やはりこの生徒会はまちがっている。   作:セブンアップ

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四条眞妃は悟りたい

 クリスマスイブ前日。

 俺は日本から出て行く。ウエストバッグを肩に掛け、キャリーケースを引っ張る。準備を終えて、夜遅くに家を出ると。

 

「なんか止まってる」

 

 やたらと豪華な車が停車していた。リムジンほどではないが、見ただけでも分かるあの豪華な車。フォルクスワーゲンとかベンツとか、そんなのだろうか。

 その車の中から現れたのは、四条眞妃だ。どこにでもいるJKが着そうな服装なのに、豪華な車から出て来た瞬間一気に金持ち感が見えてしまう。

 

「おはよう、八幡。ちゃんと準備したわね」

 

「わざわざ車で出迎えとはな…」

 

「電車に乗るより楽でしょう?さ、早く乗りなさい」

 

 四条に促されるまま、俺は中に乗り込んでしまった。

 

「出して頂戴」

 

 四条の指示で、ドライバーは車を発進させた。

 俺は未だに疑問を抱いている。なんでクリスマスの日に四条とインドに行くのだろうか、と。きっとこの旅行が終わっても解消出来ない疑問だ。

 

「羽田から行くのか?」

 

「えぇ。所要時間は10時間程度だから、今から行けば朝前には着くと思うわ」

 

「そうかい」

 

 俺は薄暗い風景を窓越しから見ながら、羽田空港に到着するのを待つ。クリスマスイブで無いのにも関わらず、カップルがイチャイチャしているのが目に入る。

 

「…なんでクリスマスイブにインドなんて行かなきゃならないのかしら…」

 

「お前が悟りを開くとか寝言を吐いたからだろうが」

 

「でも虚しくない?クリスマスになれば街のあちらこちらでカップルがイチャイチャしてる最中、私達はインドでナンを食べてるのかも知れないのよ?」

 

「なんだお前。言ってる事無茶苦茶過ぎだろ」

 

 インドに行く事になった経緯を、もう一度話しておこう。

 

 地雷を抱えているこの四条眞妃は、翼くんと柏木さんのイチャつきっぷりを見て病んでいるのだ。その結果、涅槃に入るためにインドで悟りを開くなどと吐かしたのだ。

 

 俺は俺で、最初小町とクリスマスを過ごす気でいたのだが、小町はどうやら友達とクリスマスパーティを行うらしい。その結果、俺はクリスマスぼっちが確定したのだ。

 俺のクリぼっちが確定した瞬間を目の前で見ていた四条は、俺を連れてインドに向かおうとしている。

 

 改めて思うんだけど、これおよそ高校生が過ごすクリスマスじゃないんだよ。大学生でも社会人でも、クリスマスに「インドに行こう」とはならん。

 

「私達がインドで悟りを開いてる間に、翼くんと渚は………あぁーッ!!」

 

 やっべぇこいつ。早くなんとかしないと。と言っても、既にもう手遅れの域にいるんですけどね。なんかもうずっと可哀想だ。

 初っ端から見苦しい様子を見せる四条を、引きながら見る俺。そんなこんなで、羽田空港に到着した。

 

 搭乗手続きを行い、機内に持ち込まないキャリーケース等の荷物をカウンターで預ける。飛行機に乗るまでの全ての手続きを終え、近くにあるベンチで自分達が乗る飛行機が出発するアナウンスが入るまで待った。

 

 なんだかんだで、1時間は掛かった。

 

「ねぇ」

 

「どうした」

 

「なんでクリスマスじゃないのに、空港内にもカップルがいっぱいいるの?」

 

 死んだ目でこちらに尋ねる四条。

 途中から様子がおかしいのは分かっていたが、知らんカップルを見る度に段々と目が濁っていくのだ。

 

「そらあれだろ。クリスマスは海外旅行とか思い切った事するカップルもいるって事だろ。知らんけど」

 

「あー早くインド行きたい。日本から出て行きたい

 

 これもう末期だろ。近い未来こいつインド人になるんじゃないか。インド行ったらなんか居心地良くなって日本に戻らなくなるんじゃないか。

 

「今更なんだけどさ。一つ聞いていいか?」

 

「?どうしたのよ」

 

「俺らがこれから乗る飛行機な。なんでビジネスクラスなの?」

 

「逆になんで私達がエコノミークラスに乗らないといけないのよ」

 

 待って金持ちのセリフがパワーワード過ぎてヤバい。

 

「因みに、これ片道大体いくらなんだ?」

 

「大体40万」

 

「よっ…!?」

 

 片道40万はヤバい。これもしかしたら安易に来たらあかんやつじゃなかったのか?

 もし帰りもこの価格なら、往復大体80万になる。俺四条にとんでもない借りを作ったんじゃ…。

 

「気にしなくていいわよ。私が半ば強引に連れて来たんだし。一緒に来てくれただけで、感謝してるわ」

 

 何こいつ本当良い奴過ぎる。神は何故四条を見放したのだろうか。可哀想過ぎて涙出そう。

 そうしみじみ思うと、空港内にアナウンスが入る。どうやら、俺達が乗る飛行機が間もなく出発するようだ。

 

「そろそろ行きましょ」

 

 いよいよ、俺達は機内へと乗り込んだ。

 ただでさえエコノミークラスの機内を知らないのに、いきなり飛んでビジネスクラスに乗り込むことになろうとは。

 

 というか。

 

「なんだこれは」

 

「今更何よ。まだビジネスクラスに驚くの?」

 

「いや、驚くというか疑問だな。両端のシートを見た感じ、隣同士になっていないのは分かった。1つ1つのシートの規模が大きいからだろう」

 

「そうね。エコノミークラスじゃあ、大型のサイドテーブルが無いもの。電車で喩えるなら、グリーン車と同じような造りよ」

 

「まぁそこはなんだっていい。俺が疑問視してるのは、なんで席が隣なんだって事なの」

 

「だってペアシートだもの」

 

 このお嬢様は一体何を間違えたのだろうか。

 ペアシート?これどう考えてもカップルや夫婦が座る指定席みたいなやつだろ。

 

「別にペアシートにする必要ないだろうよ」

 

「1人ならそうしたけど、2人いるのにわざわざ両端のシートを取る必要無いじゃない」

 

「えー…」

 

 こいつの異性に対する距離感おかしくない?

 そもそも異性を海外旅行に誘う辺りから、四条の距離感は妙なのだ。訓練されていない思春期男子高校生なら、間違いなく「こいつ俺に気があるんじゃね?」と勘違いするだろう。

 

「ほら、早く座りなさいよ。通路に突っ立ってると、人の邪魔になるわよ」

 

「…おう」

 

 それにしても、ビジネスクラスのシートが凄え。シートを少しいじるだけで、簡易ベッドが出来上がる。

 

「飛行機であっちに到着したら、まずはホテルに荷物を預けるわ。キャリーケースのままじゃ邪魔になるから」

 

 きっとこいつの事だ。ホテルの格も5つ星辺りに違いない。お金の事はもう考えたくない。考える度に、段々と気が滅入ってしまうからだ。

 

「私はもう寝るわ」

 

「そうなのか?」

 

「夜更かしは美容の大敵と言うし、明日は朝から動くからね。八幡も無駄に起きてないで、早く寝なさいよ。それじゃあ、おやすみなさい」

 

「おう。おやすみ」

 

 そう言って、彼女は出発前から眠りに入り始めた。

 俺は飛行機自体に乗る事が無いため、少し機内を堪能していた。寝たのは、四条が寝てから3時間後だった。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 翌日。

 今日はクリスマスイブ当日。本来なら、家でアニメを観て過ごす事にしていたが、今日の俺は違う。

 今、俺はインドのインディラ・ガンディー国際空港にいる。つまり、インドの首都であるデリーにいるのだ。遂に来てしまった。

 

「来たネ」

 

「あ、シンさん」

 

 誰だこの肌黒いおじさん。見た感じ、インドの住民だが。にしては日本語が流暢だな。

 

「この人はガイドのシンさん。今日一日、インドを案内してくれる人よ」

 

「あ、ども。比企谷八幡です」

 

 なるほど、ガイドの人か。

 

「うン、よろしくネ。それジャ、早速ホテルに行きまショ」

 

 シンさんの車に乗り込んで、俺達は最初にホテルに向かった。ものの20分弱でニューデリーに建つホテルに到着した。到着したのは良いが。

 

「お前本当に悟る気ある?」

 

 インドに来た目的は、悟りを開く事。

 にも関わらず、ビジネスクラスの飛行機に乗り込んだり、5つ星のホテルにやって来たり。

 

「黙りなさい、不調法者。私は今から悟りを開いてみせる。私の心は酷く傷つき、どす黒く濁っているのよ。涅槃に入るしか、救済の道は無い…」

 

「…うん。もう、そうか」

 

 何も言い返せねえ。

 四条の常軌を逸した金遣いに圧倒されながら、俺達はホテルにチェックインしてキャリーケースを預ける。一通りの手続きを終えると、シンさんの所に戻って行った。

 

「じゃあシンさん。早速悟り開きたいんだけど」

 

「任せテ。でも、お腹減ったネ。まずは腹ごしらえしまショ」

 

 シンさんの案内により、まずはご飯を食べる事に。とあるインド料理の店に赴き、そこで済ませる。

 

「これがインド料理…」

 

 本場のインドで食べれる料理なんてそうそう無い。ゆっくり味わって食べようじゃないか。

 

「日本のインドカレー屋と全く同じ味する」

 

「なんなんお前」

 

 食事を済ませた俺達は、シンさんのガイドを基にインドを観光……ではなく、悟りを開くために周った。

 

「ここはタージ・マハル。王様の奥様のお墓ネ。王様は愛妻家だったんだヨ」

 

「おぉ…」

 

 インドで最も有名な世界文化遺産。この墓を見に来る観光客は少なくないのだ。

 

「そういえば、インドって写真はOKでしたよね」

 

「うン。空港や鉄道駅、寺院の内部がNGな場所あるけどネ」

 

 なら早速、1枚写真を撮ろう。小町にインドに行ったって事を自慢してやろう。

 

「にしても、でかいわね」

 

「そうだな。まぁ現地の人の何十倍の入場料取られなかったら、素直に感動してたんだろうけど」

 

 インド人の国民性が垣間見えた瞬間だった。

 俺達はタージ・マハルを離れ、次なる観光地に向かった。今度は、やたらと大きな城塞が目立つ観光地に到着。

 

「ここはアグラ城ネ。城塞の全長は2.5キロもあるヨ」

 

「へぇ…」

 

 というか、俺普通に観光を楽しんじゃってる。スマホ片手にパシャパシャと風景撮っちゃってる。そのアグラ城から、今度は巨大なモスクが聳え立つジャーマー・マスジドに移動した。

 

「ここがお祈りする場所だヨ」

 

「なるほどここが…」

 

「女性は頭に布巻いてネ」

 

 と、シンさんが模様の入った布を四条の頭に被せる。

 四条は両膝をつき、両手を絡めて目を閉じて祈りを始めた。俺とシンさんが、その様子を後ろから見ている。

 

 一体ここで、何を悟る事が出来るのだろうか。

 

「…どうだ?」

 

「まぁそこそこ悟った感あるわね」

 

「そこそこの悟りってどうなの?」

 

 それは果たして悟ったと言えるのだろうか。

 

「行き過ぎた愛は身を滅ぼす事を悟ったわ…」

 

「日本でも分かるような悟りじゃね?」

 

 インドである必要性皆無。なんならそんなもんは多分漫画とか小説とか読めば分かるレベルだ。

 モスクでの祈りを終えて、俺は四条に次にどこへ向かうのかを尋ねる。

 

「次はどこ行くんだ?」

 

「決まってるわ。…母なる川、ガンジス。これを見にインドに来たのよ」

 

 ガンジス川。広大な流域面積を持つ大河で、インドの川で1番有名な場所。ヒンドゥー教徒にとって、"聖なる川"と謳われている。

 

「ガンジスまで飛行機使って6、7時間掛かるけどイイ?」

 

「確かに、インドってめちゃくちゃ広い国ですしね」

 

 196ヶ国の中で、インドは7番目に面積が広い国だ。時間が掛かるのは仕方がない。

 

「ここからガンジスまで東京から名古屋間を一往復半するくらいの距離があるヨ」

 

「喩えが微妙で分かりづらいです」

 

 なんでこのガイドそんな情報知ってんだよ。生粋の日本人である俺でもピンと来ないってのに。

 

「…まぁ折角インドに来たんだ。行ってみても良いんじゃねぇか?」

 

「えぇー遠っ…。急にダルくなってきた…」

 

「お前マジイカれてんのか

 

 ここまで10時間掛けて来ておいて急にダルくなったとかなんだこいつ。

 

「そんなに遠いならいいや…」

 

「結局行かねぇのかよ」

 

「ほら、ディスティニーランドでもよくあるでしょ?ビッグファイヤーに120分並ぶならパンさんのバンブーファイト4回乗りたいみたいな」

 

「分からんでもないが…」

 

 お得感が違ったりするからな。120分をたかだか数分で終わるジェットコースターに費やすなら、その120分を空いてるアトラクションに乗りまくる方が、満喫した感はある。

 

「まぁデリー内だけでもいっぱい見る所あるヨ。デリーは愛媛の3倍以上大きいからネ」

 

「その分かりづらい喩え他の人に伝わります?」

 

 いやマジで分かりづらいの。ピンと来ないの。さっきの四条のディスティニーの喩えの方がまだ分かりやすかったわ。

 

 結局、ガンジス川はキャンセルとなり、四条の行きたいがままに付いていく。ホテルでヨガの体験をしたり、ショッピングをしたり、アーユルヴェーダのオイルマッサージをしてもらったり。

 

「お前普通に観光してるな」

 

 単なる海外旅行になっちゃった。悟りを開くとは、一体なんだったのだろうか。

 

「ちょっと黙ってて。今先生に翼くんとの相性占って貰ってるんだから」

 

 日本でやれやそんなもん。

 

「それで…彼との相性はどうなんでしょう…」

 

 四条が尋ねると、占いの先生が通訳を務めるシンさんに答えを言う。訳された内容は、

 

「普通だっテ」

 

「普通って何?」

 

 これじゃあ骨折り損のくたびれ儲けみたいなもんだ。

 

「でもその彼とより、後ろにいる彼の方が相性が良いと出てるっテ」

 

「何言ってるんですか」

 

 占いは所詮、占いでしかないな。アホらしい。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 占いの後、夕食にしてホテルに戻った。四条が、「インド料理は飽きた」とか吐かしたため、夕食は日本食となった。

 

 結果、腹を壊してベッドで横になる。

 

「腹痛の薬持って来たから。これ飲んで安静にしてろ」

 

「…ありがと」

 

 インドに来てまで、世話の掛かる奴だ。

 

 部屋はわざわざ四条が2つ予約してくれていた。男女が1つの部屋で寝泊まりするのは、流石に問題がある。その辺りの常識は、彼女の中にまだ残っていたようだ。

 

 とはいえ、1人じゃ身に余るような広さの部屋。5つ星だけあって、ホテルの中や部屋の綺麗さは尋常じゃない。そしてその豪華さに比例する代金。

 1泊2、3万以上と聞いた時は、臓器を売り飛ばす覚悟をした。ビジネスクラスの飛行機に5つ星のホテル。全て四条が負担していると思うと、頭が上がらない。

 

「来てどうだったんだ?なんか悟ったか?」

 

「…やっぱ私、インドより日本が好きかなぁ」

 

「…そうかい」

 

 悟った収穫としては、行き過ぎた愛は身を滅ぼす事。そしてインドより日本が好きだという事。この2つが、インドに来て悟った事だ。

 

 インドである必要性よ。

 

「…もう1つ、悟った事があるわ」

 

「今度はなんだよ」

 

「私はきっと、翼くんとは結ばれない」

 

 また下らない事だと思いきや、四条が放った言葉は重みのある内容だった。

 

「八幡にいつも相談しているけど、心のどこかでは分かってたの。翼くんとは結ばれないって事。でもその事実を受け止めたくなくて、受け入れられなくて、現実逃避してた。もしかしたら、いつか翼くんと結ばれるかも知れないって」

 

「…そうか」

 

「今でも私は翼くんの事が好き。でも翼くんは渚の彼氏。渚が翼くんを大事にしてるのは、見飽きるほどに見てきた。…だから出来ないの。親友から大事なものを奪ってまで、幸せを得たくないから」

 

 四条は優し過ぎる。

 自分の好きな人が自分の親友と付き合っても、目の前で2人がイチャイチャしても、心の底から憎む事が出来ないんだろう。

 好きな人と結ばれたい、でも親友から彼氏を奪いたくない。手に入らないと理解していても、足掻いて、悩んで、苦しんで、手を伸ばし続けてきたのだ。

 

「私が勇気を出して、もう少し早く動いていれば、翼くんと付き合っていたのは私だったかもしれない……そんなたらればの話を考えてた。全ては後の祭りなのに」

 

「四条……」

 

「誰かを好きになるのって、こんなに苦しい事だったのね」

 

 身体を横にしていて、俺には彼女の背中しか見えない。だが声だけで分かる。

 四条が、涙を流してる事を。大泣きしたいのを堪えて尚、俺に打ち明けている事を。

 

「…凄ぇよ。お前」

 

 ただ、一言だけ。俺はそう言葉にした。

 取り繕った感想や、寄り添うような同情を言うつもりはない。こいつの苦労の全てを理解していない俺には、そんなものは失礼にあたるから。

 

「…八幡。少し、我儘言っていいかしら」

 

「…なんだ?」

 

 すると彼女はこちらに近寄り、俺の胸に顔を埋めるようにしがみついた。

 

「少しの間でいいから、このままでいさせて…」

 

 しがみつく力が強まる。

 普段の俺であれば、「近い」だの「離せ」だの物申していたところだ。しかし、理由が理由だ。突き放すのは気が引ける。

 

「…少しの間、な」

 

「ありがと……うっ……うぅ……」

 

 彼女はしばらく、胸の中で泣き続けた。

 今までいくらでも泣いている四条を見て来たが、結局すぐにケロッと元に戻っていた。

 しかし、今の四条は違う。いつも以上に深く、強い悲しみ。叶わないと知った後悔、今まで味わった苦しみ、諸々全てを吐き出そうとしている。

 

 俺は彼女の涙が枯れるまで、ずっと傍にいた。今、四条に出来る事はそれだけだと思ったからだ。

 

 それから四条は1時間も泣いた後、気付けば眠りについていた。泣き疲れてしまったのだろうか、涙の跡を残しながら眠っている。

 そんな四条をベッドまで運び、風邪を引かないように布団を掛けた。

 

「…おやすみ」

 

 ただ一言。眠った四条にそう言い残して、俺は自分の部屋へと戻って行った。

 

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