やはりこの生徒会はまちがっている。   作:セブンアップ

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早坂愛は共有したい

 

 夏休みも終えて日がしばらく経ち、既に奉心祭が迫る時期になっていた。夏の暑さはもうどこかに消えて、今では少し肌寒い。それまで何があったのかと言えば、もうそれは色々あった。

 

 柏木さんの妊娠発覚だったり、伊井野が生徒会長になったり、その対抗馬に何故か藤原が居たり、それはもう色々あった。

 

 白銀が消えてから秀知院はだいぶ様変わり……というかファンキーな事になってる。柏木さんの妊娠を知った時はめちゃめちゃビビったし、伊井野が生徒会長に選ばれた時は、彼女の努力が実った事を素直に喜んだ。

 

 伊井野の応援演説は大仏だった。伊井野の1番の親友とも呼べる彼女の支えがあって、生徒会長に抜擢された。演説の内容に関しては、俺も噛んでいる。

 だがあがり症を克服した事は素直に驚いた。この1年で彼女は大きく成長した証拠だから。

 

 実のところ、演説も俺に頼るのではないかと思っていた。大仏ではなく、俺が舞台に上がって演説するのではないか。しかし彼女はこう答えた。

 

『比企谷先輩にも勿論頼ります。…でも、私の事は私自身が解決しないといけません。生徒会長になる事は、私が比企谷先輩と出会う前から目指していた事。今回に限っては、比企谷先輩に頼りっぱなしになってはダメだと思いましたから。それじゃ去年と一緒だから』

 

 だから演説は大仏に、そして演説内容の修正や確認は俺が担当になったのだ。伊井野が決断した事に間違いは無い。それこそ、彼女が成長した姿を垣間見る事が出来た。

 

『だからといって、私は比企谷先輩から離れるつもりはありませんが』

 

 だそうです。いつもの伊井野ちゃんでした。成長したのかどうか分からなくなったが、まぁ本当に色々あった。

 

「何を黄昏てるの?」

 

 屋上の放課後。普段なら残る筈も無い俺が今こうして残っているのは、奉心祭の準備やら何やらがあるからだ。その休憩として、今屋上から秀知院の外側を見渡していた。そこに、早坂愛がやって来た。

 

「…夏休みからここまで色々あったなぁって思ってただけだ」

 

「何も起きない方が異変だと思うけどね、この学校って」

 

「言えてる」

 

 異変ばかりが起きる秀知院。そろそろ博麗の巫女とか魔法使い辺りを派遣してもいいのではないか。

 

「…もう後少しでこの学校も卒業だね」

 

「その前に受験だな」

 

「奉心祭の前に現実的な事言わないでよ」

 

 それもそうだ。受験なんて言葉を受験シーズンに聞いたら余計にストレスが溜まる。そのうちNGワードにもなる事間違いなし。

 

「八幡は決めたの?第一志望」

 

「東京に残る事にした。第二志望は千葉。まぁ今住んでるアパートをそのまま使えるし、小町も居る。東京を第一志望に選ばない理由が他に要るか?」

 

「えぇ…」

 

 将来、何になりたいかなんて明確に考えていない。専門的分野にはあまり興味無いし、理系なんてクソくらえだ。

 

「動機がどうあれ、大学中に進路を見つける奴は少なくないだろ。多分俺もそのパターン」

 

「まぁ就活に失敗しても心配要らないよ。私が起業して養ってあげるから」

 

「…お前そういうの出来そうだから怖いんだよな」

 

 起業するとか言う奴の大多数は失敗に終わるが、この早坂は起業するどころか有名な企業に変貌する事になるだろう。四宮の下で動いていた彼女ならやってのけそうだ。

 

「…そろそろ戻るわ。お前は?」

 

「私はまだここに居るよ。もう少ししたら戻るから」

 

「了解」

 

 俺は屋上を後にして、自身の教室に戻って行った。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「…進路、か」

 

 昔の私には縁遠い話だったが、今の私はもう四宮の手を離れたただのJK。やりたい事をする事が出来る。でもその前に。

 

「八幡。……君は、誰を選ぶのかな?」

 

 卒業までに答えを出すと言う八幡。私なのか、風紀委員ちゃんなのか、圭ちゃんなのか眞妃なのか、龍珠組の娘なのか。それとも書紀ちゃんなのか。

 

 まさか書紀ちゃんまで八幡を狙ってるとは思わなかった。そんな伏線も無かった筈だし、そんなやりとりを私は見ていない。怪しいと思ったのが、教室内でも少しベタベタする事になったの見たからだ。

 

 私は放課後、書紀ちゃんを呼び出した。呼び出したなんて言い方は少し大袈裟だが、話はした。八幡にベタベタするその理由も尋ねた。すると彼女はこう答えた。

 

『好きですよ、比企谷くんの事。仲間としてだけでなく、異性として』

 

 そう答えた書紀ちゃんの顔はまさしく、恋する乙女の顔だった。不覚だった。まさか書紀ちゃんが八幡の事を好きになっていたなんて。

 いつだって彼女は私の予想を軽く凌駕していた。頭が痛くなるくらいに。私でさえ今更知ったのだから、圭ちゃんや風紀委員ちゃん達が知る事は無いだろう。少し察しているかも知れないが。

 

 私を含めた6人の女が、彼を巡って争う事になる。別にそれでも構わないが、もっと良い方法がある。私達6人が納得出来て、八幡も逃げる事すら許されない策が。この策は、八幡が誰も選ばなかった時に発動する。

 八幡が私以外の誰かを選んだとしても、略奪はよろしくない。それこそ血みどろの戦争が起きるし、八幡は罪悪感で押し潰されてしまうかも知れないから。

 

 だから彼女達を呼び出した。

 

「私達呼び出した理由、予想するまでも無いわね」

 

「まぁバカじゃない限りな」

 

 四条眞妃に龍珠桃。それに伊井野ミコに白銀圭。そして。

 

「私今カップラーメンを汁無しで食べようとしてたんですが」

 

「お前は何をしとんだ」

 

 藤原千花。私が今日召集したこの5人に話がある。書紀ちゃんが居る事に、私以外の皆は訝しげな顔になる。

 

「なんで千花ねぇが居るの?」

 

「カップラーメン作ってたら早坂さんが話があるって連絡して来たので」

 

「カップラーメンの件はもう良いんだよ。それよりだ。…何が目的だ?」

 

 龍珠桃は壁にもたれて腕を組み、私を睨んでそう尋ねる。

 

「…勿論、八幡の事」

 

「比企谷先輩の…?ま、まさか…比企谷先輩は早坂先輩を選んでッ……!!」

 

「違うよ。それならそれで報告はするけど、そんな様子どこにも無かったでしょ」

 

「じゃあ何の話?」

 

 私は、先程の策とやらを彼女達に打ち明けた。

 

「八幡を共有する話」

 

「共有…だと?」

 

 更に顔が険しくなる龍珠桃。

 

「共有ってなんですか?」

 

「私達の中で八幡は誰かを選ぶ。私かも知れないし眞妃かも知れない。風紀委員ちゃんかも知れないし、龍珠桃や圭ちゃん、あるいは書紀ちゃんかも知れない」

 

「ちょっと待て。藤原がここに居るって事は…」

 

「…そういう事」

 

 書紀ちゃん以外は、書紀ちゃんが何故ここに居るのかをすぐに察した。書紀ちゃんもまた、八幡の事が好きな人物だからだ。

 

「千花ねぇも、八にぃの事が好きなの?」

 

「え?あ、うんっ」

 

「…そうだったんだ」

 

 書紀ちゃんが八幡にそういう感情を抱いていた事を今知って良かったかも知れない。知らないまま選ばれたのを知ったら、書紀ちゃんを隠れ蓑として使ったとしか考えられないから。

 

「書紀ちゃんがここに居る理由はさておいて。さっきの話に戻るけど、八幡を皆で共有しようって話をしたかったの」

 

「共有ってどういう事?」

 

「八幡が誰か1人を選べば、今の話は無しになる。でももし八幡が誰も選ばなかったら?」

 

「選ばなかったらって…」

 

「八幡は責任感が強い。それに私達の好意を知っている。誰か1人を選ぶ事も十分あり得るけど、誰も傷付けたくないと考えて逃げるという選択肢もある」

 

「…そういう事かよ」

 

「要のところは、八幡のハーレムを作っちゃおうって事でしょ?」

 

 眞妃の言葉に頷く。これが私達が納得出来て、かつ八幡も逃げる事すら出来ない策。私達6人が結集すれば、八幡1人を拉致監禁する事なんてカップラーメンを作るより容易い事。

 

「そ、そんなのダメです!そもそも一夫多妻制なんて日本じゃ認められていません!」

 

「私も嫌です。八にぃには私だけを見て欲しい。他の女と一緒なんて耐えられません」

 

「なら風紀委員ちゃんと圭ちゃんはもう帰っていいよ。嫌な事を無理矢理させたくないし。でも良いの?」

 

「え……?」

 

「確かにずっと独り占めは出来ないかも知れない。でも八幡の愛をずっと貰う事が出来る。あのシスコンっぷりを見てたら分かるでしょ?」

 

「確かに、比企谷くんって小町ちゃんの事めちゃめちゃ好きですからね〜」

 

 八幡の愛もまた、私達と同じく重いのだ。妹に対しての溺愛っぷり、マッカンに対する執着、好きになったものはとことん好きになる傾向にある。

 

「八幡に愛して欲しいんでしょ?八幡の愛が欲しいんでしょ?独り占めが出来ないと言っても、少しの間だけなら出来るかも知れない。それに八幡なら、付き合った女性をおざなりにする事は無い。等しく愛してくれる。それも、今まで以上に」

 

「今までよりも、先輩に…?」

 

「で、でも私は…」

 

「まぁ今すぐ決めろとは言わないけど。八幡がいつ答えを出すか分からないから、早めにね」

 

 この2人が厄介だと思っていたが、八幡の愛を貰えない事を天秤にかければ容易に懐柔出来る。

 

「でもどうすんだ?シェアハウスは出来るかも知れないが、重婚は出来ねぇだろ」

 

「なら私が頑張りまーすっ」

 

「は?」

 

 腕を高々と突き上げたのは書紀ちゃんだった。流石の龍珠桃も、目を丸くしていた。

 

「私一応総理大臣になるつもりでいるので、任せて下さいっ!」

 

「…日本終わるわね」

 

 眞妃はこめかみに手を置いてそう呟く。とはいえ、書紀ちゃんの父親は総理大臣。可能性は低いけれど、可能性があるのなら賭けてみても良いかも知れない。

 

 私情で法律を変えようとするのなんて、書紀ちゃんぐらいしか居ないだろうけど。

 

「ま、まぁとにかく。選ばなかった時は共有しようって事。風紀委員ちゃんと圭ちゃんは分からないけど、3人はどうする?」

 

「私は異論無いわ……と言いたいけれど、本音を言えば私だけを見て欲しい。でもここで手放したら後悔するかも知れない。…私も少し考えさせて欲しいわ」

 

「比企谷くんが一緒に居てくれるなら、私はそれでも良いと思いますよ。でも、流石に1人につきどこかのタイミングで比企谷くんを独り占めする時間を設けた方が良いと思うんですけど…」

 

「それも考えてる。流石にずっと共有しっぱなしはね。…それで、君はどうするの?」

 

 まだ答えを出していないのは龍珠桃だけ。

 

「……私も少し考えたい。流石にすぐには答えを出せねぇからな」

 

「分かった。でもずっと待つわけにもいかないから期限は勝手に決めるね。期限は1週間。奉心祭最終日までに連絡して」

 

「分かった」

 

「予め言っておくけど、これは八幡が誰も選ばなかったらの話だから。選んだ場合はこの話は無し。それだけは頭に入れておいて」

 

「この話は比企谷くんには?」

 

「してないよ。というかするつもりは無いよ。誰も選ばなかった時、彼には無理にでも愛してもらうから。絶対逃しはしない」

 

「まぁ妥当なところね」

 

「それともう1つ。八幡が誰かを選んだ場合、それ以外の人間は手を引く事。あくまで友人として関わる事。略奪もやろうと思えば出来るけど、そんな血みどろな争いを八幡が望むはずも無いからね」

 

 こうして八幡の共有の話はひと段落し、解散となる。私はそのまま屋上に残り、夕日を眺めていた。

 

 本当は私だって嫌だ。八幡を独り占めしたい。八幡には私だけを見て欲しい。でもこれだけの女が好きになって、そんな願いは確率的に低いのだ。

 皆等しく、3分の2の確率で幸せになる妥協案。残りの1は、自分が選ばれなかった時。

 

「…私の初恋がこんなカオスな事になるなんてね。全然思いもしなかった」

 

 かぐやのようなロマンティックな恋じゃなかった。私の初恋は最初から間違えていたのだ。でもその間違いが、私にとっての幸せなのかも知れない。正しい答えだけが人の幸せとは限らない。

 

 私達がこんな話をしている事を、八幡は知る由も無いだろう。八幡は八幡で、ちゃんと考えて決めて欲しいから。それでも逃げるようであれば容赦はしない。

 

 媚薬を飲ませてドロドロに依存させる。私、いや、私達が居なければ死にたくなるほどに依存させてあげる。もし共有したくない人間が居るならそれで結構。人が少なくなれば、その分八幡を独り占め出来る時間が増えるから。

 

 もう君は普通の恋なんて出来ないんだよ。もし普通の恋が出来ないと嘆くなら、それは君の奥底にある毒のような優しさが原因。犯されたら最後、もう元には戻らない。

 ただ八幡に依存していくだけ。だから皆は八幡に執着する。あの毒をもっと求める。それが自分の快楽となるから。

 

「あ、八幡」

 

 屋上から下を見ていると、自転車に乗る八幡と、後ろから抱きついて座る小町ちゃんの姿が見える。小町ちゃんには悪いけど、そろそろ兄離れをしてもらうね。ブラコンもシスコンも、そろそろ卒業しないとダメだと思うから。

 

 その日の夜。

 奉心祭最終日までと期限を付けたものの、皆すぐに連絡をしてくれた。その早さに少し驚きはしたけど。

 

 まずは伊井野ミコの答え。

 

『早坂さんのその提案を飲みます』

 

「やっぱりね」

 

 彼女はネグレクト気味だったらしい。交通事故が起きるまでは大仏こばちと共にしていたが、八幡と出会って今まで得る事の出来なかった愛を得た事で重度の依存に陥り、そして更に求める。八幡と関係を切る事に比べたら、この提案は彼女にとって損は無い。

 

 次に白銀圭。

 

『受け入れます。でも共有する際はちゃんとルールを決めましょう』

 

「案外乗り気じゃん」

 

 白銀家は貧しい家族だった。だから欲しい物が簡単に手に入れる事が出来なかった。けれど白銀パパがユーチューバーになって多少の裕福が出来たのがきっかけか、もっと欲を求める事になったのだろう。その対象が、八幡。会長と同じく、彼女の愛も重いのだ。

 

 続いて四条眞妃。

 

『その提案を受けるわ。何か必要な物があればすぐに言いなさい。四条家として多少の融通が効くと思うから』

 

「強っ」

 

 四条眞妃は翼くんの事が好きだったが、渚ちゃんに盗られて失恋。そこに相談役として八幡がやって来た。八幡が何のアドバイスをしたのかは知らないが、辛い時に話を聞いてくれる存在は心が温かくなる。失恋した人が好きになる王道パターンだ。愛の重さはかぐやと似る。

 

 4人目は龍珠桃。

 

『受け入れるが、もし裏切るような真似をしたらぶっ殺すからな』

 

「怖っ」

 

 龍珠桃は指定暴力団"龍珠組"の娘。その背景があるせいで、彼女は孤立気味だった。そこに八幡との出会い。八幡は人を偏見などで決めつけない。そこに惚れたのだろう。龍珠組の娘ではなく、龍珠桃として見てくれた事。そして孤立気味だったせいか、八幡に執着するようになった。誰かと接する事の無かった彼女の拠り所は、八幡となったのだ。

 

 最後が藤原千花。

 

『了解でーす』

 

「軽っ」

 

 彼女に至っては何故八幡の事を好きになったのか分からないまま。生徒会で共に過ごしていた時間が長いからか。しかし時間と親交は比例しない。となるなら、彼女が好きになった何かがあったに違いない。

 

 とまぁ結果として、まさかの満場一致での了承。それだけ彼の事を愛しているという事。

 

 八幡。八幡が誰を選ぶのかは、それは八幡が決める事だから否定しない。でももし逃げる様子を少しでも見せたら。

 小町ちゃんと出会う頻度も少なくなるだろうし、私達だけが拠り所となるように依存させる。媚薬でも逆レイプでもあの手この手で君を愛して、そして愛し返してもらう。

 

 私達6人を敵に回せば、もう元の生活が出来ないのだと覚悟してね。

 

 




 どう足掻いても八幡くんに逃げる術はありません。各ヒロインルートだけでなく、ハーレムエンドが存在します。それがハッピーなのかバッドなのかは、誰にも分かりません。

原作ヒロインのアンケートです。(番外編にて他のヒロインのルートも投稿しますが)

  • 私を選ぶよね?(早坂)
  • 私から離れるつもりですか?(伊井野)
  • 私以外の女を選ばないで。(圭)
  • 私にしろ。(龍珠)
  • 私に告るわよね?(眞妃)
  • ラーメン食べに行きましょ〜(千花)
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