オーク力士ですが、なにか?   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

22 / 34
蜘蛛4 現在修羅場中につき

 やっべ!?

 士道くんに、パペットタラテクトこと人形蜘蛛擦りつけちゃった!?

 さっき遭遇したのも偶然だったし、最近修羅場続きで大変だったから、士道くんの現在地とかまで気にしてる余裕がなかったわ。

 

 前に士道くんと会ってからこの方、私は更なる激動の蜘蛛生を送っている。

 それまでも大概だったと思うけど、最近はそれに輪をかけて凄い。

 

 何せ私、今魔王様に殺されかけてるからね!

 

 こうなった経緯を説明してしんぜよう。

 前に士道くんと遭遇した後、私はアーク率いる蜘蛛軍団とか、マイホームに放火しやがった人間どもとかをコロコロしてレベルを上げてから、宿敵地龍アラバに戦いを挑んだ。

 結果は、持てるもの全てを出し尽くしての辛勝。

 あんまり後味のいい戦いじゃなかったけど、とにもかくにも私は宿敵アラバを撃破した。

 もうエルロー大迷宮に心残りはなーい!

 という事で、マイホームを放火した人間どもの生き残りにくっつけたマーキングを辿って、私は迷宮の外に足を踏み出したのだ。

 

 青い空!

 白い雲!

 光輝く太陽!

 襲い来るマザー!

 

 ……うん。

 迷宮出てすぐマザーに襲われたんだ。

 半端ない強さだったよ。

 ただ走るだけで地面がめくれ上がり、巨体と超スピードが生み出す風圧で全てを破壊し、ブレスを撃てば山が消し飛ぶ。

 マザー怖いです。

 なんとか転移で逃げ切れたのですら奇跡に思える。

 まあ、逃げた先にアーク五体と人形蜘蛛一体、その他多数が待ち伏せしてて、また死にかけたけど。

 殺意高過ぎワロエナイ……。

 

 なしてそんな事になってるのか。

 それは、私が結構前からマザーを攻撃してるからに他ならない。

 何?

 じゃあ自業自得だろって?

 異議あり!

 これは正当防衛なのです裁判長!

 私は正当防衛を主張する!

 

 いや実際、冗談抜きで私がマザーを攻撃してる理由はそんな感じだ。

 私はある時、ふとした拍子に気づいてしまったのだよ。

 マザーのスキルが私を操ろうとしている事にな!

 

 私がマザーと呼ぶ存在の正体は、このエルロー大迷宮に生息する全ての蜘蛛の魔物の産みの親『クイーンタラテクト』だ。

 そして、マザーは『眷属支配』というスキルを持っている。

 眷属支配とは、その名の通り自らの支配下にある眷属を支配し操るスキル。

 マザーにとっての眷属は、自分で産み出した蜘蛛の魔物達。

 そう。

 私もその条件に当てはまっているのである。

 

 私がその支配に抗えてるのは、進化を繰り返す内にタラテクト系列から外れちゃったからか、それとも魂に対する攻撃を無効化するスキル『外道無効』を持ってたからか。

 しかし、それでも私はマザーの支配に抗ってるだけで、眷属支配による魂のラインは繋がったまま。

 私は依然として操られかけてる状態のままだった。

 

 当然、そんな事許す筈もなし。

 ええ、反撃させてもらいましたとも。

 眷属支配で繋がってた魂のラインから逆侵攻を仕掛けて、私の魂の分身である並列意思を送り込み、マザーの魂に取り憑いて食い尽くしてやるという反則技でな!

 

 性悪邪神のDにシステム外攻撃とまで言われたマジの反則技だ。

 しかも、私は外道無効持ち。

 魂への直接攻撃では一切のダメージを受けない。

 つまり、魂だけの状態でマザーに寄生してる並列意思達を排除する手段はなーい!

 反則技な上にチート技!

 こんなんチートや! チーターや!

 ふははははは!

 他人がやったらふざけんなだけど、自分が使えるなら最高だよね!

 チート最高!

 

 で、並列意思達を排除する事ができないんだから、当然マザーは私本体を抹殺しようとしてきた。

 ちゃんと警戒して、マザーの巨体じゃ来られないような所にしか行かなかったし、最終的には迷宮の外まで出たのに、それでもマザーは追い掛けてきたよ……。

 あの巨体じゃ、上層の狭い通路を通って出口になんて辿り着けないと思ってたのに、あっさりその予想は覆された。

 そうして襲撃されて、死にかけながらなんとか転移で逃げたら、逃げた先で蜘蛛軍団に出待ちされてまた死にかけたと。

 あれは過去最高にピンチだった。

 それでも根性で生き残ってやったがな!

 

 そうしたら、今度は魔王が襲来した。

 

 何を言ってるのがわからねぇと思うが、私も何が起こったのかわからなかった。

 でも、冷静になってから考察して色々と察した事はある。

 鑑定に成功した魔王の種族名は『オリジンタラテクト』。

 つまり、原初のタラテクト。

 要は、あのマザーですら魔王の配下でしかなかったという事だ。

 配下がピンチだったから親分が降臨したという訳だね。

 

 で、その魔王の強さはというと……もう訳わからんレベルだった。

 スキルでもなんでもない、ただの腕のひと振りで粉微塵にされましたよ。

 あんなんチートや! チーターや!

 自分がやるなら最高だけど、他人にやられたらふざけんなだったわ。

 特殊進化のアラクネを除けば最後の進化をした時にゲットした『不死』のスキルがなかったら、ジ・エンドだった。

 

 そして、不死のスキルのおかげで何とか復活した後は、私が生きてる事に気づいた魔王との追いかけっこ。

 魔王本人には絶対勝てないので、叡智様のマーキングで位置を把握しながら転移で逃げ回る。

 しかし、転移は一度行った事のある場所にしか行けない。

 私が行った事のあるのは、このエルロー大迷宮と、外の僅かな範囲だけ。

 限られた逃げ道を潰す為に、魔王は手を打ってきた。

 

 その手というのが、あの人形蜘蛛の大量派遣。

 現在、外に魔王と人形蜘蛛5体、迷宮内にマザーと人形蜘蛛6体+蜘蛛軍団という大勢力が私を追い詰めている。

 

 最悪なのは、今の私だと人形蜘蛛にすら一対一の真っ向勝負じゃ勝てないという事。

 不死のおかげで死ぬ事はないけど、足全部切り落とされてコンクリ詰めにでもされたら終わりだし、コンクリがなくても足止めされ続ければ魔王が来る。

 魔王なら私を完全制圧して封殺する事なんて訳ないし、最悪不死を貫通して私を殺す裏技を持ってる可能性だってあるのだ。

 

 なので、私は今逃げ回りながら、なんとか罠と策略で人形蜘蛛を倒す手段を考えている。

 魔王とマザーは罠だろうがなんだろうが粉☆砕してくるだろうけど、人形蜘蛛なら罠と策略でギリギリどうにかなりそうなくらいの戦力差だからだ。

 人形蜘蛛の数が減れば、この追いかけっこもかなり楽になる筈。

 

 そんな矢先に遭遇したのが士道くんな訳ですよ。

 私も周りに気を配ってる余裕なかったから、結果的に士道くんに人形蜘蛛を押しつける形になっちゃった。

 必死だったとはいえ、さすがに悪い事したなー。

 

 ところが、士道くんと人形蜘蛛の戦いが始まってみればあらビックリ。

 なんと、あの人形蜘蛛に勝ってしまった。

 マジかい。

 確かに士道くんの物理系ステータスは前会った時点で人形蜘蛛と互角くらいだったけど、他の能力、特に速度と魔法能力で圧倒的に負けてたから、スピードで翻弄されて、物理と魔法しこたま叩き込まれて終わりだと思ってたわ。

 いくらなんでも、自分の防御力と同じくらいの攻撃力の相手に一方的に殴られ続けたら勝てる訳ないって思ってた。

 

 けど、よくよく考えてみれば、あれから結構な時間が経ってる。

 その時間で私が強くなったように、士道くんだって強くなってて当たり前だ。

 で、進化までして強くなった結果、防御力が上がりまくってて、人形蜘蛛相手に軽症程度のダメージで圧勝と。

 いや、いくら相性が良かったっぽいとはいえ強くなりすぎじゃね?

 おかしいな。

 成長チートは傲慢持ちの私の特権だった筈なのに。

 

 とはいえ、士道くんでも人形蜘蛛を仕留めるまでには至らなかったっぽい。

 直接戦ってる所を見た訳じゃないけど、マーキングを介した遠距離鑑定でHPとかの変動を見た限り、多分、人形蜘蛛は士道くんを削り切るのは無理と判断して撤退を選択したって感じだろうね。

 これで人形蜘蛛が地龍みたいに、どっちかが死ぬまで戦い続ける武士道精神の持ち主だったら、全部の人形蜘蛛を一匹ずつ士道くんの所に誘導するって作戦もありだったかもしれない。

 人形蜘蛛は武士じゃなかったから使えないけど。

 

 でもこれって……もしかして士道くんを味方にできれば一気に状況が好転したりする?

 というか、間違いなくするよね。

 だって、士道くんは一対一で人形蜘蛛に勝てるんだから。

 逃亡を阻止する力は持ってないっぽいけど、そこは私がサポートに入れば何とかなるだろうし。

 例え何とかならずに逃亡を許したとしても、人形蜘蛛を撃退できるってだけで効果としては充分すぎる。

 これは、かなり有効な作戦ではなかろうか?

 

 しかーし!

 この作戦には大きな欠点がある。

 私がクイーンタラテクトと双璧を成すクイーンオブボッチのコミュ障であり、士道くんの説得なんてできる気がしないって事もそうだけど。

 それ以前に、誰が元クラスメイトのよしみくらいで、あの最強魔王に一緒に立ち向かってくれるというのか。

 私の為に死んでくれっていうのとほぼ同義やぞ。

 そんなクソ取引、私なら絶対応じない。

 一昨日来やがれって中指立てて追い払う。

 私蜘蛛だから中指とかないけど。

 

 という訳で、この作戦は却下。

 大人しく元の予定通り、自力でどうにかする作戦を考えよう。

 ハァ、ボッチは辛いわー……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。