オーク力士ですが、なにか?   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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蜘蛛3 エデ・サイネVSオークジェネラル

 はっけよい! してきた士道くんの突撃を、自慢の速度に任せて回避する。

 回避性能なら、私の右に出る奴は早々いないぜ!

 

 生まれ持った速度アップ系スキル『韋駄天』によって強化され続けてきたスピードに加え。

 その名の通り回避力を上げるスキル『回避』。

 体感時間を引き延ばして、スポーツ選手のゾーンみたいな事を任意で発動できるスキル『思考加速』。

 相手の次の動きを未来視のように見る事のできるスキル『予見』。

 これらを組み合わせた黄金コンボの前に、避けられぬ攻撃はなーい!

 

 ぶっちゃけ、このまま逃げちゃいたいけど、今背中を向けるのは危険だよねー。

 士道くん、何気に投擲と命中のスキルカンストしてるし、ここには士道くんのステータスならぶん投げられそうな地龍の死体がある。

 ちょっと、一万近い物理攻撃力のステータスから放たれる投擲の威力とか予想できないし、後ろ向いて予見が使えない状態だと、その攻撃を避けられないかもしれないから。

 

 しかし、士道くんは地龍の死体を投げる事なく、その場で大きく足を振り上げて四股踏みをした。

 何故にこの状況で四股踏み?

 とか思ってたら、足を叩きつけられた地面が割れた。

 ズドン! という凄い音を立てて、まるで隕石でも落ちてきたかのように地面が陥没。

 私の足下まで亀裂が広がってきて、足場が崩れた。

 

 おおう。

 ただの物理攻撃で地面にクレーター作るとかマジか。

 物理攻撃力一万近いと、そんな事できるんか。

 

 そうして、地面は砕けて無数の岩となり、士道くんはそれを掴んでぶん投げてくる。

 いや、何そのコンボ!?

 士道くん魔法能力はクソ雑魚だし、ここには投げる物が地龍の死体くらいしかないし、一発避けて遠距離に逃げちゃえば大した事できないでしょって思ってたけど、そんな事なかった!

 

 飛んで来る岩の速度はかなり速い上に、いくつもいくつも連続で飛んでくる。

 当たればただじゃ済まないだろう。

 それに、岩に当たって動きが止まれば、その隙に接近されかねない。

 接近戦になれば死ぬ。

 

 仕方なく、私は得意技である闇の上位魔法、暗黒魔法を使って岩を迎撃する。

 ホントなら、魔法を使うリソースは逃走の為の長距離転移に使いたかったんだけど仕方ない。

 長距離転移は構築難易度が高いから、発動までに時間がかかる上に、発動準備してる間は他の魔法が使えない。

 並列意思がいれば転移と暗黒魔法を同時に使う事もできるんだけど、あいつらは今マザー攻略中だから頼れないし。

 まあ、私のスピードがあれば転移なしでも逃げ切れるっしょ。

 

 闇を固めた黒い玉、暗黒魔法の暗黒弾が岩を簡単に砕き、そのまま突き破って士道くん自身をも捉えてダメージを与える。

 私の魔法攻撃力だって九千超えてるんだ。

 万を超える士道くんの抵抗だって、ある程度はぶち抜ける。

 

 よし。

 このまま弾幕張りながら逃げ……うぇ!?

 士道くんが暗黒弾をものともせずに突進してきた。

 前に進みながら投擲を続け、その岩も気力付与のスキルで強化したらしく、暗黒弾でも全ては打ち落とせなくなる。

 何発かは私の所まで飛んできて、回避行動を取らざるを得なくなった。

 そして回避に労力を割けば、逃げる速度が下がって士道くんとの距離が縮む。

 

 っていうか、士道くんの突進の速度が欠片も落ちないんですけど。

 暗黒弾は今も大半の岩を貫いて士道くんに当たってるのに、思ったより効いてない。

 そのカラクリは龍力のスキルだ。

 私も持ってる、龍を倒すと手に入る称号『龍殺し』に付いてくるスキル。

 その効果は、龍の力の一部を得るというもの。

 発動すると全ステータスが上昇し、ブレスの劣化版である疑似ブレスが使えるようになる上に、龍種特有の魔法阻害能力を纏う事ができる。

 

 この魔法阻害能力が厄介だ。

 本家龍にデフォルトで備わってる龍鱗系列のスキルよりはマシだけど、これがあるだけで魔法の効きがかなり悪くなる。

 おまけに、さっきからしこたま暗黒弾をぶち込んじゃったせいか、元々9だった士道くんの闇耐性のスキルレベルが10に上がり、暗黒耐性へと進化してしまった。

 マジかい。

 最初からやるつもりはなかったけど、いよいよ倒すのは絶望的だな。

 

 でも、それにしたって突進の勢いが衰えないのはおかしくね?

 暗黒弾が当たればそれなりの衝撃を食らう筈。

 例えダメージが少なくても、衝撃を食らえば体勢くらい崩しそうなもんなのに。

 

 うーん。

 これもしかして、相撲の技術とかだったりするんだろうか?

 腰を落として踏ん張って、相手の攻撃を受けながら前に出る的な。

 だとしたら力士すげぇ。

 さすが、一部では地上最強生物と目されるだけの事はある。

 

 でも、それならこれでどうだ!

 私は暗黒弾を発射し続けながら糸を出し、それを無数の糸玉にして投げつけた。

 投擲と命中のスキルにより正確に士道くんの前に飛んでいった糸玉を、操糸のスキルによって目の前でバラけさせ、糸で士道くんの全身を絡め取る。

 蜘蛛と言えば糸!

 なんだかんだで私が最も信頼してるスキル。

 破れるものなら破ってみ、ろ……

 

 その瞬間、士道くんの全身から炎が噴き出して、全ての糸を焼き切ってしまった。

 

 そうだったー!

 士道くんオークのくせに、何故か火炎攻撃持ってたんだったー!

 なんでそんな私に対するアンチスキルみたいなもん持ってんだ!?

 見た目完全に豚の丸焼きなのに!

 マジでいい加減にしろ!

 

 しかも、火炎攻撃解禁したせいで、投擲してくる岩まで燃え始めた。

 ヤバいヤバい!

 割と真面目にヤバい!

 これだと岩食らうだけで結構洒落にならないダメージ貰いそう。

 それを何発も食らえば、最悪接近戦を避けても投擲だけで殺されかねない。

 

 ギャー!?

 ブレスまで撃ってきた!?

 地龍のブレスに似た土属性っぽい疑似ブレスが私に襲いかかる。

 私は魔法攻撃力だけじゃなく、魔法抵抗力も九千超えてるから、さすがにこの攻撃で致命傷を食らう事はないと思う。

 でも、私は士道くんと違って攻撃貰いながらでも前に進める相撲技術なんて持ってないから、ブレス食らったら体勢崩して、投擲か距離詰められての接近戦で殺される予感しかしない!

 

 幸い、まだ余裕とは言わないまでも普通に回避はできてる。

 でも、カンストした投擲と命中、更に確率大補正のコンボは侮れない。

 確率大補正は、確率が関与するスキルの力にプラス補正を働かせる確率補正の上位スキルだ。

 かつて私を追い詰めた鰻の上位互換みたいな戦法。

 今の私なら油断しなければ避けきれる。

 逆に言えば、油断すれば避けきれない。

 気を引き締めないと。

 

 ん?

 岩を燃やしてた炎が消えた。

 あ!

 士道くんのMPが殆どなくなってる!

 

 MPが尽きれば、火炎攻撃も龍力も使えない。

 火炎攻撃はMPを、龍力はMPとSPの両方を使って発動してるからね。

 そして、火炎攻撃はともかく、龍力は結構消費が激しい。

 ブレス使えば更に消耗は激しくなる。

 飽食のおかげでMPにもかなりのストックがあったけど、素のMP自体は少なかったから、なんとか削り切る事ができたみたいだ。

 

 今こそがチャンス!

 私は龍力の守りを失った士道くんに暗黒弾の嵐をお見舞いし、それを目眩ましにして全速力で逃げた。

 最初に懸念してた地龍ぶん投げ攻撃も、士道くんが私に近づく為に地龍の死体から離れたから使えない。

 投擲も、龍力を失った直後という事で、相対的に予想外の威力となった暗黒弾を食らってよろめいてる士道くんに使う余裕はない。

 結果、私の逃走はなんとか成功したのだった。

 

 

 

 

 

 充分に離れてから長距離転移で上層のマイホームに帰って来た私は、ようやく張り詰めていた気を緩めた。

 あー、疲れたー!

 いやー、強かったわー。

 同じ転生者って事は、多分生まれたのも私と同じくらいの時期の筈なのに、傲慢なしであそこまで強くなるとか、どんだけ修羅な豚生送ってきてるのよ。

 一応、傲慢と似た効果の『不遜』とかいうスキルは持ってたけどさー。

 いくらなんでも世界で一人しか取得できないユニークスキルの傲慢より優れてるって事はないだろうし、それであの強さって……。

 

 やっぱ、生まれてからずっと下層で生き抜いてきたとか?

 私が上層とか中層で雑魚モンスどもと死闘を繰り広げてる間に、ずっと下層の化け物どもに揉まれ続けて、そいつらを経験値にし続けてきたんだとしたら、あの強さも納得できない事もない。

 そんなんと転移した瞬間にこんにちはとか、運が悪いにも程があるわ!

 私の蜘蛛生ずっとそんな感じだけどな!

 ちっくしょう!

 

 しかも、あれだけの激闘を繰り広げておいて得るものなしだよ。

 強いて言えば、叡智様の効果で士道くんにマーキングができた事くらいか。

 

 ぶっ壊れスキル叡智の効果の一つ、マーキング。

 一度鑑定に成功した相手の居場所と鑑定情報を常時把握しておけるというチート性能だ。

 ストーカー御用達のスキルやね。

 士道くんはやたらと隠密系のスキルが高かったけど、これなら油断してない限り不意討ちを食らう事もない。

 

 それを差し引いても、やっぱり徒労感の方が強いわ。

 よし。

 今日はもう寝よう。

 本日は臨時休業です。

 文句は受け付けない。

 私こそがルールだ。

 という訳で、お休みなさい。

 

 

 寝る直前、ふと念話のスキルでも取って話し掛ければよかったんじゃないかという考えが浮かんできた。

 そうすれば、あんな不毛な争いをする必要はなかったのでは?

 ……考えないようにしよう。

 どうせ前世でもボッチ、今世でもボッチ、ボッチを極めんとする者の私には無理な話だったんだよ。うん。

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