やはりこの生徒会はまちがっている。   作:セブンアップ

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 比企谷母のキャラがあまり分からないので、調べた限りの情報を基にして作成しました。違和感があるかも知れないですが、どうかお赦しを。


三者面談は面倒くさい

 今日は三者面談。担任と俺、そして俺の親の三人で学校の様子やこれからの進路などを主に話す面談。

 普段から共働きで帰るのも遅くなる両親だが、どうやら母ちゃんが面談に来るらしい。だけでなく。

 

『明日小町も一緒に連れて行くから。あんたのアパートに泊まるらしいわよ』

 

 まさかの小町がお泊り。三者面談より小町と二人きりで過ごす時間の方が俺的に大事です。早く小町来ないかなぁ。

 

 と、母親より小町登場に期待を膨らませている俺は、今誰が三者面談を行なっているのかを確認するために教室に向かうと、今から三者面談を行うにしてはなんだか神妙な面持ちをした四宮と早坂が椅子に座っている。

 

「今から通夜でもするのかよ」

 

「あ、比企谷くん…」

 

「次は四宮の番か?」

 

「えぇ、まぁ」

 

 だが、四宮の親らしい親は見渡しても見つからない。母が亡くなったのはいつしか早坂に聞いた。父親は娘のことをいない存在かのように扱うとも。

 

「お父様は……来る筈ないですよね」

 

「代わりの人を出すって話ですよ」

 

「奈央さんが来るんでしょうか?」

 

「ママ?…ママは来ないですよ」

 

 早坂はそうぶっきらぼうに返す。

 

「忙しい人だし、冷たい人だし。娘に興味無い人だから。体育祭の時も来なかったし、私の進路なんてどうでもいいと思って…」

 

「思ってないわよ」

 

 早坂の卑屈な言葉を優しく否定するのは、早坂の顔とよく似た女性である。

 

「ママ!」

 

 一転、早坂は子どものように目をキラキラする。

 先程の早坂の言葉を捉えるなら、仕事が忙しい故に早坂に構うことが出来なかった。だから早坂は母に対して卑屈な思いを呟いたが、根は親が好きな子どもなんだろう。

 

「ご無沙汰しておりますかぐやお嬢様。僭越ながら、本日は私が雁庵様の名代を務めさせて頂きます」

 

「よろしくお願いします、奈央さん」

 

 どうやら、早坂母は四宮の親の代理で三者面談を行うようだ。しかし、早坂はまたもや拗ねてしまう。

 

「かぐや様の為に来たんだ……別に私の為じゃ…」

 

「いいえ。もとより今日はお暇を頂くつもりでした。久しぶりに、娘の顔も見たかったですしね」

 

 と、早坂母は早坂の頭を撫でる。撫でられた早坂の表情は、親に甘える子どものようだ。

 

「じゃ…じゃあ今日は一緒に晩御飯も…?」

 

「ええ。今日は名代ですから、三人で何か美味しい物を食べに行きましょうか」

 

「うんっ!」

 

 しかし、この早坂の変わりっぷり。これは…。

 

「早坂ってマザコン?」

 

「えぇ…見れば分かる通りよ」

 

 四宮に尋ねるが、四宮は呆れた物言いでそう返す。

 俺が四宮に尋ねたからか、早坂母はこちらに気づく。

 

「あの、貴方は?」

 

「あ、ども。四宮と早坂……愛さんのクラスメイトの比企谷です」

 

「ご丁寧にありがとうございます。初めまして。私、愛の母の早坂奈央(はやさか なお)と申します」

 

 互いに頭を下げて挨拶を交わす。

 

「愛はクラスではどうですか?長らく娘に会えなかったものですから、秀知院での生活が気になりまして」

 

「ちょっとママ!」

 

「…クラスでは特に変わったことはありません。他のクラスメイトと仲が良い感じだと思います」

 

「なるほど……授業中に寝ていたり、休憩中にタピオカをインスタに載せたりは?」

 

「何聞いてるのママ!?」

 

 なんだろう。どっかの親父さんみたいに若干ユニークじみたところがあるんだが。

 

「お、比企谷くんではないか」

 

「うっ」

 

 俺に声を掛けたのは、職業不定の白銀父である。

 

「かぐやちゃんも。調子はどう?」

 

 えっこの二人どういう関係?

 知り合いみたいな会話だけど、どうやったらこんなクセが強い人間と四宮が邂逅するのん?

 

「え、ええ……健康そのもので……」

 

「いやいや違くて。御行とその後どうなのって話

 

 この人本当この手の話好きだな。誰かを好きになったらまず間違いなくこの人に悟られたくない。

 

「…何もありませんよ」

 

「いやいや、そんな照れなくていいから。ちゅーは?ちゅー位した?もうそろそろその段階じゃない?」

 

 こういう事になるからだ。四宮のライフは0だからもうやめて差し上げて。

 

「比企谷くんも。最近夜になると圭が比企谷くんの部屋に入り浸るが。何をしているんだい?」

 

「何もしてませんよ…普通に話してるだけで」

 

「ほう。なら帰って来てほわほわしてるのは普通に会話した結果か?」

 

「ほわほわしてるかどうかは知りませんが、何もしてません。話して、偶にゲームして遊んでるだけです」

 

「なんだ。二人ともつまらんな。高校生なら若さと勢いに任せてガンガンいっとけ。若さと過ちはワンセットだ。安心しろ、俺は学生結婚には理解がある方だ」

 

「あんた何言ってんすか…」

 

 というか、せめて俺には「娘はやらん」みたいな言葉くらい出せよ。ほいほい俺に任せるあたり心配になっちゃうんだが。

 

「二人の両親は?一度正式に挨拶をしておきたかったのだが…」

 

 何を挨拶する気だ。

 

「…俺の親はまだ来てません」

 

「私の親は今日は来ません」

 

「なんだって…それは良くないな。あ、じゃあ俺が父親として参加するか?」

 

「真面目な顔しておかしな事言わないでください!」

 

 一体どういう人生を歩めばこんなボケまくる事が出来るんだこの人。もうお笑い目指せば売れるんじゃないか?

 

「呼びたかったらお義父さんと呼んでも良いぞ」

 

「よ、呼びません!早坂、見てないで助けて…」

 

「かしこまりました」

 

 と、早坂母が反応する。

 

「お初にお目にかかります、白銀様。私、かぐや様の母代わりの者でございます」

 

「母代わりですか」

 

「はい。血の繋がりは御座いませんが、義理の母のようなものとお考えください」

 

「義理の母……そうでしたか」

 

 すると、白銀父はボソッと「俺は義理の父みたいなものだけどな」と四宮に囁く。オーバーキルも良いところだ。

 

「でしたら差し出がましい事をしましたな。一応私は、キャリアコンサルタントの国家資格を有しているもので、何かの手助けになればと愚考した次第で…」

 

「そんなもん持ってたんですか?」

 

 この人ボケまくってたわけじゃないんだな。つか、資格好きは遺伝子なのか。

 

「お、知っているのかい?」

 

「あれですよね。学生や求職者を対象に、職業選択や能力開発に関する相談、または助言を行うっていう…」

 

 難易度で言えば普通ぐらい。ファイナンシャルプランナーや社会福祉士に比べればやや劣るが、腐っても国家試験だ。勉強無しでは通れぬ試験である。

 

「まぁ…まさに今必要な人材じゃないですか」

 

 それにしても、資格好きは白銀家の遺伝なのだろうか。

 

「かぐや様…折角ですし、このお方にも同席して頂きましょう」

 

「ええ!?」

 

「使えるものは使うのが四宮家です」

 

 早坂母もなかなか狂った事言ってる。

 四宮の親代わりが白銀父と早坂母?なんだその未曾有のカオスは。

 

「四宮さんと保護者の方、どうぞ」

 

「「はーい」」

 

 躊躇無しに、白銀父と早坂母は教室に入っていく。四宮はもうどうすればいいのか分からないまま、教室に入る。

 

「お前の母ちゃん凄ぇな。色々」

 

「ちょっと性格悪いところはあるけど。…そんな事より。さっきの話はどういうこと」

 

「へ?」

 

 先程まで早坂母に甘えていた早坂の様子が消え、代わりに少し冷たい様子で俺を捉える。

 

「圭って、確か会長の妹だよね。毎晩入り浸ってるって、何?」

 

「いや、だから何も…」

 

「お兄ちゃーん!」

 

 どう弁解しようかと考えていると、俺の好きなあいつの声が廊下に響く。

 

 俺と同じくアホ毛を継ぎ、八重歯が特徴的な女の子。比企谷小町(ひきがやこまち)が満を持して登場。

 

「こ、小町ぃ…」

 

 夏休みに実家に帰って一回会ったとはいえ、数ヶ月も会っていないと寂しくなるものだ。

 

「お兄ちゃん、おひさ!妹の小町が登場だよ!」

 

「小町ぃ…会いたかった…会いたかったぞ…」

 

「うっわまた泣いてる。夏に帰って来た時も玄関で醜く泣いてたよね。どんだけ小町のこと好きなの」

 

「なんなら愛してるまである」

 

「きっもお兄ちゃんきっも。……ん?」

 

 キモいとはなんだ。小町は俺を愛していないのか。

 いや、小町が愛していなくても、俺は小町を愛し尽くす自信がある。これが千葉の兄貴です。

 

「お兄ちゃんお兄ちゃん、この金髪の人はお兄ちゃんの知り合い?すっごく綺麗な人っていうか、キラキラしてる人」

 

「えーっとぉ、私は早坂愛って言うの!比企谷くんとはぁ、仲の良いクラスメイトなんだ!」

 

 早坂はギャルモードに擬態化して、挨拶を済ませる。

 

「お兄ちゃんと仲の良い人!?お兄ちゃん、いつの間にこんなギャルと仲良くなれるコミュニケーションを付けたの!?高校デビューしちゃったの!?」

 

「あはは!妹ちゃん、比企谷くんに辛辣だし〜!」

 

「えっと、初めまして!妹の比企谷小町です!いつも愚兄がお世話になってます!」

 

「ううん!こっちも比企谷くんに助けられたりしてるし、気にしないでおけおけだし!良かったら、愛って呼んでよ!私も、小町ちゃんって呼ぶから!」

 

「おけです!」

 

 小町って、俺と違って他者とすぐ仲良くなれるコミュニケーション能力があるんだよなぁ。次世代型ハイブリッドぼっちの肩書きは健在だ。

 

「あっそうだ。面談終わったらさ、学校を案内してよ。去年はなんだかんだで、小町一度も秀知院に来たことなかったし」

 

「任せろ。隅から隅まで回ろうか」

 

「いやそこまでいらないけど」

 

「相変わらず仲の良いことで。このバカ兄妹」

 

 すると、真打が登場。

 我が比企谷家の母が、気怠げに廊下を歩いてくる。

 

「おう。母ちゃん」

 

「実家からここまで本当遠いわね……帰るのが面倒くさくなるわよこれ」

 

「まぁ1時間半はかかるからな…」

 

 眼鏡を掛けて、消えそうのない隈を残して、比企谷家特有のアホ毛を生やしたこの者が、俺の母である。

 

「…なんか、雰囲気が比企谷くんに似てるね」

 

 ボソッと俺に囁く早坂。

 

「…まぁ、親だしな」

 

「何をコソコソと話してるのよ。…というか八幡、その子は?」

 

 そういえば、母ちゃんは早坂と出会うのは初めてだったか。

 

「え、あ、えーっと、私、比企谷くんと同じクラスの、早坂愛と申します!」

 

「八幡と同じクラスの……。あ、私はこれの母親」

 

 息子にこれ扱いは酷くないですかね。

 

「早坂ちゃん、だったわね。もしそれなりにこいつと友好関係があるなら、八幡を頼むわね。迷惑を掛けてるようなら蹴り飛ばしてくれていいし、調子に乗ってるようならメンタル攻撃で泣かせてくれてもいいから」

 

「ちょっと?息子の扱い本当酷くない?」

 

「まぁとにかく。これからも息子が色々迷惑を掛けると思うけど、どうか長い目で見てあげてくれるとありがたいわ」

 

「…はい!」

 

 いや「はい!」じゃなくて。さっきから息子に対する扱いの酷さについて言及したいのだが。

 

「比企谷。次はお前の番か?」

 

 またややこしい人物が現れた。癖の塊の父親の息子、白銀だ。

 

「…まぁ、もうそろそろだな」

 

 すると、今度は小町が耳元でボソッと囁く。

 

「お兄ちゃん。なんでお兄ちゃんの周りには金髪の人しかいないの?もしかしてグレたの?グレちゃったの?」

 

「グレてんのは元からだ。つか、一応こいつ生徒会長だから」

 

「生徒会長!?お、お兄ちゃん、いつの間に生徒会長と知り合いに…」

 

「比企谷。この子は…?」

 

「…妹の小町だ。ついでにあれが俺の母ちゃん」

 

「母に向かってついでだのあれだの言うな」

 

 さっき息子にも言ってたでしょうが。

 

「そうだったのか。…初めまして。生徒会長の白銀御行と申します」

 

「どうもご丁寧に。八幡の母です」

 

「比企谷小町です!」

 

 と、互いに挨拶を済ませていると。

 

「失礼しました」

 

 四宮が教室から出てくる。と、同時に早坂母と白銀父も一緒に出てくる。

 

「ってえぇ!?親父!?何してんの!?」

 

 …まぁそんな反応するわな。自分の親が自分の好きな人の三者面談に出席していたら。

 

「比企谷くんと保護者の方、どうぞ」

 

「じゃ、終わったら連絡してね。小町愛さん達と喋ってるから」

 

「おう」

 

 俺と母ちゃんが教室に入り、担任との三者面談が行わる。

 三者面談っつっても、普段の態度に関しては去年と大して変わらない。専業主夫を目指すのも変わらない。

 

「先に言っておくけど、専業主夫とかふざけた回答したら家出禁にするから」

 

 この母親、本当怖いよ。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 恙無く三者面談は終了し、母ちゃんは先に実家へと帰るために秀知院から去って行った。今日俺の家に泊まる小町は、三者面談が終えた後、秀知院を案内することに。

 

「そういえば、小町はどこ受験するんだ?」

 

「小町?一応秀知院を第一志望にしようかなって」

 

「え」

 

「何?なんか文句あるの?」

 

「いや、文句っていうか…」

 

 秀知院ってわりかし偏差値高めの学校だぞ。小町の学力的に大丈夫なのだろうか。

 それに千葉には、総武や海浜総合があるのに、わざわざ東京にある高校を目指さなくても。

 

「…まぁ、ここ目指すならひたすら勉強だな。じゃねぇとマジで受からん」

 

 俺ですら余裕が無かったんだ。それ相応に勉強に臨まねば、受かることは無いだろう。

 

「あー…そう言われるのもちょっとね…」

 

「…悪い。他に言い方おもいつかなくてな…」

 

 難しいな。頑張ってない奴に言われるとムカつくだけだったりするし。

 

「お兄ちゃん、そういう時は"愛してる"で良いんだよ?」

 

「そうか。…愛してるぞ、小町」

 

「小町はそうでもないけどありがと、お兄ちゃん!」

 

 これまた酷い。とはいえ、こんなやり取りが俺達兄妹の当たり前だったのだ。今では久しく思うけど。

 

「あ、そうだ。お兄ちゃんって確か、生徒会に入ってるんでしょ?生徒会室がどんななのか、小町見たかったんだ」

 

「それは構わないが……今開いてるんかな」

 

 今日は土曜日で、二年は三者面談だし、石上や伊井野が学校に来てるのか分からん。故に生徒会室が開いてるのか分からない。

 

「…ま、行ってみるか」

 

 俺は小町を連れて、生徒会室に向かう。そして部屋に辿り着き、ドアノブをひねると、扉が開く。

 

「…開いてたのか」

 

「あ、比企谷先輩。こんちわ」

 

「こんにちは、比企谷先輩っ」

 

 どうやら石上も伊井野も生徒会室にいたようだ。わざわざ休日にご苦労なことで。

 

「あれ?比企谷先輩、その人は…?」

 

「あっ、こまちゃん!」

 

「ミコ先輩!」

 

 伊井野が小町に気づくと、小町に駆け寄る。

 実はこの二人、面識があるのだ。というのも、事故の一件で知り合う機会があったのだ。そこから、伊井野と小町が知り合うことに。

 

「今日はどうしたの?」

 

「今日はお兄ちゃんの三者面談に付いて来たんですよ。ついでにお兄ちゃんの家に泊まるんです」

 

「…伊井野が年下を可愛がる姿なんて初めて見たんですけど」

 

「伊井野からすれば、滅多にない機会だったんだろ」

 

 こんなに仲良くなっていたとは知らんかったけど。

 

「そういえば、そちらの人は…」

 

「こまちゃん。石上(あれ)は幻だよ。幻に挨拶する必要ないよ」

 

「勝手に死なすな。…石上です。どうも」

 

 石上は簡単に挨拶を済ます。しかし、伊井野は石上をキッと睨み。

 

「ちょっと。こまちゃんに手を出さないで」

 

「お前やっぱ検察は向いてないな。罪の無い人間を有無を言わさず有罪扱いするんだから」

 

 そらやべぇ。下手すると、俺も伊井野に刑務所にぶち込まれてしまいそうだ。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お兄ちゃん、一人暮らしだからってご飯に手抜いてたでしょ。全く、小町がいないとお兄ちゃんなーんにも出来ないんだから」

 

 時刻は夜の八時。

 今日は久しぶりに小町の手料理を食べさせてもらった。愛妹料理マジ美味い。あれしか勝たん。

 

「そんなお兄ちゃんが専業主夫なんて、夢のまた…」

 

 その時、我が家のチャイムが鳴る。俺は腰を上げて、扉を開ける。

 

「八にぃ、今日も来たよっ」

 

 と、寝巻きのパーカーを来て可愛らしく登場する白銀妹、圭。

 

「あれ?奥に誰かいるの……って……」

 

 圭が小町の姿を捉えると。

 

「八にぃが私の知らない女の子連れてる!?」

 

 先程まで可愛らしく登場したのが一転し、声を荒げる。圭が俺の両腕を掴んで。

 

「誰!?あの女の子誰!?なんで八にぃの部屋に知らない女の子がっ…!」

 

「ち、ちょっと待てって。お前壮大な勘違いしてる。妹だから」

 

「……えっ妹?」

 

 素っ頓狂な声を出して、圭は大人しくなる。

 

「お兄ちゃん、この綺麗な人は?」

 

 と、奥から小町がやって来る。

 

「あ、あの、初めまして。私、白銀圭と言います」

 

「白銀……あっ、もしかして白銀生徒会長の妹さんですか?」

 

「あ、そうです。あれの妹です。えっと、貴女は…」

 

「これの妹の、比企谷小町です!どうぞ小町とお呼びください!」

 

 比企谷家の玄関で、妹同士の邂逅を果たす。後小町、俺のことをこれ言うのやめなね。圭もね、あれって言うのやめたげてね。

 

「…まぁとりあえず上がれ。寒いだろ」

 

「…うん。お邪魔します」

 

 圭は大人しく部屋に上がる。

 その後、小町と圭の三人で過ごすという、なんとも犯罪臭が漂いそうな時間を過ごしたわけだが。

 

「でね、その時お兄ちゃんが…」

 

「そうなんですか?」

 

 すぐに仲良くなった。

 小町のコミュ力の高さには舌を巻く。初対面の圭でも、変わらずに明るく接するんだから。なんだかんだで圭も、楽しそうにしてるし。

 

「あ、そうだ。もし良かったら、今度一緒にお兄ちゃんの学祭回らない?小町その時また秀知院に来るし」

 

「はいっ。是非一緒に行きましょうっ」

 

 どうやら秀知院の学園祭には小町が来るようだ。

 まぁ休みの日だし、どうせ家に泊まる気なんだろうな。俺は全然構わないが。むしろ推奨。

 

「よし!仲良くなったところで、皆でSwitchしよう!」

 

 謎にテンションが高くなった小町は、立ち上がって声を張る。

 

「Switch?確かに俺の家にあるけど、Joy-Con二個しかないぞ」

 

「こんなこともあろうかと!小町、もう一つコントローラーを持って来ていたのです!」

 

 小町はボストンバッグを探って、Switch専用のコントローラーを取り出す。

 

「用意良いな、お前」

 

「元はお兄ちゃんと一緒に遊ぶつもりで持って来てたし。圭ちゃんもやるよねっ?」

 

「はいっ!」

 

 こうして、二人の妹(一人は他所の妹)と一緒に、Switchで遊んで楽しく過ごした。

 妹が一人来るだけで、俺の周りがいつも以上に騒がしくなるあたり、小町の影響力は途方もない。

 

 俺と似なくて良かったよ、本当。

 

 

 


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