魔王との追いかけっこが停戦という形で幕を閉じた後。
私達はなんやかんやあって私と魔王の戦いの舞台にもなった戦争で故郷を失った吸血鬼主従を転生者のよしみで保護し、四人で魔王が定めた最初の目的地である、サリエーラ国首都を目指して旅をしていた。
私と魔王の関係はギスギス状態。
そりゃね。
ついこの前まで殺し合ってた仲だし。
私は強すぎる魔王を未だに警戒してて、魔王は私にマザーを始めとした配下達を殺された恨みがある。
でも、お互いこれ以上戦っても得るものはなくて、戦い続けても決着がつかないままズルズルと長引くだけ。
そんなんデメリットしかないって事で無理矢理停戦はしたけど、仲直りできてハッピーうれぴー大団円とはならんわな。
それでも停戦から一歩踏み込んで一緒に旅なんかしてるのは、お互いにメリットがあるから。
魔王は謎の不死身っぷりで討伐を諦めざるを得なかった私の監視ができる。
私は、この前の戦争で敵認定されちゃったエルフの男、ポティマスが襲ってきた場合に魔王をボディガードとして使う事ができる。
あのポティマスって奴はそれくらい警戒しなくちゃいけない。
それくらい、あいつはヤバかった。
ファンタジー染みたこの世界で、銃だのサイボーグだの謎結界だの、オーバーテクノロジーにも程がある洒落にならない力を使ってたし。
それはこの世界最大の禁忌の筈だ。
何せ、そういう機械技術のせいでこの世界は崩壊の危機に陥り、世界を救う為のシステムなんてもんが出来上がったんだから。
そんな禁忌の技術を平然と使うポティマス。
頭おかしいとしか思えん。
その頭おかしいテクノロジーシリーズの中でも、特に謎結界はヤバかった。
私も大概強くなったけど、あいつの謎結界は私がこの世界で積み上げてきた力であるスキルやステータスを封じ込めてしまう。
私の力はあくまでもシステムに保証された仮初の力であり、それを奪われたら私は強者足り得ない。
まあ、あの謎結界にも弱点や欠点はあって、スキルやステータスを100%封じられるって訳じゃない。
対策も立てたし、今度戦えば前と違ってそう簡単に追い詰められる事はない筈。
それでも絶対に勝てるとは言い切れないから、ボディガードの魔王には居てもらった方がいい。
ポティマスの謎結界も、魔王の強すぎる力を封じるには出力不足みたいだからね。
この魔王様、謎結界の中でも当たり前のようにポティマスをワンパンしていらっしゃったし。
ワンパンやぞ、ワンパン。
どんだけ強いのかと。
そんな感じで問題だらけの私と魔王だけど、旅の残りのメンバーである吸血鬼主従も結構な問題を抱えていた。
そりゃね。
故郷滅ぼされて、両親だの主だの失ってるんだから、メンタルがあれな事になるのは当たり前っちゃ当たり前よ。
特に従者のメラの方なんかは、生き残る為とはいえ、吸血っ子のスキルで人族から吸血鬼に変えられちゃったりしたし。
だから、うじうじしてても仕方ない。仕方ないんだ。
見てて、めっちゃイライラするけど。
幸い、その問題も少し前に何故か突然解決した。
なんか魔王が道中の街で買ってきたお酒を飲まされて幸せー、ってなった次の日に、いきなりメラがめっちゃ眩しい笑みでお礼言ってきたと思ったら、唐突に吹っ切れたんよ。
それ以来、メラは前向きになって、暇潰しに吸血っ子のついでで施してた英才教育(笑)にも積極的に参加するようになった。
急展開すぎて認識が追いつかなかったんだけど、どうやらお酒飲んで記憶が飛んでる間に何かあったっぽい。
まあ、うじうじしなくなったんならいいかって事で、深くは考えなかった。
そんな感じで、小さい事とはいえ問題だらけの旅の中でようやく問題が一つ解決したと思ったら、また新たな問題が発生した。
ある日突然、管理者ギュリエディストディエスことギュリギュリが現れたと思ったら、私の体から追い出して放置してた並列意思どもが暴れてるから止めてこいと言われたのだ。
何がどうなってんのかわかんなかったけど、これどう考えても私が蒔いた種だし、拒否ったらギュリギュリに殺されそうだったので、仕方なく出撃して並列意思どもを撃破。
皆殺しにして、全員回収してきた。
あいつらは肉体を得たとはいえ、元は私の魂の一部だからね。
殺したら私の中に帰ってくるだけだよ。
そんなこんなで無事ミッション完了。
私が帰ってからしばらくして、街に行ってた魔王達も帰還。
何故かこの場に残ったギュリギュリも含めて、魔王が買ってきたお酒で酒飲みタイムに突入した。
お酒に弱い吸血っ子は早々にお酒を盗み飲みして一発KOされ、メラも酔っていい気分になった私が軽くどついたら気絶しちゃった。
なので、現在起きてるのは私と魔王とギュリギュリだけだ。
さっきまで人類への恨みがどうだとか、女神の望みがなんだとか、誇りとはなんぞやみたいな真面目な話をしてたけど、今は更に酔いが回ってきて、ただただお酒が美味しくて幸せという事しか考えられない。
ぷはぁ!
アラクネに進化して得た人間の繊細な味覚にお酒が染みるー!
五臓六腑+下半身の蜘蛛型にまで染み渡るー!
「うへへへへへへへ!」
「……何度見ても凄まじい酔い方だな。この勢いのまま分身体のように暴れなければいいが」
「アッハッハ! ……ギュリエ、冗談になってない冗談は笑えないよ?」
魔王は笑えないとか言っておきながらギュリギュリの話に思いっきり笑った後、唐突に真顔になった。
むー!
心外だー!
マザーの魂食ったせいで影響受けて、人類殲滅計画とか企てたあいつらと一緒にするなー!
「他の転生者までこれのようだったらと思うと恐ろしいな。十数年後には世界が滅びていそうだ」
「だから冗談になってない冗談は笑えないっての。まあ、大丈夫だとは思うよー。そこのソフィアちゃんなんかはちょっと、その、なんていうか、ヤンデレの波動を感じるけどさ。白ちゃん程の規格外って感じはしないし。白ちゃんは転生者の中でも例外だと思っていいんじゃない?」
「どうだかな。少なくともこれ並みに強くなっている転生者は他にもいる。油断はできん」
「……ん? 聞き間違いかな? それとも酔って幻聴でも聞こえたのかな? 今、白ちゃん並みの転生者が他にいるって聞こえたんだけど?」
「うへへへへへへへ! ポワポワすりゅ~!」
なんか魔王が深刻そうな顔してるけど、そんな事よりお酒が美味しい!
「安心しろ。聞き間違いでも幻聴でもない。実際、つい先程もこれの分身体九体と戦って撃退していた。相性によるところが大きかったとはいえ、これが九体居ても倒しきれなかったのは事実だ」
「え? 何その化け物? 白ちゃんと相性良いって事は、龍とか?」
「いや、オークだ」
「オーク!?」
んにゅ?
今なんかオークって言葉が聞こえてきたぞ?
オークって言えば、なんか忘れてるような……
「あー、士道くんかー! 並列意思ども倒すとか相変わらず化け物だわー!」
てか、あいつら倒すとか、士道くん強くなりすぎじゃね?
私だって前に戦った時からめっちゃレベルアップして、めっちゃ進化して、マザーの力の大半吸収したりして滅茶苦茶強くなってるのに。
そんな私と同じステータスの並列意思が九体もいて倒せなかったとか、化け物すぎやろ!
相変わらず過ぎてワロタ。
「知ってるのか白ちゃん!? 吐け! 吐くんだ!」
「オロロロロロ……」
「吐いたな」
「そんな古典的なボケはいいから! 士道くんとやらの情報プリーズ!」
飲み過ぎて吐いた私の背中を魔王が擦ってくれる。
なんか今日の魔王優しー。
血縁的にはお祖母ちゃんだし、遂にお祖母ちゃんとしての自覚が出てきたか!
「おばあちゃーん、もっとお酒ちょうだーい」
「まだ飲む気か、この孫娘は!?」
「……なんというか、随分と仲良くなったものだな」
その後、お酒と引き換えに、私は士道くんについて知ってる事を洗いざらい吐いた。
前に戦った時の脳筋っぷりとか、叡智様で遠距離鑑定した今のステータスとか、現在地とか。
頭ポワポワしてたから伝え忘れた事も多そうだけど。
あ、あと今思えばだけど、多分、初めて下層に落っこちた時に見たスーパーオークも士道くんだよねー。
あれなら並列意思と別行動する前の出来事だし、元体担当と融合した魔王も知ってるだろうと思って話したけど、そしたら、
「あー、あのグレーターワンパンしてくれたオークね。そういう事なら尚更放置する訳にはいかないなー」
そう言って、魔王様は不敵な笑みを浮かべておられました。
すまん、士道くん。
私のせいで君の所に魔王様が襲来するかもしれないけど、強く生きてくれ!
それはともかく、士道くんの情報と引き換えに貰ったお高いお酒超美味しいです!