やはりこの生徒会はまちがっている。   作:セブンアップ

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早坂愛は愛されたい

「怖かった……」

 

 昨日のラインが衝撃的過ぎて、変な恐怖が植え付けられた。

 君達もちょっと想像してみ?クラスでめっちゃ真面目なやつ、あるいは大人しげなやつとライン交換して、あんな文面でライン送られてきたら。

 新手の嫌がらせか一種のホラーだよ。

 

「あっれ〜?どうしたし〜」

 

 そんな時、俺に向かって軽々しく声をかける女子が現れた。校則違反気味の制服の着崩しに、金髪のサイドテール、蒼い瞳を携えた女の子。

 

「早坂…」

 

 こいつは、2年B組の早坂愛(はやさか あい)。見た目通り、彼女の容姿、言動共にギャルギャルしている。

 

「なーんかすっごい怖いことあったみたいな顔してるけど、なんかあったの〜?」

 

「…別に周り誰もいないんだし、そのギャルモードはいらねぇんじゃねぇの」

 

「…一応、誰が見ているか分からないから」

 

「そらご苦労さん」

 

 早坂と関わったのは、俺が生徒会に入って間もない頃だ。普段のようにベストプレイスでのんびりしていたら、毎日毎日物陰や草陰から誰かが俺を覗いていたのだ。

 人の目線に敏感な俺は、ずっと見られるのも落ち着かないので、その覗き魔の正体を明かした。言わずもがな、正体は早坂愛。最初は全く知らん人だったけど。

 

『実はぁ、最近比企谷くんのこと気になってて〜』

 

 出会って彼女の初セリフはこんな感じだった。しかし、人間観察が得意な俺は、それが演技だということに気付く。

 

『ダウト。ちょっとあざとい』

 

『ッ!』

 

『なんでずっと覗いてたのか知らんけど、そのギャルは分かりやす過ぎる。高校デビューでもしたのか?』

 

 違和感を感じたのだ。ヒッキーセンサーに引っかかるレベルで。

 

 説明しよう!ヒッキーセンサーとは、相手が素ではない、何か嘘くさく感じた場合反応する優れものだ!

 

 中学での様々な黒歴史を生んだ俺は、人に対してとても敏感になる。何か胡散臭かったり、演じているような素振りがなんとなく分かるようになったのだ。

 

『まぁギャルでいたいなら別になんも言わんけど。それ絶対しんどいだろ』

 

『…どうやら、貴方には通用しないようですね』

 

『ダウト。お前本当なんなの?』

 

『ッ!』

 

 ギャルギャルしていた早坂は一転し、冷静で物静かな雰囲気に変わる。しかし、ここでもまたヒッキーセンサーに引っかかる。

 ギャルギャルしてる時より、まだ自然体ではあった。けれど、なんと例えたらいいのだろう。まるで、仕事の時と部屋にいる時の違い、みたいな感じだ。仕事の時は厳しい人だけど、部屋に戻るとめっちゃだらける人みたいな。

 

 さっきも言ったが、ギャルと違ってまだ自然体だった。だから正直、これが素なのではないかとも思った。けれど、どこか。どこか納得出来ない。だから、今のダウトはカマをかけたに過ぎない。

 違ったなら謝るだけだ。しかし、反応を見る限り当たったようだ。

 

『…別にお前がそうしたいなら俺から何か言うのは筋違いだろうけど。ただ、ずっと続けてるとしんどくなるってことは覚えてた方がいい』

 

『…貴方に何が分かるの』

 

『ん?』

 

 俺のそんな言葉に、早坂は目から光を消して、冷淡と返していく。

 

『人間、演じていないと愛してもらえない。弱さも醜さも、演技で包んで隠さなければ愛されない。ありのままの自分が愛されるなんて絶対ない。愛されるために、嘘をつくのが人間だから』

 

『…お前……』

 

『貴方は、比企谷くんは他人に見せることが出来る?弱いところも醜いところも。虚勢も背伸びもない、本当の比企谷八幡を』

 

 その言葉に、俺は確かな重みを感じた。単純に言い返したくて反論してるわけじゃない。まるで、自分がそういう風に生きてきたという実体験を話しているようだった。

 

『…そうだな。人間、嘘をつく生物だ。自分をよく見せるため、人に愛されたいため、様々な理由で嘘をつく。お前が言っていることは決して間違いじゃない。正直なところ、俺だって嘘をつかれるのは好きじゃない』

 

『……』

 

『なんでお前が演じてまで愛されようとするのは分からんし、お前の境遇に同情は出来ない。けど少なくとも、演じて愛されるものは嘘の愛だ。そんなもん、すぐぶっ潰れる』

 

『…じゃあどうしろって言うの。演じなくても愛されない、演じて愛されようすれば壊れてしまう。私は、どうしたら……』

 

『簡単だ。素のお前を出せばいい』

 

『は…?』

 

『さっきから演じてなければ愛されないって言ってるけど、そんなことはない。素の自分も、嘘をつく自分も全部引っくるめて許容する人間はいるからな。世の中の広さ舐めんな』

 

 しかし、そんな俺の言葉に対し、彼女は納得いかないといった面持ちだった。

 

『まぁすぐにそんなやつが見つかるとは思えない。けど、お前のことを大切に思うやつは出てくる。演じていない、素のお前を愛してくれるやつがな』

 

 世の中、愛されない人間なんていない。この俺ですら、小町に愛していると言われるくらいだ。生きている間に、必ず一人は愛してくれる人間がいるはずだ。家族なり友達なり、きっとそういう人間はいるはずなのだ。

 

『あれだ。お前を理解してくれる、あるいは許容してくれる人間がいれば、それでいいんじゃねぇの?』

 

 近しい人間が理解してくれれば、俺はそれでいい。万人から愛される、理解されるなんてことは絶対にあり得ないからな。

 

『…そんな人、いるかな…?』

 

『案外、近くにいたりするかもな。お前を大切に思うやつは』

 

 身近にあるものは気付きにくいというのを聞いたことがある。早坂が知らないだけで、早坂の全部を受け入れてくれるやつは存在する。

 

『…まぁあれだ。相談事なら、聞いてやらんでもない』

 

『え?』

 

『曲がりなりにも生徒会の人間だからな。うちの生徒会の理念の一つとして、悩める生徒を放っておかないっつーのがあるし』

 

 早坂が本当に悩んでいるのを知って、はいそうですかって放置出来るほど鬼じゃない。むしろ、俺が余計に早坂のいらんところを刺激して、言いたくもなかったことを無理矢理言わせたことになる。なら俺には、早坂の相談を受ける義務がある。

 

『今すぐ言えとは言わない。…お前の気が向いたら、話くらい聞いてやる』

 

 そういうことがあり、俺は早坂と知り合うようになった。

 

 彼女と関わって分かったのは、彼女は四宮家の近侍らしい。つまり、四宮とは主従関係。その主従関係を秘密にするために、ギャルモードを徹しているらしい。だが、もう一つの彼女の仮面を付けた理由が未だに分からないまま。彼女が言うには、まだ話せない、とのこと。

 

 つまり、ミステリアスな女子生徒ってのが正解になる。まだ何か隠しているが、俺だって無理に聞いたりはしない。早坂が話したくなれば、とそう考えている。

 

「…ていうか、俺お前の愚痴を毎回聞かされてる気するんだけど」

 

「聞いてもいいって言ったのは比企谷くんだけど。今更嘘でした〜とか言わないよね」

 

「いや言わんけど。でもお前が話すことって8割が四宮のことで後の2割は白銀と藤原のことだろ」

 

 早坂は四宮の近侍として、四宮と白銀がくっ付くように色々と画策している。だが、そこで読めない行動を起こすのが藤原だそうだ。その苦労のことも、度々聞かされる。

 

「…あれだ。藤原をどうこうするのが間違ってる。あれは未確認生物だ」

 

「さらっと書紀ちゃんを化け物扱いしたよね今」

 

「あれを常識扱いするのが間違ってる」

 

「書記ちゃんも可哀想」

 

 早坂はクスッと笑う。そんな今の早坂は、初めて出会った時のような仮面の笑みではなく、心の底から笑ったように見えた。

 

「…じゃあ、そろそろ生徒会室に行かんとな。お前も、色々やることあるんだろ」

 

「そうだね。あ、そうだ」

 

「ん?」

 

 早坂が何か思い出したような素振りをする。

 

「その、もし比企谷くんが起きていたらなんだけど。時々、電話かけたいんだけど……いいかな?」

 

「…まぁ起きてたらな」

 

「じゃあ、今日電話していい?」

 

「…別にするのはいいけど、何時からとかあらかじめ言えよ。じゃないと俺寝てるからな」

 

「うん、分かった。じゃあ何時に電話するか後で連絡するから。ちゃんと電話出てよ?」

 

「へいへい」

 

 早坂ともライン交換をしているのだが、その時も四宮の愚痴を聞かされる。後はたまにプレス機の動画について話されるくらいだ。

 仮にもJKだというのに、プレス機で色々なものを粉砕している動画を見るとかマニアック過ぎる。伊井野とはまた違う意味でなんか怖い。

 

「生徒会、頑張ってね。ばいばい」

 

「おう。またな」

 

 早坂と電話の約束をして、廊下で別れる。早坂はどこかに消えて、俺は生徒会室へと向かった。

 

 さて今日は、彼ら彼女らは、どんな茶番を繰り広げてくれるのだろうか。

 

 




 早坂のキャラって多分こんな感じですよね。なんか分からんくなって来ました。笑
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