諦めはウマ娘を殺しうるか?   作:通りすがる傭兵

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夏合宿おわり!


第24話 打ち上げクライマックス

 

 

 

「......皆、よく、よくこの夏合宿についてきてくれた」

「御託はいいから飯を食え! 祭りだーッ!」

 

「「「「「わーっ!」」」」」

 

「お前折角俺がかっこよく締めようとしてるってのにってもう食ってるのか?!」

「ハムハム......だって腹減ってんだもの」

「また太るぞ」

「焼いたらカロリーゼロだから!」

 

 折角の合宿最終日なんだ、ハメ外しちゃっても良いじゃないのと焼きにんじんと牛串を頬張る。炭火で表面が少し焦げるくらいに焼けたにんじんは甘くて、牛串は塩味が効いて噛み締めるたびに肉の旨みがたまらない。とはいえトレーナーの言う通りリバウンドは勘弁だから控えめ控えめ、カロリーゼロ理論なんてインチキ理論は冗談だけにしときますってよ。

 にんじん串をかじりつつ、ウオッカとなにやら話してるらしいスカーレットの方へ。

 

「初めての夏合宿、どうだったかいスカーレット、あとウオッカも」

「海に行ったことあんまりなかったし新鮮だったわ!」

「子供っぽいこと言うなスカーレット。けど俺も楽しかったぜ!」

「あんたも楽しそうにしてたじゃないのよ、変にカッコつけてもあたし知ってるんだからね」

「んなーっ!」

「楽しそうで何より。全寮制だからこういう息抜きもしないとね」

 

 さて次はエアシャカールに声をかけに行こうかな。食べ終わった串を火の中に放り込んで薪にしつつ、追加の串を指に挟んであのエキセントリックガールを探した。といっても、近くに刺さってるパラソルの日陰で寛いでたのですぐに見つかった。

 

「今日はもうデータはいいのかい?」

「全部打ち込んださ。今は休養の時間だ」

「だったら混ざりに行けばいいのに」

「群れるのは性に合わねエよ」

「適度な会話はストレス値を低下させるデータもあるがねシャカール君」

「......チッ」

「おや、タキオンじゃないの」

「やあ」

 

 その隣で同じようにダラダラしていたタキオンがサングラスをあげて挨拶をした。彼女もまた野菜を焼いた串を頬張り、この時間を満喫しているようだ。

 

「私としても実に有意義な合宿だったよ。まさかデータを取らせてくれるとは思わなかったからね」

「別にデータくらいだったら拒否する理由もないよ。実験は断固拒否するけどね」

「そこだけが無念だね」

「やらせるわけ無いだろがクソが」

「......シャカール、ステイゴールドに影響されないでくれる?」

「されてねえよクソが」

「されてるじゃん!」

「冗談だ」

「あー良かった。ところでタキオン、君のトレーナーは?」

「ああ、合宿所で何か追加のご飯を作ってくるといっていたが」

「ばっ、桐生院は常識のネジを締め忘れたポンコツなんだぞ、なんで放置した!」

「その方が面白いデータが取れると思ったからさ!」

「このおたんこなす!」

 

 即断即決、お仕置きがわりにタキオンも頬をつまんで伸ばして締め上げるが本人は楽しそうに笑うばかり。くそ、ここら辺の近所の山には動物が生息してたか調べてないから何をやらかすか。

 

「みなさーん、鹿を狩ってきましたよー」

「遅かったか......」

 

 首が180度後ろに回った立派な鹿を担いで山を降りてくる桐生院を見てその場の全員が固まったのは言うまでもないだろう。

 

 狩猟ライセンスはどうしたって? あいつ持ってるし、何より申請出した上でやってるから法律的にはなんの問題もないんだよクソが。

 

「......テメエが感染(うつ)ってるじゃねえか」

 

シャカールの呟きは聞かなかったことにして、急いで桐生院の首根っこを掴んで物陰に引きずりこんだ。最終日に悪夢みたいな光景を見せるわけにはいかない、せっかくの思い出を汚さないでくれ。

 

 

 

「......全く、酷い目にあった」

「みんな美味しそうに食べてたじゃないですか、もー」

「そういう問題じゃないの!」

 

 血がついたジャージを外の洗い場で洗いつつぼやく。あの後正装姿の桐生院に捌かせるばかりにもいかないので、彼女が振り上げた包丁を引っ掴んで代わりに解体する羽目になった。桐生院といるといっつもこんな役割ばかりだ。

 うっかり動脈に傷をつけたせいで血が吹き出し、一瞬でスプラッター映画の登場人物のように全身が血塗れ。上着もダメ、ズボンもダメ、ついでに帽子も真っ赤っか。

 

 血抜きもちゃんとやれってあれ程教えたってのにとぼやくが桐生院は首を傾げるばかり。詰めが甘いというか、斜め読みする癖があるというか、肝心なところを見落とすというか。

じゃぶじゃぶとジャージを水につけ、まだ香ってくる鉄臭い匂いに顔を顰めて思わず耳が立つ。

 

「やっぱり、ウマ娘なんですよねぇ」

「耳触らないでよ」

「むー」

 

 作業中に頭の上に手を伸ばしてきたので、耳をピッタリと畳んで髪の中に隠すと頬をふくれさせる桐生院。

 

「今はまだご飯中だからいいけど早くしないと誰か来るでしょ。頼むよ隠してるんだから」

「別に隠す必要ないのに。あなたの名前を知れば誰だって......」

「あの名前は使いたくない。色眼鏡でしか見られないし」

「気持ちはわかりますが隠し事はしない方がいいですよ。ウマ娘との間に隠し事はないほうがいい、と家訓にもあります」

「私の気持ちの問題なの」

 

 ズボンも脱いでるので尻尾もフリーだ。パンいちTシャツ姿なんてトレーナーにでも見られたら蹴っ飛ばすつもりだがそれはキツく言い含めておいたので問題はない、ハズ。

 

「だいたい、養成学校にはしっかり報告するのに学校ではしっかりと隠して、同室だったからいいものの最後まで隠し通すつもりでしたよね」

「勿論」

「抱え込むのは良くないですよ」

「うるさいうるさい」

「ちゃんと話を聞いてください!」

「きこえませーん」

「......もう、強情なんですから」

 

 追撃を諦めたのか、彼女は私のジャージに洗剤をぶちまけ泡立たせ始めた。食器用のやつだけど匂いがとれるんならもうなんでもいいやと指摘はしない。短い期間とはいえ密度で言えば長い付き合いになるからこそ譲れないものも互いに知っている。親しき中にも礼儀あり、お互いに仲がいいからこそ踏み込まない線引きはしっかりとできている。

 

「......それにしてもその礼服姿は暑くないかい?」

「黒ジャージ上下のあなたがそれを言いますか?」

「んなモンクソ暑いに決まってるでしょうが。トレーナーの半袖短パンが羨ましいですよ。そっちはどうせ家訓とかでしょ?」

「これ以外に服がなくて」

「学生時代にいっぱい買ってあげたやつはどこへ!?」

「こないだ服に困ってると言っていたウマ娘の皆さんにあげちゃいましたよ」

「怒るに怒りにくいなあ」

 

 

なんやかんやありつつも、夏合宿は終わりを告げた。

 

 

 

時は流れて秋。

9月から始まるは秋のレース戦線。

クラシック最後の1冠を勝ちとる最後のレースが始まる。

 

 

 

 

 

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