やはりこの生徒会はまちがっている。   作:セブンアップ

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かぐや達は贈りたい

 

「…なんだこれ」

 

 突然、早坂に呼び出しをくらって生徒会室へ赴いた。なのに、何故か机の上には、それはそれは大きなウェディングケーキが置いていたそうな。

 

 いやわけ分からん。

 

「どうでしょう。特別に発注して作ってもらったケーキです。会長、ケーキ食べたがってる感じでしたから、とっても喜ぶに違いないわ♪」

 

 9月9日。

 本日、我が生徒会長、白銀御行の誕生日である。既に俺は家に出る前に誕生日プレゼントを渡しておいた。

 男物で何を渡したら嬉しいのか分からなかったから、スマホケースを贈呈した。金を使う余裕がない白銀がスマホを買うついでにスマホケースを買うとは思いにくかった。

 

 結果持っておらず、渡したら結構な高評価だった。まぁ俺の話は置いといて、だ。

 

 目の前のアホをどうしたら現実に引き戻すことが可能かを考えてみよう。

 

「…早坂。お前の主人はどこで道を間違った」

 

「分からないよ。もう私の主人はダメかも知れない」

 

 既に四宮のアホな行動言動は目にしている。もはやそれが日常茶飯事っていうレベルで。

 しかし、このケーキはなんつーか…。

 

「重くない?これ」

 

「超引く超恥ずかしい」

 

 早坂はまともな感性をしているから、このケーキがいかに愚かなものか理解しているようだ。

 ショートケーキ、100歩譲ってホールのケーキを渡すなら何の問題もない。しかし、目の前にあるケーキは問題しかない。

 

 付き合ってもない男子にウェディングケーキを渡す女子がどこにいるんだよ。それもう遠回しに結婚してってプロポーズしてたりしないの?

 

「どうかしたの?二人とも」

 

「いえ…。かぐや様が良いなら私は特に口出ししませんが…」

 

「何よ〜、歯切れが悪いわね」

 

「はぁ……昔はこんなアホじゃなかったのに…」

 

「アホ!?」

 

 なんか可哀想になってくる。苦労人早坂がめっちゃ可哀想に見えてくるよ。

 

 結局、ウェディングケーキを渡すことに決めた。その行方は、生徒会が終わった夕暮れの刻。

 

 生徒会が終わり、白銀と四宮を置いて先に退出した。が、俺は四宮の様子を一緒に見て欲しいと早坂に頼まれたので、生徒会室の入り口手前であいつらの行動を観察する。

 

「かぐや様……大丈夫かな…色んな意味で」

 

「17年生きてきて異性にウェディングケーキを渡す女子は見たことなかったわ。まぁサプライズなら間違いなく大成功だけども」

 

 不安しかない。

 

「一応、ケーキと一緒に文字入りの扇子も用意したんだけど」

 

「扇子とはまた渋いチョイスだな。ウェディングケーキに比べたらマシだが」

 

 どちらも一般的に異性に渡すような代物ではないが、常識知らずの四宮が選んだにしては無難なところなんだろうか。

 

「…そういや改めて言うけど、これありがとな」

 

 俺は右手に着けてる黒色のミサンガを彼女に見せる。

 

「いいよ、そんなの。…ていうか、右手に着けたんだ」

 

「え、何かあんの?まさか利き手に着けたら力が吸われるとかそんなファンタジーなことあんの?」

 

「違うよ。…まぁ別に知らないならそれでいいよ。そんなに意味はないから」

 

「?そうか」

 

 ミサンガを着ける場所が違うと、何か意味が違ったりするのだろうか。そもそも、ミサンガを着ける位置で何か意味があるのだろうか。

 

「…私も、改めてありがとう。あのヘアピン、今でも大事に使ってるから」

 

「…そうかい」

 

 2年生になりたての時に、早坂に誕生日プレゼントを渡したのだ。早坂とは生徒会に入ってから知り合ったし、まぁそれなりに話すこともあったのだ。

 圭と同様、何をあげればいいのか分からなかったため、ヘアピンという手軽なプレゼントにした。

 

「…でさ、あいつ一向に気づく気配がしないんだけど。マジあのまま渡すんじゃね?」

 

「本当嫌。なんであんな大きいケーキをあんなアホみたいな顔で渡せると思ったのか問い詰めたい」

 

 隙間から彼女の動向を観察しているのだが、やはりどこか上の空というか、なんだか浮いている。

 そんな四宮はウェディングケーキを仕舞った物置の扉を開く。そして数秒後、アホ面から一転し、自分が何をしたのか自覚したような表情に。

 

「…早坂、どうやらあいつ気がついたようだぞ」

 

「良かった。かぐや様が自分の愚行に気づかなかったら危うく近侍をやめるところだったよ」

 

 時々こいつ自分の主人にすんごい毒吐くよな。それだけ苦労しているということなのだろうか。

 

「なんかあたふたしてるしなんか唸ってるぞ」

 

 忙しいやっちゃな。

 

「…本当、いつになったら進展するんだろ」

 

「あいつらどっちも面倒くさいからな…」

 

 さっさと素直になって告白すれば済む話なのだが、互いのプライドがそれを邪魔している。変に好かれてると思い込んでいるから、尚のこと面倒くさい。

 

「…なんかこっち来るぞ」

 

 四宮が生徒会室の扉付近までやってくる。しかし用があるのは俺達ではなく、ただただ生徒会室の電気を消しに来ただけだった。

 

「四宮…?どうして電気を……」

 

「会長。目を瞑って向こうを向いててもらえますか?…恥ずかしいので、絶対こっちを見ないでくださいね」

 

 電気を消したことと、夕焼けの逆光のせいで何をしているか見えにくい。ただ、衣擦れの音しか聞こえない。

 あいつは一体何をやっているんだろうか。

 

「…いいですよ。目を開けてください」

 

「ん…」

 

「会長。誕生日、おめでとうございます」

 

 四宮の背中で何を贈ったのかが見えないが、おそらくケーキを送ったのだろう。

 ただウェディングケーキがどこにもない。加えて先程の衣擦れの音。もしかして、ウェディングケーキを小さくカットして贈ったのか?

 

「それと、誕生日プレゼントです」

 

 四宮がもう一度、何かを渡す。

 

「扇子…」

 

 贈られた白銀がそう呟いた。先程、早坂が言っていた扇子を贈ったのか。

 

「ちょっと季節外れかなとは思うのですが、会長は夏も学ランで暑そうだったので。字入れは私が…」

 

「あ、ありがとう……」

 

「では、私も失礼しますね」

 

 四宮が足早に生徒会室を出て行こうとする。俺は扉から距離を取って、開く扉にぶつからないようにした。

 出てきた四宮は、頬を赤くし、プレゼントを渡せたことが影響してその場で脱力した。

 

「…頑張りましたね」

 

 早坂は労るように、四宮の頭を撫でる。

 

「…お疲れさん」

 

 俺はその場に立ち上がり、一人生徒会室前から去っていった。

 

 そして、白銀の誕生日から翌日。

 途中、廊下で出会った石上と一緒に生徒会室へ向かった。中に入ると、藤原が何やら顔を赤らめてこちらに寄ってくる。

 

「あっ!2人とも聞いてくださいよ!会長の誕生日って昨日だったんですよ!」

 

「はい、そうでしたね」

 

「何今更なこと言ってんだ」

 

「え?」

 

「あ、会長。昨日僕が贈った万年筆、使ってくれてるんですね」

 

「石上は万年筆を贈ったのか。これまた渋いチョイスだな」

 

「比企谷先輩は何を贈ったんですか?」

 

「スマホケース」

 

「実用性高いから結構いいプレゼントじゃないですか」

 

 そんな雑談をしていると、藤原が落ち着かない様子で尋ねてきた。

 

「ふ、2人とも、会長の誕生日知ってたんですか?」

 

「そりゃそうですよ。普段からお世話になってる人の誕生日くらい知ってて当然じゃないですか」

 

「俺は圭に言われるまで知らんかったけどな」

 

「そうなんですよ!それなのに抜け駆けとか言い始めて、変な勘違いまでするし……。全く困ったものですよね…」

 

 ん?ちょっと待って。

 まさか、この藤原は。

 

「…お前、白銀の誕生日知らなかったのか?」

 

「ギクっ!」

 

「マジですか!?僕も四宮先輩も知ってたのに!?藤原先輩だけが知らなかった!?藤原先輩だけが!?

 

 うっわこいつ白銀の誕生日を知らなかったことを良いことにめっちゃ突き詰めるじゃねぇか。流石は石上。こんな時でもブレない。

 

「うわあああああん!!変なこと言ってごめんなさい〜!!」

 

 知らなかったことを恥じたのか、先程の四宮が言っていた抜け駆けとやらのことかは分からないが、勢いよく生徒会室から飛び出して行った。

 

「石上くん…よくやってくれたわ。ありがとう…」

 

 四宮は謎のエンジェルスマイルで石上に感謝をする。

 

「本当によくもやってくれたわ。この借りは、必ず返しますね」

 

 今よくもって言ったよな。何、そんななんか恨みを買うことしたのか石上。

 

「ついでに、比企谷くんも。倍にして返してあげますから」

 

 やっべぇ。なんか分からんけど四宮怖ぇよ。石上と違ってなんか倍になったし。

 

「…遠慮します」

 

 俺は震えた声で、そう拒絶した。

 

 

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