俺だけにウマ娘のステータス画面が見えている 作:酒池肉林太郎
読者の皆様に大事なお知らせがあります。
トウカイテイオー②に出てくるセリフの「デーモンの召喚でも召喚すんの?」は誤字ではありません。
あと来週ぐらいには更新するので許して下さい。
「────それではこれで以上となります。ご協力ありがとうございました」
ダークブラウンの髪をした女性は軽く頭を下げて、録音機の電源をオフにした。
白っぽいグレーのパンツスーツを着こなす彼女は月刊トゥインクルに在籍するジャーナリストの一人。
名を乙名史悦子といって、今日は彼女のインタビューを受ける約束の日だった。内容はサイレンススズカを指導した2ヶ月間の出来事と、先日のデビュー戦の話に終始していた。
場所は部室棟の一室。
先日のデビュー戦の快勝を聞いて喜んだ理事長がつい先日俺達の為に割り当ててくれた部室だ。
本来少人数に与えられるものではないが、今後必要になるという理由で少し早めに頂くことになった。当然だが今のところ俺とサイレンススズカ以外使用する者はいない。
「すみません。お休みなのにわざわざ出向いていただいて」
「いえ、日程はこちらが指定したことですから」
今日は日曜。
サイレンススズカはオフにしているので朝から自分の仕事に没頭していた。
あいつの特殊な運動性能は研究していて飽きない。練習メニューのクオリティ向上にも繋がる。半分趣味みたいな領域の話なので特にストレスが溜まることはない。
「でも、今日貴方と久々にお会い出来て良かったです。正直、以前より元気そうでホッとしました」
「そうですか?」
「ええ。冬の頃はその、私事で大変だったかと思いますので」
乙名史さんはそう言ってどことなく憂いを孕んだ笑顔を浮かべた。
彼女は親族、友人以外で俺のプライベートを知る数少ない人間の一人だ。数年前くらいから俺のためだけにアメリカにちょくちょく取材に来ていたので自然と親しくなった。
実際あの騒動の渦中、乙名史さんにはかなりお世話になった。この人があれこれ情報を流してくれなければ恐らくブン屋に捕まって世間の晒し者にされていた可能性が高い。
そもそも俺のネタをどこかの雑誌に売れば大きな金になっただろうに、この人も変わり者だ。その恩もあって乙名史さんからの依頼には積極的に応えるようにしている。
「そういえばトレーナーさん。確かお誕生日は5月の始めでしたよね?」
荷物をまとめて帰り支度をしている途中、乙名史さんがふと思い出したように問いかけた。
「そう、ですね」
あまり意識していなかったが言われてみればもう二十歳か。どうでもいいが。
「どうですか?せっかく飲めるお歳になったのですから、今度ご一緒にお酒でも」
余裕があるなら断る理由は無いが、今はサイレンススズカのレースの関係で時期が悪い。一勝一勝が重く響く以上、慎重にレースに当たらなければいけない。
「すみません。ここ最近は少し忙しくて」
「大丈夫ですよ。お暇になった時でいいですから。また連絡します」
乙名史さんは「楽しみにしていますね」と言い残して部室を後にする。部屋には薄い香水の匂いだけが残っていた。
あの人もまた、俺が立ち直り、もう一度トレーナーを志し始めたと信じているのだろう。
それとも気付いた上で接しているのか。
ウマ娘と向き合っていると、やはりふとしたきっかけで昔を思い出す。情けない話だがこの感覚はどうにも慣れる気がしない。デスクワークだけは心労なく取り組めたのは不幸中の幸いだった。
それに、理事長から話を合わせてくれと頼まれたあの件もある。
俺は一体、いつまでこの下らない嘘で周囲を騙し続けるつもりなのだろうか。
サイレンススズカが俺を当てにして練習に取り組んでる以上、辞めるなら心の整理をつけさせる時間は必要だ。数ヶ月か、半年か。下手すればあいつはまた調子を落とす。
…やめよう。
こんなこと今考えても仕方がない。
とにかく俺の責務はあいつを誰に任せても良いくらいの調子に仕上げることだ。
退職の話はそこから考えても遅くはない。
時計はまだ昼の2時を指している。
キリのいいところまで仕事を終わらせるには十分な時間だ。
向こう1年間のサイレンススズカのレーススケジュールをより緻密に組むとしよう。
既に一本本命の予定は立てているが、今後の細かい勝ち負けまで想定して賞金額を計算し出場出来るレースを取捨選択すれば、G1までのルートがもう何本か増える筈だ。
○
思ったより早く終わってしまった。
まだ3時にもなっていない。
チェックも済んだのでこれ以上は修正しようもない。
後やることは次のレースの情報収集くらいか。
次は7月のマイルに出す予定だ。
距離は1600m。
普通にやれば今の時点で既に勝てるだろうがどうせならこの上なく気持ち良く勝たせてやりたい。
スタートダッシュは引き続き洗練させていくとして今回はFO筋を上乗せして加速度を上げる方向で行く。
距離が短くなればなるほど最高速度に到達するまでの時間が肝だ。
大差での勝利を重ねればその自信はより確固たるものになるだろう。多少のことでは動じなくなる筈だ。今のあいつに必要なのは固い勝利であることに間違いない。
その辺を踏まえると練習メニューは高負荷トレーニングに偏重した方がいい。
となると────。
「ん?」
不意に部室の外に妙な気配を感じた。
変なものが視えるせいか俺はウマ娘の存在には割と敏感だ。今までは気がつかなかったが、確実に外の廊下に誰かいる。
俺は悟られないように息を殺してそいつがいるであろう場所の窓をピンポイントで開いた。
「何か用か」
「ひッ!?」
余程驚いたのだろうか。
窓の下に隠れていたそいつのウマ耳が跳ねる。
誰かと思えばトウカイテイオーだ。
見つかるのは想定外だったのか冷や汗まで流している。
「な、なんでボクがいるって分かったの…?」
「何してんだお前…」
「べ、別にぃー?どこにいようとボクの勝手じゃん」
「正直に言わないと生徒会長に報告するぞ」
短くそれだけ伝えるとトウカイテイオーは顔面を真っ青に染め上げた。
「や、や、やめて。お願い。カイチョーに嫌われたらボク死んじゃう」
「なら言えばいいだろ」
「怒らない…?」
「怒らないから」
実際俺は子供の悪戯など歯牙にも掛けない。
理由は大人だからだ。
そこまで予防線を張ってやるとトウカイテイオーも流石に観念したのか、気まずそうな顔でポツポツと語り始めた。
「誰もいない校舎でキミが綺麗な女の人と会ってたの見かけたからさ。気になって尾けたんだ」
…ああ?
「いや、なんでそうなる」
さっぱり意味が分からん。
「うん。なんでもいいから弱みを握りたかったんだ。たとえ、どんな些細なことでも」
ぶっ殺すぞお前。
「お、怒らないって言ったじゃんかぁ…!」
自分の表情筋が強張っていることを自覚する。
感情が顔に出ていたか。
だが怒って当然だろう。
どんな家庭で育てばこんな悪魔に仕上がるんだ。
「そんなことやって何の意味がある」
「何で!?この前カイチョーをいじめたことをもう忘れたの!?」
いじめたって、まさか入学式の翌日のあれのことを言ってるのか。確かにこいつとの接点はそれ以外考えられない。そう言えば頭を下げるシンボリルドルフの横で俺にガンを飛ばしていた気がする。
「あれの仕返しをしたくてわざわざ盗み聞きなんかしたのか?」
「そうだよ!悪い!?カイチョーの失われた尊厳は後輩のボクが取り戻さなきゃいけないの!そもそも本当ならカイチョーはお前になんか────」
「ん?」
「え?」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………あっ。と、トレーナーさんなんかには!負けないんだからなぁ!」
まあいい。
乙名史さんとのインタビューは聞かれて困るような話はしていない。精々最後の雑談くらいだがあの程度なら問題ないだろう。
「あの賭けは俺が勝って当然なんだ。俺がウマ娘に絶対走りで勝てないのと同じだ。負けたからってそれであいつがどうこうなる訳じゃない」
今思えば俺も無駄にあいつに恥をかかせるような真似したのもよくなかった。今度会った時、素直に謝ろう。
「シンボリルドルフは紛れもなく日本を代表するウマ娘の一人だ。お前が思ってる通り、俺よりずっと偉大な奴なのは間違いない」
それを聞いたトウカイテイオーは苦悶の表情から一転して露骨に顔を綻ばせた。
「そ、そーでしょーそーでしょー!?カイチョーは凄いんだぞー!カイチョーはボクよりずーっと速くて頭が良くて、その上トレセン学園の生徒会長なんだよ!子供の頃からボクの憧れの人なんだ!」
いきなり饒舌になったな。
今までの会話をすっ飛ばして一気にシンボリルドルフの話に移行している。
「ねえ知ってる!?カイチョーはデビュー戦から凄かったんだよ!初戦から1番人気で注目の的!流石だよね!」
「新潟の短距離か」
「ほほーう!よく知ってるねトレーナー!さてはキミもカイチョーのファンだなー!?だったら初年度を三戦三勝で収めたカイチョーが出た翌年最初のレースは何か分かる!?」
「確か中山の…」
「そう!弥生賞!正解だよ!いいねいいね!なんだぜんぜん詳しいじゃん!当然だけどやっぱりボク以外にもカイチョーのファンって沢山いるんだなって実感が湧くよ!ボクが1番のファンなのは変わらないけどさ!それはそうと三戦目のレースを朝日ではなく敢えて11月のオープン競争に出バした理由は勿論知ってるよね!?」
「…取り敢えず廊下だと目立つから中に入れ」
「そうだね!ここだと落ち着いて話せないもんね!」
自分のことのように誇らしげに話すトウカイテイオーは思った以上に彼女に心酔してるようだった。
シンボリルドルフの成績なら大体知ってるが、何か実りある情報も聞けるかもしれない。
俺への怒りを忘れるほどに夢中のようだし、このまま話を聞いていればこいつの溜飲も下がるだろう。
○
「────で、カイチョーは結局負けなしのままクラシック三冠を制覇しちゃったんだよ!?当時だってとっても強いライバルがたくさんいたのに!凄いでしょ凄いでしょ!?」
長い。
もう1時間以上ずっと喋りっぱなしだ。
どれだけシンボリルドルフが好きなんだこいつは。
確かに俺に食ってかかるのも頷ける尊敬具合だ。
「ボクもデビューしたらいつかは無敗の三冠ウマ娘になって、カイチョーにいーっぱい褒めてもらうんだ!いいでしょー!?」
「そうだな」
トウカイテイオーは俺の生返事にも特に気にする様子もなく舌を回し続けた。
少し、というか結構疲れた。
俺は会話の途中でデスクから立ち上がって、給湯器の方へと足を伸ばした。
「ん?どしたの?」
「飲み物淹れてやるからちょっと待ってろ」
「わー!ありがとー!ちょうど喉乾いてたんだよねー!」
紙コップを用意し、インスタントコーヒーを棚から取り出す。その間でさえも、トウカイテイオーは止まることなくシンボリルドルフの話題を俺に振り続けた。
「ほら。熱いから気をつけろ」
テイオーの手元に紙コップを差し出すと、彼女は訝しげな顔で中の液体を覗き込んだ。
「んー?これコーヒー?」
「ああ」
見れば分かるだろう。
しかしなんだそのキョトンとした顔は。
「ああ、砂糖か」
人に振る舞う機会なんてそうそうないから完全に忘れていた。いや、そもそもこいつにコーヒーを出すこと自体が間違いだった。無難に緑茶にすれば良かったか。
「いいよいいよ。ボクくらいのウマ娘だとブラックくらいが丁度いいのさ。前々から飲んでみたかったんだよね。カイチョーも好きみたいだし」
トウカイテイオーは得意げにそう言って、勢いよくカップを傾けた。
「ん"っ」
低い声を漏らしてぶるぶると震えながら紙コップをテーブルに戻す。まるで毒を飲んだみたいな顔だ。
「大丈夫か?」
「う"…う"ん………お"っ、お"っ、美味しいよ」
「ココアにするか」
「そ、そうだねー!コーヒーも悪くないけど疲れた時はやっぱり甘いものだよねー!ほら、ボク今日は自主トレしてたからさー!」
「さっきのインスタントコーヒーも、少し古かったのかもな」
「あ、やっぱり?なーんかちょっと違和感あったんだよね〜。ま、あれはあれで悪くないと思うよぼかぁね」
口直しの為にココアを作って、乙名史さんから頂いた茶菓子を出してやるとトウカイテイオーは喜んでペロリと平らげた。俺の分まで。
○
「それでそれでね────」
「すごい」
あれから更に1時間が経過した。
依然としてトウカイテイオーのシンボリルドルフ語りの勢いは衰える様子はない。
結局大人しかったのは菓子を食っていた時だけだった。もう夕方だ。
「加速するときのカイチョーのストライドは豪快なんだよ!ボクは後輩だからたまーにカイチョーのレースのスロー映像を見せて貰えるんだ!こうやって、足幅を大きく広げてね!」
「おいトウカイテイオー。そろそろ────」
帰れと、そう伝えようとした瞬間。
その場でダッシュ走の真似事をするトウカイテイオーを目の当たりにして、ふとあることに気付いた。
「お前、捻挫でもしたのか?」
「え?」
ピタリ、と。
それまで騒がしかったトウカイテイオーが意外なほどに大人しくなる。目を丸くして俺を見つめていた。
「あ、うん。結構前の話だけど。え?何で分かったの?」
「よく見れば俺じゃなくても分かる」
「…ふーん。そんなもんなの?」
「そんなもんだ」
デスクから立ち上がり、トウカイテイオーに歩み寄って、足首がよく見える位置まで身体を屈ませる。
「少し診てもいいか?」
「えー?変なとこ触らない?」
「触らないから」
トウカイテイオーのジャージのズボンを膝まで捲り上げ、靴と靴下を脱がす。そのまま足首に片手を添えて、角度を変えながら円を描くように回した。
「中途半端に治して練習しただろ」
「んー、どうだったかな…。でも今は全然痛くないよー?」
「いや、可動域が狭くなってる」
「そうなの?」
「距骨押さえてやるからそのまま膝だけ前に出してみろ」
「きょこつ?」
「取り敢えず俺が言う通りに足を動かせ」
足首の中央辺りの骨を指で押し込んで固定する。
トウカイテイオーは俺に言われた通りに片膝立ちの姿勢のまま、固定されていた方の膝を前に突き出した。
「こんな感じ?」
「そうだ。そのまま何回か繰り返せ」
「ん」
そのまま数度のストレッチを終えて、トウカイテイオーは確かめるように足首をぐるぐると回した。
「あ、本当だ。さっきより曲がる」
「一時的にだ」
そもそもの話、今の症状は人間だったら運動している内に自然と快調する。ウマ娘の肉体的構造が未だに完全には解明されてないが故に生じる不具合の一つだ。
「けど毎日やればそのうち治る。風呂上がりに柔軟やっといて損はない。担当に習わなかったのか?」
「まだトレーナーいないんだよね〜。ボクのお眼鏡にかなう凄腕は中々見つからないの、さ」
やれやれと言わんばかりに肩をすくめるトウカイテイオー。
言い方は少しアレだが確かに素質は本物だ。
こいつの走行能力はサイレンススズカにも引けを取らない。
俺が知ってる限りではデビュー前の選手でこのポテンシャルはサイレンススズカ、トウカイテイオーを含めるとトレセン学園には四人ぐらいしかいなかった。
メジロ家の令嬢と、あと名前は忘れたが北海道訛りの中等部の生徒。この前サイレンススズカがデビューしたので今は三人だが。
「あーあ。どこかに良い指導者いないかなー。ねえねえ、トレーナー、誰かいい人紹介してよ」
「だったらSさんとかどうだ。面倒見はいいぞ」
というか教員の中で親しいのはあの人ぐらいか。
同期の桐生院さんとはあまり話す機会がないのでよく知らない。誘われた飲み会にも忙しかったので顔を出していない。悪い人ではないと思うが。
「あのお姉さんちょっと怖いんだよね〜。性格的にはもっとゆるい方がいいかな〜」
「取り敢えずさっさと指導者は見つけといた方がいいぞ」
「ていうかなんだったらキミがさー…」
トウカイテイオーのぼやきを他所に、本棚の中から比較的薄い本を一冊取り出す。
ストレッチに関する書籍だ。
もっと本格的なやつでもいいがまずはこの辺からの方がとっつき易いだろう。
「やる。気が向いた時に見とけ」
「え?いいの?」
「ああ。とにかく身体には気を付けろ。あのまま走ってたら多分怪我してたぞ」
「あ、ありがと…」
素直に礼を言われたのは少し意外だった。
以前はその悪辣な態度から目の前で上履きを木っ端微塵にしてやろうかとさえ思ったが話してみると案外普通だ。この前は少し興奮していただけで悪い奴ではないかも知れない。
「でも、流石にトレーナーなだけあって難しそうな本が一杯だね」
「意外と読み易いものも多い」
「ふうん?こんなにたくさん本があるなら、一冊ぐらいえっちな本あるんじゃないの〜?トレーナー、意外とムッツリそうな顔してるもんね〜。抜き打ちでチェックしちゃおっかな〜」
頼むから俺にお前の上履きを木っ端微塵にさせないでくれ。
「あんまり散らかすなよ」
「分かってるって。お、なんか古文書っぽいのあるじゃんなにこれ〜?デーモンの召喚でも召喚するの?」
トウカイテイオーが棚から抜き取ったそれは、古ぼけた分厚いハードカバーだった。
それを見て、俺自身驚きを隠せなかった。
自宅に保管していたものだ。
間違えて部室まで持って来たのだろう。
部室に物を持ってくる時は確かにバタバタしていたが、迂闊だった。
「えーとなになに?循環呼吸器……系?」
「トウカイテイオー、それは」
「あ、ご、ごめん。大切なやつだった?」
俺がなにか注意するまでもなく、トウカイテイオーはあっさりと手に持っていたそれを優しく棚に戻した。俺の雰囲気が変わったのを瞬時に察したのか。意外にも鋭い。
「………なんか今の、レースとあんまり関係なさそうだったけど、トレーナーってあんなことも勉強しなきゃいけないの?」
「いや、最初は医者を目指してたから、その時の名残りだ」
「そうなの?途中で気が変わってトレーナーになりたくなったってこと?」
「そうだ」
「ふーん。なんで?」
「学費とか学力的な問題とか、色々あるんだよ大人には」
「大人って言っても、トレーナーまだ19歳なんでしょ?カイチョーが言ってたよ」
「今はもう二十歳だ」
「えー。それでも大人かなぁ〜?」
尤もだ。
耳が痛いことを言う。
「そうだな。まだ子供だ」
聞こえないように呟く。
〝また遊びに来るからねー!今度ゲーム持って来るから一緒にやろうよ!ばいばーい!〟
ひとしきり話したいことを話せて満足したのか、トウカイテイオーは6時ごろになるとあっさりと帰って行った。
結局茶菓子を食い散らからすだけ食い散らかして行ったが、前みたいに悪態をつかれるよりはマシだ。そもそもあいつ、なんで初対面の俺を敵視していたのか。大方シンボリルドルフに合わせたのだろう。
となるとあの生徒会長に疑問が向くことになるが、まあ、あの状態のサイレンススズカに辞退で揉めた奴が担当になればそりゃ不安にもなるだろうとしか言えない。
「片付けるか…」
テーブルに残されたコップを回収しながら、ふと思う。
先週理事長から貰ったコーヒーやお茶の詰め合わせだけでは今後足りなくなりそうだし、次の休日にでも色々買い足しておくとしよう。
サイレンススズカが好きな銘柄も聞いておくのもいいかもしれない。