諦めはウマ娘を殺しうるか?   作:通りすがる傭兵

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このポンコツは1話入れ忘れました

1番大事なところやぞ!!!!!!!!!!!!!!!2021/04/13


第5話 再起するもののために

 

 

「ふん、せいせいしたわ! 余計なギャラリーもいないし、これでトレーニングに集中できるもの」

「だな」

「頑張りましょう!」

「......ハァ」

「って、なんでこんなに人がいるのよ!」

「トレーニング」

「それは見てわかるわよ!」

 

 模擬レースから数日。初日は沢山のトレーナーが素質を見込んでスカウトに来ていたが、今となっては寂しいものだ。他の注目株に散り散りになって今彼女をスカウトしようとしているトレーナーは私だけ。コースでは自主練するウマ娘が2、3人いるばかりのほとんど貸切状態。

 2人でしっかり腹を割って話すには悪くない。

 

「とにかくはじめよう。それで、今日の練習はどうしよっか」

「ああ? それくらい練習前に詰めとけっての」

「占いによれば併走が吉らしいですよ。スカーレットさんはもっと実戦経験を積むべきですし丁度いいかと!」

「んじゃあそれで」

「もしかして、私もやる流れになってる? 一緒に?」

「そのつもりだけど?  ウチに来てほしいんだったら、チームの雰囲気を少しでもわかってほしくてね。ちょっとばかし癖の強いメンツが多いが、楽しくやろうよ」

 

 あのゴールドシップがいるからちょっととは言い難いが、他のメンバーはそうでもないはずだ。反論上等で見た目が怖いエアシャカールとか......トンチキな事ばかり言ってるマチカネフクキタルとか......おやぁ?

 もしかしてこのままだとイロモノしかいないんじゃない?

 

「......あのねえ、私のこと、まだ優等生だと勘違いしてるわけ? なんだかんだで練習やってくれる真面目な子だって、そう信じてるの?」

「うん?」

 

 私の思考が他所へ飛んでいたところに彼女が静かな声で、そう疑問を投げかける。どうにも質問の意図が読めなかったので生返事で返すと、彼女はその目尻をきっと釣り上げ、こちらに指を指した。

 

「アタシはねえ......あんたが思ってるような優等生じゃないのよ。今のアタシが、本当のアタシなの。

頑固で、ワガママで、気性難。トレーナーのいうことなんか素直に聞かない、1番に拘るどうしようもないウマ娘。

それがアタシ。自分が優秀なんてとても思った事ないわ。

幻滅したでしょ、失望したでしょ。

早く、他の娘をスカウトに行った方がいいと思うわ。

とっとと、いなくなって頂戴?」

 

 最後は自嘲するように、軽く笑って目を逸らしながら彼女は私に言った。それを聞いて、私は......

愉しそうに、口角を釣り上げた。

 

「......ますます、スカウトしたくなったよ」

「はぁ?! あんた、アタシの話これっぽっちも聞いちゃいないわけ? いい加減現実を見たらどうなの?

トレセン学園は速い子ばっかりで。そんな中で無駄に虚勢はって、でかい態度とって、意地を張って、みっともなく負けた。

それが今のダイワスカーレットなの! 慰めなんて要らないのよ!」

「じゃあ言い方を変えよう。『1番』になれなかった君が欲しい。でかい態度で、意地張った、みっともなく負けた君をスカウトにきた」

 

 表面上は諦めかけて、それでも心の奥で燻る意地に困惑しているよう。諦めかけてはいるが、まだ折れてはいない。むしろ諦めかけて立ち上がった彼女が、私の目には輝いて見える。

ウオッカよりも、誰よりも。私にはなし得なかった事だから。

 

「うるさいのよ! 1番になる、1番が欲しいって空っぽな決意繰り返してばっかで、空回りしてるウマ娘をスカウト? 頭おかしいってば! 

 一度くらいウオッカに負けたくらいで拗ねて塞ぎ込んで自棄になって、無茶な走り込みして。自分でもこれがバカだってことくらいはわかるわよ!」

「じゃあなんでそんなことするのさ」

 

 やり場のない怒りをどこかにぶつけるように、両の拳を握りしめ、駄々っ子のように振り回す。

 

「しょうがないじゃない! そうじゃないと、アタシがアタシを許せないの! 

1番速い、1番強い、1番かわいい、1番認められる、1番注目されるアタシじゃないと、嫌なの! そうじゃなきゃ満足できない! そういうふうに、なったんだから仕方ないじゃない!」

 

 気がつけば、彼女は泣いていた。

 

「アタシは、アタシのために、アタシだけの1番が欲しいの。

1番を、ずっと取り続けなきゃいけないの!

そうじゃなきゃ、アタシでいられないのよっ......!」

「それが君の走る理由か、ダイワスカーレット」

「そうよ! 失望したでしょ! つまらないでしょ! こんなのしょうもないでしょ! わかったなら、どっかに消えて、アタシの目の前から居なくなって!」

「断る」

「どうしてよ!」

「君が、諦めてないからだ!」

「っ......!」

 

 元学園生を舐めるなよ。引退したとはいえ踏んできた場数も、ライブも、度胸も違うんだ。駄々をこねる中等部生にどやされてハイそうですかと立ち去れるんならレースで一度だって勝てるもんか。努力は報われて然るべきだ。

自虐する必要はない、その貪欲なトップへの執着心は、醜くみっともないものなんかとは言わせてなるものか。

 

「諦めてるウマ娘ならお望み通り目の前から消えてやるともさ。でも、君は違う。石段でのスタミナトレーニング、坂路の練習、コーナーどりを学ぶための併走トレーニング、ダートコース走り込み。君は毎日、練習の手を休めていないことは知ってる。それも、弱音を吐かずに毎日きっちりと。

 

それを諦めてないと言わずしてなんとする?

それを、認めずしてはトレーナーと名乗る資格はない!

諦めないものに勝利の女神は手を差し伸べてくれる。

たとえ1度や2度の失敗でめげずとも、立ち上がろうとする君には。そうあって然るべきだ、君は、そうなるべきだ!

 私は新米で、捕まえた担当ウマ娘もちょっと個性的で、気が合わない奴もいるかもしれない。

勝利に女神には届かないかもしれない。けど、君をその手が掴めるところまで押し上げてはやれるつもりだ。

 

私と来い、ダイワスカーレット!」

 

思わず、手を差し伸べていた。

それを彼女は目を伏せ、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。

 

「アタシ、頑固よ。1番しか認めないわよ」

「わかったところだ」

「新米トレーナーのいうことなんて簡単に聞かないから」

「いい勉強になる」

「納得行くまでトレーニングメニューに口出ししてやるんだから」

「かかってきなさい!」

「......ほんとうに、アタシでいいの?」

「そういう君だからスカウトに来たんだ」

 

 彼女は裾で涙を拭い、面を上げた。

目元を赤く腫らした彼女は私の差し伸べる手をガッチリと掴んで、挑戦状を叩きつけるように、笑ってみせる。

 

「なら、覚悟しときなさいよね......!」

「もっちろん。まずは......休もうか」

「はぁ?! そこは練習の流れでしょ!」

「自分がオーバーワークだってことを理解していらっしゃらない?」

「軽い練習くらいなら大丈夫よ」

「ダメでしょうが」

「なんでよー!」

 

ああ言えばこう言う。こう言えばああ言う。

なるほど、宣言した通りの頑固でどうしようもない気性難は宣言通り、これは別方面で骨が折れそうだ。

だから今日は素直に休みなさいっての。

 

「トレーナーさん、楽しそうですね」

「あぁ? 確かにな」

「......今日は自主練のほうがいいですかね?」

「だろうな。あの様子じゃ、陽が沈むまで喧嘩してるだろうさ」

「青春、ですねぇ......」

 

 

「いいから休みなさいよ!」

「きつい時こそ自分を追い込むのよ!」

「追い込みすぎなんだってば! もう、スポーツ医学授業で真面目にやってるでしょうに!」

「教科書が古臭いから自分で調べたほうが正確なんだから!」

「おいおい言ったな時代遅れなんて私の地雷を踏んだな新人だからって遠慮するわけないだろ覚悟しときな!」

 

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