僕のヒーローアカデミア 《異世界帰りの緑谷出久》 作:青龍の鎧
受験から1週間が経ち、僕は焼き魚と見つめ合っていた。
「出久?出久?ちょっと大丈夫?何魚と微笑み合ってんの?」
そんな僕にお母さんは当然心配の声をかける。
僕は「ああっごめん 大丈夫!」と気を取り戻し、その魚を食べた。
試験が終わり合格発表を待つ日々の中、僕は試験の立ち回りを振り返りながら、ボンヤリと筋トレをしながら過ごしていた。
筆記の方は自己採点でギリギリ合格ラインを超えていた。
問題は、実技試験。
僕の実技の最終点数は40ポイント。
果たしてそれは合格ラインなのかどうなのか、よくわからない不安があった。
あの、きらめいてる人の言葉が今になって響く。
『これは試験。そんな甘さじゃ…二度と君と会う事はなさそうだ』
………40点じゃ、あり得なくもないかもしれない。
そもそも高得点なのかどうか分からないし。
それと、あの時の優しい女の子と真面目な男の人。
僕は、脚の治療を終えた後、優しい女の子と真面目な男の人を探そうとしたけど、結局名前を知らなかったのもあり、その人達と会う事ができずにお礼と謝罪を言いそびれてしまった。
そして極め付けは、"実力を、発揮しきれなかった"という反省と後悔だ。
その原因の一つは、人助けをついつい優先してしまった事……それは違う。
だけど、それを引き換えても無用な手助けが全くなかった訳じゃなく…「余計な気回すな!」とか、「大きなお世話だ」、「鬱陶しい」と他の受験者に言われたけど、ヒーローになるのならば、後悔してはいけない事だと思っている。
大いに反省しないといけないのは、巨大な機械ヴィランと戦った時。
身体の強化する部分を間違えた事だ。
もしこれが脚じゃなくて腕だったら、まだ着地は一人でどうにかできたと思う。
アレは本当にあの女の子の助けがなかったら、今頃……
僕はその女の子に凄惨なトラウマを与えてたかもしれないと、僕の後悔と反省は、更に気を重くした。
誰かに相談しようか考えていたが、焦凍くんは雄英の入学式で会おうと約束したばかりで、凍花は……
とにかく、僕の方からは連絡しずらく、オールマイトとは入試以降連絡がつかなくなった。
「出久は本当によく頑張ったわよ。たまには前向きになってみたら?」
オールマイトとのことは母にも話していない。
いや、"アルコールの襲撃事件"の日に僕の送迎の際に、一度トゥルーフォームで会ったぐらいだ。
異世界誘拐事件の重要参考人なのが僕である事を塚内さんと、自身の正体を明かしていないトゥルーフォームのオールマイトがお母さんによく説明していた。
お母さんは事の大きさの衝撃と驚きの余り、膝からがっくり崩れ落ちていた。でもその後、お母さんは微笑んで、
『これで行方不明になった人達やその家族が救われるかもしれないんですね?』と言った。
オールマイトと塚内さんは、「必ず」と強い決意の表情で微笑み返した。
その後、お母さんに『出久はやっぱり"ヒーロー"だったんだ』と涙ながらに呟いていたのを聞いてしまい、昔の事を思い出しつつ僕の目頭に涙が溜まった。
それでもオールマイトの正体とその本人とよく会っている事は、お母さんには話していない。
トゥルーフォームのオールマイトはお母さんに、自身の本名"八木俊典"と名乗って僕のコーチを務める事になった事だけは明かしていた。
ちなみにオールマイトの本名は、世間に公開しておらず、今回伝えたのはお母さんだけだったので一人だけなら本名を明かしても問題ないらしい。
でも結局、出来れば他言無用でと頭を下げてお願いしていたので、できる限り自分の情報が漏れるのはオールマイト本人は避けたい事らしい。
彼が平和の象徴であり続けるため隠し通してきた秘密。たとえ家族だろうとばらしていいはずがなかったから。
オールマイト…せっかく見初めてくれたのに無様な立ち回りばかりして、ごめんなさい。
反省と後悔は沢山ある。
でも、みんなを助け回った事だけは何があっても間違っていないし後悔はしたくない。
正しいと思う事をしたんだって……
オールマイト…あなたは…
「いずずずずずずずず…出久!来てたよ!」
その時、お母さんが慌てて僕の所に来た。
そう、合格発表の通知が来たのだ。
僕は合格通知の封筒を開けた。
そこには一枚のプリントと、機械が入っていた。
その機械から映像が出されて、そこに映っていたのは……
『私が、投映されたァ!!』
「うわぁ!」
黄色いスーツを着こなすオールマイトの姿だった。
『もろもろ手続きに時間がかかって連絡取れなくってね。いやすまない』
もろもろの手続き?
というより、何でオールマイトがここに!?
『実は私がこの街に来たのはほかでもない。雄英に勤めることになったからなんだ』
「オールマイトが雄英に!?」
あのオールマイトが雄英の、"教師"になるなんて!!
いきなりの事実に驚愕する僕を他所に、映像は続いていく。
何やら、ひとりひとり映像で合否発表しているらしい会話が聞こえた。
オールマイトの体力は大丈夫なのかと不安を持ちつつ、オールマイトは試験の結果を告げる前に、
『少年、合格を告げる前にこのVTRをどうぞ!』
とあるVTRが再生された。
そこには、セーラー服を来た女の子。
色々と助けてもらったいい人が、プレゼントマイクの所に来ていた。
場所的に……職員室だ。
僕はあの日、そこまで探さなかった。
まさかそこにあの子がいると思わなかったから。
何でこんな所に?
『試験後に、君に伝言をお願いしたいと頼みに言ったそうだ』
伝言?
『あの~頭もっさもさの人…そばかすのあった…地味めの…』
(その特徴は間違いなく、僕だ)
『もし彼と話す機会があったら伝言をお願いしてもらっていいですか?私、これから彼にお礼を言う為にこれから探しに行くんですけど、もし会えなかったらと思うと……もう一度会えるかどうか不安で……』
彼女の表情は不安な顔をしていた。
僕にお礼を言えないのが嫌だという事が伝わってくる。
『OK!熱い想い、伝わったぜ女子リスナー!!それで、メッセージのコンテンツは?』
『はい。"助けてくれて、ありがとう!"と、彼に伝えて貰っても……いいですか?』
「!!」
僕は、余りに意外すぎる彼女の行動に衝撃が収まらなかった。
VTRが終了し、オールマイトの姿を映した映像に戻る。
『と、いうわけさ。それだけじゃない。君に助けられた他の受験者達も君にお礼をと伝言を頼む人が数人いた』
え!?
彼女の他に数人も!!??
『そんな、人助けを…正しいことをした人間を排斥しちまうヒーロー科などあってたまるかって話だよ。きれい事?上等さ!命を賭してきれい事実践するお仕事だ』
オールマイト……
『という訳で、レスキューポイント!!』
レスキューポイント!?
か、隠しポイントって事!!??
『しかも審査制。我々雄英が見ていたもう一つの基礎能力』
し、審査制。
僕が固唾を飲む中、
『"緑谷出久"85ポイント!!!!』
僕は、余りの圧巻の点数に空いた口が塞がらなかった。
『ついでに"麗日お茶子"45ポイント!』
いい人……麗日さんも点数を!
あの時、転落しかけた僕を助けたから!!
「む、むちゃくちゃだよ……」
僕は力なく呟く中、オールマイトは力強く手を差し伸べた。
『合格だってさ』
多くの後悔があった。
でも、オールマイトとの出会いをキッカケに多くの人に助けられて…僕の人生は変化する。
『来いよ、緑谷少年!
反省はある。課題もある。
でも、僕の取った行動の後悔は……消えていた。
ここから始まるんだ!
夢を掴む為の、高校生活を!!
僕は溜まった涙を拭き、
「っっはい!!!」
力強く返事した。
10話『夢の始まり』
そして、合格通知開封の翌日8:00。
オールマイトから連絡が来て海浜公園へ…
「オールマイトォォォォ!!」
「誰ソレ!!」
そこにはオールマイト以外に他の人達もいた為、
「オールマイト!?うっそ!?どこ!?」
当然この反応になった。
「リピートアフタミー!「人違いでした」」
「人違いでした!!」
オールマイトはトゥルーフォームの状態なので、僕に人違いだと言うように促し、僕もそれに応えた。
どうやら、この公園はデートスポットに最適な場所になったらしい。
"綺麗にしたのは一体誰か?"という謎は残っているが。
「合格おめでとう」
僕とオールマイトはハイタッチをして合格を喜んだ。
「一応、言っておくが学校には君との接点は話していないし私自身、審査もやっていない。君、そういうズルを気にするタイプだろ?」
「お気遣い、ありがとうございます…」
それにしても、オールマイトは審査をしていない。
つまり、あの85ポイントは正真正銘、僕の力で?
いや、そんな事よりだ。
「でもオールマイトが雄英の先生だなんて驚いちゃいました。だってオールマイトの事務所は東京都港区六本木の…」
「やめなさい!」
何故かオールマイトに引き気味に止められてしまった。
「学校側から発表されるまで他言はできなかったからね。後継を探していた折に雄英側からたまたまご依頼があったのさ」
「そ、そうだったんですか……」
本当は生徒の中から選ぶ予定だったんだ。
個性あふれる実力者たちから……
それなのにオールマイトは、僕を……
「さて、緑谷少年。君自身は今回の試験、どうだったかな?」
オールマイトは僕に今回の試験の自己評価を聞いてきた。
僕は、あれから様々な事を振り返って……
「実力を、完全に発揮できませんでした」
「……なる程」
オールマイトは否定しなかった。
やはり僕の動きが、ぎごちなかった事をしっかり見ていたのだろう。
「それだけじゃありません。必殺技を出す時のモーションの遅さ。機械ヴィランに出くわした時の反応速度の遅さ。援護のやり過ぎで逆に迷惑がられたのは忘れてはいけない事実。しかも巨大な機械ヴィランを天空で倒す際の判断ミスなどなど、全然ダメダメで…後、他にも」
「OK、STOPだ!!」
「そんな、他にもまだ……」
僕はまだ話し足りないと喋ろうとした時、オールマイトに片手で口を塞がれた。
「反省する事はヒーロー活動に於いて、本当に大事な事だ。しかし、反省ばかりして卑屈になりすぎるのはナンセンス!!」
「ナンセンス……」
「そうだとも。それ以前に君はまだまだヒーローの卵。失敗なんて当たり前なんだ。大事なのはその反省をどう乗り切るかって話と……」
反省を、どう乗り切るか……
「君に向けられた他者からの感謝の気持ちを後悔や反省はあれど、それはそれで、彼等の想いを素直に受け取められるかって話さ」
他者からの、感謝の気持ち。
「映像にも言ったが、君の起こした行動に感謝をした人達がいた。きっと感謝を伝えたいと思った彼等はその君のヒーローとしての心に共鳴し、例え何処であろうとも君が起こした行動を胸に秘めて、進んでいくだろう」
「僕の起こした行動を?」
オールマイトは人差し指で僕の胸を軽く突く。
「私と君の"個性"と似たようなものさ。そんな彼等の想いを、君はまさか無下になんかしないだろう?」
「そんな事、絶対に!!」
僕が即答すると、オールマイトはニッコリと笑った。
「そんな彼等に誇れるヒーローになる為に、君も強くなるのさ!これから、心と、力を!!」
「心と力……」
「それに、ワン・フォー・オールはまだ未完成!完成すれば、さらに君が出来ることが増えていくし、身体も心も強くなる!!こんな風に!!!」
そう言ってオールマイトはマッスルフォームに……
って、このタイミングだと!!
「待ってあれオールマイト!?」
「いつの間に!?」
やっぱり見られた!!
「不味い、行くぞ緑谷少年!!」
「は、はい!」
こうして、僕とオールマイトは夜の海岸を駆けていくのだった。
その最中、
「んん、渋いね」
「え?」
「何でもないさ」
オールマイトの独り言に、
(聖火のごとく譲渡した火はまだ火種。これから多くの雨風にさらされ大きくなっていく。そしてこっちはゆっくり衰え消え入り役目を終えるのさ…)
こんな渋い想いがあった事を僕は知らなかったのだった。
こうして、これから季節は春に……なる前に、ある人から連絡がきた。
それは"あの日"以来会っていなかった、轟 凍花からの連絡だった。
【焦凍と初めて会った場所で、君に会いたい】
そのメッセージを残して……
次回予告!!
私は君に謝りたい。
あの日、自分や家族…そして出久くんに嘘をついた事を。
そして、私は自分でも気づかなかった想いを、どうしても君に伝えたくなったの。
もうすぐ夢を叶える為の春が来る。
そうなったらこの"告白"はもう届かないかもしれない。
でも、その前に私は……君に、"私の想い"を!!
私は、出久くんの事が!!
更に向こうへ、Puls Ultra!!
この作品の異世界設定、色々と変えるべき?
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変えるべき!
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そのままでも大丈夫!