諦めはウマ娘を殺しうるか?   作:通りすがる傭兵

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UA10000とかウッソだろお前!


ありがとうございます......


第2章 禍福を占う『マチカネフクキタル』
第8話 ターンポイント/スタートライン


 

 

「と、いうわけで。まず、チームに入ってくれてありがとう諸君。改めてお礼を言わせてもらうよ。特にフクキタル」

「むふー」

 

 胸を張って当然のことだ、と勝ち誇るフクキタル。邪険にしてはいたが、まさかトレーナーがウオッカを捕まえてくるとは思わなかったのだ。だが、おかげでこれで5人になった。

 

ゴールドシップ。

エアシャカール。

マチカネフクキタル。

ダイワスカーレット。

そして、ウオッカ。

 

書類は受理され、この5名のウマ娘が晴れてチーム『スピカ』の所属になったおかげで何が起きたと思う?

 チーム解体が無くなったのだ。これには私もトレーナーも胸を撫で下ろし、チーム存続を祝ったものだ。しかも早期に揃ったおかげでトレーナーがゴルシの天皇賞に心置きなく注力できるってもの。

 

「と、いうわけで今は4月も頭。ゴールドシップのローテーションは?」

「5月には天皇賞、6月には宝塚記念だ、気張って行けよ」

「あたぼうよ!」

「んで、フクキタルは......皐月賞申し込みにはちょっと間に合わなかったね」

「いえ、素敵な仲間に出会えたことこそ幸運なのです!」

 

 両手を上げて喜んでくれているのは良いが、なにせ一生に一度のクラシックレースを逃してしまうのは少しショックだろう。というのも、彼女のデビュー戦が昨年11月末。そこからトレーナー代わりのゴタゴタで出走どころではなかったらしく、最後になんとか3月の未勝利戦を勝ったはいいが、皐月賞に出走するには時間も実績も足りなかった。

こちらの不手際では無いとはいえども、影響が出ないか心配なところではある。だが、まだレースは残ってる。

 

「ともかく次の目標はダービー! そして菊花賞だ!」

「ふおお、クラシック路線の王道ですね!」

「来月には日本ダービーのトライアルレースもあるからな。そこを見据えて、頑張っていこう」

「はいっ!」

「で、私らはどうする? 今年からデビューか?」

「それは俺から答えよう。デビューは来年以降だ」

「「ハァ?!」」

「だろォな」

 

 スカーレットとウオッカは納得いかない様子だが、シャカールは納得しているようだ。とりあえずその真意をと無言で続きを促す。

 

「選抜レースに昨日のマッチレース。たしかに素晴らしいものだったさ。だけどな、まだ純粋に身体が出来てない。

スカーレット。コーナー含めて無駄が多すぎる。もっと短いコースどりが出来れば最終直線でへばることはなかったはずだ。

ウオッカ、ペース配分を乱されすぎ。それにスタミナ不足だ。

シャカールはもっと社交的になれ。あと右によれるくせを直さないとロスが多すぎる。他にも3人とも走るフォームや身体の使い方も良いとはいえない。確かに素質はあるのは認めるが磨かなければただの宝の持ち腐れだ。

この1年で自分の持ち味と弱点を理解して、デビューに備えること、いいな?」

「わかりました」

「はーい」

「当然だな」

 

 納得してくれたようで何より、とうなづいているとトレーナーがこんな言葉を。

 

「んじゃ、フクキタルのことはお前に一任する。頑張れよ」

「一緒に頑張りましょう、トレーナーさん!」

「え、一緒にやってくれるんじゃないんですか?」

「お前も新米とはいえいっぱしのトレーナーだろ。1人くらい担当して見せろ。相談には乗ってやるから」

「あの、養成期間とか」

「ねーよんなもん」

「ハイ......」

 

すげなく断られてしまった。

 

 クラシック戦線。三冠路線ともいうこれは半数以上のウマ娘が目指すレース目標のことだ。クラス分けによって少し違うが、フクキタルのクラスはAクラス。

つまり皐月賞、日本優駿(ダービー)、菊花賞。

ウオッカとスカーレットはBクラスなので、

桜花賞、日本優駿牝馬(オークス)、秋華賞。

 基本的には中距離〜長距離の適性を求められるレースだが、問題なのはこのレースは『挑めるのは一度だけ』。デビューして2年目の4月から始まる人生で一度きりのレースなのだから。

記念や天皇賞、宝塚にジャパンC(カップ)

成績さえ残せば挑める大舞台とは違う、一度きりの舞台。

あそこには独特の緊張感がある。一度きりの、勝つならばミスは許されない、ノーミスでなければならないという緊張感と初めて大勢の歓声を受けながら走る経験は後にも先にもあそこだけだ。

 私はそのプレッシャーに負けて散々だったし、同期に化け物がいたおかげで本調子でどうにかなったかは怪しいところだけれど。

 

「......ダービーの2400mってのは意外と長いよ。まずは走り込みからいこうか」

「わっかりました! 今日のラッキーナンバーは48なので48周してきます!」

「そこまでしなくともいい!」

 

 トレーナーになくて私にあるもの。それは経験だ。ターフを実際にかけた肌で感じたレース勘。伝えられる全部をフクキタルに伝えていこう。

 

「それはそれとして毎回担いでるパンパンのカバンの中身はなんなの?」

「開運グッズですっ!」

「......そんなに?」

「大丈夫です、1割くらいはこの部屋に置くように持ってきたものですから!」

 

いそいそとトレーナー室の机やロッカーの上によくわからない置物や手のひらサイズの招き猫を置き始めたフクキタル。

トレーナーって私生活の指導もしたほうがいいのかな......?

 

 

 

 

 

 

 

 

「シラオキ......シラオキ......ダメだ。何も出てこない」

 

 フクキタルがよく言っている「シラオキ様」とやら。神社で拝むから実在する神様かと思い、練習後に資料を漁ったりインターネットで検索をかけたが何も出てこない。私の記憶にも無い以上、多分フクキタルか前のトレーナーが自力で編み出したテキトーな宗教なんじゃなかろうか。

 

その割には敬虔すぎるきらいがあると思う。前のトレーナーが神社の後継ぎ、というから無いわけでは無いが、それだったら実在の神様を信仰させるのが筋ってもんだろう。賀茂神社とか、ウマ娘を守護する神様を祀る神社も少なく無いわけだし。

 

それに関連してか、フクキタルはよく占いをする。

不安がある時は朝の星座占いを見たり、年末年始におみくじを引いたり、ちょっぴり迷信やジンクスを信じたりすることは私にもある。だがフクキタルのそれは異常なまでに信心深い。やることなすこと全部に水晶玉を眺めたり鉛筆を転がしてお伺いを立てるのは流石にいかがなものか。

 それとなく注意をするのは簡単だが、それが彼女のモチベーションになるのであれば咎めないほうが吉だろう、か。

 

わからない。

 

レースってのは誰かに頼りきりで勝てるものでも無い。

確固たる心の強さ、根性、負けん気。実力が同じならそう言ったものが勝敗を分けるのだ。先日のウオッカとスカーレットのように。彼女は一度敗北し、そこから這い上がる負けん気、1番を求める自分への直向きさがあったから頑張れていた。

それを『シラオキ様』なんて外部に求めるのはいかがなものかと思う。彼女は自分で勝ちたいと真に思っているのか、それがわからない。

 

 わからないままクラシックに臨むのは嫌だが、ダービーはすぐそこだ。それまでの2ヶ月と特訓合宿。そこで仲良くなって、いつか問いただせるようになれば良いのだけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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