「ブヒッ?」
ふと意識が浮上して目が覚めた。
どうやら、いつの間にか気絶していたらしい。
こんな人外魔境で気絶とか洒落にならん。
何故にこんな事になったのか、記憶を辿ってみれば、原因は進化にあると気づいた。
進化する時は意識を失うのか。
知らなかった。
感覚的にそう長い事気絶してた訳じゃないと思うが、それでも無事に目覚められたのは奇跡だ。
次に進化する時は巣穴でも掘って、気休めでもバリケードの一つくらい作ってから進化しよう。
とりあえず今強く思う事は……腹が減った。
それも餓死寸前ってくらい空腹だ。
今ならどんなゲテモノでも残さず平らげる自信がある。
もしかしたら、進化にかなりのエネルギーを使ったのかもしれない。
進化すると滅茶苦茶腹が減るのか。
知らなかった。
気絶といい空腹といい、進化にも落とし穴が多すぎる。
やっぱり鑑定同様疑ってかかるべきだった。
この世界はどこまでも厳しい。
そう。
厳しいからこそ、俺は目の前の巨大蜘蛛と蛙の亡骸を食わないといけないのだ。
食わないと餓死するから。
本当にこの世界はどこまでも厳しい。
うえ、不味……。
不味さからの逃避もかねて、ひとまず本当に進化が成功したのか確かめる為に、自分を鑑定してみた。
『ハイオーク』
よかった。
ここだけは大丈夫みたいだ。
目覚める前と目線の高さも違うし、大体身長3メートルくらいになってると思う。
最初に見たリーダーオークと同じくらいだ。
進化は無事成功したと思っていいだろう。
これで進化まで失敗してたら、俺は神様に渾身の張り手をお見舞いしなければならなかった。
だが、今だけはあの鬼畜な神様を許してもいい。
そんなとち狂った考えが脳裏を過ってしまう程、進化によって得た力は圧倒的だった。
滾る!
滾るぞ!
体の中から力が溢れてくる!
ステータスなんて見れなくても感覚でわかる!
圧倒的ではないか我が力は!
今ならあの最初の巨大蜘蛛にも負ける気がしない!
俺は今究極のパワーを手に入れたのだ!
そんな高揚感に包まれてる内に、気づけば蜘蛛と蛙を食べきっていた。
足りない。
蛙はともかく、蜘蛛は今の俺の体よりもデカかった筈なのに全然足りない。
もっと食料がいる。
餌を求めて、俺は洞窟の中をさ迷い始めた。
前はあれだけビクビクしていたというのに、今は感知系のスキルでこっちから強敵を求めている。
どんな相手にも負ける気がしない。
《熟練度が一定に達しました。スキル『矜持LV2』が『矜持LV3』になりました》
まず最初に目についたのは、六本の腕を持つ蟷螂。
『エルローグレシガード』
鑑定をした瞬間に気づかれたが関係ない。
手をついて、ぶちかます。
蟷螂は六本の鎌状になった腕で俺を切り裂いて迎撃しようとしたが、その抵抗を突進一つでぶち抜いて木っ端微塵にする。
《経験値が一定に達しました。個体、ハイオークがLV1からLV2になりました》
《各種基礎能力値が上昇しました》
《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》
《スキルポイントを入手しました》
倒した蟷螂の亡骸にかぶり付く。
あっという間に全てを平らげた。
足りない。
俺は腹が減っているぞ!
『バクラグラッチ』
次に見つけたのは、ワニのような巨大な口を持った巨猿。
手をついて、はっけよい!
だが、巨猿は俺のぶちかましを躱し、その鋭い爪によって反撃を繰り出してきた。
甘い!
突き出された手を左脇で掴み、固定する。
そうやって捕まえたまま巨猿の腕を砕き、更に残った右手で、気合いを込めた張り手を巨猿の顔面に叩き込む。
《熟練度が一定に達しました。スキル『気力撃LV1』を獲得しました》
その一撃で、巨猿の顔面は爆ぜた。
倒した巨猿を食らう。
まだだ。
まだ足りない。
もっと腹の足しになる奴はいないのか!
それから何体もの魔物を仕留め、片っ端から食らい尽くしていき、俺はそれと出会った。
否、再会したと言った方がいいか。
その強者と。
『アークタラテクト』
そいつは、俺の今世の親兄弟を殺戮した怪物蜘蛛。
あれと同個体かはわからないが、間違いなく同種ではある。
いいぞ。
下位種を倒しただけじゃ満足なんてしてなかったんだ。
真のトラウマ、ここで乗り越えてくれる!
そうして、俺は目の前の巨大蜘蛛、アークタラテクトに挑みかかった。
《熟練度が一定に達しました。スキル『矜持LV3』が『矜持LV4』になりました》