きんいろモザイク ステイ・ハニーズ!!   作:しゅみタロス

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Lesson12 追いかけ続けた理想

夏になる度に、思い出してしまう。

 

俺がまだこの家で二人で暮らしていた時の事を。

 

思えば、俺の理想を信じてくれたのは、いつもあの人だった。

 

 

 

 

2年前

 

響也「全く、相変わらず缶コーヒー何本飲んでんだよ?」

 

俺は木ノ瀬響也、中学2年生。

 

この武家屋敷で一人家事をこなし、勉強と人助けに精を出す。正義の味方になりたい、ただの中二病ヲタクだ。

 

???「ああ、暑い暑い。とても外には居られんなぁ。響也、あずきボーまだあるか?」

響也「じいちゃん、今日でアイス3本目。今日という今日はダメだからな!!」

 

この白毛のメガネのじいちゃん、木ノ瀬・J・エドワード、通称エド爺さん。俺の祖父にして、イギリスから日本で暮らしているお気楽じいちゃん。

 

この武家屋敷の本来の持ち主だ。

 

エド「うー、仕方ないなぁ。それならキンキンに冷えた缶コーヒーを……」

響也「缶コーヒーも今日はダメ!!ゴミ箱に空き缶が7本もあったぞ!!」

エド「じゃあ、わし何を飲めばいいんじゃ?」

響也「兎に角、缶コーヒーもアイスもダメ。そんなに暑いなら、ウーロン茶があるだろ?」

エド「じゃあ、それを頂こう」

響也「後1時間で昼飯だ、それまで何も食うなよ?」

 

こんな感じで、俺の近くには常に手に余るじいちゃんがいた。なんだかんだでこうしてきつく言ってるけど、俺にはとても大事な家族だった。

 

 

そもそも、俺の家系は代々日本酒造りの名所で、この武家屋敷には昔から大勢の職人が寝泊まりしながら酒を造る酒蔵だった。

 

今となっては時代も変わり、ここでの酒蔵は余り使われていない。両親が日本酒のブランドを元に起業し、今はこの街にある酒造工場の社長を務めているのだ。

 

当然、俺は一人になった所をじいちゃんは優しく俺を引き取ってくれた。その恩に報いるため、俺は日々、じいちゃんに無理をさせないよう、生活の家事全般を引き受けている。

 

この日はそうめんを啜りながら、お笑いテレビを見て楽しんでいた。

 

家事を一通り終えた俺は、柚子はちみつのサイダーを作り、夜涼みをしていた。

 

エド「良い風が来る、一日終えたご褒美じゃな」

響也「じいちゃんみたいにアイスとコールドドリンク過剰摂取してるのと違ってこっちは動きまくってるからな」

 

じいさんは苦笑いしながらも柚子はちみつのサイダーを夜空に当てる。

 

エド「紫の夜空に、黄金色が映えるな」

 

サイダーを飲み、空を見上げるじいさんは俺に教えてくれた。

 

エド「響也、正義の味方になりたいと、頑張ってるようじゃな」

響也「正義の味方になって、誰か困ってる人を助けたい」

 

じいさんは俺にじっと見つめた。

 

エド「いいかい、世の中には正義の味方が絶対に忘れてはいけない大事な物が3つある」

響也「3つの、大事な事……」

 

エド「そうだよ、一つは強さ、誰にも負けない、挫けない強さ。二つ目は優しさ、誰にでも手を差し伸べる、相手を理解する事。そして三つ目は気持ちだ。心の底から誰かの幸せを願い、笑顔を見せる事。この3つを持ち、自ら進んで実行する勇気を持つ者を……

 

本当の意味で、正義の味方と呼ぶんじゃよ」

 

響也「強さ、優しさ、気持ち、それが正義の味方の定義か」

 

エドは響也の胸を叩き、告げる。

 

エド「心配すること無いよ、響也の心には、既にその3つを体現するだけの意思がある。これから起こる事も、きっと響也なら大丈夫じゃ」

 

じいちゃんの教えてくれた正義の味方に必要な物、それが自分にあるのなら。

 

響也「じいちゃん、俺、じいちゃんの言葉を忘れない、立派な正義の味方になる。そしてじいちゃんをビックリさせてやるからな!!」

エド「そうかそうか、期待しておるぞ」

 

 

あの夏が過ぎた12月……

 

 

じいちゃんは、俺の前で亡くなってしまった。

 

それでも泣く事はしなかった、じいちゃんの教えてくれた正義を、貫くために。

 

 

 

そして現在

 

切「本当にすまないね、頼み込んでしまって」

響也「このぐらい任せてくださいよ、頼まれた事は断らない主義なんで、よし、出来た」

 

夏季大会のPVの編集を荒沢先輩に頼まれ、3時間ぐらいパソコンの前で集中していた俺に、荒沢先輩は缶コーヒーを渡す。

 

切「お疲れ様、助かったよ」

 

キンキンに冷えた缶コーヒー、じいちゃんが一番好きだったクリームカフェオレだ。少し思い出すと缶を開けて喉に流し込んだ。

 

切「気になってはいたが、今頃、皆は夏休みを謳歌しているのに、何故君は頼まれ事を引き受けてしまうのか?理解出来ないな、君も遊びたいだろう?」

 

俺は缶コーヒーの缶をゴミ箱に捨て、荒沢先輩に告げた。

 

響也「正義の味方になりたい、誰でも守り、誰でも救い、誰でも幸せにする。それじゃあ、おかしいですか?」

 

荒沢先輩のキョトンとした反応に少し、滑った感じがしたがすぐに理解してくれた。

 

切「正義の味方、悪くないと思うよ。誰かの為に行動を起こせるってすごく大事だからね」

響也「正義の味方は俺の夢だから」

 

じいちゃんの残してくれた俺の正義の意味、これから進んでいく未来に最も大切な意味だ。

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