97年当時の予想なんかを頑張って掘り当ててきました。
「モルモット君精が出るねェ、紅茶いるかい?」
「角砂糖たくさんで!」
「虫歯になっちゃいますよ?」
「歯を磨けば大丈夫です」
ぽいぽいと角砂糖をカップに3、4個入れつつ、ティースプーンで数回ほどかきまぜればいつもの甘々な紅茶の完成だ。ほどほどに冷まされた紅茶を一口。実家の方から送ってもらった高級茶葉、専門の使用人が入れたものとは香りも味も劣るが美味しいことに変わりはない。
「......フゥン、耳が生えるだけか」
「トレーナーに酷いことしないで」
「同意の上だよ」
私の頭の上に生えたらしい何かを繁々と眺めながらふむふむと唸っているタキオン。だがすぐに飽きたらしく、その興味は私が文章を打ち込んでいるパソコンへと向かった。
「硬い文章だね、お得意の『トレーナー白書』かい?」
「いえ、菊花賞の結果を予想してるんです。トレーナーとしての相バ眼と観察眼を磨く練習のようなものですよ。やってみますか?」
「面白い」
「......やる」
データはタキオンさんなら問題なく入っているでしょうと前置きした上で、参考にした競バ新聞やデータ表を見せる。数分して。最初に口を開いたのは意外にもミークだった。
「強いていうなら......メジロブライトさん、でしょうか?」
「理由は?」
「今まで最低でも4着、強いということだと思います。同じレースに出場していた人も多くいて、対策もできると思います。それに、『メジロ』は有名ですし」
「名門ですからね」
ウマ娘にも私の桐生院家のような名門、血統主義のようなものがあります。メジロはその中でも特に有名で、春の盾を得ることを目標とし、実際に3000m前後の長距離レースを得意とするステイヤーが多く在籍していました。今年オークス、秋華賞1着などティアラ戦線で活躍したメジロドーベルさんが記憶に新しいですが、長距離戦である障害レースを選び、連勝を重ねたメジロファラオさんや天皇賞春を2着などのメジロライアンさんを見れば得意であることは間違いありません。
その評判に則るなら3000mの菊花賞はまさに彼女の舞台とも言えるでしょう。
ただ、と注釈を付け加える必要があります。
「ここ半年以上勝ちがありません。それにトップとは半バ身の差だったりと惜敗が続くレースが多い。つまるところ、トップには迫れても勝ちきれない......典型的なシルバーコレクターに甘んじがちなウマ娘でもあります。何か大きなきっかけでもない限り、菊花賞は難しいでしょう」
「キッカケがあったら?」
「京都新聞杯で1着だったらそう思えましたね」
ミークには厳しいけどこれが『トレーナー白書』、積み重ねてきた伝統と経験から導き出される私の解答だ。
「タキオンはどう思いますか?」
「ん? 私にも聞くのかい?」
「頭の体操ですよ。また夜遅くまで実験してたのでしょう、同室のデジタルさんからは聞いていますからね」
「彼女まで買収したか、全くやりにくいね」
「買収ではありません! もっと身体に気をつけてください!」
「善処するよ、フム......やっぱりフクキタル君かな」
「理由は?」
「身近でみたというのもあるが、彼女の資質は目を見張るものがある。贔屓目で見ずとも、G2レースを2連勝している事実は無視できない、そうだろう?」
マチカネフクキタル。最近躍進目覚ましい彼女が担当している、明るい栗毛と不思議な言動ばかりが思い出されるウマ娘、実力は直近2レースを見れば申し分ないでしょう。
「ですが彼女をステイヤーと評価することは難しいですね」
「フゥン......?」
怪しげな目を光らせてこちらを見定めてくるタキオンさん。試されている、というのであれば答えてやらないといけないだろう。
「ステイヤーの特徴は色々ありますが、『優れた心肺機能を持つ』ウマ娘が殆どです。レース中ハイペースで飛ばしても問題がない体力を持っていると言い換えてもいいでしょう。
総じてステイヤーには自身でペースを作れるようなレースをする逃げ先行策でレースをするウマ娘が多く、比較的ストライド走法を取るウマ娘が多いですね」
「フクキタル君には須く当てはまらない、だからこそ彼女は違うと?」
「彼女の適性は長くて2500mだと思いますよ」
「......じゃあ、フクキタルさんは勝てないんですか?」
「ここ数年、ダービーで2着を取ったウマ娘は総じて菊花賞では良い成績を残しています。私としてはシルクジャスティスさんが一着ではないかと思います。ただ、サニーブライアンさんが出走しないことや、躍進目覚ましいサイレンススズカさんの不在。フクキタルさん、ジャスティスさんをはじめとした実力者が差し追い込み策に固まっていることでペースメイクできる人がいません。
今年はスローペースなレースになるでしょう。となると予想がつきませんね」
もし担当するウマ娘、仮にミークが参加するとしたらどのような作戦を考えるでしょうか。彼女はどの位置でもレースがこなせますし、この場合だったら逃げてペースを荒らしてしまうのが良いでしょうか。となればメジロブライトさんに有利な状況を作ってしまいますね。
やはり二の脚を使って逃げ切るスロー逃げ、後続の末脚に耐え切れるようなレース操作を行うとなれば、ミークには少し難しいですか。
「......んむむむ」
「ぴこぴこ、可愛い......」
「おや、感情に応じて動くのか。半分は成功したようだが、使い道があるかと言われると難しいねぇ」
サワサワと頭の上の何かを撫でられるような感覚にむず痒さを覚えつつも、悩まずにはいられない。
「これ、いつになったら終わるんですかタキオンさん!」
「1週間はそのままだとも。実験のために一度タイム計測をしてもらうし......折角だし我々と同じ生活を送ってもらおうかなモルモットくん」
「......いっぱい、食べる?」
「食べませんよ......」
ふわふわとして掴みどころのないミークと、ストッパーの外れたタキオン。私にはもう手がつけられません、誰かこう、ストッパーになれるようなウマ娘が誰か歩いていないものでしょうか。
「いっぷし!」
「どうしたアマゾン、風邪か?」
「タイマン?! タイマンかブライアン!」
「何をどう聞き間違えたらそうなるんだ......」
参考にした記事とかサイトとかって貼った方がいいんでしょうか......?