僕のヒーローアカデミア 《異世界帰りの緑谷出久》 作:青龍の鎧
果たして彼等の運命は…?
「にゃははははは!!緑谷出久。本当に生きてたとはにゃ」
「全くだ。お前を見かけた時はつい口が大きく空いちまった、チュッチュッチュ」
キャットムーブに、スティールマウス。
魔王軍幹部の一人が率いていた"ギフトビースト"の構成員。
何度か戦った事はあったけど、
まさか下着泥棒専門の怪盗だったなんて……
奴等と何回か激突した僕には信じられなかった。
それに、塚内さんの話だと奴等の見た目は元々……
そして、
「うぃっ、うぃっ、うぃ……だが、あの男のお陰であの女を何度も取り逃がしてんだよなぁ……うっぷ。まぁ、それは失敗して拷問くらった同僚の断末魔を元に聞いただけうっぷっ…」
チャッカマン・アルコール。
彼とは異世界では関わらなかったからよく分からない。
さっき塚内さんが言っていた、酒を使って人を殺す……恐らくもう一つの武器であるチャッカマンを酒に濡れた身体に着火させて燃やすのが奴の基本的な戦い方だと思うけど……
僕は塚内さんの方を見ると、彼は僕の目の前に右腕を上げて制止を求めた。
「緑谷くん、逃げるんだ。君に何かあったら……」
「ごめんなさい、塚内さん。でも、このまま逃げてしまったら…僕は!」
今すぐに飛び出したい。
そして捕まっている彼女を、今度こそ助けたい!
その感情が溢れていたのだから。
だけど、
「緑谷くん。厳し目に言わせてもらうけど今の君は"ヒーロー"じゃない。それどころかスタートラインにすら立っちゃいない……」
「でも、今この状況じゃ!」
「ダメだ!今、彼女が人質に取られているからこそ慎重に尚且つ判断を間違えてはいけない!それに、君の個性はまだ制御がまだまだ厳しい筈じゃないのかい?それで暴発したら?」
「そ…それは……!」
「頼む、緑谷くん。冷静になってくれ!!勇気と無謀を履き違えないでくれ!!」
塚内さんはそう苦しい表情で僕に懇願した。
それを聞いて、
………塚内さんの言う通りだ。
僕は納得してしまった。
だって、僕はまだヒーローのスタートラインにすら立っていない。
しかも個性は制御がまだまだ不安定。
しかも状況は一つ間違えたら即大惨事。
そんな素人の僕が動いたって事態が悪化するだけだ。
それで、彼女の命を落としてしまったら……
とはいえ…
僕は塚内さんにアルコールに聞こえないように小声で伝える。
「すみません、塚内さん。貴方の言う通りでした。でも、アイツらは僕を見逃してくれるかどうか…仮に逃してしまったら凍花が…」
「………」
「せめて戦い以外で…例えば会話とかで奴の動きをヒーローが来るまでの時間稼ぎなら……」
「そうだね。人質の事を考えるとそれが最善だ。ただし、奴に勝てるヒーローか彼女を確実に救えるヒーローが来るまでだからね?その時が来たら君を逃す。いいね?」
「はい、ありがとうございます」
僕は、せめてヒーローが来るまで時間稼ぎをしようとアイツらに様々な質問をしようと頭を振り絞って考えようとした時、
パァン!!
さっきの音が……!!
「ぐっ……いつの…ま……」
気づけば塚内さんはアルコールの持っていた武器で殴られ、昏倒してしまった。
「塚内さん!!!!」
僕は飛び出そうとしたが、
「動くな?女を殺すぞ?」
奴は既に濡れていた彼女に向けてチャッカマンをチラつかせた。
くそっ!
だけど殺人鬼であるアルコールとその二人は塚内さんに何もせず、ただ僕を見据えてほくそ笑んでいた。
奴等はあくまで凍花と僕を優先して殺す気なんだ。
「おい、鼠に猫。少し人払いを頼む。いいとこでヒーローに来られちゃ困るからな?」
人払い?
「チュッチュッチュ!!それはいい。いつもヒーローから逃げてばっかりだったから一度でいいから奴等に報復したかったんだ」
「にゃははは!!馬鹿か相棒。俺たちの"個性達"じゃアイツらには勝てねえよせいぜい、"ウザイ"と思わせるぐらい」
「だが、」
「あぁ!」
「「それが俺たちの"勝利条件"!!」」
パァン!!
そう言って奴等は何処かへ消えてしまった。
これで僕と気絶した塚内さん。そして凍花とアルコールの4人だけになった。
凍花は僕に、
「出久くん!そこの刑事さんを連れて逃げて!!」
と叫び続ける。
「凍花!!」
そんな事、出来るわけがない!!
やっと再会できた、生きているとついさっき分かった君を見捨てられるわけが無いにきまってるだろ……
「チャッカマン・アルコール…出久くん達を巻き込むな!!」
「いやいや、コイツはお前の仲間だろ?俺の任務はこの世界に帰還したお前と目の前の糞餓鬼の始末だって何回言わせりゃ分かる?」
「お前達を屠ってきたのは私だ!!出久くんは私達を支えてくれただけ!お前達に何も手出しは…!」
「何回かこの小僧に痛い目に遭わされたと言って帰還した奴らもいたな」
「私は異世界から離れても、"勇者"だ!お前達なんかに屈したりは…!!」
「………ちっ」
凍花とのやり取りにアルコールがイラついたのか、チャッカマンを発火し、彼女の目の前に突きつけて、
その瞬間。
彼女はその【火】を見て恐怖により大きく目を見開き、ポロポロと涙を流し始めて…
「いや…いや…いやぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
大声で、小さな子供みたいに泣き始めた。
異世界でも起きた、彼女の辛い記憶が蘇り悲しさと恐怖が、どっと溢れてきたのだ
「うぃっ、うぃっ、うぃっ!!アイツらの話の通りだ。本当に【炎】が苦手、いいやこのレベルはトラウマか?何にせよ素晴らしい悲鳴だ!!」
「凍花!!」
僕は彼女の名前を叫んだ。
その時、
彼女の目は、
あの時、ヘドロに呑み込まれそうになっていた、かっちゃんの………
「フルカウル」
僕は、そう呟き……
「そうだ、いい事を思いついた……どうせなら"あの時の再演"って奴を……!!??」
「10%・DETROIT・SMASH!」
アルコールは彼女を掴んでいた左腕が急に軽くなったのと、鈍器に殴られた様な痛みを感じ始めたが……彼の反応は酔っているせいなのか知らないが鈍かった。
ワン・フォー・オール
フルカウル・10%!!
これが、僕が初めて【個性】を発動した瞬間。
力の制御はまだ不安定だった。
だけど、異世界で鍛えた
僕は、塚内さんと凍花を抱えてアルコールから全力で距離を取った。
「………!おま…え……うぃぃ……腹が…」
奴が僕達の存在に気づいた時は、僕に左腕を殴られた痛みで悶え苦しみ、そして今度はお腹に痛みを感じ始め、次第に膝から崩れ落ち、ダウンした。
「………助ける、事ができた」
僕はアルコールの肉体、奴の言動、塚内さんから聞いた情報をまとめ、分析し導いた予測を見事に的中させて勝利した。
僕は、初めて"個性"を使って人を助けた。
その感想は……塚内さんに初めに言われた事を思い出し、複雑な気分だった。
抱きかかえる二人の内、塚内さんの方を見て、勝手に動いた件をどうやって謝罪しようと考えつつ、凍花の方を見た。
凍花はまだ涙を流して震えている。
無理もない。
彼女のトラウマは、余りに根深い物だった事を僕は知っている。
色々と凍花に聞きたい事がある。
話したい事がある。
謝りたい事がある。
だけど、今、凍花に始めに語りかける言葉はもう決まった。
僕は凍花の頭に手を置き、憧れたオールマイトの様に笑いかけ、
「もう大丈夫。僕が、来た」
そう、凍花に向けて言った。
凍花は笑った僕の笑顔を見て、大粒の涙を流して、大声で僕の胸で、
「出久くん……出久くん!!うぁぁぁぁぁ!!!」
彼女は泣いた。
今までの苦しみ、辛さ、後悔を吐き出す様に。
泣き続けた。
僕は彼女の温もりを再び感じる事が出き、泣きそうになったが……
(僕は、ヒーローになる。だから、泣かない!!)
そう強い意志をもって涙を堪えようとした。
だけど、
「出久くん」
僕は、
「私、ずっと君に会いたかった。君に謝りたかった。でもまず……言いかけた事を伝えたかった」
凍花に、
「だから、今……言うね?"君は、ヒーローになれる。"」
あの時、彼女が死を覚悟した際に僕に言いかけた言葉を告白し、
「最高に、かっこよかったよ。出久…ありがとう。私を、助けてくれて」
最高の笑顔を僕に見せた。
そこで僕の涙腺は……崩壊していた。
僕は彼女を抱きしめて泣いた。
ずっと心に溜めていた後悔と悔しさを、全て吐き出す様に…
僕は泣いた。
そんな僕を、彼女は温かく受け止めてくれたのだった。
6話「ありがとう」
@@@@
アルコールに気絶させられた僕はどうにか意識を取り戻した。
目が覚めた時には既に、チャッカマン・アルコールは伸びていた。
それを知った時、僕はオールマイトの後継である緑谷くんがやり遂げた嬉しさと自分の情けなさ、両方溢れていた。
緑谷くんがチャッカマン・アルコールを倒し、僕達を助け出したのだとすぐに分かったからだ。
僕は自分の弱さを呪った。
彼にこの危険な行動を起こさせたのは紛れもない自分だという事を、僕は絶対に忘れるつもりはない。
ちなみに意識を取り戻しても、まだヒーローも警察も来ていなかった。
相当あの鼠猫コンビに惑わされたのか、それとも……
今回の場合、恐らく彼の行動は"正当防衛"として認められるだろう。
とはいえ、事情にもよるが彼の取った行動は……
どうにか彼を今度こそ守らなければ。
僕はこれからの決意を固め、彼等を探すために見渡して、緑谷くんと轟さんを見つけた。
緑谷くんが泣いている様子を見て、つい笑みを浮かべてしまっていた。
僕は二人の時間を邪魔しない様に、伸びている
そして、数分。
ヒーローと警察達がここに到着し、この事件は一先ずの収束に向かった。
緑谷くん。
君はこれから大人達に色々と言われるだろうけど、僕は君にお礼を言うしここからこそ君を守るよ。
ありがとう。
@@@@
その後、チャッカマン・アルコールは逮捕された。
しかし、キャットムーブとスティールマウスには逃げられてしまったらしい。
どうやら奴等は謎の【機械軍団】を何処からか呼び寄せて、無差別に暴れ回らせて、ヒーロー達をある程度足止めした。
その中には凶暴な奴が3体も紛れていて、オールマイトがその対応に追われてしまったそうだ。
そして戦闘は続き、彼等がヒーローに追い詰められたと自覚した時、すぐに逃げの一手を選び、逃げ切られてしまった。
キャットムーブの"個性"は余りにも厄介極まりない物だと、この場にいたヒーローと警察は痛感したらしい。
そして、いきなり現れて暴れ回ったという【機械軍団】。
僕はヒーロー達が戦った現場を少し見ただけだが、その奴等の残骸は、僕が【異世界】で見た形のロボット達で……
僕はこの事件の後、身体に異変がないか病院で診てもらった(少々キツい筋肉痛が発生するかもとの事だった)後、凍花の病室に向かう最中に塚内さんとこれからの事について話していた。
「きっと、奴等はまた……」
「うん。残念だけど、今後も奴等は君達を狙ってくるかもしれない」
僕の考察に塚内さんが肯定し、気分が重くなった。
これがどういう事なのか、僕は今日の事件を通じて嫌な想像が消えなかった。
今度は僕のお母さんか、それか僕の周りの人達か、それとも……
「緑谷少年」
「オールマイト!」
そこに、もう既に口から血をダラダラ流しているオールマイトが合流した。
「身体の方は大丈夫!?」
「身体の方は特に大きな変化はない。だが……」
オールマイトは突然、僕に土下座をしたのだ。
「オールマイト!?」
「すまなかった!緑谷少年!!塚内くん!!私が君達の元に離れなければ、君達は危険な目には……」
戸惑う僕に対し、塚内さんはオールマイトにすぐに顔を上げる様にと駆け寄った。
「やめてください、オールマイト。今回の件は僕にも責任があります」
実は、塚内さんもついさっき僕にすごく謝られた。
僕も勝手に動いて個性を使った事を謝ったが……
「確かに法律云々を入れると君の行動は頂けなかった。しかし、そこまで君を追い詰めてしまったのは紛れもない僕達の責任だ」
と言い、更に謝られてしまった。
中学生でヒーロー免許を持っていない僕が
ここまで言い切られた以上、僕はもう何も言えなかった。
塚内さんがこうだったのだからオールマイトもこうなるのは想像していたけど……
僕、これからどうなるのだろう……
雄英の受験前に色々と、個性を使い、初めて人を助ける事が出き、大切な人に最高の言葉を言ってくれた嬉しさと法律を無視して個性を使ってしまった罪悪感で、色々と複雑な気持ちになった。
そして彼女の病室に入った時、ベットに横たわる凍花と、眼鏡をかけたお姉さんと大柄のお兄さん。そして、スーツを着こなした"犬"の姿をした人がそこにいた。
「緑谷くん。彼はここの管轄の警察署の署長さ」
「署長……」
そこで僕は署長と僕の行動についての話し合い……というより、僕は署長の提案を全面的に受け入れる流れで進んでいった。
最後に署長から、
「大人のズルで、君の称賛の声は無くなってしまうが…共に平和を守る人間として…ありがとう」
と言われた。
そこに、署長の他に塚内さんとオールマイトとそして凍花のお姉さんとお兄さんが頭を下げて僕に感謝の意を伝えていた。
僕の罪悪感は少し軽くなったと思う。
だけど、今日の事は色々と絶対に忘れてはいけない。
僕はそう思いながら、署長と塚内さん。そしてオールマイトに迷惑をかけた事をしっかり謝ったのだった。
「緑谷くん、オールマイト。少し僕は署長と話してきます。もうそろそろ時間も時間で緑谷くんを家に送らないといけません。また終わったらまた声をかけます。緑谷くん、短い時間だけど彼女とその家族と色々話しておいで。本当に今日は色々とすまなかった。そしてありがとう」
塚内さんはそう言って、署長と一緒に病室の扉を開けて何処かへ行った。
トゥルーフォルムのオールマイトはまだ項垂れていたけど、僕の顔を見て少し元気を取り戻していた。
そして、
「今日は凍花を助けてくれてありがとう!私の名前は轟 冬美。こっちは、」
「俺は轟 夏。俺からもありがとう。それにしても凍花に聞いたけど、まるで"オールマイト"みたいでかっこよかったってアイツ顔を赤くして……いてて!」
「もう!夏にぃったら!」
凍花は夏さんに顔を真っ赤にしながらポカポカと叩いていた。
その光景に冬美さんも嬉しそうに笑って、僕もオールマイトも微笑ましい気持ちになった。
その後、時間が経ち、塚内さんが迎えに来て僕は帰路につこうと彼女達にさよならの挨拶をし、病室を出た。
また、彼女に会えるかな?
一先ず連絡先貰ったし問題ないかと病室から離れようとした時だった。
「凍花、今なんて!?」
冬美さんの声が響いた。
僕はいてもたってもいられずに病室の入り口へ戻った所、
「冬美ねぇ、夏にぃ……私、やっぱりヒーローになれないや」
それは余りに唐突な宣言だった。
彼女は涙をポロポロ流しながら、震えていた。
「どうして…お前、あんなにヒーローになりたがっていたじゃないか!親父に言われた事なんか気にする事なって!」
「お父さんの言う通りだった」
「「!!」」
二人は衝撃の余り、絶句していた。
さらに彼女は語る。
炎のトラウマのせいで、個性を使って抵抗するどころか身体すら動かせずに塚内さんに、そして異世界で僕やその仲間達に迷惑をかけた事。
これが自分がヒーローになれない決定的な理由だと二人の姉弟に告白していた。
二人は彼女の告白に項垂れて、何も言えなくなっていた。
でも、
僕は、そんな彼女の告白を聞いて……
納得なんてするわけがなかった。
凍花は炎のトラウマを乗り越えられる事を僕は知っている。
僕は凍花を、この目で見てきた。彼女から、凍花なら、今の僕だって超える……
最高の、ヒーローに!!
僕は、塚内さんとオールマイトの制止を振り切り、病室の入り口を開け、涙を流す彼女の元へ向かったのだった。
凍花に、伝えなきゃいけない言葉を見つけたから…
投稿、遅くなりすみません!
出久の戦闘と、その後の後始末に深く悩んで悩んだ結果、大分遅れました。
次回はオリヒロである彼女の……
投稿が不安定ですみませんが、応援よろしくお願いします!
更に向こうへ、Puls Ultra!!
この作品の異世界設定、色々と変えるべき?
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変えるべき!
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そのままでも大丈夫!