀関連なんだろうけど。

 

「私の誕生日は1月1日です」

 

「ほーん。元旦生まれか」

 

「ふむふむ…。1月1日生まれは〜…」

 

 藤原が誕生日を打ち込み、現れた結果を読み始めていく。

 

「貴女は"アレキサンドライト"のような人間です。王の名を冠するこの宝石のように、高貴でプライドの高い人間のようです。またこの宝石には環境光に応じて赤くも青くもなる珍しい特性があり、貴女は周囲の環境によって天使にも……時には悪魔にもなるでしょう。プライドを捨て素直になれば、幸せになれます……ですって!」

 

「めちゃめちゃドンピシャじゃねぇか。天使のとこ以外」

 

「…なんですって?」

 

「いや何も」

 

 そういうとこだよ俺が言ってるの。お前のその光が消えた目が怖いのよ。藤原に対してゴミを見るような目するし、俺や石上には暗殺者みたいな目するし、白銀に対して獲物を捕食しようとする肉食動物のような目するし。

 ころころ表情変わりすぎなんだよ。殺せんせーかよ。そのうち死神って呼ぶぞ。

 

「じゃあ次は比企谷くんです!8月8日っと…」

 

 今度は俺の誕生日を打ち込み、読み始めていく。

 

「相手を自分のように思いやれる"白色"と、相手を残忍に追い詰める"黒色"を合わせ持つのが貴方の特徴です。仲間だと思う存在の面倒はとことん見るタイプ……その反面、気に入らない相手に対しては限りなく冷酷になれる怖いところも。身近な人は、そのギャップに驚きながらも、強烈な魅力に引き込まれてしまうようです」

 

「なんじゃそれ」

 

 やっぱ占いなんてアテにならねぇな。占いなんて、思わせぶりなこと言って受け手が都合よく解釈するバーナム効果に過ぎない。

 

「僕は結構当てはまってると思うんですけど…」

 

「気のせいだ。…まぁ敵味方はっきり区別するとことか、気に入らない相手に冷酷になるとこは認めるけど」

 

「結構当てはまってるんじゃないですか」

 

 違う。仲間だと思うやつの面倒を見たり、俺のギャップで魅力に引き込まれることはない。そんなわけ分からんとこが当てはまるのなら、今頃俺はモテ期である。

 

「藤原さんは確か…」

 

「3月3日のひな祭りです!」

 

 藤原の誕生日を当てはめ、占われた結果を読み上げていく。

 

「貴女は"蝋燭の火"のような人間です。周囲を照らし、ささやかな熱は少しずつ氷を溶かします。蝋燭は火を与えると同時に、自分を燃やし続ける存在……その姿は"献身""慈愛"の象徴でもあります。これからも惜しまぬ愛を注ぎ続ければ、願いは叶います……ですって!」

 

 献身?慈愛?別の人じゃないか?強欲と自己愛の間違いだろ。お前にそんな様子を垣間見た記憶がないのだが。

 

「僕も3月3日なんですよ」

 

「お、そうなのか?」

 

 藤原と誕生日が被るとは。自分の誕生日が被る人が身近にいるという状況はなかなかない。

 

「なんてことするんですかぼけなすー!」

 

「えっなんで怒るんですか…」

 

「だって誕生日が同じだと祝ってもらう時、絶対同時開催になるじゃないですか!年に一度の誕生日は私だけを特別扱いして欲しいのに!石上くんと一緒だったら私だけ特別じゃなくなるでしょ!」

 

 やっぱこいつに献身も慈愛もないわ。強欲と自己愛の象徴だよ。

 ただし小町は除く。彼女は献身と慈愛しかない。なんなら強欲も自己愛ですらも許せる可愛さである。

 

「次は会長の番ですね。誕生日を教えて…」

 

「俺はやらん」

 

 白銀はきっぱり断った。今まで、なんだかんだで藤原のバカみたいなゲームに付き合ってきたというのに。しかも、四宮が直々に誘っているというのに。

 

「占いなんて、思わせぶりなこと言って受け手が都合よく解釈するバーナム効果でしかないだろ。俺はやらん」

 

「い、いえ!そんなことはないですよ?例えば風水は建築学や統計の要素が盛り込まれていて…」

 

「でもこれは誕生日占いだろ?誕生日ってのはただ純粋に生まれた日付ってだけ。それ以外の意味なんてあるかよ」

 

「いえ!誕生日に意味はあります!年に一度の大切な日ですよ!?」

 

 四宮の必死な説得に対し、白銀は溜め息を吐く。

 

「四宮だけには一度、俺の誕生日を教えたはずなんだがな。記憶力のある四宮が忘れる程度のものだろ」

 

 今日のこいつはやたらに面倒くさいな。そこまで意固地になってやらないって言う必要はどこにもないだろうに。

 っていうか、四宮だけに教えたって言ってるけど、俺お前の誕生日知ってるからね?9月9日だってこと知ってるからね?

 

「そう言わずに〜。これ人格診断だけじゃなくて相性占いも出来るんですよ!一緒にやりましょうよ〜」

 

「相性占い、ねぇ…」

 

 藤原が白銀に勧めても。

 

「絶対に!やらない!」

 

 頑なに拒否している。ここまで拒否してくると、どう考えてもあいつに何かあったのではないかと勘繰ってしまう。誕生日占いでここまで断るとは思えない。

 さっきあいつが言ったように、所詮バーナム効果を利用した占いでしかない。だからやったところで、あいつに何の害もないだろうし、断る理由が見つからない。

 となれば相性占い?確か相性占いって、名前と誕生日を自分と自分の好きな人の分を打ち込んだらその相性がどれくらいが分かるってやつだよな。

 

 まさかあいつ…。

 

「…バーナム効果なのはそんなもん分かりきってることだろ。別にやったってお前に何の害もないだろうに。なんでやらねぇの?」

 

「それが下らないと言ってるんだ。意味もないことをしたって仕方ないだろう」

 

 …なんか察したかも知れない。

 この男、多分俺らがいないところで誕生日占いも相性占いもしてるんだろう。こいつがここまで断るのには、誕生日占い、ではなく相性占いに問題があったんだろう。

 

 例えば、自分と四宮の相性占いしたら、思いのほか悪かった……的な。

 

 この理由ならまぁ分からなくもない。そんな結果を四宮には見せたくないのだろう。互いが互いのことを好きなのに相性占いでは悪かったら、その結果がもし当てはまっていなくても、きっと真に受けてしまうだろう。

 なんせこいつら、メンタル雑魚だし。俺が言えた立場じゃないんだけどね。

 

 これも俺が言えた立場じゃないんだけどもさ、こいつらやっぱり面倒くせぇな。

 

「先輩?どうかしましたか?」

 

「ん?」

 

 石上が四宮に尋ねている。その四宮の様子を見てみると。

 

「なんでもないですよっ♡」

 

 えっキモ。何この垢抜けた悪魔は。誰だこの天使は。俺が知ってる四宮はそんな女神のようなやつじゃない。

 

「心配してくれてありがとう。石上くんも困ったことがあれば、なんでも相談してくださいねっ」

 

 何こいつマジどうした。こいつが天使になるなんてあり得ねぇ。あり得なさ過ぎて謎の吐き気が込み上がってくるレベル。

 

 結局、白銀の占いはせずに生徒会を終えた。

 

 

 


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