お酒を飲んで幸せーってなって、気づいたら士道くんが簀巻きにされて転がされてた件。
何を言ってるのかわからねぇと思うが、私も何が起こったのかわからなかった。
そんな私の様子を察して説明してくれた魔王の話によると、どうやらお酒で口が軽くなった私とギュリギュリの証言によって、魔王に士道くんの存在が発覚。
そんなヤベー奴をマザー亡き後のエルロー大迷宮には置いておけないぜって事で、魔王が直接回収に出向いたらしい。
しかも、その為の移動手段が酔った私の転移っていうね。
お酒で釣ったら快くやってくれたよ、というのは悪い顔をした魔王談。
うん、やっちまったな!
まさか、クールビューティーで有名なこの私が、お酒の勢いで元クラスメイトを魔王に売ってしまうとは。
恐るべし、お酒の勢い。
悪いのはそのお酒を私に飲ませて情報を吐かせるという高度な作戦を実行した魔王って事で責任逃れしたいけど、さすがにそういう訳にもいかないよね……。
すまぬ、士道くん。
諦めて私達の朝ご飯になってくれたまえ。
せめてもの償いとして、立派なお墓を立ててあげるから。
南無阿弥陀仏。
安らかに成仏してくれ。
「白ちゃん、なんで手合わせてんの? 言っとくけど、私にこの子をどうこうするつもりはないからね?」
あ、そうなん?
どうやらこの寛大な魔王様は、配下をコロコロしちゃった士道くんをお許しになるおつもりらしい。
私の時と対応が違いすぎじゃね?
と一瞬思ったけど、よく考えてみれば、直属の配下で実の子供であるマザーとか人形蜘蛛とかをやっちまった私と、そのマザーが使い捨て感覚で生み出してた一般タラテクトをやっちゃっただけの士道くんとじゃ、そりゃ対応が違って当たり前か。
まあ、なんにせよ私のせいで元クラスメイトが食卓に並ばなくてよかったよかった。
一件落着。
そんな感じで気楽な気分でいたら、目を覚ました士道くんがガチ泣きした件について。
あー、うん、その、なんていうか……。
これもしかして、ちょっとは私のせいでもあるんじゃね? って思わなくもなかった。
叡智様のマーキングで常に居場所は知ってたんだし、話し掛けて転移で連れ出してあげれば、こんなガチ泣きする程追い詰められる事もなかったのでは……?
いやいやいや!
私のせいじゃない、筈!
別に士道くんを助ける義理とかなかったし!
それに、私の見てきた士道くんとか、化け物ってイメージしかなかったんだもん!
初遭遇の時。グレーターワンパン。
次に会った時。地龍ぶっ殺しておられた上に、私もやられかけた。
その次に会った時。人形蜘蛛撃退。
最近知った新事実。私と同じステータスの並列意思どもを九体同時に相手取って撃退。
こんな化け物っぷり見てたら、助けが必要なくらい弱った状態だったなんて思える訳ないやろ!
よって私は無実だ!
でも、この事実が明るみに出たら吸血っ子辺りに白い目で見られそうだし、隠蔽して墓場まで持っていく事にしよう。
幸い、士道くんは私が度々遭遇した蜘蛛だって事に気づいてないっぽいし。
まあ、アラクネになって大分見た目変わってるからね。
気づかないのも当然だわ。
どうか、そのまま一生気づかないでおくれ。
だけど、なんか魔王には全部見透かされてる気がしてならないんだよなー。
士道くんを優しくよしよしした後とか、私の事白い目で見てたし。
魔王との間に無駄な争いの火種とか作りたくないから、ここは一つ魔王の不信感を払拭する為にも、士道くんに罪滅ぼしも兼ねて賄賂でも送ってご機嫌を取ろうかな。
送る賄賂の内容は決まっている。
服だ。
これは賄賂とか考える前から作ろうとは思ってた。
最近の私は、ザ・マネキンって感じだった人形蜘蛛達を一見すると人間に見えるくらいにまで改造した一件を皮切りに、ファッションに目覚めた人形蜘蛛達の熱気に当てられるみたいな形で服作りとかにハマってる。
そんな私だからこそ、酷い服を着てる士道くんを見て我慢できなくなった。
それはもう服とすら言えない。
何かの魔物の毛皮をそのまんま使った、ボロッボロの腰ミノ一丁。
これはイカン!
イカンよ君ぃ!
その内、見たくもない大事な所がポロリしそうだ。
オークのポロリとか誰得だし。
という訳で、士道くんの服作りを開始。
助手は人形蜘蛛四人。
賄賂って事もあって最初は一人でやるつもりだったんだけど、気づいたら乱入されてた。
こいつらも最近は自分達で服作りしてるし、今度は他人の服を作って新たなインスピレーションとかを得たかったのかもしれない。
という訳で、今回作るのはお相撲さんの代名詞、まわしです。
でも、ただのまわしだと私達の創作意欲を詰め込めなかったから、あのなんか特別な時にお相撲さん達が着けてる豪華な垂れ幕みたいなまわしを作る事にした。
確か、化粧まわしって言ったっけ?
どっかの豆知識か何かで見た覚えがある。
まあ、詳しい作り方とか知らないから擬きなんだけど。
高レベルの蜘蛛糸系スキルと操糸を使って、化粧まわしに豪華な刺繍を施していく。
士道くんは豚なのに火炎攻撃使ってたので、絵柄は炎に決定。
全体的には黒地で、縁の部分は金色。
その中心に浮世絵風の炎の絵をドーン!
うん、カッコ良い!
我ながら自信作だわ。
出来た瞬間、人形蜘蛛達とハイタッチで喜びを分かち合った。
そんな自信作を士道くんにプレゼント。
最初は「関取でもないのに恐れ多い!」とか言ってたけど、最終的には私達の厚意を無下にするのもアレだと思ってくれたみたいで受け取ってくれた。
うんうん。
それでいいんだよ。
貰えるもんは貰っとくべきだって。
それに、あれだけ苦労して作った物を無下にされてたら、ブチ切れて人形蜘蛛達と一緒に殺しに行ってたかもしれないし。
そして、物陰で着替えてきてくれた士道くんが化粧まわし姿を皆にお披露目。
……なんか足りない。
あ、髪の毛だ。
という訳で、超特急でお相撲さんのちょんまげの鬘を製作。
士道くんに被せてみると、異様なくらいよく似合った。
本人も結構嬉しそう。
で、ここまで来たらって事で、私は調子に乗って横綱がたまに腰に巻いてるしめ縄まで製作した。
それを渡したら、今度こそ士道くんは「恐れ多い恐れ多い恐れ多い!」と連呼して断固受け取ろうとしなかったけど、ゴリ押したら行けた。
士道くんは人の厚意を絶対に無下にできないタイプらしい。
慕ってる魔王と同じで人がいいわー。
最終的に、士道くんは化粧まわしとちょんまげの鬘、しめ縄を装着した状態で、前世で教えてもらったという横綱土俵入りをやってくれた。
なんていうか、すげー迫力だった。
真剣な顔した士道くんの圧倒的な風格と威圧感によって行われる一つ一つの動作は、相撲に興味のない私でも、なんか心に響いてくるものがあったわ。
それはこの世界出身の魔王達も変わらないのか、終わった後は皆して拍手してた。
尚、その後に「土俵入りだけじゃ、なんかもったいないよね」って言い出した魔王により、急遽士道くんにその他全員が一人ずつ挑む相撲ルールバトルの開催が決定。
今の士道くんの巨体に合わせたサイズの土俵が魔王の糸によって作られ、全員仲良くぶん投げられました。
戦いの土俵に立った士道くんの気迫はヤベーわ。
魔王のペットという日常での姿を脱ぎ捨てて、化け物と思わされた迷宮時代に戻ってやがる。
さて、お分かりだろうか?
全員ぶん投げられたという事は、相撲ルールだと、あの最強魔王ですら勝てないって事なんだぜ?
強すぎんだろ。
恐れ多いとか言ってたけど、この世界じゃ間違いなく君が最強の力士だよ。
もう横綱名乗ればいいんじゃないかな?
「あ、でも、その格好はこっちの世界だと悪目立ちしすぎちゃうから、普段は隠しといてね」
最後はそんな魔王の言葉により、士道くんは普段着として、まわし姿の上から超大柄のフード付き白装束を羽織る事に。
更に、オークである事を隠す為に黒い仮面を付けたんだけど、結局凄まじく怪しい事には変わりなかった。
物珍しいなんてレベルじゃないまわし姿に比べれば、少しは悪目立ち度もマシかもしれないけど、どっち道私と同じで街には入れないわこれ。
【相撲ルールバトル】
土俵から出たら負け。足の裏以外を地面につけたら負け。この二つだけ守れば、あとは何してもいいという適当ルール。
とある蜘蛛は大人げなく大鎌を持ち出した上で完膚なきまでに叩きのめされたそうな。