僕のヒーローアカデミア 《異世界帰りの緑谷出久》 作:青龍の鎧
そんな彼の調子は……
その前に、とある組織の一幕にて……
@???@
チャッカマンが捕まった2時間後。
古びた屋敷、そのテーブル席でグラサンを掛け猿の姿をした男と全身に甲冑を着こなす男が"チャッカマン"の件についての対談をしていた。
「"チャッカマン"がやられたみたいねぇ?」
『あぁ、"オールマイト"や"エンデヴァー"辺りにやられるならまだ仕方ねえとフォローをいれる所だが、今回の件は最悪だ』
甲冑の男は態度を極力表には出さないが、凄まじい程の怒気が滲み出ているのを猿の男は、馬鹿にしたように笑いながら甲冑の男の意見に同意した。
「全くね。まさか、対して強くも有名でもない"ヒーロー"にやられるだなんて、昔から魔王様の信頼をコツコツと積み重ねてきた貴方の面目丸潰れね♪」
『そうだ、面目丸潰れだ。
「相変わらずの被害者面と重大な情報をさらっという所が色々、本当にうざ………って、
Dr.エテ公という名前を持つ男は、絶妙に腹の立つ被害者面をし、さらっととんでもない情報を告げる甲冑の男に初め戸惑いつつも、何とか気を取り直し、怒鳴りつけた。
『まぁ俺としては【二代目
「おい、何あっさりヴァターシの部下を持ってこうとしてんだコラァ!!いくら"初代
『安心しな、お前らの為じゃねえ。全ては"俺の為"に動くだけだ。お前らの"魔王軍ごっこ"なんざ、どうっ、でもいい〜』
Dr.エテ公の怒鳴り声を甲冑の男は笑顔を浮かべて気に求めずに、この場から去ってしまった。
Dr.エテ公は机を乱暴に叩き、
「畜生!!とっとと"自分の炎"とやらで焼け落ちて死んじまえクソ野郎!!それと…ヴァターシの事は"
そうどなり、甲冑の男の後釜と呼ばれる【二代目
その甲冑の男は一人しかいない鏡の部屋へ立ち寄り、顔当てを外して……
『だってまだ、今の"俺"を見てもらうのは、余りにも"早すぎる"』
自身の焼けた顔を見つめて、鏡の部屋にある受話器擬きに手を触れたのだった。
『急がねえと出歯亀趣味のアルコールに余計な事をいつ話されるか溜まったもんじゃねえ……取り調べ。まだ始まってなきゃいいが…』
甲冑の男の"夢"は、まだ準備すら入っていない。
だが、焦りは禁物。
『まぁ、流石にアルコールは"真の正体"までは知りよう無いと思うが、初めの段階でしくじる訳にもいかねえ。何より……"大義"って奴が見当たらなかった。しかも役立たず。冗談抜きで、生きる価値もねぇ』
全ては、彼自身の……"夢"の為に。
甲冑の男は受話器に掛けた相手の応答を、笑いながら待っていた。
@@@@
あれから1週間経ち、
僕は"個性"を伸ばす特訓をひたすら行なっていた。
あの日以来、夢を諦めた凍花に対して、僕ではどうしようもなくてやるせない気持ちを特訓で晴らす毎日を送り続けた。
あの時、僕は彼女にまだ何かを言えた筈じゃなかったのかと……
だけど……
『私があんな事を言ってしまったから、兄さんが……』
凍花の過去のトラウマの"根幹"まで知ってしまった僕にはこれ以上……
そんなモヤモヤを、特訓で晴らし続けて。
晴らし続けて、
晴らし続けて……
「STOP!」
その途中でオールマイトに止められてしまった。
「少年。またオーバーワークになりかけてる?」
「………すみません」
「しかも前回と違い、みんなに早く追いつきたい…ではなく"自身に宿るモヤモヤ"を晴らしたいという風に見えた。よくないな?」
「…………返す言葉もないです」
あれ以来、受験勉強も"個性"を伸ばす特訓もどうにも空回りのオーバーワークが多くなってしまっていた。
「少女……轟 凍花の件だね?」
「はい」
オールマイトの指摘に力無く答える。
「僕は、凍花をずっと見てきました。誰かの為に助けて、勇敢に戦う姿。周りの人達が笑顔になると、彼女も嬉しそうな笑顔を浮かべて……でも、僕にだけ見せた過去のトラウマに怯える彼女も見ました。そして……そのトラウマの根幹を………」
「根幹?」
「すみません、オールマイト。それだけは貴方でも話せません」
凍花のトラウマの根幹。
それを誰かに凍花の許可も取らずに話すなんてそれこそ許されない話だ。
それは憧れのオールマイトも同じ事。
「少女は君を信頼して話した。それを信頼している私だからと簡単に話していい事ではない……少年。余程キミはその少女を想ってきたんだね?」
「………はい」
「だが、君も分かっていると思うが、この問題は彼女自身の問題なのは揺るがない。その決断は家族にも君にすらも押しつけていい問題じゃない」
「………」
僕はそんな中で彼女に伝えたい事を伝えた。
そして凍花はそれを拒否した。
そうなったらもう、僕に言える事なんて一つもない。
だったらこの気持ちは……
「僕はどうすれば、いいのかな?」
くそっ、涙が溢れてきた。
もう泣かない様にしようと決めたのに、僕って奴は……
僕の葛藤に、オールマイトも難しい顔で考えていた。
「とにかく、今日の訓練はここまでにしよう。今日は君の少女に対する気持ちの整理をつける優先だ。できれば受験勉強も」
「そうですね。オールマイト、今日もありがとうございました」
そして、オールマイトと別れて僕は一人で海を眺めていた。
僕のやるせない気持ち。
どうやって決着をつけよう。
………しばらく小さい英単語帳持ってきてたからそれを見よう。
家に帰っても、もやもやするだけだし。
しかし…ぼうっとしていると、どんどんモヤモヤが大きくなってしまい、結局勉強どころで無くなり、海をぼんやりと眺めてしまっていた。
凍花。
『ありがとう、ごめんね?』
くっ……
何やってるんだ、緑谷出久。
何の為に強くなったんだ?
何の為にオールマイトの"個性"を継いだ?
何の、為に……
何の……
ポンッ
ふと、誰かに肩を触れられた感触を覚えた。
僕は後ろを振り向くと、
そこには端正な顔立ちで、オッドアイに右が白髪、左が赤髪になっている左右非対称な姿の特徴を持つ少年がじっと僕を見つめていた。
「うわぁぁぁ!!」
僕は驚いて後退りしてしまった。
しかし少年は僕の大声に驚かずに、
「お前、緑谷出久……か?」
淡々と僕の名前を確認した。
僕は開いた口が塞がらずに、「はひ」と不自然に答えてしまっていた。
少年は僕の答えを聞き、「そうか」と呟き、
「俺の名前は、"轟 焦凍"」
少年は自分の名前を名乗った。
その名前…否、苗字に僕は目を見開いた。
そう、彼こそが凍花の双子の兄の"轟 焦凍"。
凍花からずっと焦凍くんの話も聞いてきたけど、彼の右上の顔に火傷の跡が痛々しくと残っているのを実際に見てしまうと、やはり心にくる物があった。
ひとまずその事は置いておき、改めて自己紹介しないと。
「初めまして、焦凍くん。君が確認した通り、"緑谷出久"です。僕、凍花から君の話を聞いてきたので、ずっと君に会いたかったです」
「そうか」
焦凍くんは一言そう言うと、急に頭を下げた。
「焦凍くん?」
「ありがとう」
「……え?」
「"異世界"の事、"1週間前の事件"の事、それらをひっくるめて……凍花に寄り添ってくれて、アイツの過去を受け止めて、支えてくれて、そして…助けてくれて、本当にありがとう」
「そ、そんな…頭を上げて……!」
僕が頭を下げる彼に近づいた時、焦凍くんの肩は震えていた。
彼はずっと、凍花が異世界に行ってしまった時でもずっと、彼女の事を……
その時、ふと思ってしまった。
あの日、召喚に選ばれるのが僕じゃなく……"目の前の彼"だったら。
そしたら凍花の事を、支えるだけでなく共に戦えたり出来たのかもしれない。そうすれば、彼女の負担・苦しみも……
僕は余りにも今更で、虚しさが増す"もしも"の世界を考えてしまっていたのだった。
そして焦凍くんは落ち着きを取り戻し、僕は少し気になっていたことを聞いてみた。
「そういえば、焦凍くんはどうやって僕を見つけられたの?」
僕の質問に焦凍くんはあっさりと、
「2日間、探しまくった」
「探しまくった!?」
「というか、2日前に凍花と喧嘩して、姉貴達とも揉めて……家に居づらくなって、せっかくだからとお前を探す旅をした」
「僕を探す旅!!??」
とんでもない事を平然と告げたのだった。
「頑張った」
僕は空いた口が閉まらなかった。
ずっと僕を探す旅に出てたなんて……
しかも2日間て!!
「2日間も当てもない捜索をしてまで、僕に会いたい理由って、一体?」
「お礼を言いたかった」
うぅ……
僕に御礼をいう為に2日間も当てもない捜索を続けてたなんて、罪悪感が……
そんな僕を余所に、焦凍くんは話を続ける。
「そしてもう一つ、お前にどうしても一つだけ、聞きたい事があるんだ」
「聞きたい事?」
焦凍くんは息を整え、真剣な顔で僕に問うた。
僕は、この前の事を思い浮かべながら耳を傾けたが、
「………お前にとって、凍花は何だった?」
「………え?」
その質問は、僕の想像してた物とは違っていた。
てっきり、凍花はヒーローになれるのか?的な事を聞かれるモノだと思っていたから。
でも、焦凍くんはとても強い目で僕を見続けている。
この質問は、本当に焦凍くんにとって大切なモノなのかも知れないと察した僕は、凍花と異世界で出会ってからの思い出を振り返り、
「彼女は、僕にとって………【ーーー】でした。それは今も、これからも、彼女がどんな道を選ぼうとも……絶対に変わらない」
その答えを聞いた焦凍くんは、涙を浮かびかけていた。
だけど、その表情は嬉しそうで……
焦凍くんは涙を拭き取り、再び頭を下げた。
「緑谷、本当にありがとう。俺から見たお前も、お前が見た凍花と同じ……、本当に、凍花を助けてくれてありがとう」
「……うん」
頭を上げた、彼の顔は強い決意の表情をしていた。
僕はその表情を見て、焦凍くんが何をしようかを察した。
止めないといけない。
僕の理性がそう叫んでいる。
だけど、凍花から焦凍くんの話を聞くたびに、僕はこう思っていた。
僕が憧れた最高のヒーローが"オールマイト"だった様に、
焦凍くんが、凍花にとっての"最高のヒーロー"だったんだって事を。
その彼が、凍花を離れ離れになり手を出せなかったあの時とは違う、今だからこそ、"助ける"為に動くつもりだっていう事を。
お節介かもしれない。
迷惑だと、分かっていながらも……
これから凍花を救おうと全力で抗う"ヒーロー"に向けて、僕が言わなければいけない事を。
「焦凍くん。僕は君のこれから取る行動を止めない」
「!」
焦凍くんは、僕の思わぬ指摘に汗を流した。
だけど、僕は焦凍くんのこれから取る行動を責めたりしない。
そもそもの話。焦凍くんの行動を責める資格なんて、凍花を立ち直らせる事に失敗し続けた僕には無いも同然なのだから。
僕は焦凍くんに一つの質問をした。
「焦凍くん。君は、高校には何処へ行くつもりなのかな?」
「………?"雄英"。だけど……」
僕は、手を差し出して焦凍くんに宣言した。
「僕も、雄英に行く。そこで、君と……凍花。2人との再会を、僕はその日まで願い続ける」
「緑谷……」
「勿論。僕に凍花のトラウマの払拭で手伝える事があるのなら、必ず駆けつける。だけど……」
僕の返答に、焦凍くんは不敵の笑みを浮かべた。
「問題ねぇ。絶対に、凍花を"助けてみせる"」
「!」
「だからお前は、試験に落ちねえ様に特訓と勉強。頑張れよ?お前がそもそもしくじったら……色々と拗れちまうからな」
焦凍くんの返答は、僕の介入は必要ない宣言に等しかった。
果たして僕は、それを信用出来るのか?
様々な不安が押し寄せてきそうになる。
だけど焦凍くんの笑みと、僕の差し出した手の感触を感じ、そして……
「緑谷、必ず俺達3人。……雄英で会おう」
その一言で、僕は確信を持ってしまった。
彼ならきっと、やり遂げると。
だって、焦凍くんの……轟 焦凍の目は!
あの時、誰かの為に助けると決意した、勇者の目と……全く同じ目をしていたのだから。
8話 『勇者の一族』
その後、焦凍くんは帰っていった。
この後色々と大変だろうなと思いつつ、僕の気遣いを笑みを浮かべて「大丈夫」と言い張る彼に、何も言えず、そのまま帰してしまったけど……
焦凍くんなら大丈夫かな!
そんな根拠もない信頼が何故か芽生え始めている事に、若干驚きつつ僕は家に帰った。
これからは、焦凍くんの言う通り……
雄英で二人と再会する為に、特訓と勉強を全力で頑張ろう!!
そう決意しながら、僕は眠りについた。
だけど、僕は"あの日"まで、何も知らなかった。
まさか、僕と焦凍くんが巡り合った日の"夜"に、
凍花の人生を決定づけた事件が起きていた事に、僕は……何も気づかなかった。
次回予告!!
僕と焦凍くんが初めて出会った日から約3ヶ月程の受験の日。
僕は様々な思いを募らせて、一歩を踏み……転倒しかける!!
果たして、僕はこのまま転倒してしまうのか?
こんな調子で受験を乗り越える事が出来るのか!?
更に向こうへ、Puls Ultra!!!!
という訳で、投稿遅くなりすみません。
次回は緑谷出久の受験回。
焦凍と凍花の人生を決める事件回はまた今度。
亀投稿で、本当に申し訳ありません。
次回は大分早く、投稿出来るので応援よろしくお願いします!
この作品の異世界設定、色々と変えるべき?
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変えるべき!
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そのままでも大丈夫!